のじゃロリ吸血鬼さんはチューチューしたい3

かま猫

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学園祭大騒ぎ その5

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 仙一郎はにぎわう廊下を歩きながらエーミュが本物の怪物だったんだろうかと悩んでいた。やはり建物の三階から飛び降りて怪我ひとつないのは普通ではないが、尖った耳を隠しもせずやって来て臆面もなく指輪をねだるのはあまりにも迂闊としか言いようがない。この件をフレイラに話しておいた方がいいのかと思ったが、エーミュが怪物だったとしてもそれほど危険は感じはなかったし、もし話せばフレイラは飛んできてピッタリ張り付いて眉間に皺を寄せ付きっきりで警固することになるだろう。それは仙一郎の望むところではなかった。なのでこの件はとりあえず棚上げにして同級生の軽沢のオカルト研究会に顔を出すことにした。
 カエルのオブジェが建つ広場に面した三階の教室のドアをくぐる。並んだ間仕切りに円盤や未確認生物、心霊現象の研究発表が掲示された部屋は、すでに夕方のためか掲示内容のせいか閑散としていた。
「早見!」
 入口に立っていると軽沢がビデオカメラを片手に息を切らせて駆け寄って来た。
「どうした?軽沢。」
「ちょうどイイとこに来た!ちょっと留守番頼まれてくれ!」
「別にいいけど…」
「すまん!どうも校内で少女が空を飛んでる姿が目撃されたって情報が入ってさ!フライングヒューマノイドだぜ!フライング!他の部員も捜索に散らばってるんだ。呉睦さんがいるんだけどさ一人じゃ心配だから助かるよ。」
 そう言うと軽沢は足早に出ていった。尾びれが付いているとはいえエーミュの件が伝わっているようでオカルト研究会の情報網恐るべしといったところだ。
 ひとり取り残された仙一郎が、呉睦ーーー日本画科の巨乳の先輩を探してがらんとした展示スペースを見回すと間仕切りで囲まれたひときわ異彩を放つ場所があった。黒の緞帳で覆われ骸骨や六芒星で装飾され、「占」の文字が赤字で書かれた黄色のボードが掲げられ怪しげな雰囲気を醸し出す一角。気になった仙一郎が、その入り口に掛かる幕を開けると中はローソクの明かりが照らす薄暗い空間で外観に負けずおどろおどろしい装飾が施され、中央の丸い水晶の置かれたテーブルにジプシー風衣装の女性が座っていた。
「ようこそ!エイミーの館へ!迷えるあなたの未来を占いってあげましょう!」
 そう言って微笑みを見せる女性は呉睦だった。
「こんばんわ。占い師ですか!」
「どうです早見君、この恰好?似合ってます?」
 呉睦は身につけたフォークロア風のアクセサリーをちゃらちゃらと鳴らして服を見せる。
「あ、うん。似合ってると…思います。」
 仙一郎はどうしても、大きく肩の露出した服からのぞく彼女の豊満な胸の谷間に目が行って落ち着きなく答える。
「部外者に留守番頼んじゃってごめんなさいね!でも私ひとりじゃ心細かったんで助かるよ!」
 外での会話が聞こえていたのだろう呉睦は礼をのべると
「お礼に占ってあげるよ!ささっ、座って。」
 そう言って仙一郎をうながす。
「それじゃあ手、出して!」
「え?水晶占いじゃないの?」
「ああ!これは雰囲気!雰囲気!」
 彼女の恰好や机の上の水晶の珠を見て、てっきり水晶占いかと思っていた仙一郎はツッコみを入れつつ手を差し出す。
「ふむふむ…金運はあまり良くありませんね。出費多しと出ています。」
 確かに、と仙一郎は心の中で相槌をうつ。
「それと、最近なくした失せ物は近々、見つかると出てます。」
 それも確かに最近、自転車を盗まれたし当たっている。見つかるのはありがたい。
「ただ女難の相が色濃く出てるから気を付けて下さいね!早見君!」
 呉睦はそう言うとニヤっと笑って見せる。それは占いというより最近すっかり、彼が女たらしだと噂になっていることをからかったのだろう。
「そんなこと…」
 反論しようとすると呉睦は突然、両手で彼の手を握り直すと顔を手のひらに近づけ凝視してからおもむろに顔を上げる。
「それにこれは…魔物の類に取りつかれてるって出てますよ!これちょっとヤバイやつ!心当たりありませんか?」
「無い!無い!そんなことある訳ないじゃないですか!」
 ズバリ言い当てられ仙一郎は慌てて否定する。吸血鬼に居候されているのは事実だったので呉睦が本当に占いが出来るのかと驚いてしまうが、さすがにその事実は誰にも知られる訳にはいかないことだったし、ましてやオカルト研究会の呉睦に言えるはずもない。
「そうですか、でも十分気を付けて下さいね。」
 何か不満顔の呉睦がそう言ったとき生暖かい風が流れ、ローソクの炎が消え辺りが真っ暗になる。
「きゃっ!」
 呉睦が声を上げ持っていた彼の手を握りしめる。
「大丈夫。外、出ましょう!」
 薄暗がりの中、立ち上がると呉睦が腕に胸を押しつけるようにしがみつき、その柔らかい感触が仙一郎を戸惑わせる。彼女は無意識でスキンシップをとってくるところがあって、嬉しいところが困りものだった。

 呉睦にへばり付かれたままぎこちない足取りで緞帳を押し上げ外に出ると、どういう訳か部屋の蛍光灯も消えており、すでに日も落ち外の明かりだけが射し込み室内は薄暗かった。明らかに不自然な気配に佇んでいると突然、微かに破裂音が響く。
「ラップ現象!」
 仙一郎にしがみついて震えていた呉睦は突然、目を輝かせて喜々として反応する。
「ラップ現象だよ!ラ!ッ!プ!どこからともなく聞こえてくる怪しい音。これはまさしく超常現象!」
「そうかもしれないけど、危険がないか見てきますからちょっとここで待っててもらえますか?」
 仙一郎はエーミュのこともあって今の状況が呉睦をも危険にさらしかねないと感じ、不満そうな顔をする彼女をなだめすかし、その場を後にして音のする方向を目指す。音は部屋の外から聞こえてきているようで近づくと徐々に大きく間隔も短くなり、彼を導くように響き続ける。
 出入り口の前で立ち止まり大きくひとつ息をする。引き戸を開けると、ヒンヤリとした風が流れ破裂音が一層大きく鳴り響く真っ暗な廊下へゆっくりと足を踏み出す。すると音はピタリと鳴りやみ、それどころか外の喧噪さえも聞こえない不気味な沈黙が辺りを支配する。本能的に危険を感じた仙一郎は部屋に戻ろうと振り返るがそこにあるはずの扉はただの壁になったいた。周りを見渡すと廊下の様子も微妙に違和感を覚え、まるで知らない場所のように見えた。仙一郎が慌てて指輪に触れようとすると
「フラガラッパは召喚できないよ。ここは隔絶された異空間だからね。」
 聞き覚えのある声に前を向くとそこにはエーミュが立っていた。
「エーミュは本当に怪物なの?」
「うん!で、もう一度聞くけどフラガラッハの指輪渡してくれない?」
「それはダメだよ。」
「ホントに?」
「本当に。」
「ホントの、ホントに?」
「本当の、本当に。」
「ホントの、ホントの、ホントに?」
「本当の、本当の、本当にダメ!」
 断る仙一郎に彼女は食い下がる。
「じゃあ無理矢理にでも奪う事になるよ。」
 言葉と同時に彼女の隣に音もなく現れたものを見て仙一郎はギョッとする。それは頭が二つあるライオン程もある大きな黒い犬で蛇になっている尾を不気味にくねらせ鋭い眼光で彼を睨んでいた。
「この凶暴な魔獣をけしかけるよ!ホントただじゃすまないよ!」
 エーミュの恫喝に身構える仙一郎。
「怪我じゃすまないよ!ホントだよ!」
 繰り返し脅しをかけるが迷っているのか口先ばかりで魔獣をけしかけようとしない。仙一郎も逃げる機会を伺っていたが動けば途端に魔獣が襲いかかって来るのが明らかだったので動けずにいた。しばらく睨み合いが続く。
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