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学園祭艶話 その2
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絵画北棟一階の一室、映画研究会の自主制作映画が上映される部屋は窓が黒い幕で目張りされ片側の壁には白いスクリーン、パイプ椅子を二十ほど慣れべた客席は半分ほど埋まっており仙一郎とリザの二人は一番後ろの列に並んで座った。
「デートといえば映画は定番!恋愛映画とまでハいかなくても映画は映画デスからネ!」
やっと機嫌の直ったリザは抜かりなく買って来たポップコーンを頬張る。
「まあ映画って言えば映画か…」
仙一郎は横からリザのポップコーンに手を伸ばし、配られた冊子に目を通す。中編、短編合わせて十本ほどのタイトルが並ぶ。ちょっとタイトルだけでは内容が想像出来ないようなものばかりだが全部合わせても一時間半ほどで見終わるようだった。やがて照明が消え短い口上の後にスクリーンに映像が映し出される。一本目はコマ撮りした人物実写をつなぎ合わせコメディータッチにしたアニメーション短編、二本目は“アンダルシアの犬”のような前衛映画風のモノクロ映画。そして三本目は特撮ヒーロー物らしく赤い全身タイツの仮面の主人公とカニのような怪人が現る物語で自主制作らしい所々のチープさもかえって味になっていてリザはどうやら気に入ったらしく食い入るように見つめる。
どの作品もそれなりに見れる映画にはなっていたが適度に薄暗くエアコンが効いて暖かく快適な室内は、寝不足の仙一郎を眠りに誘うには十分だった。何度か意識が遠のきその度に目をしばたかせて主人公とカニが戦うシーンに集中しようとするが話が頭に入ってこず、ついに眠りの淵に落ちてしまう。
そして次に気づいたときにはリザに寄りかかってしまっていたので仙一郎は慌てて跳ね起きる。スクリーンではまだカニが戦っていた。
「ごめん!ちょっと眠ってた。」
「良いデスヨ!色々あって疲れてるでしょうカラ!」
「本当ごめん!どれくらい寝てた?」
「ええっト…一時間半…ホド…」
「え?」
リザの言葉に仙一郎は思わず声を上げた。
映画がまだ同じ作品だったのでほんの数分だと思っていた仙一郎だったが実際はひと回りして二回目の上映中だったのだ。
「申し訳ない!デート中に寝てしまうとか最低だ…」
「ああ!イイんデスヨ!気にしないデ!」
「そうは言っても…」
すっかり落ち込んでしまった仙一郎を見てリザは彼の腕に手を回し寄り添う。突然のことに戸惑う仙一郎。
「ワタシは一度アナタを殺しかけた不老不死の化物デス。そんなワタシの傍らで大いびきをかいて眠れるなんて、信頼してもらえてるあかしデスカラちょっと嬉しいんデスヨ!」
「そう言ってもらえるのは有難いけど…って、えっ?いびきまで?」
「アアアッ!だからイイデスカラ!」
仙一郎がさらに落ち込んでしまったのでリザはオロオロしてしまう。
「でも気が済まないからそのうちまたデートするってことでゆるしてくれないかな?」
「仙一郎がそれでイイのならワタシもそれでイイんですケド何か気が引けますネ…」
「イイって!イイって!」
今日のデートは前々からのリザとの約束だったというのに失態を犯してしまったことが、どうにも美しくないと思えて自分が許せなかった仙一郎は汚名返上にそんな提案をしたのだが、思いもかけず次のデートの約束を取りつけることになってしまったリザは何とも複雑な表情をした。
二人は映画を最後まで観終わると遅い昼食を学生食堂でとり、展示を見て回ることにする。二日目も賑わいを見せる構内は人で溢れかえっていたが行く先々でリザは衆目を集めることとなった。やはり金髪碧眼の整った顔立ちでモデルと見まごうばかりのスタイルの彼女は男性ばかりでなく女性も振り向くほど際立った存在で、しかもそんな美人が何故か不釣り合いな冴えない男と一緒にいることでより周りの注目を集めた。すでに、大学内で女たらしだという風評は広く知れ渡っていたのでもうそれに関してはどうでもよくなっていた仙一郎だったが、ナンパ男に声をかけられること八回、女性に一緒に写真を撮らせてとお願いされること五回、仙一郎が在らぬインネンをつけられ絡んできた男をリザが殺しそうになったこと二回と面倒事の多さにはさすがに辟易した。
「満喫!満喫!デース!」
仙一郎にくっついてリザは上機嫌で歩く。空はすでに暮れはじめ、広場に連なる模擬店も灯りをともしはじめて夜にむけ人々の熱気も高まっているようだった。
「それは良かった!楽しんでもらえたようでうれしいよ。まあ周りが騒がしかったけど…」
「ソレはしょうがないデスネ!誰もが羨むカップルですカラ!」
「ははっ…」
仙一郎が冗談とも本気ともとれない言葉に愛想笑いを浮かべていると、リザはついと彼の目の前に回り込んだ。
「そろそろイイ時間ですネ!それじゃあイキましょうカ!」
「ホ…ホテルはNGだよ!」
「ホテルにイきたいのはヤマヤマですケド分かってマスネ。ナマクラがミス美大コンテストに出場するんでしょ?」
「知ってたんだ。」
「エエ!本人から懲罰としテ不本意ながら出場するけど、貴様は絶対に見にくるなト念を押されましたノデ!」
「そう言われて見に行くんだ…」
「当然!ナマクラが恥ずかしい姿で晒し者にされるのを笑いに行ってやるデスネ!」
「酷いなぁ…まあ罰として出場させたのは確かだけど、ミス美大になれる資質は十分にあると思って提案したんだけど。」
「まあそういう事ニしておきましょうカ!」
リザは意味ありげに微笑むと仙一郎の手を引いた。
「デートといえば映画は定番!恋愛映画とまでハいかなくても映画は映画デスからネ!」
やっと機嫌の直ったリザは抜かりなく買って来たポップコーンを頬張る。
「まあ映画って言えば映画か…」
仙一郎は横からリザのポップコーンに手を伸ばし、配られた冊子に目を通す。中編、短編合わせて十本ほどのタイトルが並ぶ。ちょっとタイトルだけでは内容が想像出来ないようなものばかりだが全部合わせても一時間半ほどで見終わるようだった。やがて照明が消え短い口上の後にスクリーンに映像が映し出される。一本目はコマ撮りした人物実写をつなぎ合わせコメディータッチにしたアニメーション短編、二本目は“アンダルシアの犬”のような前衛映画風のモノクロ映画。そして三本目は特撮ヒーロー物らしく赤い全身タイツの仮面の主人公とカニのような怪人が現る物語で自主制作らしい所々のチープさもかえって味になっていてリザはどうやら気に入ったらしく食い入るように見つめる。
どの作品もそれなりに見れる映画にはなっていたが適度に薄暗くエアコンが効いて暖かく快適な室内は、寝不足の仙一郎を眠りに誘うには十分だった。何度か意識が遠のきその度に目をしばたかせて主人公とカニが戦うシーンに集中しようとするが話が頭に入ってこず、ついに眠りの淵に落ちてしまう。
そして次に気づいたときにはリザに寄りかかってしまっていたので仙一郎は慌てて跳ね起きる。スクリーンではまだカニが戦っていた。
「ごめん!ちょっと眠ってた。」
「良いデスヨ!色々あって疲れてるでしょうカラ!」
「本当ごめん!どれくらい寝てた?」
「ええっト…一時間半…ホド…」
「え?」
リザの言葉に仙一郎は思わず声を上げた。
映画がまだ同じ作品だったのでほんの数分だと思っていた仙一郎だったが実際はひと回りして二回目の上映中だったのだ。
「申し訳ない!デート中に寝てしまうとか最低だ…」
「ああ!イイんデスヨ!気にしないデ!」
「そうは言っても…」
すっかり落ち込んでしまった仙一郎を見てリザは彼の腕に手を回し寄り添う。突然のことに戸惑う仙一郎。
「ワタシは一度アナタを殺しかけた不老不死の化物デス。そんなワタシの傍らで大いびきをかいて眠れるなんて、信頼してもらえてるあかしデスカラちょっと嬉しいんデスヨ!」
「そう言ってもらえるのは有難いけど…って、えっ?いびきまで?」
「アアアッ!だからイイデスカラ!」
仙一郎がさらに落ち込んでしまったのでリザはオロオロしてしまう。
「でも気が済まないからそのうちまたデートするってことでゆるしてくれないかな?」
「仙一郎がそれでイイのならワタシもそれでイイんですケド何か気が引けますネ…」
「イイって!イイって!」
今日のデートは前々からのリザとの約束だったというのに失態を犯してしまったことが、どうにも美しくないと思えて自分が許せなかった仙一郎は汚名返上にそんな提案をしたのだが、思いもかけず次のデートの約束を取りつけることになってしまったリザは何とも複雑な表情をした。
二人は映画を最後まで観終わると遅い昼食を学生食堂でとり、展示を見て回ることにする。二日目も賑わいを見せる構内は人で溢れかえっていたが行く先々でリザは衆目を集めることとなった。やはり金髪碧眼の整った顔立ちでモデルと見まごうばかりのスタイルの彼女は男性ばかりでなく女性も振り向くほど際立った存在で、しかもそんな美人が何故か不釣り合いな冴えない男と一緒にいることでより周りの注目を集めた。すでに、大学内で女たらしだという風評は広く知れ渡っていたのでもうそれに関してはどうでもよくなっていた仙一郎だったが、ナンパ男に声をかけられること八回、女性に一緒に写真を撮らせてとお願いされること五回、仙一郎が在らぬインネンをつけられ絡んできた男をリザが殺しそうになったこと二回と面倒事の多さにはさすがに辟易した。
「満喫!満喫!デース!」
仙一郎にくっついてリザは上機嫌で歩く。空はすでに暮れはじめ、広場に連なる模擬店も灯りをともしはじめて夜にむけ人々の熱気も高まっているようだった。
「それは良かった!楽しんでもらえたようでうれしいよ。まあ周りが騒がしかったけど…」
「ソレはしょうがないデスネ!誰もが羨むカップルですカラ!」
「ははっ…」
仙一郎が冗談とも本気ともとれない言葉に愛想笑いを浮かべていると、リザはついと彼の目の前に回り込んだ。
「そろそろイイ時間ですネ!それじゃあイキましょうカ!」
「ホ…ホテルはNGだよ!」
「ホテルにイきたいのはヤマヤマですケド分かってマスネ。ナマクラがミス美大コンテストに出場するんでしょ?」
「知ってたんだ。」
「エエ!本人から懲罰としテ不本意ながら出場するけど、貴様は絶対に見にくるなト念を押されましたノデ!」
「そう言われて見に行くんだ…」
「当然!ナマクラが恥ずかしい姿で晒し者にされるのを笑いに行ってやるデスネ!」
「酷いなぁ…まあ罰として出場させたのは確かだけど、ミス美大になれる資質は十分にあると思って提案したんだけど。」
「まあそういう事ニしておきましょうカ!」
リザは意味ありげに微笑むと仙一郎の手を引いた。
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