のじゃロリ吸血鬼さんはチューチューしたい3

かま猫

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おみまいするぞー

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 カーテン越しに午後の光が柔らかくさしこむ病院の個室。その中央に据えつけられたベッドの上に仙一郎はいた。病院に担ぎ込まれ術後、意識が回復したのが五日前。
 病院のスタッフはアルマの能力で精神支配され彼の刀傷の件が警察沙汰になることもなく、大学にも不慮の事故ということで穏便に処理された。少しだけ学科の単位が心配ではあったが彼も安心して治療に専念することになった。
 ベッドの上で半身を起こした彼の左側、ベッドサイドに据え付けられた椅子にはアルマとリザ、そしてフレイラの三人が座っていた。彼の体力がある程度回復したのでサードとの対決に向け作戦会議のためアルマが二人を呼んだのだった。
「本当に無事で良かったデス!ずっとアルマが看病を独り占めシテ逢わせてくれなかったデスカラネ!」
 リザがベッドに手を付いて身を乗り出し顔を仙一郎の目と鼻の先まで近づけて微妙に怒りのこもった口調で話しかける。その頭の上には大きな緑色のカマキリが乗っかっており彼女に同調するように鎌を振り上げた。
 その様子を仙一郎はまじまじと見つめた。このカマキリがサードとの戦いで大半の霊力を失って原初の姿に戻ったエーミュだというのだから、まったく信じがたい話しだった。
 ちなみにカマキリとなったエーミュはリザの家で保護されていた。
「リザが病院まで運んでくれたんだろ?ありがとう!感謝してる!あと…エーミュ?も指輪を取り返してくれてホント何てお礼言ったら良いか…」
 仙一郎がそう言うとリザは照れ笑いし、頭の上のカマキリはその場でクルクルと回転して歓喜の舞を披露した。
「それとフレイラも無事戻ってこれて良かったよ!」
 と、仙一郎がずっとうつむいたまま椅子に座って黙り込んでいたフレイラに話しかけると彼女はやにわに立ち上がると地べたに手を付いて土下座した。
「誠に申し訳ございませんでした仙一郎様!」
「ちょっ…フレイラ!頭を上げて…こうして無事だったんだし、フレイラは操られて刺したんだからしょうがないよ!」
 頭を床に擦り付ける彼女に仙一郎は慌ててやめさせようと声をかけるが一向に頭を上げない。するとずっと腕を組んで黙って座っていたアルマが口をはさむ。
「今回の件に関しては予も迂闊だったと思っておる!すまなかったな画学生。」
 アルマからの思いもかけぬ謝罪の言葉に仙一郎は目をパチクリさせる。
「アルマが…すまないって…」
「なななんじゃ!予だって詫び言くらい言えるわい!見損なうでないぞ!」
 アルマが慌てて言い返すと今度はリザが文句を言い始めた。
「そうデスヨ!フラガラッハなんていわくつきて危険なブツを仙一郎に持たせるなんて最初から全面的にアルマが悪いデス!結果的にあんなクソガキ殺人マニアを引き寄せる結果になっテ!そもそも何であの時、駐車場でブチ殺して千年位生き返れないようにしてやらなかったんデスカ?わざわざ決闘なんてメンドクサイことヲ決めて…」
 まくし立てるリザを手で制しアルマはゆっくりと話し始めた。
「分かっておる!確かにそうしてやりたいところだったんじゃがこの件はどうしてもフレイラが自ら決着を着けんと彼女が先へと進めないんでな…画学生!すまんがもう少しだけ付き合ってもらうぞ!」
「アルマ様…」
 それを聞くとフレイラは申し訳なさそうにアルマを見上げた。
「お主もいつまでも這いつくばってないで座らんか!」
 アルマがそう言うとフレイラは神妙な面持ちで席についた。それを見届けるとアルマは言った。
「すでにだいたいの事は知らせた通りにフレイラにはサードと一対一で戦ってもらう…」
「このナマクラの勝算はあるんデスカ?」
 リザが茶々を入れる。普段のフレイラならリザに食って掛かるところだが彼女は身じろぎひとつせず黙っていた。
「フラガラッハなど魔剣の力量は、おおむね持ち主の霊力や妖力といったものの強さで決まる訳じゃが、今のフレイラは指輪を介して伝わる予の妖力が五割、指輪の持ち主である画学生の霊力が一割程度の力しか使えんから、今のままでは全くサードに歯が立たんじゃろうな…」
「それじゃあ全然ダメじゃないデスカ!あ!まさか、それで油断させておいて後からバッサリと?」
「…なわけあるまい。」
 アルマが呆れ顔を見せると仙一郎が口を開いた。
「おおむねって事は他の要素もあるってこと?」
「その通りじゃ。知ってのとおりフレイラの姿は持ち主のイメージが反映されておる。彼女の胸が豊満なのも画学生の無意識のイメージの賜物な訳じゃが…」
 腕組みしたまま椅子に座るアルマは仙一郎をちょっとだけねめつけると続けた。
「そのイメージを無意識にではなく、きちんとイメージしてやればフレイラの姿を変えられる訳でな、ためしにちょっとやってみろ!画学生!」
「急にやれって言われても…」
「なーに!簡単なことじゃよ。ただ頭の中で思い描いて指輪に願えば良い。とにかくやってみろ!」
 仙一郎は、かしこまって座っているフレイラをチラと見ると仕方なく右手を胸に当て目を閉じ指輪に念を送る。すると突然フレイラの身体がかすかにひかり始める。まるでフレイラ自身が光っているようなその光は徐々に明るさを増し突然、カメラのフラッシュをたいたようにパシッとまばゆい閃光を発した。
 光が収まりフレイラが姿を現すと彼女はナースの恰好をしていた。それも胸元は大胆に空いて谷間が露出し、丈も短く太ももが露わになっているセクシーなナース姿にである。
「画学生…」
 アルマが冷たい視線を向ける。
「いや普通に病院だから普通の看護婦の恰好を普通に思い浮かべたんだけど!普通に!」
「お主が無意識にエロい目でフレイラを見ておるからこんな恰好になるんじゃ!まったく!このむっつりスケベが!」
「仙一郎はコンナ恰好が好みなんですネ…モー!言ってくれればワタシはいつでも着てあげるノニィ…」
 二人に言葉を浴びせかけられるなか焦る仙一郎は黙ってままのフレイラに慌てて声をかける。
「ごめん!フレイラ!そんな恰好させて…」
「いえ…何ともありません。お気になさらずに…」
 セクシーナース姿で椅子に座るフレイラは少し顔を赤らめ手で服の裾を押さえながらも静かにそう応えるので仙一郎は拍子抜けしてしまう。いつもの彼女なら自分を罵倒するセリフのひとつやふたつは軽く飛んでいただろうからだ。
「あの…何か?」
 フレイラは彼が不思議そうな顔をして見つめているのに気づく。
「あ!いや…何でもない…」
 彼があたふたとしているとアルマは大きくひとつため息をつき話を戻した。
「要するにだ、彼女の本来の姿、強い剣士のイメージをはっきりと思い浮かべられればサードと対等に渡り合えるだけの力が得られるかも知れないということじゃ!」
「サードに勝てるかは次第ってこと?」
「如何にも!
 すると二人の会話にフレイラが突然割って入る。
「あ…アルマ様…」
 アルマは言葉を制し彼女に言った。
「皆まで言うな!フレイラ!お主には画学生を主として二人で戦ってもらうぞ!」
 フレイラは不承不承と言った風で口をギュッと結びうつむいてしまった。
「画学生もそれでよいな!」
「うん!」
 仙一郎は自分でも驚くほど簡単にアルマの話をすんなりと受け入れ、即答していた。
「まあ、とにかく今はまず怪我を治す事が先決じゃがな…」
「真面目な話は終わりデスカ?ナラナラ!」
 アルマの言葉に待ってましたとばかりにリザは持ってきていたトートバックに手を突っ込みリンゴと取り皿を引っ張り出す。そして突然リンゴを真上に高く投げ上げる。するとリザの頭の上にいたエーミューカマキリの鎌が目にも止まらぬ速さで虚空を切り裂いた。間髪入れず、取り皿の上に落ちて来たリンゴは見事に六等分の食べやすい大きさにカットされていた。すかさず爪楊枝で刺して仙一郎の口元に差し出すリザ。
「ほら、仙一郎。リンゴ!リンゴ!食べてクダサイネ!栄養つけテ早く良くならなくチャ!」
 グイグイ来るリザに、さすがの彼も苦笑いを浮かべる。
「はは…」
「今日ハ、はい!あ~んして!しに来たんですカラ!早くゥ!」
 アルマは呆れてつぶやいた。
「願望がダダ漏れじゃ!まったく…」
 結局、仙一郎はこの日、二玉もリンゴを食べることとなった。
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