のじゃロリ吸血鬼さんはチューチューしたい3

かま猫

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コールド・ブラッド その2

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 次の瞬間、剣は鈍い音を立ててコンクリート路面を叩いただけで仙一郎の姿はなかった。
「信頼して警固を任せたらこのざまかよ!何してんだよ!このナマクラ!」
 そして突然、響いた聞き慣れた怒鳴り声。
フレイラの目の前で仙一郎を抱え仁王立ちしていたのはリザだった。
 仙一郎の無事に胸を撫で下ろしたフレイラだったが剣を握る手は彼女の意思とは関係なく勝手にリザを薙ぐように動いていた。
 鋭い風切り音をたて空を切る剣。
「そんな鈍い太刀筋で私が斬れるかよ!」
 フレイラの目の前から忽然と消えたリザは遠く後方に飛びのいていた。
「リ…ザ…」
 抱きかかえられていた仙一郎は彼女の姿に気づいてそうつぶやくと直に気を失ってしまった。リザは無言で服が血で真っ赤に染まった仙一郎をそっと床の上に下ろすと次の瞬間、車の上でニヤニヤ笑う少年めがけて電光石火の速さで襲いかかった。右手には顕現させたエクセキューショナーズソードーーー切っ先の無い片手剣が握られており、凄まじい形相で斬りかかる。
 けれども、サードの頭めがけて振り降ろされたリザの剣は「キン!」と高い金属音をたて、割って入ったフレイラの剣に受け止められてしまう。
「うっとうしい!」
 後ろに飛びのいたリザが悪態をつく。フレイラは無表情でサードを守るようにリザの前に立ちふさがる。リザは瞬時に回り込んで横から一撃を加えようとするが、それもフレイラの剣で弾かれリザは舌打ちする。
「ちっ!ナマクラの奴、完全に隷属させられちまったか!」
 リザは再びサードに斬りかかるが彼女の攻撃はことごとくフレイラに迫撃されて届かない。その様子を眺めていたサードはいかにも楽しそうに言う。
「噂に名高いデイウォーカーの実力はそんなものじゃないだろ?殺す気でかからないとダメなんじゃないかなぁ。」
「黙れ!」
 苛立ちを隠せない様子のリザはなんとかサードに一撃を加えようと攻撃を続ける。ひと気の無い駐車場に二人の剣がぶつかり合う金属音だけが響き続けていた。
 路面に転がるエーミュはほとんど身体の感覚がなかった。ただ真っ赤に染まった腹に開いた穴から伝わる激痛だけがはっきり感じられた。痛みでぼんやりする頭と霞む視界で何とか状況を理解しようと試みるがなかなか上手くいかない。意識を集中して何とか周りに目をこらす。右手に指輪をはめ車の上に座るサードの姿。フレイラとリザが剣を交え戦っている様子。そして、血を流し倒れている仙一郎。記憶があやふやで思い出せなかったが、目の前の出来事がすべて自分のせいだということだけは、はっきり分かった。エーミュは胸が締め付けられる感じがした。何とかしなければと思った。
 ちょうどその時、剣と剣がぶつかる金属音がひときわ大きく響きリザとフレイラがつばぜり合いを繰り広げ動きが止まる。すると突然、遠くから駆けて来た人影が叫び声を上げリザの脇腹に勢いよく飛び蹴りを喰らわせた。
「バンパイアキーック!」
「うぼわぁ!」
 悲鳴とともにリザはすっ飛び、ゴロゴロと数メートル回転して車にぶつかって倒れ込む。そして彼女がいた場所に変わって立っていたのはアルマだった。フレイラはといえば危険を感じたのか慌てて飛びのいて距離をとっていた。
「何する!突然!」
 と、リザが座り込んだまま蹴られた腹を押さえて怒鳴るとアルマは一喝する。
「このたわけ!怒りに任せて暴れおって!貴様が何を置いてもまずしなければならないのは怪我した画学生を連れて逃げることじゃろうが!」 
 その言葉で我に返ったリザの顔は見る見る青ざめ、慌てて立ち上がると無言で仙一郎の元へ駆け寄った。そして意識無くぐったりとしている仙一郎を抱えると足早に駆けて行った。
 アルマは走り去るリザを見えなくなるまで見届けるとサードに視線を向けた。
「ちょっと遊びすぎちゃったかぁ…君が来る前に退散するつもりだったんだけどなぁ…」
 サードはまったく慌てる様子もなく淡々とした口調でアルマに話しかける。
「妙な気配を感じて来て見れば…リザとフレイラ、二人いれば問題ないと思ってたんだがな…失敗だったよ…」
 アルマは周りの壊れた車、破壊された柱や天井の鉄骨を一通り見回すと剣を構えて立つフレイラの奥の車のボンネットの上に座るサードを見て言った。
「四百年ぶり位かな?アルマース!まさか三百年前に滅せられたとき手放したのフラガラッハが巡り巡って君が所有することになっていたとは思っても見なかったよ。」
「さて、どうしたものか…いざこざは沢山なんじゃが、予の食料を傷つけ指輪を奪った落とし前はきっちりつけんとな…」
 そう落ち着いた様子で言うアルマだったがその口調とは裏腹に駐車場の空気が震えるような凄まじい殺気を放ったので、さすがのサードも身構え彼女に意識をアルマに集中せざるを得なかった。
 その瞬間、自分への警戒が疎かになって出来た隙をエーミュは逃さなかった。傷の痛みに堪え、最後の力を振り搾る。目にも止まらぬ速さでサードに突進すると、つむじ風を操りかまいたちを起こして指輪のある右手をスッパリと切り落とす。そして地面にぼとりと落ちた手を素早く拾い上げると一目散に逃げた。
 それは一秒にも満たない瞬間の出来事だった。不意を突かれたサードは手を失い切り口から血かほとばしる右腕に気づくと、鬼のような形相で走り去るエーミュに向かって叫ぶ。
「この小虫がっ!」
 すると地面から生えた無数の黒い槍が背後からエーミュの身体を貫く。まるでハリネズミのように串刺しにされ身体は真っ赤に染まり滴る血がまたたく間に地面に血だまりを作る。それでもエーミュは叫び声も上げず口を真一文字にグッと閉じ正面に居るアルマの顔を見据える。そして、大きく腕を振り上げサードの手を放り投げた。地面に落ちたサードの手は途端に砂のように形を失い消え去り、指輪だけが残った。アルマは足元に落ちたその指輪を拾い上げると顔を上げエーミュに視線を向けた。
「後は予に任せるがよい…」
 それを聞くとエーミュは笑みを浮かべ、満足したように目をとじ事切れた。そして彼女の身体は途端に実体を失いモヤのように消え去ってしまった。
 一方、指輪の効果が消えサードの支配から解放されたのかフレイラは意識を失って路面に倒れていた。そして、車の上に仁王立ちするサードは憎々し気にアルマを睨み思案していた。右腕はすでに再生が始まっており十分に戦える状態ではあったが、やはり吸血鬼同士で直接戦うという泥仕合は避けたかった。フラガラッハの奪還は完全に失敗に終わり、ここが潮時だと判断したサードは場を離脱すべく隙をうかがっていた。
 すると、突然アルマがサードに語りかける。
「そんなにフレイラが…フラガラッハが欲しいなら、ひとつ提案があるんじゃがな…」
 てっきり彼女が、かかってくると思っていたサードは不審そうな顔をして聞き返した。
「提案?」
「そう!この先も、お主に執拗に狙われ続けるのはウンザリなんでな。手っ取り早く決着をつけようじゃないか。お主とフレイラ二人で直接対決して、お主が勝ったら剣はお主の物。フレイラが勝ったらお主は手を引き、二度と彼女にかかわらない。それでどうじゃ?」
 思いがけない提案にサードは思案する。今のフレイラの力では、どう足掻いても自分に勝てる見込みはなかったからだ。そんな一方的にこちらが有利な提案をする真意を図りかねていた。何か裏があるのか、あるいは勝つための秘策でも考えているのか。それでも乗ってみる価値はあると意を決した。
「いいよ。その話、乗って上げるよ!」
「では一か月後の午前0時、水川山の消防ヘリポートで。」
「楽しみにしてるよ…」
 そう言うとサードの身体は霧散し一匹の大きなコウモリへと姿を変え飛び去った。その姿が見えなくなるまで見つめていたアルマはおもむろに近くの車に近寄ると無言でドアを力いっぱい蹴り上げる。鈍い金属音が響き車体が揺れセキュリティーアラームが作動する。人気のない駐車場に車のクラクションの音だけが大きく響き渡りアルマはしかめっ面でしばらくその場で立ち続けた。
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