のじゃロリ吸血鬼さんはチューチューしたい3

かま猫

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夜の終わり その3

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 一方、フレイラを攻め立てていたサードはため息をついた。
「がっかりだよ…全然相手にならないじゃないか!」
 そして冷めた目で半死半生のフレイラの姿を一通り見ると再びため息をついた。
「もういいや…いい加減に終わらせようか…」
 サードが手を振り降ろすと同時に、フレイラの腹には忽然と現れたように槍が突き刺さっていた。反応するどころか痛みを感じる間もなく槍は彼女の身体を貫通し赤く染まった突端を露わにする。
「!」
 フレイラの顔が苦痛で歪む。それでも彼女はサードをしっかりと見据え仁王立ちしたまま剣を構え戦意喪失はしていなかった。
 それを見ていかにも楽しそうにニヤニヤしていたサードは
「なかなか頑張るね…」
 と再び手を振り降ろす。二本目の槍が腹に突き刺さりフレイラが小さく呻く。今まで耐え忍んでいた彼女も倒れ込んで片膝をついてしまう。みるみる地面に血だまりが広がって行く。
 その様子を見てリザがつぶやいた。
「あーあ…これはもう決まったかな?アルマ!もう私がぶちのめしに行ってもいいか?」
「もう少し待っておれ!まだ終わっとらんよ!」
「そうか?もう完全に勝ち目はなさそうに見えるけど…」
「まあ見ておれ…」
 アルマの言葉にリザは呆れたようにため息をついた。
 ちょうどその時、あと一撃でもくらえば終わってしまいそうな瀕死のフレイラにサードは最終宣告を下す。
「じゃあ…これで終わりにしようか…」
 肩で息をし顔面蒼白ながらフレイラはサードをキッと睨む。サードはニタリと笑い、最後の槍を放つべく高々と手を振り上げるが、突然その手をピタリと止めた。フレイラの身体がぼんやりと淡く光っていたからだ。
 光は見る見る明るさを増しヘリポートを照らすほどまぶしくなっていく。そのただならぬ様子に何かを察したのかサードは慌てて槍を放つが、槍はフレイラに届く前にまるで光に溶け消えるように手前で消滅してしまう。
「くっ!」
 サードの顔が歪む。再び手を振り降ろし槍を走らせるが同じく手前で消え去る。
「何だ?それは!」
 フレイラの予想外の力に攻撃を無力化され明らかに焦りを露わにし、続けざまに槍を走らせるがことごとく防がれていく。
 その状況に驚いていたのはフレイラも一緒だった。突然自分を包んだ光は槍を防ぐばかりか受けた傷も癒し、それどころか身体の内側から力が湧き上がるように感じられた。自分を守るように包み込むほのかに暖かい光。正体は分からなかったが、それが仙一郎の力であることだけは分かった。
 フレイラはゆっくりと立ち上がると、後ろで祈るように目を閉じている仙一郎に目をやるとサードに向き直り両手で剣を握りしめ意識を自らの内側に集中した。

 ヘリポート一面は真昼のように明るく照らされ、その中心にいるフレイラは、姿がまったく見えないほど真っ白に光り輝いていた。さらに光りは見る見る辺り一面を白く染めてゆき突然、弾けるように消え去った。
「何だ?その姿は…」
 光が収まり、現れたフレイラの姿にサードは驚嘆した。
 流麗になびく金髪にすらりと伸びた手足をワンピースの白いロングドレスに包み、鋭い剣を携え立つ彼女は、その全身が発光するように光りを放っていた。
 その姿は騎士というより女神のように神々しく自分が戦っている相手であることを一瞬忘れ見惚れてしまうほど美しいものだった。またそれだけでなく、その佇まいからは果てしなく強大な力を秘めているようにも感じさせた。
 ハッと我に返るとサードは慌てて両手を振り降ろし攻撃を再開する。無数の黒い槍が四方八方から一斉に強襲する。
 剣の動きは見えなかった。ただ、フレイラの周辺に光の粒子のようなものが舞い飛び、一瞬で槍がすべて跡形も無く消し飛んだことで振ったことがうかがい知れた。
 アルマが興奮気味に独り言を叫ぶ。
「あれが本来のフラガラッハの姿!遙か神話の時代の無敵の聖剣の真の姿!画学生めが遂にやってくれたようじゃ!」
「仙一郎が?指輪は壊れて繋がりは切れたんじゃ?」
「指輪は二人を繋げ画学生からフレイラに力を与える代物じゃが送れる力の大きさには限度がある。しかし、今の二人の信頼関係は指輪なしでも繋がれるほど十分強くなっておる!
その力に耐えきれず指輪は壊れてしまったが、おかげで十二分に力を発揮出来るようになったわけじゃ!」
「それにしたって、このナマクラから感じる力の大きさは…」
 リザはフレイラを見て目を丸くする。
 きりりとした表情でサードを見据えるフレイラはゆっくりとサードに向かって歩みを進める。その威圧感に気圧されサードは後ずさりした。
「くっ…」
 眉間にシワをよせフレイラを睨むとなりふり構わず槍を何十と打ち込むが、彼女に触れる前にことごとく消し飛んだ。フレイラは何事もなかったようになおも近づきながら言った。
「サード!これまで犯してきた罪を償え!」
 フレイラがおもむろに剣を突きつける。二人の距離はまだ十メートル近くあったがサードは背筋に冷たいものが走るのを感じた。咄嗟に危険を感じ後退しようとするが身体が動かない。動かないどころか身体の感覚がまったく無かった。
 気づけば自分の周りを光の粒子が蛍のように舞い飛んで辺りを明るく照らしていた。しかし明るいのはそのせいだけではなかった。サードは自分の身体も光りを放っていることに気づいて目を見開き声を上げた。
「なっ…」
 両手を掲げ見ると光りはだんだんと明るさを増し輪郭がぼやけ形が崩れていく。肉体がだんだんと光の粒子になって霧散し消え去っていた。そして、彼はすでに自分が感知出来ないほどの速さで斬られていた事を理解した。
 サードは思わず嘆声をもらす。
「素晴らしい…」
 察知できないほどの神速の太刀筋。そして不死の吸血鬼を塵も残さず屠るその威力を身をもって体験し、羨望にも似た感情が消えゆくサードを満たしていた。そして光りは夜の闇に溶け込み辺りに静寂が戻った。そして、山奥のヘリポートに冷たい夜風だけが、さあっと吹いていた。
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