借金返済ファンタジー チートスキル 全部盛りでお願いします!

桃川鈴加

文字の大きさ
35 / 42

手作りカレーと温かい記憶

しおりを挟む
「よし、今日はみんなの好きなカレーを作ってやる!リリィも手伝ってくれるか?」

レオの提案に、リリィは嬉しそうに手を叩いた。

「はーい!お手伝いするのじゃ!」

キッチンに移動すると、レオとリリィが中心になってカレー作りが始まった。レオが野菜を切り、リリィが小さな手で一生懸命にルーをかき混ぜる。

「リリィ、火加減気をつけろよ~。焦がしちゃダメだぞ」

「大丈夫なのじゃ!私、お料理覚えたのじゃ!」

リリィは真剣な表情で木べらを動かしている。その姿があまりにも可愛らしくて、みんな思わず微笑んでしまう。

他のメンバーも自然と手伝いに入った。カイロスは皿を並べ、メリサは食材費を計算し、エリカは優雅にテーブルセッティング、リューナは香辛料の調合を手伝う。

「家族みんなでお料理なんて、貴族時代には経験できませんでしたわ」

エリカが感慨深げに呟く。

「計算では測れない価値があるわね、こういう時間」

メリサも手帳を閉じて、料理に集中している。

「俺様も、こんな温かい時間は初めてだ。竜王族は一人で何でもしなければならなかったからな」

カイロスも嬉しそうに皿を並べている。

「族長時代は一人で全部やってたからな...みんなでやると楽しいものだ」

リューナも笑顔で香辛料を調合している。

そんな中、リリィが突然手を止めた。

「あれ?なんだか...」

「どうした?」

レオが心配すると、リリィは首をかしげた。

「なんだかこの感じ、どこかで...でも思い出せないのじゃ」

一時間ほどして、ついにカレーが完成した。【料理スキル】のおかげで、プロ顔負けの美味しそうなカレーができあがった。

「よし!完成だ!みんな、お疲れさん!」

「やったのじゃ~!美味しそうなカレーができたのじゃ!」

リリィは嬉しそうに飛び跳ねている。

テーブルに着いて、みんなで「いただきます!」の声を合わせた。そして、リリィが最初の一口を食べた瞬間...

「...!」

突然、リリィの目に涙がぽろぽろと流れ始めた。

「リリィ!?どうした、辛すぎたか?」

レオが慌てて立ち上がると、リリィは首を振った。

「違うのじゃ...辛くないのじゃ...でも...でも...」

涙は止まらない。しかし、それは悲しみの涙ではなかった。

「温かい...とっても温かいのじゃ...」

リリィは泣きながら、みんなの顔を見回した。

「お腹が温かいんじゃなくて...心が温かいのじゃ...」

「リリィ...」

カイロスが優しく声をかける。

「記憶は...まだ戻らないけど...でも、これが一番大切なことなのじゃ!」

リリィは涙を拭いながら、笑顔で続けた。

「みんなと一緒にお料理して、一緒に食べて...心がぽかぽかするのじゃ。記憶がなくても、みんながいれば大丈夫なのじゃ!」

その言葉に、一同も胸が熱くなった。

「そうだ。記憶なんて戻らなくても、俺たちはずっと家族だからな」

レオが力強く言うと、他のメンバーも頷いた。

「過去より未来よ。私たちと一緒に新しい思い出を作りましょう」

メリサが優しく微笑む。

「リリィちゃんは、私たちの大切な妹ですわ。それだけで十分ですの」

エリカも涙ぐみながら言った。

「記憶を失っても、お前の優しい心は変わらない。それが一番大切だ」

リューナも温かい眼差しでリリィを見つめる。

「家族に過去は関係ない。今、ここにいることが全てだ」

カイロスも竜王としての威厳を込めて断言した。

リリィは涙を拭いて、みんなを見回した。

「みんな...ありがとうなのじゃ。私、もう不安じゃないのじゃ」

「本当か?」

レオが確認すると、リリィは力強く頷いた。

「うん!記憶がなくても、みんなと一緒にいれば、毎日新しい楽しい思い出ができるのじゃ。過去を探すより、みんなと未来を作る方がずっと楽しいのじゃ!」

その明るい笑顔に、全員が安堵の表情を浮かべた。

「それじゃあ、改めて乾杯だ!『リリィの記憶回復大作戦』は失敗したけど、『リリィの笑顔回復大作戦』は大成功だ!」

レオがコップを掲げると、みんなも続いた。

「乾杯~!」



温かい夜

夜になり、リリィは満足そうにベッドに向かった。

「今日はとっても楽しかったのじゃ。みんな、ありがとうなのじゃ」

部屋に入る前に振り返り、にっこりと笑った。

「記憶は戻らなかったけど、今日新しい思い出がいっぱいできたのじゃ。記憶より、今の家族が大切なのじゃ!」

「おやすみ、リリィ」

「良い夢見ろよ」

「また明日、一緒に遊びましょうね」

みんなに見送られて、リリィは自分の部屋に入っていった。

リリィが部屋に入った後、廊下でみんなが小声で話している。

「記憶回復作戦は失敗だったけど、なんか成功した気分だな」

レオがしみじみと言う。

「ああ。リリィの笑顔が見れただけで十分だ。それに、俺たちも改めて家族の絆を確認できた」

カイロスも満足そうだ。

「あの子の幸せは計算不可能な価値があるわね。今日の出費は...まあ、プライスレスということで」

メリサも珍しく計算を放棄している。

「記憶なんかより、今の家族が一番ですわ。私も貴族時代には味わえなかった温かさを感じましたの」

エリカも心から言った。

「過去を追うより、未来を作る方が大切だ。リリィはそれを教えてくれた」

リューナも深く頷いた。

「よし、明日からまた借金返済頑張るぞ!リリィのためにも、みんなのためにも!」

レオが拳を握ると、みんなも応えた。

「おー!」

一方、自分の部屋に入ったリリィは、窓から月を見上げていた。

「お月様...私の記憶は戻らなかったけど、今日とっても幸せだったのじゃ」

リリィは小さくつぶやく。

「みんなが私のことを大切に思ってくれて...私も、みんなのことが大好きなのじゃ」

そして、ベッドに入りながら続けた。

「記憶がなくても、みんなと一緒なら毎日が新しい冒険なのじゃ。明日はどんな楽しいことが待ってるかな?」

リリィは幸せそうに目を閉じた。今日という日が、彼女にとって最高の思い出になったことは間違いない。

月明かりに照らされたレオネス荘。今日も借金まみれの異世界転移者たちの、温かい日常が続いていく。

借金総額は相変わらず1000億セルンを超えているが、仲間との絆という、お金では買えない宝物を手に入れた彼らにとって、それはもはや些細な問題に過ぎなかった。

「明日もまた、みんなで頑張ろう」

レオがつぶやくと、レオネス荘は静かな夜の中に包まれていった。

記憶回復大作戦は失敗に終わったが、家族の絆を深める大成功の一日となった。リリィの記憶が戻る日が来るかもしれないし、来ないかもしれない。

しかし、それはもう重要なことではなかった。

大切なのは、今この瞬間を、愛する家族と一緒に過ごすこと。

借金地獄の異世界で見つけた、本当の幸せがそこにはあった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

処理中です...