運命力ゼロの悪役令嬢

黒米

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第5章 王立ルミナス学院 4年目

第59話 新しい光

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窓の外には、白い雪が静かに降り積もり、石畳の回廊は薄く霜をまとっている。
講堂の鐘の音が遠くで響き、冷たい空気が寮の部屋にもわずかに入り込んでいた。
暖炉の炎が、クラリスとセレナの影を壁に揺らしている。

クラリスは、窓辺に立ち、雪に覆われた中庭を見つめていた。
銀髪が冬の光を受けて淡く輝き、その瞳には静かな思索の色が宿っている。

(セレナ……もうすっかり元気になったわね)
一時期、何を話しても笑顔を見せなかった妹の姿が、脳裏に浮かぶ。

ユリウスが療養のため学院を去ったとき、セレナに何も言わずに去っていった。
残された背中には、言葉にできない失望が滲んでいた。

けれど――

(あの手紙が届いた日、セレナは本当に嬉しそうだった)
クラリスは、あの日の光景を思い出す。

封筒を握りしめ、頬を赤らめながら笑った妹の姿。
その笑顔は、久しぶりに見た“あの子らしい笑顔”だった。

「姉様」

背後から、柔らかな声が響く。
振り返ると、セレナが立っていた。

銀髪を揺らし、制服の上に白いマントを羽織っている。
頬はほんのり赤く、暖炉の光を受けて輝いていた。

「そろそろ……再測定の日ね」
クラリスは、微笑みながら言った。

セレナは、少しだけ視線を落とし、指先でマントの裾を握った。
「……うん。なんだか、緊張する」

クラリスは、そっと妹の肩に手を置いた。
「大丈夫よ。あなたなら、何も心配いらないわ」

セレナは、クラリスの瞳を見つめ、わずかに笑みを浮かべた。
「……姉様がそう言うなら、信じる」

クラリスは、その笑顔に胸の奥が温かくなるのを感じた。
心の奥に小さな不安を残したまま、クラリスは静かに妹の手を握った。

「明日、堂々と行ってきなさい。あなたは、あなたのままでいい」
セレナは、深く頷いた。
その瞳には、まだわずかな揺らぎがあったが――

暖炉の炎が、二人の影を優しく包み込んでいた。

*

冬の朝。学院の講堂へ続く回廊は、冷たい空気に包まれていた。
窓の外には雪が舞い、白い光が石畳を淡く照らしている。
控室には、測定を待つ生徒たちの緊張が漂っていた。

セレナは、控室の隅で静かに座っていた。
制服の袖を指先でぎゅっと握りしめ、視線は床に落ちている。

(……どうしよう。心臓が、こんなに速くなるなんて)

胸の奥で脈打つ鼓動が、耳にまで響いてくる気がした。

クラリスは、そんな妹の姿を見つめながら、ゆっくりと歩み寄った。
銀髪が冬の光を受けて淡く輝き、その瞳には揺るぎない優しさが宿っている。

「セレナ」
クラリスは、そっと声をかけた。

セレナは、顔を上げる。
その瞳には、不安の影が濃く宿っていた。

「……姉様、聞いた?測定器が新しくなったって」
声はかすかに震えていた。

クラリスは、頷いた。
「ええ。より正確な値が出るそうよ。でも、それで何かが変わるわけじゃない。あなたは、あなたのままでいい」

セレナは、唇を噛みしめた。
「……でも、もし数字が下がっていたら……」

クラリスは、妹の手をそっと握った。
その手は冷たく、わずかに震えていた。

「数字がどうであれ、あなたの価値は変わらない。私は、ずっとそう思ってる」
クラリスの声は、静かで、しかし確かな力を帯びていた。

セレナは、クラリスの瞳を見つめ、わずかに笑みを浮かべた。
「……姉様がそう言うなら、信じる」

クラリスは、微笑みながら頷いた。
「堂々と行ってきなさい。あなたは、強い子よ」

*

講堂は、冬の冷たい光に包まれていた。
高い天井に吊るされたシャンデリアが淡く輝き、白い石壁には学院の紋章が刻まれている。

中央には、新型の測定器が鎮座し、淡い光を放ちながら静かに起動していた。

その周囲には、今年再測定を受ける三年生たちが整列している。
空気は張り詰め、緊張が講堂全体を覆っていた。

セレナは、列の中で静かに立っていた。

制服の袖を握りしめ、視線は床に落ちている。
胸の奥で脈打つ鼓動が、耳にまで響いてくる気がした。

(……どうしよう。足が、動かない)
指先は冷たく、わずかに震えていた。

クラリスは、列の外からその姿を見つめていた。
銀髪が冬の光を受けて淡く輝き、その瞳には揺るぎない優しさが宿っている。
(セレナ……大丈夫。あなたなら、きっと)

測定官の声が、講堂に響く。
「次――セレナ・ヴェルディア」

その瞬間、講堂の空気がさらに重くなった。

セレナは、一歩前に出る。
その足取りは、重く、けれど確かだった。

新しい測定器が淡い光を放ち、低い音を響かせる。
より正確な値を示すと噂されるその機械が、静かに起動した。

クラリスは、息を止めた。
(どうか……何も起きませんように)

セレナが測定器の前に立ち、指先をパネルに触れる。
光が彼女を包み込み、講堂に緊張と沈黙が落ちた。

――その瞬間。

スクリーンに、一瞬だけノイズが走った。
白い光が乱れ、数字が揺らぐ。

「……?」
測定官が眉をひそめる。

講堂の空気が、さらに張り詰める。
クラリスの胸に、冷たいものが走った。

そして――

ノイズが消え、数字がはっきりと表示された。

「運命力:95」

講堂に、ざわめきが広がる。

セレナは、息を呑み、目を見開いた。
クラリスは、胸の奥で安堵と、言葉にできない違和感を感じていた。

(……今のは、いったい?)

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