3 / 65
噂の聖女、爆誕編
第3話 旅立ちとすんごい仲間たち
しおりを挟む
ユウキ様の温かい手に引かれ、私は勇者パーティに加わることになった。
しかし、旅立ちを前にして、私は早速、大きな問題に直面していた。
「あの……服が……」
そう。スキルが発現してからというもの、成長を続けるこの胸のせいで、私が持っている服はどれもこれも着ることができなくなってしまっていたのだ。みっともなくはち切れそうになる胸元を、私は必死に腕で隠した。
「ああ、そのことか! 心配するな!」
私の悩みを見透かしたように、ユウキ様はにっこりと笑った。
「新しい仲間を迎えるんだ。装備を整えるのは当然だろ? パーティの経費で最高のやつを揃えてやる!」
そう言って、ユウキ様は私を伴い、王都ソリスティアの一流仕立て屋に連れて行ってくれた。もちろん、シルヴィアさんとダインさんも一緒だ。
店の中で、改めて自己紹介をすることになった。
「シルヴィアです。エルフで、魔法使いをしています」
美しいエルフの女性――シルヴィアさんは、値踏みするような冷たい視線を私に向けたまま、それだけ言った。
「はっきり言っておきますが、私はあなたのスキルが役に立つとは到底思えません。足を引っ張らないでくださいね」
「は、はい……! ごめんなさい……!」
あまりの威圧感に私は蛇に睨まれたカエルのように固まってしまった。
「がはは! 堅いこと言うなよ、シルヴィア!」
壁のように大きなドワーフの男性――ダインさんは、巨大な戦斧を肩に担いだまま豪快に笑った。
「おう! 俺はダインだ! 戦士やってる! ま、なんだ、よろしくな、嬢ちゃん!」
「は、はい! よろしくお願いします!」
彼の気さくさに、私は少しだけ緊張がほぐれるのを感じた。
服選びは苦行そのものだった。
動きやすい冒険者服や、体を隠せるローブを試着するたびに、ユウキ様は「うん、いいじゃないか!」「その胸のラインを活かしたデザインも…」などとキラキラした目で感想を言う。その度にシルヴィアさんが「勇者、セクハラです」と冷たくツッコミを入れ、ダインさんは「まだ終わらんのかー」と大きなあくびをしている。
(恥ずかしい……穴があったら埋まりたい……)
結局、ユウキ様が「これがいい!」と選んでくれた、胸元がゆったりとした冒険者服と、深くかぶれるフード付きのローブ一式をいただくことになった。
全ての準備を終え、私はクライネルト家の玄関に立っていた。
見送りは父と母だけだった。
「……クライネルト家の者として、恥ずかしい真似だけはするなよ」
父は最後まで私の顔を見ず、苦々しくそう言い放って屋敷の奥へ消えていった。勘当同然の冷たい別れの言葉だった。
「ルルナ……お体を、大切にするのですよ」
母は涙を浮かべながら、小さな布の包みを私の手に握らせてくれた。中には、わずかばかりの銀貨と、手作りのお守りが入っていた。
(もう、私に帰る場所はないんだ)
胸に込み上げる寂しさを飲み込み、私は固く決意を固める。
これからは、勇者様たちと共に生きていくのだ。彼らの足手まといにだけは、絶対にならないようにしなければ。
屋敷を後にし、王都ソリスティアの壮大な門の前に私たちは立っていた。
ここから、魔王を倒すための途方もない旅が始まる。
ユウキ様が、私の不安を吹き飛ばすように、意気揚々と声を上げた。
「よし、パーティに新しい仲間も加わったことだし、まずは腕慣らしだ! ギルドで簡単な依頼でも受けようぜ!」
彼は私に向かって、ウインクしてみせる。
「ルルナ、君の本当の力を、俺は信じてるからな!」
(ああ、ユウキ様……私が気負わないように、わざわざ簡単な依頼からと、お気遣いくださっているんだわ……!)
私はまたしても、彼の優しさに胸が熱くなった。
「簡単な依頼で結構です」
隣で、シルヴィアさんが腕を組みながら冷ややかに言った。
「まずは彼女が、本当にお荷物かどうか、この目で見極めなければなりませんから」
「腹が減ったな! ギルドの前に酒場で一杯どうだ!?」
ダインさんが、自分のお腹をさすりながら叫ぶ。
賑やかで、ちぐはぐで、少しだけ不安で。
でも、不思議と心は軽かった。
こうして、私の――勇者パーティの一員としての最初の冒険が、幕を開けたのだった。
しかし、旅立ちを前にして、私は早速、大きな問題に直面していた。
「あの……服が……」
そう。スキルが発現してからというもの、成長を続けるこの胸のせいで、私が持っている服はどれもこれも着ることができなくなってしまっていたのだ。みっともなくはち切れそうになる胸元を、私は必死に腕で隠した。
「ああ、そのことか! 心配するな!」
私の悩みを見透かしたように、ユウキ様はにっこりと笑った。
「新しい仲間を迎えるんだ。装備を整えるのは当然だろ? パーティの経費で最高のやつを揃えてやる!」
そう言って、ユウキ様は私を伴い、王都ソリスティアの一流仕立て屋に連れて行ってくれた。もちろん、シルヴィアさんとダインさんも一緒だ。
店の中で、改めて自己紹介をすることになった。
「シルヴィアです。エルフで、魔法使いをしています」
美しいエルフの女性――シルヴィアさんは、値踏みするような冷たい視線を私に向けたまま、それだけ言った。
「はっきり言っておきますが、私はあなたのスキルが役に立つとは到底思えません。足を引っ張らないでくださいね」
「は、はい……! ごめんなさい……!」
あまりの威圧感に私は蛇に睨まれたカエルのように固まってしまった。
「がはは! 堅いこと言うなよ、シルヴィア!」
壁のように大きなドワーフの男性――ダインさんは、巨大な戦斧を肩に担いだまま豪快に笑った。
「おう! 俺はダインだ! 戦士やってる! ま、なんだ、よろしくな、嬢ちゃん!」
「は、はい! よろしくお願いします!」
彼の気さくさに、私は少しだけ緊張がほぐれるのを感じた。
服選びは苦行そのものだった。
動きやすい冒険者服や、体を隠せるローブを試着するたびに、ユウキ様は「うん、いいじゃないか!」「その胸のラインを活かしたデザインも…」などとキラキラした目で感想を言う。その度にシルヴィアさんが「勇者、セクハラです」と冷たくツッコミを入れ、ダインさんは「まだ終わらんのかー」と大きなあくびをしている。
(恥ずかしい……穴があったら埋まりたい……)
結局、ユウキ様が「これがいい!」と選んでくれた、胸元がゆったりとした冒険者服と、深くかぶれるフード付きのローブ一式をいただくことになった。
全ての準備を終え、私はクライネルト家の玄関に立っていた。
見送りは父と母だけだった。
「……クライネルト家の者として、恥ずかしい真似だけはするなよ」
父は最後まで私の顔を見ず、苦々しくそう言い放って屋敷の奥へ消えていった。勘当同然の冷たい別れの言葉だった。
「ルルナ……お体を、大切にするのですよ」
母は涙を浮かべながら、小さな布の包みを私の手に握らせてくれた。中には、わずかばかりの銀貨と、手作りのお守りが入っていた。
(もう、私に帰る場所はないんだ)
胸に込み上げる寂しさを飲み込み、私は固く決意を固める。
これからは、勇者様たちと共に生きていくのだ。彼らの足手まといにだけは、絶対にならないようにしなければ。
屋敷を後にし、王都ソリスティアの壮大な門の前に私たちは立っていた。
ここから、魔王を倒すための途方もない旅が始まる。
ユウキ様が、私の不安を吹き飛ばすように、意気揚々と声を上げた。
「よし、パーティに新しい仲間も加わったことだし、まずは腕慣らしだ! ギルドで簡単な依頼でも受けようぜ!」
彼は私に向かって、ウインクしてみせる。
「ルルナ、君の本当の力を、俺は信じてるからな!」
(ああ、ユウキ様……私が気負わないように、わざわざ簡単な依頼からと、お気遣いくださっているんだわ……!)
私はまたしても、彼の優しさに胸が熱くなった。
「簡単な依頼で結構です」
隣で、シルヴィアさんが腕を組みながら冷ややかに言った。
「まずは彼女が、本当にお荷物かどうか、この目で見極めなければなりませんから」
「腹が減ったな! ギルドの前に酒場で一杯どうだ!?」
ダインさんが、自分のお腹をさすりながら叫ぶ。
賑やかで、ちぐはぐで、少しだけ不安で。
でも、不思議と心は軽かった。
こうして、私の――勇者パーティの一員としての最初の冒険が、幕を開けたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】男装して会いに行ったら婚約破棄されていたので、近衛として地味に復讐したいと思います。
銀杏鹿
恋愛
次期皇后のアイリスは、婚約者である王に会うついでに驚かせようと、男に変装し近衛として近づく。
しかし、王が自分以外の者と結婚しようとしていると知り、怒りに震えた彼女は、男装を解かないまま、復讐しようと考える。
しかし、男装が完璧過ぎたのか、王の意中の相手やら、王弟殿下やら、その従者に目をつけられてしまい……
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』
放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。
「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」
身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。
冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。
「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」
得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。
これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる