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噂の聖女、爆誕編
第16話 書斎とすんごい魔法理論
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休暇が始まって数日。
私は、城の巨大な書斎に、ほとんど入り浸っていた。
自分のスキルについて何か手がかりがないかという淡い期待と、騒がしい仲間たちから離れて、一人静かに過ごしたいという気持ちが半々だった。
その日も、高い天井まで届く本棚の間を歩いていると、書斎の奥で山のような資料に埋もれている、見慣れた銀髪を見つけた。
「シルヴィアさん……?」
声をかけると、彼女は「ひっ」と小さな悲鳴を上げて、慌てて読んでいた本を隠した。その様子は、まるでイタズラが見つかった子供のようだ。
「ルルナ……! いえ、なんでもありません。あなたには関係のないことです」
「もしかして、私のスキルのことを……?」
私がそう尋ねると、シルヴィアさんは観念したように、深いため息をついた。
「……ええ。あなたのその非論理的なスキルについて、です。ですが、何の成果もありません。古今東西の文献を調べても、あなたの存在に類似する記述は一切ない。あなたは、この世界の法則から逸脱した、いわば『バグ』のような存在です」
「ごめんなさい……」
役立たずな自分を責められているようで、私は俯《うつむ》いた。
「……謝る必要はありません。これは私の知的好奇心の問題です」
シルヴィアさんの声が、少しだけ和らぐ。
「むしろ、解明できない謎があるという状況は、研究者としては…少し、そそられますから」
少しだけ口角を上げてみせる彼女の表情は、いつものクールな印象とは違い、どこか楽しそうに見えた。
私は、なんだか嬉しくなって、顔を上げた。
「シルヴィアさんは、すごいです。私は自分のスキルのことを考えるのも嫌なのに、シルヴィアさんは、ちゃんと向き合ってくれてるんですね」
「べ、別にあなたのためではありません!」
私の率直な言葉に、彼女は少し慌てたように視線を逸らす。そのツンとした態度が、なんだか可愛らしくて、私は思わず笑ってしまった。
照れ隠しか、シルヴィアさんは一冊の古びた魔導書を開いて、私に見せた。
「例えば、この古代魔法陣。理論上は完璧なはずなのに、未だかつて、誰も起動させた者がいないのです。世界の〝理〟に、何か我々の知らない要素が、欠けているとしか考えられない……」
「わぁ、綺麗ですね……」
ページに描かれた、幾何学模様の複雑で美しい魔法陣。
私がそれを覗き込もうと、机に身を乗り出した、その瞬間だった。
足元の本に気づかず、私はバランスを崩してしまった。
「きゃっ!」
受け身を取ろうにも、両手は別の本でふさがっている。
私は、そのまま前のめりに倒れ込み――
ぽすん。
私の胸が、魔法陣の描かれたページの上に、柔らかく、しかし、ぴったりと乗ってしまった。
直後だった。
カッ!
魔法陣が、まばゆい黄金の光を放ったのだ。
「なっ!?」
長年、誰一人として起動できなかったはずの古代魔法が、いとも容易く発動してしまった。
光は書斎中を満たし、棚から本がひとりでに浮かび上がり、私たちの周りをゆったりと旋回し始める。それは、まるで星々の誕生のような、幻想的な光景だった。
数秒後、光が収まり、本が静かに元の場所へ戻っていく。
魔法陣は、また何事もなかったかのように、ただのインクの染みに戻っていた。
私は、呆然としながら体を起こした。
「え? え? 私、また何かやっちゃいましたか!?」
シルヴィアさんは、凍りついたように動かなかった。
彼女は、起動した魔法陣のページと、きょとんとしている私の顔、そして私の胸を、何度も、何度も見比べた。
やがて、震える手で眼鏡をくいっと押し上げると、か細い声で、呟いた。
「……世界の〝理〟に欠けていた、最後のピース……。それは……あなたの、そのおっぱいだった、とでもいうのですか……?」
シルヴィアさんは、それ以上何も言わず、机に突っ伏してしまった。
そして、力なく呟いた一言が、静かな書斎に、やけに大きく響いた。
「……もはや、何でもありですね……」
私は、城の巨大な書斎に、ほとんど入り浸っていた。
自分のスキルについて何か手がかりがないかという淡い期待と、騒がしい仲間たちから離れて、一人静かに過ごしたいという気持ちが半々だった。
その日も、高い天井まで届く本棚の間を歩いていると、書斎の奥で山のような資料に埋もれている、見慣れた銀髪を見つけた。
「シルヴィアさん……?」
声をかけると、彼女は「ひっ」と小さな悲鳴を上げて、慌てて読んでいた本を隠した。その様子は、まるでイタズラが見つかった子供のようだ。
「ルルナ……! いえ、なんでもありません。あなたには関係のないことです」
「もしかして、私のスキルのことを……?」
私がそう尋ねると、シルヴィアさんは観念したように、深いため息をついた。
「……ええ。あなたのその非論理的なスキルについて、です。ですが、何の成果もありません。古今東西の文献を調べても、あなたの存在に類似する記述は一切ない。あなたは、この世界の法則から逸脱した、いわば『バグ』のような存在です」
「ごめんなさい……」
役立たずな自分を責められているようで、私は俯《うつむ》いた。
「……謝る必要はありません。これは私の知的好奇心の問題です」
シルヴィアさんの声が、少しだけ和らぐ。
「むしろ、解明できない謎があるという状況は、研究者としては…少し、そそられますから」
少しだけ口角を上げてみせる彼女の表情は、いつものクールな印象とは違い、どこか楽しそうに見えた。
私は、なんだか嬉しくなって、顔を上げた。
「シルヴィアさんは、すごいです。私は自分のスキルのことを考えるのも嫌なのに、シルヴィアさんは、ちゃんと向き合ってくれてるんですね」
「べ、別にあなたのためではありません!」
私の率直な言葉に、彼女は少し慌てたように視線を逸らす。そのツンとした態度が、なんだか可愛らしくて、私は思わず笑ってしまった。
照れ隠しか、シルヴィアさんは一冊の古びた魔導書を開いて、私に見せた。
「例えば、この古代魔法陣。理論上は完璧なはずなのに、未だかつて、誰も起動させた者がいないのです。世界の〝理〟に、何か我々の知らない要素が、欠けているとしか考えられない……」
「わぁ、綺麗ですね……」
ページに描かれた、幾何学模様の複雑で美しい魔法陣。
私がそれを覗き込もうと、机に身を乗り出した、その瞬間だった。
足元の本に気づかず、私はバランスを崩してしまった。
「きゃっ!」
受け身を取ろうにも、両手は別の本でふさがっている。
私は、そのまま前のめりに倒れ込み――
ぽすん。
私の胸が、魔法陣の描かれたページの上に、柔らかく、しかし、ぴったりと乗ってしまった。
直後だった。
カッ!
魔法陣が、まばゆい黄金の光を放ったのだ。
「なっ!?」
長年、誰一人として起動できなかったはずの古代魔法が、いとも容易く発動してしまった。
光は書斎中を満たし、棚から本がひとりでに浮かび上がり、私たちの周りをゆったりと旋回し始める。それは、まるで星々の誕生のような、幻想的な光景だった。
数秒後、光が収まり、本が静かに元の場所へ戻っていく。
魔法陣は、また何事もなかったかのように、ただのインクの染みに戻っていた。
私は、呆然としながら体を起こした。
「え? え? 私、また何かやっちゃいましたか!?」
シルヴィアさんは、凍りついたように動かなかった。
彼女は、起動した魔法陣のページと、きょとんとしている私の顔、そして私の胸を、何度も、何度も見比べた。
やがて、震える手で眼鏡をくいっと押し上げると、か細い声で、呟いた。
「……世界の〝理〟に欠けていた、最後のピース……。それは……あなたの、そのおっぱいだった、とでもいうのですか……?」
シルヴィアさんは、それ以上何も言わず、机に突っ伏してしまった。
そして、力なく呟いた一言が、静かな書斎に、やけに大きく響いた。
「……もはや、何でもありですね……」
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