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噂の聖女、爆誕編
第18話 鍛冶場とすんごい切れ味
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城での休暇にも、そろそろ飽きてきた頃。
「いかんな! 体がなまっちまう!」
ダインさんが、巨大な戦斧を肩に担いで唸った。
「城の鍛冶場を覗いて、こいつの手入れでもしてくるか」
ユウキ様やシルヴィアさんのように、知恵を絞ったり、難しいことを考えたりするのが苦手な私にとって、ダインさんの単純明快な性格は、どこか心地よかった。
「あの…ダインさん。私も、ついて行ってもいいですか?」
私がそう尋ねると、彼は少し驚いた顔をしたが、すぐにニカッと笑った。
「おう、いいぜ! 退屈だろうがな!」
王城の鍛冶場は、鉄を打つ甲高い音と、炎の熱気で満ちていた。
ダインさんは、王宮の職人たち相手に、専門用語を交えながら、自慢の斧について熱心に語っている。自分の武器を心から慈しむその横顔は、いつもよりずっと大人びて見えた。
一通り斧の手入れを終えた後、私たちは隣接する訓練場の片隅で、一休みしていた。
「ダインさんは、どうしてそんなに強いんですか?」
磨き上げられた斧の刃を眺めながら、私は素朴な疑問を口にした。
「ああ?」
ダインさんは、布で斧を磨く手を止め、少しだけ遠い目をした。
「家族を守るためだ。ドワーフはみんな、そうさ」
彼の口から、故郷の山の話や、たくさんいるという兄弟の話が、ぶっきらぼうだが、どこか誇らしげに語られる。
その話を聞きながら、私は自分の家族のことを思い出していた。
冷たい父の背中と、悲しそうに微笑む母の顔。
「……そうなんですね。素敵なご家族ですね」
私の声が、少しだけ沈んだのに、この大雑把な人は気づいたようだった。
ダインさんは、ガシガシと、大きな手で私の頭を不器用になでた。
「なんだ、しけた顔しやがって」
彼の声は、ぶっきらぼうだけど、温かかった。
「ま、今はお前も俺たちの仲間…家族みてえなもんだ。何かありゃ、この俺が守ってやるから、安心しな」
その言葉は、どんな慰めよりも、私の心に深く、温かく染み渡った。
「……はいっ」
私は、涙がこぼれないように、必死に頷いた。
「よし!」
そんな空気を吹き飛ばすように、ダインさんが立ち上がった。
「せっかくだから、手入れしたこいつの切れ味、見せてやるぜ!」
彼は、訓練場に置かれていた、丸太のように太い訓練用の木偶(でく)を指さす。
「あれを、真っ二つだ!」
ダインさんが、巨大な戦斧を天に掲げる。その逞しい背中に、私は純粋な憧れの眼差しを向けた。
(が、がんばってください、ダインさん……!)
応援しようと、一歩前に踏み出した、その時だった。
足元の武具に気づかず、私はバランスを崩してしまった。
「きゃっ!」
私は、前のめりによろめき、振りかぶったダインさんの広い背中に、真正面から激突してしまった。
ぽすん。
私の胸が、彼の筋肉質な背中に、柔らかく、しかし、しっかりと押し付けられる。
「うぉぉぉぉりゃゃゃあ!」
その瞬間、ダインさんの体から、金色のオーラが、一瞬だけ立ち上ったのを、私は見た。
彼自身は気づいていない。渾身の力を込めて、斧を振り下ろす。
――シュッ。
轟音が響くかと思いきや、信じられないほど静かな風切り音がしただけだった。
ダインさんの斧は、まるで豆腐でも切るかのように、音もなく木偶を両断した。
しかし、その勢いは止まらない。
斧から放たれた見えない斬撃が、訓練場の地面をえぐり、その先にある分厚い城壁を、バターのように、綺麗に、一直線に切り裂いた。
「…………」
訓練場に、静寂が訪れる。
ダインさんは、斧を振り下ろした体勢のまま、固まっていた。
「……お、俺の斧…こんなに、斬れたか……?」
私は、城壁に走った綺麗な一直線の亀裂を見て、顔面蒼白になった。
「だ、ダインさん! 大変です! 城の壁が!」
ダインさんは、切り裂かれた城壁、手の中の斧、そして自分の背中にまだくっついている私を、交互に見た。
そして、全てを理解したという顔で、腹の底から笑い出した。
「がーっはっはっは! なるほどな! 嬢ちゃんの胸が当たると、力がみなぎるのか!」
彼は、悪戯っ子のようににやりと笑う。
「こりゃいい! これからは、強え敵と戦う前には、嬢ちゃんに一発、背中をどついてもらうことにすっか! スキル名『すんごい応援(パワフル・エール)』だな!」
私が「人間サイズの強化アイテム」にされかかっていることに、ただただ愕然としながら、私の休日は、またしてもありえない奇跡と共に、幕を閉じたのだった。
「いかんな! 体がなまっちまう!」
ダインさんが、巨大な戦斧を肩に担いで唸った。
「城の鍛冶場を覗いて、こいつの手入れでもしてくるか」
ユウキ様やシルヴィアさんのように、知恵を絞ったり、難しいことを考えたりするのが苦手な私にとって、ダインさんの単純明快な性格は、どこか心地よかった。
「あの…ダインさん。私も、ついて行ってもいいですか?」
私がそう尋ねると、彼は少し驚いた顔をしたが、すぐにニカッと笑った。
「おう、いいぜ! 退屈だろうがな!」
王城の鍛冶場は、鉄を打つ甲高い音と、炎の熱気で満ちていた。
ダインさんは、王宮の職人たち相手に、専門用語を交えながら、自慢の斧について熱心に語っている。自分の武器を心から慈しむその横顔は、いつもよりずっと大人びて見えた。
一通り斧の手入れを終えた後、私たちは隣接する訓練場の片隅で、一休みしていた。
「ダインさんは、どうしてそんなに強いんですか?」
磨き上げられた斧の刃を眺めながら、私は素朴な疑問を口にした。
「ああ?」
ダインさんは、布で斧を磨く手を止め、少しだけ遠い目をした。
「家族を守るためだ。ドワーフはみんな、そうさ」
彼の口から、故郷の山の話や、たくさんいるという兄弟の話が、ぶっきらぼうだが、どこか誇らしげに語られる。
その話を聞きながら、私は自分の家族のことを思い出していた。
冷たい父の背中と、悲しそうに微笑む母の顔。
「……そうなんですね。素敵なご家族ですね」
私の声が、少しだけ沈んだのに、この大雑把な人は気づいたようだった。
ダインさんは、ガシガシと、大きな手で私の頭を不器用になでた。
「なんだ、しけた顔しやがって」
彼の声は、ぶっきらぼうだけど、温かかった。
「ま、今はお前も俺たちの仲間…家族みてえなもんだ。何かありゃ、この俺が守ってやるから、安心しな」
その言葉は、どんな慰めよりも、私の心に深く、温かく染み渡った。
「……はいっ」
私は、涙がこぼれないように、必死に頷いた。
「よし!」
そんな空気を吹き飛ばすように、ダインさんが立ち上がった。
「せっかくだから、手入れしたこいつの切れ味、見せてやるぜ!」
彼は、訓練場に置かれていた、丸太のように太い訓練用の木偶(でく)を指さす。
「あれを、真っ二つだ!」
ダインさんが、巨大な戦斧を天に掲げる。その逞しい背中に、私は純粋な憧れの眼差しを向けた。
(が、がんばってください、ダインさん……!)
応援しようと、一歩前に踏み出した、その時だった。
足元の武具に気づかず、私はバランスを崩してしまった。
「きゃっ!」
私は、前のめりによろめき、振りかぶったダインさんの広い背中に、真正面から激突してしまった。
ぽすん。
私の胸が、彼の筋肉質な背中に、柔らかく、しかし、しっかりと押し付けられる。
「うぉぉぉぉりゃゃゃあ!」
その瞬間、ダインさんの体から、金色のオーラが、一瞬だけ立ち上ったのを、私は見た。
彼自身は気づいていない。渾身の力を込めて、斧を振り下ろす。
――シュッ。
轟音が響くかと思いきや、信じられないほど静かな風切り音がしただけだった。
ダインさんの斧は、まるで豆腐でも切るかのように、音もなく木偶を両断した。
しかし、その勢いは止まらない。
斧から放たれた見えない斬撃が、訓練場の地面をえぐり、その先にある分厚い城壁を、バターのように、綺麗に、一直線に切り裂いた。
「…………」
訓練場に、静寂が訪れる。
ダインさんは、斧を振り下ろした体勢のまま、固まっていた。
「……お、俺の斧…こんなに、斬れたか……?」
私は、城壁に走った綺麗な一直線の亀裂を見て、顔面蒼白になった。
「だ、ダインさん! 大変です! 城の壁が!」
ダインさんは、切り裂かれた城壁、手の中の斧、そして自分の背中にまだくっついている私を、交互に見た。
そして、全てを理解したという顔で、腹の底から笑い出した。
「がーっはっはっは! なるほどな! 嬢ちゃんの胸が当たると、力がみなぎるのか!」
彼は、悪戯っ子のようににやりと笑う。
「こりゃいい! これからは、強え敵と戦う前には、嬢ちゃんに一発、背中をどついてもらうことにすっか! スキル名『すんごい応援(パワフル・エール)』だな!」
私が「人間サイズの強化アイテム」にされかかっていることに、ただただ愕然としながら、私の休日は、またしてもありえない奇跡と共に、幕を閉じたのだった。
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