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波乱の魔王軍、介入編
第27話 宣戦布告とすんごい呪い
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「魔王軍が……! 魔王軍が再び国境に……!」
伝令兵の悲痛な叫びに、訓練場の空気は一瞬で凍りついた。
私たちの、あまりに短かった平穏は、その一言によって唐突に終わりを告げた。
私たちは直ちに国王陛下が待つ作戦司令室へと召集された。
そこにいた大臣や将軍たちの顔は、一様に青ざめ、絶望の色を浮かべていた。グライフェン砦での勝利の喜びなど、そこには微塵も残っていない。
「報告します!」
斥候から戻ったばかりの騎士が広げられた地図を指し示した。
「魔王軍の大軍勢が南方の穀倉地帯、ティルナ地方に集結! しかし今回は砦への攻撃ではありません!」
騎士は、ごくりと息をのみ、震える声で続けた。
「軍勢と共にたった一人の魔族――ローブをまとった女が現れた後、ティルナ地方全域の作物が一瞬にして枯れ果てたと……! 民の間では、『厄災の魔女』が現れたと、大パニックに陥っております!」
兵糧攻め。
直接的な攻撃ではなく、王国の生命線である食料供給を断つという、あまりに陰湿で効果的な戦術。
司令室は重い沈黙に包まれた。剣や魔法では枯れた大地を元に戻すことはできない。
「このままでは冬を越せずに多くの民が飢え死にしてしまう……」
誰かが呻《うめ》くように言った。
「その『厄災の魔女』は魔王軍の幹部の一人、『魔女ヘクサーナ』に相違あるまい」
騎士団長が苦々しく呟く。
「広範囲に強力な呪いを振りまくことを得意とする、厄介な相手だ」
打つ手がない。
誰もがそう思い始めた、その時だった。
玉座に座る国王陛下が静かに口を開き、その視線は、まっすぐ私に向けられた。
「――『王国の聖女』ルルナよ」
びくり、と私の肩が跳ねる。
「そなたが、グライフェン砦の上空を覆っていた邪悪な暗雲を、その身一つで晴らしたという奇跡……。我らは、それに最後の望みを託すしかない」
陛下は、立ち上がると、私に深々と頭を下げた。
「どうか、ティルナ地方へ赴き、その呪われた大地を、そなたの奇跡の力で浄化してはくれまいか。そして、元凶である魔女ヘクサーナを討ち取ってほしい」
国王自らが頭を下げる。
それは、この国の未来全てが、私の双肩にかかっていることを意味していた。
「御意」
ユウキ様が力強く答えた。
「王国の民を飢えさせるわけにはいかない。必ずや、その魔女を討ち取り、大地を元に戻してみせます」
「広範囲呪術……大規模な生命力吸収、あるいは土壌汚染系の魔法……。解析のしがいがありそうです」
シルヴィアさんの目には、恐怖ではなく、知的な探究心の色が浮かんでいる。
「魔女だろうがなんだろうが、見つけ次第、斧で叩き割るだけだ」
ダインさんが静かに闘志を燃やす。
みんな覚悟を決めている。
私も決めなければ。
グライフェン砦へ向かう道で見た、あの避難民たちの絶望に満ちた顔が脳裏に蘇る。あんな顔を、もう誰にもさせたくない。
「……私に、できることがあるのなら……」
私は震えを押し殺し、顔を上げた。
「行きます」
私たちの新たな戦いが決まった。
相手は目に見える軍勢だけではない。大地を蝕み、生命を枯らす、すんごい呪いそのものだ。
王都の民たちの不安げな視線を背に、私たちは南へと向かう馬車に乗り込んだ。
窓の外には豊かな緑が広がっている。
しかし、この旅の先に待つのは、全ての生命が死に絶えた絶望の大地なのだ。
伝令兵の悲痛な叫びに、訓練場の空気は一瞬で凍りついた。
私たちの、あまりに短かった平穏は、その一言によって唐突に終わりを告げた。
私たちは直ちに国王陛下が待つ作戦司令室へと召集された。
そこにいた大臣や将軍たちの顔は、一様に青ざめ、絶望の色を浮かべていた。グライフェン砦での勝利の喜びなど、そこには微塵も残っていない。
「報告します!」
斥候から戻ったばかりの騎士が広げられた地図を指し示した。
「魔王軍の大軍勢が南方の穀倉地帯、ティルナ地方に集結! しかし今回は砦への攻撃ではありません!」
騎士は、ごくりと息をのみ、震える声で続けた。
「軍勢と共にたった一人の魔族――ローブをまとった女が現れた後、ティルナ地方全域の作物が一瞬にして枯れ果てたと……! 民の間では、『厄災の魔女』が現れたと、大パニックに陥っております!」
兵糧攻め。
直接的な攻撃ではなく、王国の生命線である食料供給を断つという、あまりに陰湿で効果的な戦術。
司令室は重い沈黙に包まれた。剣や魔法では枯れた大地を元に戻すことはできない。
「このままでは冬を越せずに多くの民が飢え死にしてしまう……」
誰かが呻《うめ》くように言った。
「その『厄災の魔女』は魔王軍の幹部の一人、『魔女ヘクサーナ』に相違あるまい」
騎士団長が苦々しく呟く。
「広範囲に強力な呪いを振りまくことを得意とする、厄介な相手だ」
打つ手がない。
誰もがそう思い始めた、その時だった。
玉座に座る国王陛下が静かに口を開き、その視線は、まっすぐ私に向けられた。
「――『王国の聖女』ルルナよ」
びくり、と私の肩が跳ねる。
「そなたが、グライフェン砦の上空を覆っていた邪悪な暗雲を、その身一つで晴らしたという奇跡……。我らは、それに最後の望みを託すしかない」
陛下は、立ち上がると、私に深々と頭を下げた。
「どうか、ティルナ地方へ赴き、その呪われた大地を、そなたの奇跡の力で浄化してはくれまいか。そして、元凶である魔女ヘクサーナを討ち取ってほしい」
国王自らが頭を下げる。
それは、この国の未来全てが、私の双肩にかかっていることを意味していた。
「御意」
ユウキ様が力強く答えた。
「王国の民を飢えさせるわけにはいかない。必ずや、その魔女を討ち取り、大地を元に戻してみせます」
「広範囲呪術……大規模な生命力吸収、あるいは土壌汚染系の魔法……。解析のしがいがありそうです」
シルヴィアさんの目には、恐怖ではなく、知的な探究心の色が浮かんでいる。
「魔女だろうがなんだろうが、見つけ次第、斧で叩き割るだけだ」
ダインさんが静かに闘志を燃やす。
みんな覚悟を決めている。
私も決めなければ。
グライフェン砦へ向かう道で見た、あの避難民たちの絶望に満ちた顔が脳裏に蘇る。あんな顔を、もう誰にもさせたくない。
「……私に、できることがあるのなら……」
私は震えを押し殺し、顔を上げた。
「行きます」
私たちの新たな戦いが決まった。
相手は目に見える軍勢だけではない。大地を蝕み、生命を枯らす、すんごい呪いそのものだ。
王都の民たちの不安げな視線を背に、私たちは南へと向かう馬車に乗り込んだ。
窓の外には豊かな緑が広がっている。
しかし、この旅の先に待つのは、全ての生命が死に絶えた絶望の大地なのだ。
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