スキル名【すんごい、おっぱい】なんだけど、これってどうなの!?

かわさきはっく

文字の大きさ
27 / 65
波乱の魔王軍、介入編

第27話 宣戦布告とすんごい呪い

しおりを挟む
「魔王軍が……! 魔王軍が再び国境に……!」
 伝令兵の悲痛な叫びに、訓練場の空気は一瞬で凍りついた。
 私たちの、あまりに短かった平穏は、その一言によって唐突に終わりを告げた。

 私たちは直ちに国王陛下が待つ作戦司令室へと召集された。
 そこにいた大臣や将軍たちの顔は、一様に青ざめ、絶望の色を浮かべていた。グライフェン砦での勝利の喜びなど、そこには微塵も残っていない。

「報告します!」
 斥候から戻ったばかりの騎士が広げられた地図を指し示した。
「魔王軍の大軍勢が南方の穀倉地帯、ティルナ地方に集結! しかし今回は砦への攻撃ではありません!」

 騎士は、ごくりと息をのみ、震える声で続けた。
「軍勢と共にたった一人の魔族――ローブをまとった女が現れた後、ティルナ地方全域の作物が一瞬にして枯れ果てたと……! 民の間では、『厄災の魔女』が現れたと、大パニックに陥っております!」

 兵糧攻め。
 直接的な攻撃ではなく、王国の生命線である食料供給を断つという、あまりに陰湿で効果的な戦術。
 司令室は重い沈黙に包まれた。剣や魔法では枯れた大地を元に戻すことはできない。

「このままでは冬を越せずに多くの民が飢え死にしてしまう……」
 誰かが呻《うめ》くように言った。

「その『厄災の魔女』は魔王軍の幹部の一人、『魔女ヘクサーナ』に相違あるまい」
 騎士団長が苦々しく呟く。
「広範囲に強力な呪いを振りまくことを得意とする、厄介な相手だ」

 打つ手がない。
 誰もがそう思い始めた、その時だった。
 玉座に座る国王陛下が静かに口を開き、その視線は、まっすぐ私に向けられた。

「――『王国の聖女』ルルナよ」

 びくり、と私の肩が跳ねる。

「そなたが、グライフェン砦の上空を覆っていた邪悪な暗雲を、その身一つで晴らしたという奇跡……。我らは、それに最後の望みを託すしかない」

 陛下は、立ち上がると、私に深々と頭を下げた。
「どうか、ティルナ地方へ赴き、その呪われた大地を、そなたの奇跡の力で浄化してはくれまいか。そして、元凶である魔女ヘクサーナを討ち取ってほしい」

 国王自らが頭を下げる。
 それは、この国の未来全てが、私の双肩にかかっていることを意味していた。

「御意」
 ユウキ様が力強く答えた。
「王国の民を飢えさせるわけにはいかない。必ずや、その魔女を討ち取り、大地を元に戻してみせます」

「広範囲呪術……大規模な生命力吸収、あるいは土壌汚染系の魔法……。解析のしがいがありそうです」
 シルヴィアさんの目には、恐怖ではなく、知的な探究心の色が浮かんでいる。

「魔女だろうがなんだろうが、見つけ次第、斧で叩き割るだけだ」
 ダインさんが静かに闘志を燃やす。

 みんな覚悟を決めている。
 私も決めなければ。
 グライフェン砦へ向かう道で見た、あの避難民たちの絶望に満ちた顔が脳裏に蘇る。あんな顔を、もう誰にもさせたくない。

「……私に、できることがあるのなら……」
 私は震えを押し殺し、顔を上げた。
「行きます」

 私たちの新たな戦いが決まった。
 相手は目に見える軍勢だけではない。大地を蝕み、生命を枯らす、すんごい呪いそのものだ。

 王都の民たちの不安げな視線を背に、私たちは南へと向かう馬車に乗り込んだ。
 窓の外には豊かな緑が広がっている。
 しかし、この旅の先に待つのは、全ての生命が死に絶えた絶望の大地なのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】男装して会いに行ったら婚約破棄されていたので、近衛として地味に復讐したいと思います。

銀杏鹿
恋愛
次期皇后のアイリスは、婚約者である王に会うついでに驚かせようと、男に変装し近衛として近づく。 しかし、王が自分以外の者と結婚しようとしていると知り、怒りに震えた彼女は、男装を解かないまま、復讐しようと考える。 しかし、男装が完璧過ぎたのか、王の意中の相手やら、王弟殿下やら、その従者に目をつけられてしまい……

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』

放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。 「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」 身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。 冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。 「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」 得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。 これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...