スキル名【すんごい、おっぱい】なんだけど、これってどうなの!?

かわさきはっく

文字の大きさ
36 / 65
波乱の魔王軍、介入編

第36話 結界とすんごい鍵穴

しおりを挟む
 聖なる魚に導かれ、私たちは光の届かない深海の暗闇をひたすらに進んだ。
 どれほどの時間が経っただろうか。やがて暗闇の向こうに、ぼんやりとした青白い光が見えてきた。

 近づくにつれて、その光は、一つの巨大な建造物の姿を浮かび上がらせる。
「あれが……《嘆きの海底神殿》……」
 ユウキ様が息をのむ。

 それは月光を浴びた真珠のように、青白く輝く荘厳な神殿だった。
 部分的には崩落しているものの、その神々しいまでの姿は失われていない。
 そして、神殿全体が巨大で、透明な光のドーム――神聖結界によって守られていた。
 どこからか、祈るような、物悲しい音楽が聞こえてくる。

 私たちを導いてくれた聖魚は、その結界の前でくるりと一回転すると、深海の闇へと帰っていった。マグロの大群もそれに続く。ここから先は彼らの領域ではないのだ。

「これが神聖結界……!」
 シルヴィアさんが光のドームに手を触れようとするが、その寸前で見えない壁に阻まれる。
「純粋な神々の魔力で構成されています。魔族はもちろん、不純な魔力は一切通さないでしょう。私の魔法も、おそらく干渉できません」

「ちっ、びくともしやがらねえ!」
 ダインさんが試しに殴ってみるが、その豪腕は柔らかな光によって、やすやすと弾き返されてしまった。

 神殿へと続く入り口は結界によって固く閉ざされている。
 その入り口の脇に、私たちは、一つの石碑のような台座(ペデスタル)を発見した。
 台座の上には、ちょうど人の胸ほどの大きさの、滑らかな円形の窪みが一つ、ぽっかりと空いていた。

「何かの紋章をはめるための窪みのようですが……肝心の鍵が見当たりません」
 シルヴィアさんの言う通り、周囲に鍵になりそうなものは何も見当たらない。

 私たちは神殿を目の前にして、完全に手詰まりになってしまった。
 私は、その物悲しい音楽に引かれるように、台座へと、ふらふらと近づいていた。

「なんだか……とても悲しい感じがします……」
 私が、その台座に、そっと手を触れた、その時だった。

 足元の珊瑚に、つまずいてしまった。
「きゃっ!」

 私は前のめりによろめき、その台座に抱きつくような形で、倒れ込んでしまったのだ。

 ぽすん。

 私の胸が、その円形の窪みに、まるで誂《あつらえ》えたかのように、寸分の狂いもなく、ぴったりと、はまってしまった。

 ――直後だった。
 台座が、まばゆい光を放ち始めた。
 物悲しかった音楽は、温かく、私たちを歓迎するかのような、優しい音色へと変わる。
 そして、台座から放たれた光の筋が、巨大なドーム全体へと広がり、網目のような模様を描いていく。

 巨大な神聖結界は砕け散るのではない。
 まるで役目を終えたとでもいうように、無数の光の粒子となり、深海の闇へと静かに溶けて消えていった。

「「「…………」」」
 私たちは目の前で起こった奇跡に、ただ言葉を失っていた。

 やがてユウキ様が、台座の窪みと私の胸を交互に何度も見比べた後、震える声で言った。
「……あの窪み……まさか、ルルナの胸のサイズと形に、寸分違わずピッタリだったのか……?」

 彼は天を仰いで叫んだ。
「スキル名、『聖なる鍵穴(ホーリー・キーホール)』! どんな鍵でも胸で開けちまうのかよ!」

「わ、私、何もしてません! ちょっと寄りかかっただけで……!」
 私の抗議の声は、もう誰にも届いていなかった。

 こうして、古代の賢者さえも突破できなかった神聖結界は、私のすんごいおっぱいが、すんごい鍵穴にすっぽりハマったことで、あっけなく、その門戸を開いた。
 神殿の奥から、私たちを誘うかのように、静かな光が漏れ出していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】男装して会いに行ったら婚約破棄されていたので、近衛として地味に復讐したいと思います。

銀杏鹿
恋愛
次期皇后のアイリスは、婚約者である王に会うついでに驚かせようと、男に変装し近衛として近づく。 しかし、王が自分以外の者と結婚しようとしていると知り、怒りに震えた彼女は、男装を解かないまま、復讐しようと考える。 しかし、男装が完璧過ぎたのか、王の意中の相手やら、王弟殿下やら、その従者に目をつけられてしまい……

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

『婚約破棄された悪役令嬢ですが、嫁ぎ先で“連れ子三人”の母になりました ~三人の「ママ」が聞けるまで、私は絶対に逃げません~』

放浪人
恋愛
「母はいりません」と拒絶された悪役令嬢が、最強の“ママ”になるまでの物語。 「君のような可愛げのない女は、王妃にふさわしくない」 身に覚えのない罪で婚約破棄され、“悪役令嬢”の汚名を着せられたクラリス。 彼女が新たに嫁いだのは、北方の辺境を守る「氷の公爵」ことレオンハルト・フォン・グレイフだった。 冷え切った屋敷で彼女を待っていたのは、無表情な夫と、心に傷を負った三人の連れ子たち。 「僕たちに、母はいりません」 初対面で突きつけられた三つの拒絶。しかし、クラリスは諦めなかった。 「称号はいりません。私が欲しいのは――あなたたち三人の『ママ』になれる日だけです」 得意の生活魔法『灯(ともしび)』で凍えた部屋を温め、『鎮(しずめ)』の歌で夜泣きを癒やし、家政手腕で荒れた食卓を立て直す。 クラリスの献身的な愛情は、頑なだった子供たちの心を解きほぐし、やがて不器用な夫の氷の心さえも熱く溶かしていく。 これは、不遇な悪役令嬢が「最強の母」となり、家族を脅かす元婚約者や魔獣たちを華麗に撃退し、最愛の家族から「ママ」と呼ばれるその日までを綴った物語。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります> 政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

処理中です...