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波乱の魔王軍、介入編
第39話 帰還と王のすんごい苦悩
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《嘆きの海底神殿》からの帰路、私たちの乗る船上は勝利の喜びに満ちていた。
「やったな! これで『神の枷』は二つとも俺たちの……いや、一つは王国騎士団のだから、競争はまだ五分五分か!」
ユウキ様が手に入れたサファイアの腕輪を掲げて上機嫌に笑う。
「火山炉に向かった騎士団も、今頃は勝利の祝杯をあげているだろうぜ!」
ダインさんが自分も早く酒が飲みたいとばかりに豪快に頷いた。
私もシルヴィアさんも、その言葉に何の疑いも持っていなかった。
あの勇敢な騎士団が負けるはずがない、と。
私たちは束の間の平穏と、勝利の達成感に浸っていたのだ。
しかし、王都ソリスティアの港に降り立った瞬間、その楽観的な空気は一変する。
私たちを迎えたのは、祝賀の楽団でも歓声を上げる民衆でもなかった。
街全体が、まるで葬儀のように静まり返り、人々は不安と恐怖に満ちた顔で足早に行き交っている。
「……何か、あったのか?」
ユウキ様の呟きに誰も答えることはできなかった。
王城から迎えに来た馬車に乗り込み、私たちが通されたのは玉座の間ではなく、重々しい雰囲気の作戦司令室だった。
そこにいた国王陛下は数週間前にお会いした時よりも、ずっと老け込んで見えた。
「陛下、ご命令通り、《嘆きの神の枷》を確保いたしました」
ユウキ様が厳かに腕輪を差し出す。
「……おお……見事だ、勇者よ。聖女よ。よくぞ……よくぞ、成し遂げてくれた……」
陛下は、その声に、ほとんど力を失っていた。その瞳に浮かぶのは喜びではなく、深い苦悩の色。
「しかし……我々の戦況は……絶望的だ」
その一言に私たちの心臓が嫌な音を立てて跳ねた。
陛下が語った火山炉の戦況は凄惨を極めていた。
三人目の魔将軍――『剛力の魔将軍ブルガロス』。
その男は知略も魔法も使わない。ただ、山を砕き、大地を割る、圧倒的なまでの「力」で、王国騎士団を蹂躙した。
「近衛騎士団は壊滅状態だ。騎士団長バルトークも深手を負い、残った兵士たちと共に、かろうじて洞窟に立てこもっているが……それも時間の問題だろう」
その時だった。
司令室に置かれていた、前線と繋がる魔法の通信水晶が、雑音と共に、か細い光を放った。
『……陛下……! もはや……これまで……! ブルガロスは……化け物で……ぐあっ!』
悲鳴を最後に、その通信は完全に途絶えた。
司令室は死んだような沈黙に包まれる。
ダインさんが、こぶしを握りしめ、ギリ、と歯を食いしばる。
シルヴィアさんの顔から血の気が引いていく。
ユウキ様は固く唇を結んだまま、何も言わない。
私の脳裏にはグライフェン砦で私たちを英雄として称え、敬礼してくれた、あの騎士たちの顔が浮かんでいた。
あの人たちが、今、死んでいっている。
海底神殿で手に入れた勝利の喜びは、一瞬にして灰になった。
私たちは自分たちの戦いに勝っただけ。
戦争は、まだ終わっていない。
そして、私たちは負けようとしていた。
誰も、何も言わなかった。
しかし、その場にいたパーティ全員の心は、次に何をすべきか、固く、決まっていた。
「やったな! これで『神の枷』は二つとも俺たちの……いや、一つは王国騎士団のだから、競争はまだ五分五分か!」
ユウキ様が手に入れたサファイアの腕輪を掲げて上機嫌に笑う。
「火山炉に向かった騎士団も、今頃は勝利の祝杯をあげているだろうぜ!」
ダインさんが自分も早く酒が飲みたいとばかりに豪快に頷いた。
私もシルヴィアさんも、その言葉に何の疑いも持っていなかった。
あの勇敢な騎士団が負けるはずがない、と。
私たちは束の間の平穏と、勝利の達成感に浸っていたのだ。
しかし、王都ソリスティアの港に降り立った瞬間、その楽観的な空気は一変する。
私たちを迎えたのは、祝賀の楽団でも歓声を上げる民衆でもなかった。
街全体が、まるで葬儀のように静まり返り、人々は不安と恐怖に満ちた顔で足早に行き交っている。
「……何か、あったのか?」
ユウキ様の呟きに誰も答えることはできなかった。
王城から迎えに来た馬車に乗り込み、私たちが通されたのは玉座の間ではなく、重々しい雰囲気の作戦司令室だった。
そこにいた国王陛下は数週間前にお会いした時よりも、ずっと老け込んで見えた。
「陛下、ご命令通り、《嘆きの神の枷》を確保いたしました」
ユウキ様が厳かに腕輪を差し出す。
「……おお……見事だ、勇者よ。聖女よ。よくぞ……よくぞ、成し遂げてくれた……」
陛下は、その声に、ほとんど力を失っていた。その瞳に浮かぶのは喜びではなく、深い苦悩の色。
「しかし……我々の戦況は……絶望的だ」
その一言に私たちの心臓が嫌な音を立てて跳ねた。
陛下が語った火山炉の戦況は凄惨を極めていた。
三人目の魔将軍――『剛力の魔将軍ブルガロス』。
その男は知略も魔法も使わない。ただ、山を砕き、大地を割る、圧倒的なまでの「力」で、王国騎士団を蹂躙した。
「近衛騎士団は壊滅状態だ。騎士団長バルトークも深手を負い、残った兵士たちと共に、かろうじて洞窟に立てこもっているが……それも時間の問題だろう」
その時だった。
司令室に置かれていた、前線と繋がる魔法の通信水晶が、雑音と共に、か細い光を放った。
『……陛下……! もはや……これまで……! ブルガロスは……化け物で……ぐあっ!』
悲鳴を最後に、その通信は完全に途絶えた。
司令室は死んだような沈黙に包まれる。
ダインさんが、こぶしを握りしめ、ギリ、と歯を食いしばる。
シルヴィアさんの顔から血の気が引いていく。
ユウキ様は固く唇を結んだまま、何も言わない。
私の脳裏にはグライフェン砦で私たちを英雄として称え、敬礼してくれた、あの騎士たちの顔が浮かんでいた。
あの人たちが、今、死んでいっている。
海底神殿で手に入れた勝利の喜びは、一瞬にして灰になった。
私たちは自分たちの戦いに勝っただけ。
戦争は、まだ終わっていない。
そして、私たちは負けようとしていた。
誰も、何も言わなかった。
しかし、その場にいたパーティ全員の心は、次に何をすべきか、固く、決まっていた。
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