50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく

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第一章 エルフの森の試練

第9話 去り際の言葉

 試練を終え、新たな名を得た俺――カインは静まり返った試練の間に立っていた。
 エルフたちがまだ興奮の余韻にざわめく中、俺の前に一人の男が進み出る。神殿を訪れ、俺を試そうとしたあの挑戦者、レオナルドだった。彼の鋭い眼差しは変わらないが、その奥にはかすかに異なる感情が宿っているように見えた。

「……やるではないか、カイン」

 その低い声にはもう試すような気配はなく、どこか実力を認めたような響きがあった。

「お前が本当に賢者かどうかを確かめるつもりだったが……少なくとも、俺の中で答えは出た」

 彼はそう言うと、腰の短剣を軽く叩く。

「試練を乗り越え、知恵も備えているようだ。……すべてを認めるわけではないが、お前が『賢者の候補者』であることは理解した」

「それで、お前はどうするんだ?」

 俺が尋ねると、レオナルドは腕を組みながら答えた。

「俺は一度帰る。俺の役目はここで起きたことをエルフの長たちに伝えることだ。賢者の候補者が現れ、試練を乗り越えたこと。そして、お前――カインが名を得たことをな」

 彼の言葉に俺は眉をひそめた。どうやら、彼の背後にはさらに大きな存在がいるらしい。

「……そっちのエルフの長ってのは俺をどう思ってるんだ?」

 俺の問いにレオナルドは少し考えた後、静かに答えた。

「半数は期待している。カイラン様の帰還を信じ、森の未来をお前に託そうとしている者たちだ。だが、もう半数は警戒している。お前が本当に『カイラン様の再来』なのか、あるいは森の秩序を乱す異物なのかをな」

 それは俺がすでに感じ取っていた空気と一致していた。

「ならば、俺はどうすればいい?」

「お前自身が答えを出せ。そして、それを行動で示せ。言葉だけでは長老会は納得しない」

 彼はそれだけ言うと踵を返し、神殿の扉へと向かう。

「俺の名はレオナルド・ヴァルディス。この名を覚えておけ、カイン」

 レオナルドはそう言い残し、神殿を後にした。彼の足音が消えた後、俺は静かに息を吐く。

(行動で示せ、か……)

 古の試練は終わった。だが、本当の意味で賢者として認められるための道はまだ始まったばかりだ。
 俺はエルンストやエルフたちが見守る中で、静かに拳を握りしめた。
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