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第一章 エルフの森の試練
第15話 傷ついた魔法キツネ
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俺が静かに手を差し出すと、魔法キツネは警戒を解かずに、しかし逃げ出すこともしなかった。その金色の毛並みは月光を浴びて淡く輝き、大きな瞳は俺の真意を探るようにじっとこちらを見つめている。わずかに震えている様子から、恐怖と助けを求める気持ちの間で揺れているのが伝わってきた。
「そうだ、怖くない。ただ、お前の傷を見せてほしいだけだ」
静かにささやきながら、俺はゆっくりと、にじり寄った。その言葉が通じたのか、魔法キツネは小さく鼻を鳴らし、ふわりと尻尾を振った。
「カイン殿……そんなに近くまで……」
背後でライルが驚きに満ちた声を漏らす。
「知能が高いんだろう? なら、話せばわかるはずだ」
俺は魔法キツネの目を見つめながら、静かに続けた。
「お前、その傷を手当てしたくて薬草を探していたんじゃないのか?」
魔法キツネは肯定するように小さく鳴くと、俺の足元にそっと歩み寄ってきた。近づいてよく見ると、その体には浅いが痛々しい傷がいくつも走っている。何かの魔獣に襲われたのか、毛並みはところどころ血で固まっていた。
「やはり……。このままでは感染症を起こすかもしれない」
ライルが小さく息を呑む。
「放っておくわけにはいかないな。ライル、薬草庫の中に傷の治療に使える薬草はあるか?」
「はい、治癒効果の高い『月雫草』と、消毒用の『清浄苔』があります。すぐに持ってきます」
ライルが素早く薬草庫へと走り、数分後、清潔な布と、すり潰した薬草を持って戻ってきた。
「カイン殿、これを」
「助かる」
俺は薬草を受け取り、もう一度魔法キツネに視線を向けた。
「大丈夫だ、痛くしないようにするからな」
魔法キツネは一瞬たじろいだが、俺の目を見て、やがてすべてを任せるように静かにその場に座り込んだ。
俺は丁寧に傷口の汚れを拭い、清浄苔を塗りつけ、その上から月雫草の湿布を優しく当てる。最後に布でそっと包帯を巻いた。治療が終わるころには魔法キツネはうっとりと目を細め、安心しきったように俺の手に鼻を擦りつけてきた。
「これで大丈夫だろう。あとは安静にさせてやらないとな」
「まさか、カイン殿が魔法キツネをここまで落ち着かせるとは……。まるで、森の心と対話しているかのようです」
ライルの声には純粋な感嘆が込められていた。
治療を終えた魔法キツネは俺の膝の上にそっと身を寄せ、感謝を示すようにそのふさふさの尾を優しく巻きつけてきた。その温もりを感じながら、俺はふと考えた。
「この魔法キツネ、元の群れに戻すべきなんだろうが……一度、安全な場所で保護したほうがいいかもしれないな」
ライルもうなずく。
「これほど弱っているのなら、今はそれが最善でしょう。村の者たちには私が話をしておきます。あなたがこのキツネを保護することを伝えれば、皆も納得してくれるはずです」
「助かるよ」
月明かりの下で、俺の腕の中で穏やかに呼吸をする魔法キツネ。その小さな命を守るという選択が、この森で賢者として生きる俺の新たな一歩となる気がした。
「そうだ、怖くない。ただ、お前の傷を見せてほしいだけだ」
静かにささやきながら、俺はゆっくりと、にじり寄った。その言葉が通じたのか、魔法キツネは小さく鼻を鳴らし、ふわりと尻尾を振った。
「カイン殿……そんなに近くまで……」
背後でライルが驚きに満ちた声を漏らす。
「知能が高いんだろう? なら、話せばわかるはずだ」
俺は魔法キツネの目を見つめながら、静かに続けた。
「お前、その傷を手当てしたくて薬草を探していたんじゃないのか?」
魔法キツネは肯定するように小さく鳴くと、俺の足元にそっと歩み寄ってきた。近づいてよく見ると、その体には浅いが痛々しい傷がいくつも走っている。何かの魔獣に襲われたのか、毛並みはところどころ血で固まっていた。
「やはり……。このままでは感染症を起こすかもしれない」
ライルが小さく息を呑む。
「放っておくわけにはいかないな。ライル、薬草庫の中に傷の治療に使える薬草はあるか?」
「はい、治癒効果の高い『月雫草』と、消毒用の『清浄苔』があります。すぐに持ってきます」
ライルが素早く薬草庫へと走り、数分後、清潔な布と、すり潰した薬草を持って戻ってきた。
「カイン殿、これを」
「助かる」
俺は薬草を受け取り、もう一度魔法キツネに視線を向けた。
「大丈夫だ、痛くしないようにするからな」
魔法キツネは一瞬たじろいだが、俺の目を見て、やがてすべてを任せるように静かにその場に座り込んだ。
俺は丁寧に傷口の汚れを拭い、清浄苔を塗りつけ、その上から月雫草の湿布を優しく当てる。最後に布でそっと包帯を巻いた。治療が終わるころには魔法キツネはうっとりと目を細め、安心しきったように俺の手に鼻を擦りつけてきた。
「これで大丈夫だろう。あとは安静にさせてやらないとな」
「まさか、カイン殿が魔法キツネをここまで落ち着かせるとは……。まるで、森の心と対話しているかのようです」
ライルの声には純粋な感嘆が込められていた。
治療を終えた魔法キツネは俺の膝の上にそっと身を寄せ、感謝を示すようにそのふさふさの尾を優しく巻きつけてきた。その温もりを感じながら、俺はふと考えた。
「この魔法キツネ、元の群れに戻すべきなんだろうが……一度、安全な場所で保護したほうがいいかもしれないな」
ライルもうなずく。
「これほど弱っているのなら、今はそれが最善でしょう。村の者たちには私が話をしておきます。あなたがこのキツネを保護することを伝えれば、皆も納得してくれるはずです」
「助かるよ」
月明かりの下で、俺の腕の中で穏やかに呼吸をする魔法キツネ。その小さな命を守るという選択が、この森で賢者として生きる俺の新たな一歩となる気がした。
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