23 / 330
第一章 エルフの森の試練
第23話 追跡者の影
謎のエルフと遭遇した翌朝、俺は再びアクレアの森の奥へと足を進めていた。昨夜の出来事が、頭から離れない。
(「この森が試練としてお前に何を課すか、見届けさせてもらう」……か。一体、何者だったんだ? エルドレアが差し向けた監視役か、それとも……)
俺は警戒を強めながら慎重に進んだ。この森の空気は昨日よりもさらに重く、冷たく感じられる。歩きながら、俺は少しずつ周囲の気配を探ることを意識し始めた。この森で無警戒でいることはあまりにも危険だ。
森の奥へと進むうち、ふと異様な静けさに気づいた。風が止み、鳥のさえずりさえも聞こえない。不自然な沈黙だった。
(また何かがいる……しかも、今度は近い)
俺は身を低くし、巨大な木の陰に身を潜めた。そして、注意深く周囲を見渡す。
すると、木々の間に再び昨夜のエルフの姿があった。
だが、今度は一人ではない。彼の背後にはもう一つの影。同じくエルフのようだったが、その雰囲気は明らかに違う。鋭い目つきに贅肉のない引き締まった体。身につけた軽装の革鎧は動きやすさを重視した戦闘向きのものだ。彼らは何かを探しているように慎重に周囲を見回していた。
(何を探しているんだ……まさか、俺か?)
俺が観察していると、突然、その戦士風のエルフが鋭い視線をこちらに向けた。
(バレたか!?)
とっさに身を隠したが、もう遅い。明らかにこちらを探るような動きを見せている。
『お前の立場を明確にする時かもしれんぞ』
カイランの声が冷静に告げる。
(……そうみたいだな)
俺は静かにナイフを握りしめ、ゆっくりと立ち上がった。
「……お前たちは何者だ? 俺をつけていたのか?」
俺の声に二人のエルフが動きを止めた。そして、ゆっくりとこちらに歩み寄ってくる。
「この森を見慣れぬ顔が歩いていると聞いてな。どこから来た?」
「俺はカイン。エルドレア様の命により、試練を受けている最中だ」
俺がそう答えると、戦士風のエルフが疑念を込めて眉をひそめた。
「エルドレア様の試練だと? 我ら森の守護人に、そのような報せは届いていない。貴様、カインと言ったな。聞いたことの無い名だ」
「俺は……元はエルフェンリートの者ではない。だが、今は賢者の候補者として、この森に認められようとしている者だ」
二人のエルフはしばらく俺を観察していたが、やがて昨夜のエルフが静かにうなずいた。
「なるほどな……。その言葉が真実かどうか、今すぐ確かめさせてもらおう」
彼はそう言うと、一歩前へと踏み出し、腰の短剣を抜いた。鋭い銀の刃が森の薄暗い光を浴びて冷たく輝く。
「ここで戦うつもりか?」
「違う。ただ、お前の実力を見たいだけだ。試練を受けているというのなら、この聖なる森を歩くに値する力を持っているはずだろう?」
俺は一瞬考えた。ここで引けば、偽物として排除されるだけか。
『逃げ道はないようだな。やるしかない』
(……そうだな)
俺は深呼吸し、足をしっかりと地面に据えた。ナイフを抜くと同時に目の前のエルフが構えを取る。
「手加減はしない。来い!」
その言葉と共に戦いが始まった。獣との戦いを思い出し、俺はまず防御に徹することを決めた。相手の動きをじっくりと観察し、その剣筋を見極める。無駄に動かず、相手の出方を待つ。
相手は軽く踏み込み、試すように斬りかかってきた。俺は最小限の動きでそれを避け、間合いを保つ。
(速いし、動きに迷いがない。熟練の戦士だ……。だが、だからこそ、癖があるはずだ)
俺は息を整えながら、ひたすら相手の動きを読み、次の一手を探った。
木霊する剣戟の音は、俺がこの森で生きる資格があるのかを問う、過酷な審判の鐘のようだった。
(「この森が試練としてお前に何を課すか、見届けさせてもらう」……か。一体、何者だったんだ? エルドレアが差し向けた監視役か、それとも……)
俺は警戒を強めながら慎重に進んだ。この森の空気は昨日よりもさらに重く、冷たく感じられる。歩きながら、俺は少しずつ周囲の気配を探ることを意識し始めた。この森で無警戒でいることはあまりにも危険だ。
森の奥へと進むうち、ふと異様な静けさに気づいた。風が止み、鳥のさえずりさえも聞こえない。不自然な沈黙だった。
(また何かがいる……しかも、今度は近い)
俺は身を低くし、巨大な木の陰に身を潜めた。そして、注意深く周囲を見渡す。
すると、木々の間に再び昨夜のエルフの姿があった。
だが、今度は一人ではない。彼の背後にはもう一つの影。同じくエルフのようだったが、その雰囲気は明らかに違う。鋭い目つきに贅肉のない引き締まった体。身につけた軽装の革鎧は動きやすさを重視した戦闘向きのものだ。彼らは何かを探しているように慎重に周囲を見回していた。
(何を探しているんだ……まさか、俺か?)
俺が観察していると、突然、その戦士風のエルフが鋭い視線をこちらに向けた。
(バレたか!?)
とっさに身を隠したが、もう遅い。明らかにこちらを探るような動きを見せている。
『お前の立場を明確にする時かもしれんぞ』
カイランの声が冷静に告げる。
(……そうみたいだな)
俺は静かにナイフを握りしめ、ゆっくりと立ち上がった。
「……お前たちは何者だ? 俺をつけていたのか?」
俺の声に二人のエルフが動きを止めた。そして、ゆっくりとこちらに歩み寄ってくる。
「この森を見慣れぬ顔が歩いていると聞いてな。どこから来た?」
「俺はカイン。エルドレア様の命により、試練を受けている最中だ」
俺がそう答えると、戦士風のエルフが疑念を込めて眉をひそめた。
「エルドレア様の試練だと? 我ら森の守護人に、そのような報せは届いていない。貴様、カインと言ったな。聞いたことの無い名だ」
「俺は……元はエルフェンリートの者ではない。だが、今は賢者の候補者として、この森に認められようとしている者だ」
二人のエルフはしばらく俺を観察していたが、やがて昨夜のエルフが静かにうなずいた。
「なるほどな……。その言葉が真実かどうか、今すぐ確かめさせてもらおう」
彼はそう言うと、一歩前へと踏み出し、腰の短剣を抜いた。鋭い銀の刃が森の薄暗い光を浴びて冷たく輝く。
「ここで戦うつもりか?」
「違う。ただ、お前の実力を見たいだけだ。試練を受けているというのなら、この聖なる森を歩くに値する力を持っているはずだろう?」
俺は一瞬考えた。ここで引けば、偽物として排除されるだけか。
『逃げ道はないようだな。やるしかない』
(……そうだな)
俺は深呼吸し、足をしっかりと地面に据えた。ナイフを抜くと同時に目の前のエルフが構えを取る。
「手加減はしない。来い!」
その言葉と共に戦いが始まった。獣との戦いを思い出し、俺はまず防御に徹することを決めた。相手の動きをじっくりと観察し、その剣筋を見極める。無駄に動かず、相手の出方を待つ。
相手は軽く踏み込み、試すように斬りかかってきた。俺は最小限の動きでそれを避け、間合いを保つ。
(速いし、動きに迷いがない。熟練の戦士だ……。だが、だからこそ、癖があるはずだ)
俺は息を整えながら、ひたすら相手の動きを読み、次の一手を探った。
木霊する剣戟の音は、俺がこの森で生きる資格があるのかを問う、過酷な審判の鐘のようだった。
あなたにおすすめの小説
最弱スキルも9999個集まれば最強だよね(完結)
排他的経済水域
ファンタジー
12歳の誕生日
冒険者になる事が憧れのケインは、教会にて
スキル適性値とオリジナルスキルが告げられる
強いスキルを望むケインであったが、
スキル適性値はG
オリジナルスキルも『スキル重複』というよくわからない物
友人からも家族からも馬鹿にされ、
尚最強の冒険者になる事をあきらめないケイン
そんなある日、
『スキル重複』の本来の効果を知る事となる。
その効果とは、
同じスキルを2つ以上持つ事ができ、
同系統の効果のスキルは効果が重複するという
恐ろしい物であった。
このスキルをもって、ケインの下剋上は今始まる。
HOTランキング 1位!(2023年2月21日)
ファンタジー24hポイントランキング 3位!(2023年2月21日)
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す
紅月シン
ファンタジー
七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。
才能限界0。
それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。
レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。
つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。
だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。
その結果として実家の公爵家を追放されたことも。
同日に前世の記憶を思い出したことも。
一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。
その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。
スキル。
そして、自らのスキルである限界突破。
やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。
※小説家になろう様にも投稿しています
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】
のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。
そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。
幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、
“とっておき”のチートで人生を再起動。
剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。
そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。
これは、理想を形にするために動き出した少年の、
少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。
【なろう掲載】
称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!