50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく

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第二章 ロルディアの影

第33話 ロルディアの市場と策謀

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 エルフの森を出てから数日後。
 俺たちはついに交易都市の城壁が見える地点までたどり着いていた。

「……ん、にんげんのにおい……いっぱい」

 ルナがピクピクと鼻を動かしながら、小さな声でつぶやく。
 遠くからでもわかるほど、ロルディアの街には多くの人々が行き交っているようだった。

「あれがロルディア……思ったよりも賑わってるな」

 俺は高台から街を眺めながらつぶやく。
 城壁に囲まれた都市の中には大きな建物が立ち並び、行き交う人々の姿が小さく見えた。
 馬車や商人の隊列も絶えず出入りしており、まさに交易都市という名に相応しい光景だった。

「ここにはエルフもいるのか?」

 俺がエルンに尋ねると、彼女はうなずいた。

「いることはいるわ。でも、多くは森からの使者や、交易を担当する者たちね。長く住み着くエルフは少ないわ」

「なるほどな……まあ、俺たちは目立たないように行動した方がよさそうだ」

 俺は自分がエルフの森から追われた身であることを再確認しながら、慎重に行動することを決めた。

「まずは街に入るための手続きね」

 エルンが言う通り、都市に入るためには門番による審査を受ける必要がある。
 そして、その審査には「通行税」という名目で金が必要になることが多い。

「金なら、迷惑料として追跡者から回収したものがある。問題はないな」

 俺は先日の追跡者から頂戴した財布を確認し、最低限の金貨があることを確認した。
 門番に金を支払い、俺たちは無事にロルディアの街へと足を踏み入れた。
 街の中は活気に満ち、至る所で売買が行われている。

「すごいな……こんな大きな市場は初めてだ」

「交易都市だから。ここにはいろんな国や種族の商人が集まるわ」

 エルンの言葉通り、街にはエルフ、ドワーフ、獣人、果ては東方の商人らしき者までいた。
 異なる文化が交わるこの場所では商品も多種多様だった。

「ルナ、きになる……」

 ルナは興味津々に周囲を見回していた。ルナにとって、人間の街は初めての体験ばかりなのだろう。

「迷子になるなよ」

 俺がルナの頭を軽く撫でると、気持ちよさそうに尻尾を振った。

「さて、まずは何からする?」

「宿を確保するのが先決ね。夜になってからでは、まともな宿が取れないわ」

 エルンの言葉に俺はうなずいた。
 今夜の寝床を確保しなければ、落ち着いて行動することもできない。

 宿を探している途中、俺は自分たちを遠巻きに見ている視線に気づいた。

「……さっそく見張られてる気がするな」

「気づいた?」

 エルンも同じように気づいていたようだ。

「誰かが私たちの動きを探ってるわね」

「昨日の追跡者の仲間か……?」

「可能性はあるわ。でも、街に入ったばかりでこれだと、少し厄介ね」

 俺は周囲を警戒しながら、相手の動きを探る。
 ——気配の主は完全に素人というわけではない。だが、熟練の追跡者ほどの腕もない。

「試しにいてみるか」

「賛成。下手に接触するより、相手の実力を確かめた方がいいわ」

 俺とエルンは人混みに紛れながら視線を巧みにかわし、狭い路地へと入り込んだ。

「ルナ、こっち」

「んっ!」

 俺たちは数回、道を曲がりながら相手の目を完全に欺いた。

「……ついてこれなかったみたいね」

 エルンが後ろを振り返ると、尾行者の気配はすでに消えていた。

「この街には俺たちをマークしてる連中がいる……気を抜けないな」

 俺は改めて、ロルディアの街に潜む影を警戒することにした。

 無事に尾行を撒いた俺たちは手頃な宿を見つけた。

「ようこそ、『旅人の憩い亭』へ!」

 受付の女性が笑顔で迎えてくれる。

 ここは中級の宿であり、騒がしすぎず、かといって高級すぎない適度な雰囲気だった。

「三人分の部屋を頼みたいんだが」

「一部屋でよろしいですか?」

「ベッドは二つか三つあるか?」

「二つの部屋を取るほどの余裕はないし、ルナは一緒に寝られるわよね?」

「んっ、いっしょ」

 一部屋? 俺は一瞬、エルンの言葉の意味を理解できず、固まった。

「待て……俺とお前が同じ部屋ってことか?」

「そうだけど? 何か問題ある?」

 エルンは当然のように言いながら宿の受付へと向かった。

 一方、俺は妙にそわそわしてしまう。普通に考えたら、男女が同じ部屋って……いや、でもこの世界じゃ珍しくないのか?

「なに、きにしてる……?」

 ルナが不思議そうに見上げてくる。
 俺は軽く咳払いをして、考えすぎるのをやめることにした。

 こうして、俺たちはロルディアの宿での夜を迎えることになった——。
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