50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく

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第二章 ロルディアの影

第34話 ギルドへの登録

 ロルディアの朝は早い。
 夜明けとともに商人たちは店を開き、通りには活気が満ちていた。
 馬車が行き交い、行商人が客を呼び込み、街のどこからかパンを焼く香ばしい匂いが漂ってくる。
 俺たちは宿を出ると、早速、冒険者ギルドへと向かった。

「んっ……にんげん、おおい……」

 ルナが戸惑ったように俺の後ろに隠れる。エルフの森では見なかったほどの人間が行き交い、その雑踏の中にいるだけで、ルナには落ち着かないものがあったのだろう。

「大丈夫だ。ずっと俺たちと一緒にいれば危険なことはない」

 俺はルナの頭を軽く撫でて安心させた。

「それにしても、なかなかの人混みね」

 エルンも少し眉をひそめながら周囲を見渡す。

「冒険者ギルドはこの通りを抜けた先よ。ここは交易都市だから、ギルドも規模が大きいはず」

 エルンに案内されながら、俺たちは市場を抜けていった。やがて、ひときわ大きな建物が視界に入る。

『ロルディア冒険者ギルド』——それが、この都市における冒険者たちの拠点だった。

 ギルドの扉を開けると活気のある光景が広がっていた。
 大勢の冒険者たちがカウンターで依頼を受けたり、酒を飲みながら情報を交換したりしている。
 壁にはさまざまな依頼書が貼られ、受付の女性たちが手際よく対応していた。

「やっぱり人が多いわね」

 エルンが周囲を見渡しながら言う。

 俺もまた、興味深くギルド内を観察する。——ここでなら多くの情報が手に入るはずだ。
 まずはギルドに正式に登録し、行動の自由を確保するのが先決だろう。
 俺たちはギルドの受付へと向かった。そこには落ち着いた雰囲気の女性が座っていた。

「いらっしゃいませ。ギルドの登録をご希望ですか?」

「はい、俺と彼女で頼みたい」

 俺が答えると、受付嬢は軽くうなずきながら必要な手続きを始めた。

「ギルド登録には簡単な身元の確認と、試験を受けていただく必要があります」

「試験?」

「はい。冒険者としての基本的な戦闘能力と知識を試す試験です。合格すれば正式な冒険者として登録され、依頼を受けることができます」

「なるほど……どんな試験なんだ?」

「主に模擬戦になります。戦闘能力を見るため、ギルド所属の冒険者と戦っていただきます」

 俺とエルンは顔を見合わせた。

「なるほど、これは楽しみね」

 エルンが軽く笑いながら言う。俺もまた、どんな相手が来るのか興味を抱き始めていた。

 試験はギルドの奥にある訓練場で行われた。広々とした空間で、周囲には数名の冒険者たちが見学していた。

「おい、今日は新入りの試験か?」

「どんな奴らが来たんだ?」

 冒険者たちは俺たちを品定めするように眺めていた。
 やがて、一人の男が前に出てくる。がっしりとした体格で腕には無数の傷跡があった。彼は俺たちを見て、ニヤリと笑った。

「俺が試験官のガルフだ。模擬戦の相手をしてやる」

「よろしく頼む」

 俺は短剣を構え、相手の動きを見定めた。

「では始め!」

 試験官の合図とともにガルフが動いた。ガルフは大きな剣を振るい、俺へと襲いかかる。

 ——速い!

 その一撃は見た目に反して鋭く、風を切る音が耳を打つ。

 俺は紙一重でそれを避け、間合いを詰める。しかし、ガルフはすぐに剣を横薙ぎに振り、俺を退かせた。

「ほう、なかなかやるな」

「お前もな」

 俺はカイランから学んだ事を思い浮かべた。
 ——相手の動きを観察しろ。
 ——攻撃の軌道を見極めろ。

 その時。

「カイン、援護するわ!」

 エルンの詠唱が始まった。

「疾風の精霊シルフィードよ! 我が魔力を代償とし仲間の動きを助けよ! 風速の翼ウィンドブースト!」

 次の瞬間、俺の足元に風が巻き起こり、体が軽くなる感覚がした。——動きが速くなる!

「いいぞ!」

 俺は風の加護を受けながら、ガルフの攻撃を紙一重でかわし、逆にその隙を突く。

「ちっ、やるじゃねぇか!」

 ガルフが後退しながら体勢を立て直す。

「……これなら試験は問題なさそうね」

 勝利を確信したように、エルンは腕を組みながら俺を見守っていた。

「おっと、そこまでだ!」

 ギルドの試験官が試合を止めた。

「試験は合格だ。お前ら、なかなかの腕だな」

 ガルフが剣を収め、俺とエルンを見て笑った。

 試験を終えた俺たちは正式にギルド登録を済ませることができた。

「おめでとうございます。これであなたたちは正式な冒険者です」

 受付嬢がギルドカードを手渡す。

「明日から依頼を受けることができますよ」

「さて、まずは適当な依頼を選ぶか」

「そうね。ここでの立ち回りを考えながら、最初の仕事を決めましょう」

 俺たちは冒険者として、新たな一歩を踏み出した。ロルディアでの冒険がついに始まる。
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