50代無職、エルフに転生で異世界ざわつく

かわさきはっく

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第二章 ロルディアの影

第35話 初仕事と影の思惑

 ロルディアの冒険者ギルドは朝からにぎわいを見せていた。
 受付には依頼を受ける冒険者たちの列ができ、壁には無数の依頼書が貼られている。

 俺たちは正式にギルドに登録されたばかりで、これから初めての依頼を選ぶところだった。

「さて、どの依頼を受けようかしら?」

 エルンが壁に貼られた依頼書を見ながら言う。

「生活のために稼ぐ必要はあるが、情報収集も兼ねた依頼が理想だな」

 俺は慎重に選ぼうと考えていた。

「んっ……これ?」

 ルナが小さな前足で一枚の依頼書を指し示した。

「……護衛依頼、か」

 俺は紙を手に取った。

 依頼内容:交易商人の護衛
 報酬:銀貨30枚
 依頼主:商人ハインズ
 目的地:ロルディア北部のノルハイム村までの護衛(片道1日)
 注意事項:最近、近辺で盗賊の目撃情報あり

「この依頼なら、そこまで危険な仕事じゃなさそうね」

 俺が持っていた紙をのぞき込んで、エルンがつぶやく。

「盗賊か……まあ、奴らが相手なら、これまでの経験で十分対処できるな」

「じゃあ、この依頼で決まりだな」

 俺は依頼書を持ち、受付へと向かった。
 受付嬢がにこやかに対応する。

「この依頼を受けます」

「護衛依頼ですね。依頼主のハインズさんはすでにギルド内で待機されていますよ」

 受付嬢がカウンターの奥を示すと、そこには50代ほどの小太りの商人が座っていた。豪華な服を着ており、どこか用心深そうな目をしている。

「お前たちが今回の護衛か?」

 ハインズは椅子から立ち上がると、俺たちを見て軽く顎を上げた。

「エルフ……か。珍しいな」

 俺とエルンを見比べると、少し考え込むような仕草をした。

「何か問題でも?」

 エルンが微かに警戒する。

「いや、最近エルフが狙われてるって話を聞いたもんでな。護衛役がエルフというのは少し意外だった」

「……狙われている?」

 俺が食いつくと、ハインズは低くつぶやいた。

「ああ……ここ最近、この街でエルフの行商人が何人か行方不明になってる。商人仲間の間でも騒ぎになってるんだ」

「それは……エルフばかりが狙われてるのか?」

「そうみたいだな。街の外で消息を絶ってるケースが多い。盗賊に襲われたのか、それとも別の何かか……」

 俺は目を細める。
 ロルディアに入った時から何者かの視線を感じていた。エルフを狙う動きがあるなら、自分たちも無関係ではいられない。

「ともかく、仕事は仕事だ。明日の朝には出発するから準備をしておけ」

 そう言うと、ハインズはギルドを後にした。

 宿に戻った俺たちは装備を確認しながら、明日の依頼について話し合った。

「……やっぱり、誰かがエルフを狙ってるのね」

 エルンが腕を組む。

「おそらく、単なる盗賊の仕業じゃないな」

 俺も考えを巡らせる。

「んっ……わな?」

 ルナが尻尾をふるふると揺らしながらつぶやいた。

「わな、か……」

 確かに護衛依頼の体で俺たちを誘い出し、襲う可能性もある。だが、考え過ぎかもしれない。

「まあ、どのみち戦闘になる可能性は高い。抜かりなく準備しておこう」

 俺は短剣を手に取り、刃を確かめた。

 ***

 翌朝、俺たちは商人ハインズの隊と合流し、ロルディア北部へ向けて出発した。
 馬車には布で覆われた荷物が積まれ、商人と従者が数名付き添っていた。

「さて、問題なく目的地まで行ければいいがな」

 俺はそうつぶやきながらも、きっと何かが起こりそうだと予感していた。
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