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第三章 戦王の咆哮
第74話 鼓動高鳴る迎撃の陣
グラムベルクの空気がかつてないほどに張り詰めていた。
防衛線の構築が急ピッチで進み、城壁の上には弓兵、通路には重装槍兵、そしてその後方に控える魔術師部隊。全員が息を潜め、迫りくる戦乱の波に備えていた。
中央迎撃本部ではドワーフ王バルグラス・アイアンハートが戦士たちの前に立ち、堂々たる声で命じた。
「この都市に刃を向ける者どもを決して許すな! 我らが誇る鋼の意志で、その野望を打ち砕いてみせよ!!」
その腹の底に響く一声で、兵たちの士気が一気に高まった。大地を叩く歓声が轟く中、俺たちもその列に加わり、王の姿を見つめていた。
「……気骨のある王だな。兵に好かれる理由が分かる気がする」
俺はつぶやきながら、腰の短剣に手を添えた。
ほどなくして、ギルド長代行のドランが俺たちの元にやって来た。
「カイン殿。貴殿らには前衛遊撃任務をお願いしたい。敵の進軍路を塞ぎ、我らが本隊を導いてくれ」
「任された。敵の出鼻をくじいて、風穴を開けてみせるさ」
「私も、再び剣を振るえることを光栄に思います」
セリスが愛剣『風哭』を携え、静かに、しかし力強くうなずいた。
「ルナもやるよ! 今度はもっともっと速く動くんだ!」
「私は支援に徹するわ。どんな攻撃が来ても、皆を守れるように準備しておく」
エルンの瞳が真剣に光る。
横ではティルがローブを整えながら、手元の魔力探知器を食い入るように確認していた。
「ぼ、僕はここから全体を見渡しつつ、結界展開を全力で行います! 背中は僕が守りますから!」
「頼りにしてるぞ、ティル」
俺がにやりと笑うと、ティルは赤くなりながらも真面目な顔でうなずいた。
出撃の直前、俺は仲間たちに目を向ける。
「セリス、無理は禁物だぞ」
「はい……でも今は怖さよりも守りたい気持ちが勝っています」
「……そうか」
俺はうなずいた。
「じゃあ、俺も全力でいく」
ルナはぴょんと跳ねて、「お揃いの短剣で、カインと一緒に頑張るのー!」と笑う。
エルンは杖を手にして目を閉じ、静かに魔力の流れを整えていた。
***
一方、遠く離れた戦場の丘ではダークエルフのネフィラが複雑な魔術陣を操っていた。
「前衛、右翼を少し下げて……そう、今は牽制で十分」
戦場に陣を敷く獣魔族たちが、まるで彼女の意思を読み取るかのように一糸乱れぬ動きを見せる。だが、その統制された空気を裂くように重々しい足音が響いた。
「ネフィラ」
背後から聞こえた声に彼女は振り返る。そこにいたのは漆黒の鎧をまとった巨躯、グロム・ザルガス。
「カインとやら……来てるんだろ?」
「ええ。確認済みです」
「なら、行く」
「まだ全軍が動ききっていません。指揮系統が乱れます」
「知らん。俺は戦いたい奴と戦う。それだけだ」
グロムの目には戦場全体の勝敗など映っていなかった。あるのはただひとつの牙を立てる相手だけ。
「……本当に理屈が通じないお方だわ」
ネフィラがため息をつく間にも、グロムはゆっくりと戦場へ足を進めていった。
***
そのころ、グラムベルクの前線拠点ではカインたちが防衛線に布陣していた。
「敵影、まもなく接近!」
斥候の報告が響く。同時にティルが魔力探知を確認しながら悲鳴に近い声を上げた。
「す、すごい密度の魔力反応です! 一体だけ、異常に大きな反応が……! まるで溶岩の塊が歩いてるみたいな……重くて、熱くて……!」
彼の声は震えていたが、それでも両手で探知器を握りしめ、仲間たちへと情報を届けようとする意志がにじんでいた。
「……カイン、たぶん、それが……」
ルナが肩をすくめて小さく震える。
「ああ。グロム・ザルガスだな」
俺は視線を前へ向ける。
「……来るぞ。奴が動き始めた」
そして、ついにそれは見えた。
平原を覆うように土煙が巻き上がる。獣魔族たちの咆哮と重い足音が混ざり合い、地面を震わせる。
その中心。異様な気配をまといながら、グロム・ザルガスがゆっくりと現れた。
「うわっ……あいつ、でかい……」
ルナがぽつりとつぶやく。
漆黒の鎧に覆われた巨体はまるで山が動いているかのようだった。大地を踏みしめるたびに風が唸り、地表がわずかに陥没する。
その姿を見た兵たちが思わず息を呑む。
「……あれが獣魔族の最強……」
エルンの声に、わずかな震えが混じる。
「セリス、いけるか?」
俺が問うと、セリスはぎゅっと柄を握りしめてうなずいた。
「はい、カイン殿。ここで退けば守るべきものを失います」
「……いい心構えだ。なら、こっちも全力でいくぞ」
風がざわめく。
グロムの瞳が正確に俺たちを捉えた。次の瞬間、大地を割るような衝撃音が響く。
巨躯が駆け出した。獣の咆哮とともに戦場そのものが揺れ動く——。
防衛線の構築が急ピッチで進み、城壁の上には弓兵、通路には重装槍兵、そしてその後方に控える魔術師部隊。全員が息を潜め、迫りくる戦乱の波に備えていた。
中央迎撃本部ではドワーフ王バルグラス・アイアンハートが戦士たちの前に立ち、堂々たる声で命じた。
「この都市に刃を向ける者どもを決して許すな! 我らが誇る鋼の意志で、その野望を打ち砕いてみせよ!!」
その腹の底に響く一声で、兵たちの士気が一気に高まった。大地を叩く歓声が轟く中、俺たちもその列に加わり、王の姿を見つめていた。
「……気骨のある王だな。兵に好かれる理由が分かる気がする」
俺はつぶやきながら、腰の短剣に手を添えた。
ほどなくして、ギルド長代行のドランが俺たちの元にやって来た。
「カイン殿。貴殿らには前衛遊撃任務をお願いしたい。敵の進軍路を塞ぎ、我らが本隊を導いてくれ」
「任された。敵の出鼻をくじいて、風穴を開けてみせるさ」
「私も、再び剣を振るえることを光栄に思います」
セリスが愛剣『風哭』を携え、静かに、しかし力強くうなずいた。
「ルナもやるよ! 今度はもっともっと速く動くんだ!」
「私は支援に徹するわ。どんな攻撃が来ても、皆を守れるように準備しておく」
エルンの瞳が真剣に光る。
横ではティルがローブを整えながら、手元の魔力探知器を食い入るように確認していた。
「ぼ、僕はここから全体を見渡しつつ、結界展開を全力で行います! 背中は僕が守りますから!」
「頼りにしてるぞ、ティル」
俺がにやりと笑うと、ティルは赤くなりながらも真面目な顔でうなずいた。
出撃の直前、俺は仲間たちに目を向ける。
「セリス、無理は禁物だぞ」
「はい……でも今は怖さよりも守りたい気持ちが勝っています」
「……そうか」
俺はうなずいた。
「じゃあ、俺も全力でいく」
ルナはぴょんと跳ねて、「お揃いの短剣で、カインと一緒に頑張るのー!」と笑う。
エルンは杖を手にして目を閉じ、静かに魔力の流れを整えていた。
***
一方、遠く離れた戦場の丘ではダークエルフのネフィラが複雑な魔術陣を操っていた。
「前衛、右翼を少し下げて……そう、今は牽制で十分」
戦場に陣を敷く獣魔族たちが、まるで彼女の意思を読み取るかのように一糸乱れぬ動きを見せる。だが、その統制された空気を裂くように重々しい足音が響いた。
「ネフィラ」
背後から聞こえた声に彼女は振り返る。そこにいたのは漆黒の鎧をまとった巨躯、グロム・ザルガス。
「カインとやら……来てるんだろ?」
「ええ。確認済みです」
「なら、行く」
「まだ全軍が動ききっていません。指揮系統が乱れます」
「知らん。俺は戦いたい奴と戦う。それだけだ」
グロムの目には戦場全体の勝敗など映っていなかった。あるのはただひとつの牙を立てる相手だけ。
「……本当に理屈が通じないお方だわ」
ネフィラがため息をつく間にも、グロムはゆっくりと戦場へ足を進めていった。
***
そのころ、グラムベルクの前線拠点ではカインたちが防衛線に布陣していた。
「敵影、まもなく接近!」
斥候の報告が響く。同時にティルが魔力探知を確認しながら悲鳴に近い声を上げた。
「す、すごい密度の魔力反応です! 一体だけ、異常に大きな反応が……! まるで溶岩の塊が歩いてるみたいな……重くて、熱くて……!」
彼の声は震えていたが、それでも両手で探知器を握りしめ、仲間たちへと情報を届けようとする意志がにじんでいた。
「……カイン、たぶん、それが……」
ルナが肩をすくめて小さく震える。
「ああ。グロム・ザルガスだな」
俺は視線を前へ向ける。
「……来るぞ。奴が動き始めた」
そして、ついにそれは見えた。
平原を覆うように土煙が巻き上がる。獣魔族たちの咆哮と重い足音が混ざり合い、地面を震わせる。
その中心。異様な気配をまといながら、グロム・ザルガスがゆっくりと現れた。
「うわっ……あいつ、でかい……」
ルナがぽつりとつぶやく。
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その姿を見た兵たちが思わず息を呑む。
「……あれが獣魔族の最強……」
エルンの声に、わずかな震えが混じる。
「セリス、いけるか?」
俺が問うと、セリスはぎゅっと柄を握りしめてうなずいた。
「はい、カイン殿。ここで退けば守るべきものを失います」
「……いい心構えだ。なら、こっちも全力でいくぞ」
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