115 / 330
第五章 影理の司祭
第115話 光の反撃
短剣を振り抜いた瞬間、空間にひびが走った。
シャルガの周囲を囲んでいた理式の術式が鋭い音もなく、ばらばらと崩れていく。
破壊された術式の断片が消えていくのを見ながら俺は息を詰めた。
「——やった、止まった……!」
だが、すぐに膝が崩れた。魔力を限界まで刃に注ぎ込んだ反動が全身を襲う。
視界が揺れる。シャルガが静かに顔を上げるのが見えた。仮面の奥、その目は変わらず無感情だった。だが、術式を破られた彼の手は止まっていた。その間をカズエルは見逃さなかった。
「よくやった、カイン……今だ!」
自身にかけられた『ヴェルナス』を解除したカズエルが空中に素早く術式を描く。彼の指が空気をかき分けるたび、淡い光が軌跡をなぞり、理式が構築されていく。
「『ヴェルナス』の効果範囲、認識完了。……術式介入、開始!」
カズエルが展開したのは、精緻なカウンター理式——。
干渉式・逆相律。
緻密に組まれたコードのような理式が静かに発動し、空間に染みこんだ『沈黙の封印』に干渉を開始する。
「一気にいくぞ……!」
カズエルの魔力が閃いた。
次の瞬間、音が戻った。足音、呼吸、剣の震え——仲間たちの存在が空間に『声』として還ってきた。
「ん……な、なにが起こったの……!?」
最初に立ち上がったのはルナだった。混乱しながらも、すぐに短剣を構え直す。
続いてエルン。静かに目を開き、風を読むように手を広げる。
「空気が動いてる……カズエルが封印を解いてくれたのね……!」
セリスも息を整え、地を蹴って立ち上がる。
「暗闇に支配されたと思ったけれど……今は見えます!」
誰も言葉を交わさずとも、今が反撃のときだと分かっていた。
「ヴェルナス……破られた、か?」
シャルガの声が低く響いた。その仮面の奥で、何かがわずかに揺れたような気がした。
そして——。彼は再び片手を掲げた。
「再構成、発動」
空間に新たな術式が浮かび上がる。またしても『ヴェルナス』……! けれど——。
「無駄だ!」
カズエルがすかさず対抗理式を起動させる。
「干渉式・封律断層! お前の術式はもう、こっちが読んだ!」
シャルガの術式が揺れ、文字列が崩れる。ヴェルナス、再封印——失敗。
仲間たちは動いた。セリスが真っ先に飛び出し、地を蹴って距離を詰める。
「させない!」
鋭く振るわれた剣がシャルガの右腕を斬り裂いた。腕が宙に浮き、仮面の影がかすかに歪む。しかし次の瞬間、シャルガの身体はゆらりと揺れ——。そのまま空間から消えた。斬り落とされた右腕だけを残して——。
「逃げた……?」
ルナが息を呑む。
俺は剣を下げながら、すぐにカズエルへと駆け寄った。
「カズエル、やつはまだ近くにいるか!?」
「……わからない。だが、空間の裏に潜んだまま、この場を消し飛ばす準備をしている可能性が高い」
カズエルは焦ったように理式を組み直し始める。
「今すぐ起動する……だから、カイン、エルン……お前たちの『光』をありったけ、俺の理式にぶつけてくれ!」
背後では斬り落とされた腕がゆっくりと蒸発しはじめていた。
この空間の最奥で——。
何かが、もう一度、蠢いている。
シャルガの周囲を囲んでいた理式の術式が鋭い音もなく、ばらばらと崩れていく。
破壊された術式の断片が消えていくのを見ながら俺は息を詰めた。
「——やった、止まった……!」
だが、すぐに膝が崩れた。魔力を限界まで刃に注ぎ込んだ反動が全身を襲う。
視界が揺れる。シャルガが静かに顔を上げるのが見えた。仮面の奥、その目は変わらず無感情だった。だが、術式を破られた彼の手は止まっていた。その間をカズエルは見逃さなかった。
「よくやった、カイン……今だ!」
自身にかけられた『ヴェルナス』を解除したカズエルが空中に素早く術式を描く。彼の指が空気をかき分けるたび、淡い光が軌跡をなぞり、理式が構築されていく。
「『ヴェルナス』の効果範囲、認識完了。……術式介入、開始!」
カズエルが展開したのは、精緻なカウンター理式——。
干渉式・逆相律。
緻密に組まれたコードのような理式が静かに発動し、空間に染みこんだ『沈黙の封印』に干渉を開始する。
「一気にいくぞ……!」
カズエルの魔力が閃いた。
次の瞬間、音が戻った。足音、呼吸、剣の震え——仲間たちの存在が空間に『声』として還ってきた。
「ん……な、なにが起こったの……!?」
最初に立ち上がったのはルナだった。混乱しながらも、すぐに短剣を構え直す。
続いてエルン。静かに目を開き、風を読むように手を広げる。
「空気が動いてる……カズエルが封印を解いてくれたのね……!」
セリスも息を整え、地を蹴って立ち上がる。
「暗闇に支配されたと思ったけれど……今は見えます!」
誰も言葉を交わさずとも、今が反撃のときだと分かっていた。
「ヴェルナス……破られた、か?」
シャルガの声が低く響いた。その仮面の奥で、何かがわずかに揺れたような気がした。
そして——。彼は再び片手を掲げた。
「再構成、発動」
空間に新たな術式が浮かび上がる。またしても『ヴェルナス』……! けれど——。
「無駄だ!」
カズエルがすかさず対抗理式を起動させる。
「干渉式・封律断層! お前の術式はもう、こっちが読んだ!」
シャルガの術式が揺れ、文字列が崩れる。ヴェルナス、再封印——失敗。
仲間たちは動いた。セリスが真っ先に飛び出し、地を蹴って距離を詰める。
「させない!」
鋭く振るわれた剣がシャルガの右腕を斬り裂いた。腕が宙に浮き、仮面の影がかすかに歪む。しかし次の瞬間、シャルガの身体はゆらりと揺れ——。そのまま空間から消えた。斬り落とされた右腕だけを残して——。
「逃げた……?」
ルナが息を呑む。
俺は剣を下げながら、すぐにカズエルへと駆け寄った。
「カズエル、やつはまだ近くにいるか!?」
「……わからない。だが、空間の裏に潜んだまま、この場を消し飛ばす準備をしている可能性が高い」
カズエルは焦ったように理式を組み直し始める。
「今すぐ起動する……だから、カイン、エルン……お前たちの『光』をありったけ、俺の理式にぶつけてくれ!」
背後では斬り落とされた腕がゆっくりと蒸発しはじめていた。
この空間の最奥で——。
何かが、もう一度、蠢いている。
あなたにおすすめの小説
最弱スキルも9999個集まれば最強だよね(完結)
排他的経済水域
ファンタジー
12歳の誕生日
冒険者になる事が憧れのケインは、教会にて
スキル適性値とオリジナルスキルが告げられる
強いスキルを望むケインであったが、
スキル適性値はG
オリジナルスキルも『スキル重複』というよくわからない物
友人からも家族からも馬鹿にされ、
尚最強の冒険者になる事をあきらめないケイン
そんなある日、
『スキル重複』の本来の効果を知る事となる。
その効果とは、
同じスキルを2つ以上持つ事ができ、
同系統の効果のスキルは効果が重複するという
恐ろしい物であった。
このスキルをもって、ケインの下剋上は今始まる。
HOTランキング 1位!(2023年2月21日)
ファンタジー24hポイントランキング 3位!(2023年2月21日)
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。
久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。
事故は、予想外に起こる。
そして、異世界転移? 転生も。
気がつけば、見たことのない森。
「おーい」
と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。
その時どう行動するのか。
また、その先は……。
初期は、サバイバル。
その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。
有名になって、王都へ。
日本人の常識で突き進む。
そんな感じで、進みます。
ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。
異世界側では、少し非常識かもしれない。
面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す
紅月シン
ファンタジー
七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。
才能限界0。
それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。
レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。
つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。
だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。
その結果として実家の公爵家を追放されたことも。
同日に前世の記憶を思い出したことも。
一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。
その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。
スキル。
そして、自らのスキルである限界突破。
やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。
※小説家になろう様にも投稿しています
異世界転生したおっさんが普通に生きる
カジキカジキ
ファンタジー
第18回 ファンタジー小説大賞 読者投票93位
応援頂きありがとうございました!
異世界転生したおっさんが唯一のチートだけで生き抜く世界
主人公のゴウは異世界転生した元冒険者
引退して狩をして過ごしていたが、ある日、ギルドで雇った子どもに出会い思い出す。
知識チートで町の食と環境を改善します!! ユルくのんびり過ごしたいのに、何故にこんなに忙しい!?
侯爵家三男からはじまる異世界チート冒険録 〜元プログラマー、スキルと現代知識で理想の異世界ライフ満喫中!〜【奨励賞】
のびすけ。
ファンタジー
気づけば侯爵家の三男として異世界に転生していた元プログラマー。
そこはどこか懐かしく、けれど想像以上に自由で――ちょっとだけ危険な世界。
幼い頃、命の危機をきっかけに前世の記憶が蘇り、
“とっておき”のチートで人生を再起動。
剣も魔法も、知識も商才も、全てを武器に少年は静かに準備を進めていく。
そして12歳。ついに彼は“新たなステージ”へと歩み出す。
これは、理想を形にするために動き出した少年の、
少し不思議で、ちょっとだけチートな異世界物語――その始まり。
【なろう掲載】
称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!