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第七章 森のざわめき
第144話 長老たちの告白
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地下祭壇の重い空気から逃れるように、俺たちは無言で石の階段を上っていた。足元を照らす光魔法の明かりが、仲間たちの強張った顔を映し出す。エルンは唇を固く結び、セリスは信じられないというように虚空を見つめている。ルナは、ただ黙って俺のローブの裾を握りしめていた。
気高く、そしてあまりに悲しい自己犠牲。その真実が俺たちの心に重くのしかかっていた。
「……長老会に、話を聞きに行く」
地上へ戻る光が見えた時、俺は静かに、しかし強い決意を込めて言った。
「この事実を彼らがどこまで知っていたのか。それを確かめなければ何も始まらない」
仲間たちは黙ってうなずいた。
議事堂は俺たちが訪れた時と同じ静けさに包まれていた。だが、俺たちの纏うただならぬ雰囲気に、緊急で招集された長老たちは息を呑む。
俺は円卓の中央に立ち、静かに口火を切った。
「賢者の神殿の地下で、我々は『古の契約』の真実を見ました」
俺の言葉は議事堂の空気を凍りつかせた。
カズエルが祭壇に刻まれていた古代語の契約文面をよどみなく読み上げ、エルンが消えゆこうとしている大精霊の様子を悲痛な面持ちで語る。
長老たちの顔から血の気が引いていくのが分かった。何人かは目を伏せ、ある者は固く拳を握りしめている。
「……知っていたのですか。あなた方はこの森が、あの方の尊い犠牲の上に成り立っていることを」
セリスの問いは刃のように鋭かった。
長い、重い沈黙。それを破ったのは保守派の長老の一人だった。
「……それは森の繁栄のために必要な古からの習わしだ! 我らが祖先が決めたこと。我々にそれを覆すことなど……!」
「必要な犠牲ですって!?」
エルンの声が抑えていた感情と共に震えた。
「あの方は自らの意志で森の礎となられた! それなのに、あなた方はその気高い意志を忘れ、ただ恩恵だけを受け取ってきた! 限界を迎え、消えゆこうとしている今になっても、見て見ぬふりをするのですか!」
エルンの言葉はもはや怒りではなかった。深い悲しみと失望だった。
長老たちの告白は議事堂に集ったエルフたちの心を深くざわつかせた。
その時、エルドレアがゆっくりと立ち上がった。その顔には深い苦悩と後悔が刻まれている。
「……我々は知っていた。だが、真実のすべてを知っていたわけではない」
彼の告白に議事堂は水を打ったように静まり返った。
「我々が物心ついた頃にはすでに契約は存在していた。我々が学んだのは『古の契約が森の豊穣を守っている』という事実だけ。その代償が大精霊様の魂そのものであることまでは……」
エルドレアの声は震えていた。
「伝承は長い年月の中で歪み、失われた。我々は契約の解除が森の即時崩壊を意味すると信じ、恐れていた。だから……問題を先送りにし、見て見ぬふりをしてきたのだ。いつか、我々ではない誰かが解決してくれると、心のどこかで願いながら……」
それはあまりにも弱く、身勝手な言い分だった。だが、彼の瞳に浮かぶ涙は紛れもない本物だった。彼らもまた、変えられないと信じ込んだ過去の重みに何百年も苛まれてきたのだ。
エルドレアは俺に向かって深く頭を下げた。
「賢者カイン……我々にはもう、この問題を解決する資格も、力もない。どうか……森の未来をあなたに託させてはくれまいか」
その言葉は森全体の命運を俺の双肩に委ねる、重い重い宣言だった。
俺はただ、静かにそれを受け止めるしかなかった。
その日の夜、俺たちは賢者の住居に戻った。暖炉の火が揺れる中、誰もが重い沈黙に沈んでいる。
森の未来、大精霊の命、そして仲間たちの想い。
すべてを背負い、俺はどんな選択をすべきなのか。答えはまだ見つからなかった。
気高く、そしてあまりに悲しい自己犠牲。その真実が俺たちの心に重くのしかかっていた。
「……長老会に、話を聞きに行く」
地上へ戻る光が見えた時、俺は静かに、しかし強い決意を込めて言った。
「この事実を彼らがどこまで知っていたのか。それを確かめなければ何も始まらない」
仲間たちは黙ってうなずいた。
議事堂は俺たちが訪れた時と同じ静けさに包まれていた。だが、俺たちの纏うただならぬ雰囲気に、緊急で招集された長老たちは息を呑む。
俺は円卓の中央に立ち、静かに口火を切った。
「賢者の神殿の地下で、我々は『古の契約』の真実を見ました」
俺の言葉は議事堂の空気を凍りつかせた。
カズエルが祭壇に刻まれていた古代語の契約文面をよどみなく読み上げ、エルンが消えゆこうとしている大精霊の様子を悲痛な面持ちで語る。
長老たちの顔から血の気が引いていくのが分かった。何人かは目を伏せ、ある者は固く拳を握りしめている。
「……知っていたのですか。あなた方はこの森が、あの方の尊い犠牲の上に成り立っていることを」
セリスの問いは刃のように鋭かった。
長い、重い沈黙。それを破ったのは保守派の長老の一人だった。
「……それは森の繁栄のために必要な古からの習わしだ! 我らが祖先が決めたこと。我々にそれを覆すことなど……!」
「必要な犠牲ですって!?」
エルンの声が抑えていた感情と共に震えた。
「あの方は自らの意志で森の礎となられた! それなのに、あなた方はその気高い意志を忘れ、ただ恩恵だけを受け取ってきた! 限界を迎え、消えゆこうとしている今になっても、見て見ぬふりをするのですか!」
エルンの言葉はもはや怒りではなかった。深い悲しみと失望だった。
長老たちの告白は議事堂に集ったエルフたちの心を深くざわつかせた。
その時、エルドレアがゆっくりと立ち上がった。その顔には深い苦悩と後悔が刻まれている。
「……我々は知っていた。だが、真実のすべてを知っていたわけではない」
彼の告白に議事堂は水を打ったように静まり返った。
「我々が物心ついた頃にはすでに契約は存在していた。我々が学んだのは『古の契約が森の豊穣を守っている』という事実だけ。その代償が大精霊様の魂そのものであることまでは……」
エルドレアの声は震えていた。
「伝承は長い年月の中で歪み、失われた。我々は契約の解除が森の即時崩壊を意味すると信じ、恐れていた。だから……問題を先送りにし、見て見ぬふりをしてきたのだ。いつか、我々ではない誰かが解決してくれると、心のどこかで願いながら……」
それはあまりにも弱く、身勝手な言い分だった。だが、彼の瞳に浮かぶ涙は紛れもない本物だった。彼らもまた、変えられないと信じ込んだ過去の重みに何百年も苛まれてきたのだ。
エルドレアは俺に向かって深く頭を下げた。
「賢者カイン……我々にはもう、この問題を解決する資格も、力もない。どうか……森の未来をあなたに託させてはくれまいか」
その言葉は森全体の命運を俺の双肩に委ねる、重い重い宣言だった。
俺はただ、静かにそれを受け止めるしかなかった。
その日の夜、俺たちは賢者の住居に戻った。暖炉の火が揺れる中、誰もが重い沈黙に沈んでいる。
森の未来、大精霊の命、そして仲間たちの想い。
すべてを背負い、俺はどんな選択をすべきなのか。答えはまだ見つからなかった。
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