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第十七章 灼熱の三頭竜
第289話 炎に沈む森
天が、三つの巨大な影に覆われた。
エルフェンリートの森の上空に到達したワイバーンロードたちは威圧するようにその翼を広げ、黒鉄の鱗に陽光を鈍く反射させている。
眼下に広がる緑の海を、まるで獲物として値踏みするかのような、冷酷な眼差しで見下ろしていた。
「――今よ! 総員、結界を展開!」
ミラネの凛とした声が大樹の麓に設置された臨時指揮所から森全体へと響き渡る。
その号令を合図に森の各地に配置された魔術師たちが、一斉に杖を天に掲げた。彼らの足元から淡い光の紋様が広がり、木々の根を伝い、大樹の枝を駆け巡る。森全体に張り巡らせられた古の防衛術式。それが、民の祈りと魔力を受けて、巨大な翠色のドームとなって森の上空を覆い尽くした。
「持ち堪えて……!」
ミラネは指揮所の最上階から、きらめく結界を見上げた。
この結界を展開し続ける理由は三つ。
第一に、罪のない民が地下の聖域へ避難する時間を稼ぐため。
第二に、ヴィンドールが指揮する数少ない戦士たちが、対空用の弩や罠の準備を整えるため。
そして何より――賢者カインが必ず帰還するという報せを信じ、その時まで、この故郷を守り抜くためである。
その決意を嘲笑うかのように天から炎が降り注いだ。
ゴオオオオオッ!!
一体のワイバーンロードが吐き出した灼熱のブレスが結界の頂点に激突し、爆音と共に炸裂する。
翠色のドームが激しくきしみ、魔力を注ぎ続ける魔術師たちの顔に苦悶の色が浮かんだ。
「まだだ! 回復薬の使用はわしが合図するまで待て! 今は手にした魔石から力を引き出し、結界の歪みが最も大きい一点に集中させろ! この波さえ乗り切れば、必ず勝機はある!」
ヴィンドールが最前線で杖を突き、的確な指示を飛ばす。その声は、かつての傲慢な長老のものではなく、森の全てを知り尽くした者として、民を勝利へ導かんとする魂の叫びだった。
だが、ワイバーンたちの猛攻は執拗だ。
ブレスを放ち、雷撃を叩きつけ、その巨大な爪で結界を引き裂こうとする。
防戦一方。魔術師たちの魔力はみるみるうちに削られていき、結界の輝きは目に見えて弱まっていった。
ミシミシ……パリンッ!
不吉な音が響き、ついに結界の数カ所に蜘蛛の巣のような亀裂が走った。
「……もう、もたない……!」
一人の若い魔術師が限界を迎え膝から崩れ落ちる。
その亀裂から漏れ出した竜の威圧感と熱風が、民の心に絶望の影を落とした。
結界が砕け、森の最期を覚悟した――その瞬間だった。
ヒュオオオオオオッ!!
地平線の彼方から、風を切る音と共に四つの影が凄まじい速度で戦場へと突入してきた。
「な……!?」
ミラネが信じられないといったように目を見開く。
その先頭を駆けるのは見間違えるはずもない。水の魔力をその身にまとい、怒りと決意に燃える瞳で空を睨みつける、賢者カインの姿だった。
「間に合った……!」
カインは馬上で天を舞うワイバーンロードを睨みつけ、叫んだ。
「――よくも、俺たちの故郷を!」
その声は森の民にとって、何よりも力強い希望の光となった。
絶望に沈みかけていた戦場に反撃の狼煙が上がろうとしていた。
エルフェンリートの森の上空に到達したワイバーンロードたちは威圧するようにその翼を広げ、黒鉄の鱗に陽光を鈍く反射させている。
眼下に広がる緑の海を、まるで獲物として値踏みするかのような、冷酷な眼差しで見下ろしていた。
「――今よ! 総員、結界を展開!」
ミラネの凛とした声が大樹の麓に設置された臨時指揮所から森全体へと響き渡る。
その号令を合図に森の各地に配置された魔術師たちが、一斉に杖を天に掲げた。彼らの足元から淡い光の紋様が広がり、木々の根を伝い、大樹の枝を駆け巡る。森全体に張り巡らせられた古の防衛術式。それが、民の祈りと魔力を受けて、巨大な翠色のドームとなって森の上空を覆い尽くした。
「持ち堪えて……!」
ミラネは指揮所の最上階から、きらめく結界を見上げた。
この結界を展開し続ける理由は三つ。
第一に、罪のない民が地下の聖域へ避難する時間を稼ぐため。
第二に、ヴィンドールが指揮する数少ない戦士たちが、対空用の弩や罠の準備を整えるため。
そして何より――賢者カインが必ず帰還するという報せを信じ、その時まで、この故郷を守り抜くためである。
その決意を嘲笑うかのように天から炎が降り注いだ。
ゴオオオオオッ!!
一体のワイバーンロードが吐き出した灼熱のブレスが結界の頂点に激突し、爆音と共に炸裂する。
翠色のドームが激しくきしみ、魔力を注ぎ続ける魔術師たちの顔に苦悶の色が浮かんだ。
「まだだ! 回復薬の使用はわしが合図するまで待て! 今は手にした魔石から力を引き出し、結界の歪みが最も大きい一点に集中させろ! この波さえ乗り切れば、必ず勝機はある!」
ヴィンドールが最前線で杖を突き、的確な指示を飛ばす。その声は、かつての傲慢な長老のものではなく、森の全てを知り尽くした者として、民を勝利へ導かんとする魂の叫びだった。
だが、ワイバーンたちの猛攻は執拗だ。
ブレスを放ち、雷撃を叩きつけ、その巨大な爪で結界を引き裂こうとする。
防戦一方。魔術師たちの魔力はみるみるうちに削られていき、結界の輝きは目に見えて弱まっていった。
ミシミシ……パリンッ!
不吉な音が響き、ついに結界の数カ所に蜘蛛の巣のような亀裂が走った。
「……もう、もたない……!」
一人の若い魔術師が限界を迎え膝から崩れ落ちる。
その亀裂から漏れ出した竜の威圧感と熱風が、民の心に絶望の影を落とした。
結界が砕け、森の最期を覚悟した――その瞬間だった。
ヒュオオオオオオッ!!
地平線の彼方から、風を切る音と共に四つの影が凄まじい速度で戦場へと突入してきた。
「な……!?」
ミラネが信じられないといったように目を見開く。
その先頭を駆けるのは見間違えるはずもない。水の魔力をその身にまとい、怒りと決意に燃える瞳で空を睨みつける、賢者カインの姿だった。
「間に合った……!」
カインは馬上で天を舞うワイバーンロードを睨みつけ、叫んだ。
「――よくも、俺たちの故郷を!」
その声は森の民にとって、何よりも力強い希望の光となった。
絶望に沈みかけていた戦場に反撃の狼煙が上がろうとしていた。
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