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第十七章 灼熱の三頭竜
第291話 地に墜ちた翼
ズウウウゥゥン……!
森を揺るがす轟音が響き渡った。
片翼を砕かれたワイバーンロードが、巨木を薙ぎ倒しながら大地に激突し、その衝撃で土煙が天高く舞い上がる。
「一体墜としたわ!」
指揮所のミラネから歓喜の声が上がる。
だが、戦いはまだ終わっていない。空には仲間を討たれ怒りに燃える二つの影が、今まさにこちらへと向き直ろうとしていた。
「追撃するぞ!」
俺は即座に次の指示を飛ばした。
「レオナルド、ヴィンドール! 地上部隊を率いて、地に墜ちた翼を完全に叩け!」
「承知した!」
二人は即座に呼応する。レオナルドは森の戦士たちをまとめ上げ、ヴィンドールも数名の熟練魔術師に号令をかけた。地の利を知り尽くした彼らは墜落地点へと続く最短の獣道を風のように駆け抜けていった。
「エルン、ルナ! 俺たちは上空の二体を引きつける! 奴らを地上部隊に行かせるな!」
「はいっ!」
「任せてっ!」
俺たちは空を見据え、次なる戦いに備える。
戦場は空と地に二分された。
***
墜落現場では負傷したワイバーンロードがもがき苦しんでいた。
その巨体は起き上がろうと身をよじるが、砕かれた翼が言うことを聞かず、ただ無様に地面を掻くだけだ。だが、その金色の瞳に宿る殺意は衰えておらず、口からは灼熱のブレスの残滓が黒い煙となって漏れ出ている。
「ギシャアアアアアッ!」
怒りの咆哮が森を震わせる。
手負いのワイバーンロード。その巨体が再び力を取り戻そうとした、その瞬間、森が動いた。
「精霊よ、我らが願いを聞き届けよ! 猛る獣の四肢を絡めとれ!」
ヴィンドールの朗々とした詠唱が響き渡る。
その声に応え、ワイバーンの足元の大地が裂け、そこから幾重もの太い蔦が、まるで生きている大蛇のように飛び出した。蔦は竜の足や無事だった方の翼に瞬く間に絡みつき、その動きを強引に地面へと縫い付けていく。
「今だ! 霧を!」
ヴィンドールの指示を受け、同行していた魔術師たちが杖を掲げる。
周囲の木々から濃密な霧が発生し、ワイバーンの視界を完全に覆い尽くした。
方向感覚を失った竜は闇雲に首を振り回し、混乱したように咆哮を繰り返す。
地の利を最大限に活かした、エルフならではの戦術。
森そのものが侵略者に対する牙となったのだ。そして、その牙の切っ先となる男が動き出す。
「怯むな! 奴はもはや地を這うだけのトカゲ! 我ら森の守護者の力を見せてやれ!」
レオナルドが馬から飛び降り、その両手に鍛え直された二対の牙を抜き放つ。
彼の後に続き、剣や槍を手にした戦士たちが一斉に木々の間から躍り出た。
「散開! 懐に潜り込み、関節を狙え!」
レオナルドの的確な指示のもと、戦士たちは竜の巨体に張り付くように接近し、硬い鱗の隙間を狙って刃を叩き込んでいく。
「グオオオオオッ!」
無数の刃が肉を裂く痛みにワイバーンが暴れ狂う。
その巨大な尻尾が薙ぎ払われ、数人の戦士がまるで木の葉のように吹き飛ばされた。
「退くな! 回復部隊がすぐに来る!」
レオナルドは叫びながら、自らも死地である竜の懐へと飛び込んだ。
彼は振り下ろされる巨大な爪を紙一重でかわすと、その勢いを利用して竜の腕を駆け上がり、無防備になった首の付け根へ肉薄する。
だが、ワイバーンロードの生命力は尋常ではなかった。致命傷に近い傷を負いながらも、その巨大な顎をかっと開き、至近距離にいるレオナルドを喰らわんと迫る。
「させん!」
その時、戦場に雷鳴が轟いた。ヴィンドールが切り札を切ったのだ。
「雷の精霊ラミエルよ、我が魔力を糧とし彼の者を戒めよ! ――雷神の枷!」
ドォンッ!!
天から降り注いだ紫電の槍がワイバーンの脳天を貫き、その神経を焼き切る。全身が激しく痙攣し、レオナルドを噛み砕こうとしていた顎が、ぴたりと止まった。
その、ほんの一瞬の好機。レオナルドは見逃さなかった。
「終わりだ」
彼は麻痺した竜の首元で、その身を翻す。
交差した二振りの剣が森に差す木漏れ日を反射し、美しい円弧を描いた。
ザンッ――!
風を切る音と共に、鋼鉄よりも硬いとされる竜の鱗ごと、その太い首が切断された。
ズシン、と。
首を失った巨体が大地を揺らし、完全に沈黙する。
噴き出す血煙の中、レオナルドは静かに剣を振るい、刀身についた脂を払った。
「……一体、討ち取ったり」
その低く響く声に応えるかのように、森の奥から割れんばかりの歓声が沸き起こった。だが、レオナルドは気を抜くことなく空を見上げた。そこには仲間を討たれ、怒りに燃える二つの影が荒々しく咆哮を上げている。
戦いはまだ終わっていない。
森を揺るがす轟音が響き渡った。
片翼を砕かれたワイバーンロードが、巨木を薙ぎ倒しながら大地に激突し、その衝撃で土煙が天高く舞い上がる。
「一体墜としたわ!」
指揮所のミラネから歓喜の声が上がる。
だが、戦いはまだ終わっていない。空には仲間を討たれ怒りに燃える二つの影が、今まさにこちらへと向き直ろうとしていた。
「追撃するぞ!」
俺は即座に次の指示を飛ばした。
「レオナルド、ヴィンドール! 地上部隊を率いて、地に墜ちた翼を完全に叩け!」
「承知した!」
二人は即座に呼応する。レオナルドは森の戦士たちをまとめ上げ、ヴィンドールも数名の熟練魔術師に号令をかけた。地の利を知り尽くした彼らは墜落地点へと続く最短の獣道を風のように駆け抜けていった。
「エルン、ルナ! 俺たちは上空の二体を引きつける! 奴らを地上部隊に行かせるな!」
「はいっ!」
「任せてっ!」
俺たちは空を見据え、次なる戦いに備える。
戦場は空と地に二分された。
***
墜落現場では負傷したワイバーンロードがもがき苦しんでいた。
その巨体は起き上がろうと身をよじるが、砕かれた翼が言うことを聞かず、ただ無様に地面を掻くだけだ。だが、その金色の瞳に宿る殺意は衰えておらず、口からは灼熱のブレスの残滓が黒い煙となって漏れ出ている。
「ギシャアアアアアッ!」
怒りの咆哮が森を震わせる。
手負いのワイバーンロード。その巨体が再び力を取り戻そうとした、その瞬間、森が動いた。
「精霊よ、我らが願いを聞き届けよ! 猛る獣の四肢を絡めとれ!」
ヴィンドールの朗々とした詠唱が響き渡る。
その声に応え、ワイバーンの足元の大地が裂け、そこから幾重もの太い蔦が、まるで生きている大蛇のように飛び出した。蔦は竜の足や無事だった方の翼に瞬く間に絡みつき、その動きを強引に地面へと縫い付けていく。
「今だ! 霧を!」
ヴィンドールの指示を受け、同行していた魔術師たちが杖を掲げる。
周囲の木々から濃密な霧が発生し、ワイバーンの視界を完全に覆い尽くした。
方向感覚を失った竜は闇雲に首を振り回し、混乱したように咆哮を繰り返す。
地の利を最大限に活かした、エルフならではの戦術。
森そのものが侵略者に対する牙となったのだ。そして、その牙の切っ先となる男が動き出す。
「怯むな! 奴はもはや地を這うだけのトカゲ! 我ら森の守護者の力を見せてやれ!」
レオナルドが馬から飛び降り、その両手に鍛え直された二対の牙を抜き放つ。
彼の後に続き、剣や槍を手にした戦士たちが一斉に木々の間から躍り出た。
「散開! 懐に潜り込み、関節を狙え!」
レオナルドの的確な指示のもと、戦士たちは竜の巨体に張り付くように接近し、硬い鱗の隙間を狙って刃を叩き込んでいく。
「グオオオオオッ!」
無数の刃が肉を裂く痛みにワイバーンが暴れ狂う。
その巨大な尻尾が薙ぎ払われ、数人の戦士がまるで木の葉のように吹き飛ばされた。
「退くな! 回復部隊がすぐに来る!」
レオナルドは叫びながら、自らも死地である竜の懐へと飛び込んだ。
彼は振り下ろされる巨大な爪を紙一重でかわすと、その勢いを利用して竜の腕を駆け上がり、無防備になった首の付け根へ肉薄する。
だが、ワイバーンロードの生命力は尋常ではなかった。致命傷に近い傷を負いながらも、その巨大な顎をかっと開き、至近距離にいるレオナルドを喰らわんと迫る。
「させん!」
その時、戦場に雷鳴が轟いた。ヴィンドールが切り札を切ったのだ。
「雷の精霊ラミエルよ、我が魔力を糧とし彼の者を戒めよ! ――雷神の枷!」
ドォンッ!!
天から降り注いだ紫電の槍がワイバーンの脳天を貫き、その神経を焼き切る。全身が激しく痙攣し、レオナルドを噛み砕こうとしていた顎が、ぴたりと止まった。
その、ほんの一瞬の好機。レオナルドは見逃さなかった。
「終わりだ」
彼は麻痺した竜の首元で、その身を翻す。
交差した二振りの剣が森に差す木漏れ日を反射し、美しい円弧を描いた。
ザンッ――!
風を切る音と共に、鋼鉄よりも硬いとされる竜の鱗ごと、その太い首が切断された。
ズシン、と。
首を失った巨体が大地を揺らし、完全に沈黙する。
噴き出す血煙の中、レオナルドは静かに剣を振るい、刀身についた脂を払った。
「……一体、討ち取ったり」
その低く響く声に応えるかのように、森の奥から割れんばかりの歓声が沸き起こった。だが、レオナルドは気を抜くことなく空を見上げた。そこには仲間を討たれ、怒りに燃える二つの影が荒々しく咆哮を上げている。
戦いはまだ終わっていない。
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