どこかで見たような異世界物語

PIAS

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第二章

第34話 経験値

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「……っ!」

 まさかジョーディから"経験値"というワードが飛び出すとは思ってなかった北条は、少し驚いた様子だ。
 それはジョーディの発言がメタ的に聞こえたからであるが、ジョーディの口ぶりからして経験値というのは何ら不思議なものでもない、この世界における常識のようだ。


「魔物を倒した時の経験値がパーティーメンバーにも分配されるので、支援職やヒーラーのような直接攻撃に参加しない職には必須となりますね」

「ってことは、周りを強いメンバーで固めて俺TUEEEEEしてもらえば、レベルの低い奴もサクサクレベルあげられんのか?」

 龍之介が言っているのは、MMORPGなどで時折見られるパワーレベリングというもので、てっとり早くレベルを上げる為の方法としては割と有名な方法だ。
 強いメンバーの中にレベルを上げたい低レベルを一人混ぜて、その低レベルの人からすれば数段上の狩場でレベル上げをするというものだ。

「んー、ちょっと一部何言ってるかよく分からないですけど、レベル上げの為に強い人のパーティーに入るってパターンは少ないですね」

「何か問題でもあるんっすか?」

「ええと……はい、そうですね。まず高レベルの人が受け入れるメリットがありません。次に、上の狩場で戦うということは、幾ら高レベルに守られていたとしても、危険がつきものです。とはいいましても、この二つの理由はおまけみたいなものでして、一番の理由はレベル差がありすぎると貢献度が得られないからですね」

 前述のMMORPGのパワーレベリングだが、ゲームによってはシステム的に制限が加えられているゲームも存在する。
 その制限方法は幾種類かあり、パーティー内のレベル差が激しすぎる場合に低レベル側には経験値がほとんど分配されない。だとか、狩場となるフィールドへの立ち入りそのものにレベル制限を設ける、など幾つか種類は存在する。
 どうやらこのティルリンティの世界にもそうした制限が存在しているようだ。

「貢献度って事は、後ろで見てるだけではダメってことですね?」

「その通りです。これは何もレベル差関係なく、同レベル帯でも貢献度によって微妙に経験値の配分が変わるみたいです。ただ、難しいのは単純に魔物を攻撃した威力によって貢献度が決まる訳ではなく、ヒールや盾役が一番貢献度を稼ぐケースもあるということです」

 きっちり与えられた役割をやった方が、貢献度が高いという事だろうか。
 いまいちその辺が判然としない所ではあるが、そういう仕組みであるということは、各人理解できたようだ。

「どうすれば貢献度が稼げるかは完全に解明されていませんし、同レベル帯なら貢献度を稼いでも他のメンバーより僅かに経験値が増える程度です。けれど、それでも資質のある人というのは、そうしたちょっとした違いの積み重ねで、どんどん上へと昇っていったりするようですけどね」

 へー、と感心したように話を聞いている者達を見ながら、ジョーディは「以上が〈ソウルダイス〉の解説になります」と一旦話を打ち切った。
 そして改めてみんなを見渡しながら、


「ところでみなさん、〈ソウルダイス〉は今お持ちでしょうか?」

 と尋ねてくるも、生憎と〈ソウルボード〉と共に信也の〈魔法の小袋〉の中にあるので、今は現物がない。
 そんな彼らの様子を見て取ったジョーディは、腰のベルトに吊るしてあった袋から〈ソウルダイス〉を取り出す。

「それじゃあ私がお持ちしたこれで、〈ソウルダイス〉そのものと、迷宮碑ガルストーンの使い方をお教えしましょう」

 そういってジョーディはみんなに見えるように、サイコロの一面に指をあてる。
 すると、指先とダイスの面の間に一瞬青い光がキラッと瞬いた。
 そしてジョーディがサイコロから指先を離すと、指が触れた一面には青く光る刻印された文字だか記号のようなものが浮かびあがっていた。

 この世界に来た時に、言葉だけでなく文字情報まで記憶に植え付けられた北条達だったが、その文字は見覚えのないものだった。
 本当に単なる記号なのか、もしくは古代文字とか魔法文字といったものかもしれない。

「こうしてダイスの一面に触れて魔力を登録することで、パーティーに登録することができます。ダイスは六面あるので、ひとつのパーティーは最大六人までですね」

 いとも簡単に〈ソウルダイス〉に登録をしてのけたジョーディに、納得のいかない顔をしている者がいた。
 先日散々いじくりまわした挙句、全く使い方を見つけられなかった咲良だ。

「えぇー。私がこの間試したときはうんともすんとも言わなかったのにー」

「それは……この〈ソウルダイス〉も歴とした魔法道具ですからね。スキルや魔法と同じで、うっかり発動しないようにちゃんと意識して発動させる必要があるんです。試しにこれでもう一度やってみてみてください」

 ジョーディから〈ソウルダイス〉を受け取った咲良は、同じようにジョーディが登録したのとは別の面に指先を当てて、軽く意識を集中させて発動するように念じてみる。
 すると先ほどと同じような青い光が煌めき、無事にパーティー登録が完成する。


「これ……は」

「感じられますか? それが魂の繋がりです。登録には〈ソウルダイス〉が必要ですが、パーティーから抜ける際にはその繋がりを切断するように意識すれば、離れていてもパーティーから抜ける事ができます」

 言われた通りに試してみると、前兆もなく先ほどまで感じていた繋がりが途絶えたのがはっきりと認識できる。
 その不思議な感覚に、咲良は何とも言えぬもどがゆしさを僅かに感じた。

「ちなみに自分から解除しなくても、〈ソウルダイス〉で登録したパーティーは十日経過すると強制的にパーティーは解散されます」

 ジョーディがそう説明する間にも、他の面々が〈ソウルダイス〉に触れてパーティー登録を試していた。
 普段まったく他者と関わろうとしない石田ですら、その中に加わっていた位だ。
 ただ、登録をした後はさっさとパーティーを抜けてしまったようだが……。

 メンバーが抜けた際には、まだ残っているメンバーにも脱退した感覚が伝わるようで「おぉ? なるほどなるほど」などと北条は使用感覚を確認しているようだ。

「なぁ、これぁスキルか何かで、パーティーメンバーが今どの辺にいるのか、把握できたりするのかぁ?」

「あー、そういうパーティースキルもありますね。タンク職の方なんかが覚えやすいスキルですが、そこそこレアですね。他にもパーティーメンバーと念話を交わしたり……変わりどころでは〈ソウルダイス〉を使用しないでパーティーを編成するスキルなんかもありますね」

「ほぉ、そいつぁ興味深いな」

 どうやらパーティー関連のスキルや魔法は結構たくさんありそうだ。
 危険な場所へと赴く事がある冒険者には、これは流石に必需品といえるだろう。

 一頻り〈ソウルダイス〉の使い心地を試した北条らは、ジョーディへと〈ソウルダイス〉を返すと、今度は迷宮碑ガルストーンの使い方を尋ねた。

「これはそう難しいものではありません。パーティー登録してある状態の〈ソウルダイス〉を迷宮碑ガルストーンの窪みに嵌めこむと、その〈ソウルダイス〉に登録されているパーティー全員にその迷宮碑ガルストーンがある場所が登録されます。これで同じダンジョン内の別の階層にある登録済の迷宮碑ガルストーンへと、一瞬で転移が出来るようになります。それと、その際に別のダンジョンへ転移することは出来ません」

「登録ってその〈ソウルダイス〉にですか?」

 咲良のその質問に首を横に振って答えるジョーディ。

「いえ、登録は皆さんの魂に刻まれる、と言われています。場所登録の際には〈ソウルダイス〉が必要ですが、別の〈ソウルダイス〉を使用しても、以前登録している階層へ転移する事は可能です。もし〈ソウルダイス〉自体に階層の記録が保存されていたら、登録された情報によってダイスひとつひとつの価値も大きく変わったでしょうね」

 迷宮碑ガルストーンについて話しながらも、ジョーディは受け取った〈ソウルダイス〉を迷宮碑ガルストーンへと嵌めこむ。すると、迷宮碑ガルストーンの隅の方にある、長方形にでっぱっていた別の材質で出来てると思われる個所が、「フォォン」という小さな音と共に緑色の光を発した。

「これで、私自身の登録は完了しました。皆さんも登録しておきますか?」

 特に断る理由もなかったので、ジョーディ以外の六人全員で〈ソウルダイス〉にパーティー登録をすると、同じように迷宮碑ガルストーンへと嵌めこむ。
 先ほどと同じ緑色の光が発せられるも、彼らは特に自らの内に何かしらの変化を見出せなかったようだ。

 そして登録が無事終わると、念のため他の迷宮碑ガルストーンもチェックしてから帰還しようという話になるのだった。

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