どこかで見たような異世界物語

PIAS

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第五章

第101話 合流

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 信也達と北条達の両パーティーは、現在共に五層へと侵入を果たし探索を続けていた。

 五層はこれまでの階層に比べると、かなり広い構造になっているようで、先日から探索を続けている信也達ですら、まだ半分も探索できていない。
 魔物は階層を下るごとに少しずつ強化されていて、五層にもなるとケイブホブゴブリンも普通に出てくるようになってはいたが、問題は魔物より階層の広さの方だった。

「どうやらこの階層は、今までよりもかなり規模が大きそうね」

 地図用紙を片手にマッピングを担当している陽子が、マッピングをしていて気づいたことを知らせてくる。
 すでに午前の探索を終え、昼食を取ってからの午後の探索に移っていたのだが、この調子だと地図を埋めるにはまだまだかかりそうとの事だった。

「どれどれ…………。なるほどなるほどぉ。どうもちょっとこの辺りの構造が気になるなぁ」

 陽子から地図を受け取り眺めていた北条は、その地図の中の一点――まだ何も記されていない辺りを指差した。

「周辺の構造からして、この辺りにはどうも広い空間がありそうじゃないかぁ? それに、情報がまだ少ないがぁこの地図の感じからすると、その広い空間がありそうな所が、丁度この五層の中心辺りな気がするなぁ」

「そうねえ、確かにそこは私も気になっていたわ。もしかしたらその部分は部屋なんかなくて、単に土で埋まっていて、部屋も通路もないような場所かもしれないけどね」

 階層がこれだけ広いと、ただ漠然と地図の白い部分を埋めるよりは、何らかの目標を見出して移動したほうが士気も多少は上がるだろう。
 そういった訳で、あるかどうかは分からないが、五層の中心部らしき場所に舵を取る事が決まり、一度通った道を再び通過したりしながらも、中央部へと続くと思われる通路を発見することが出来た。


「すっごい真っすぐな道だね!」

「そうねえ~。ここまで長い直線の道は初めて~かも?」

 ユリメイコンビの言う通り、眼の前には長い直線の通路が続いていた。
 すでに数百メートルは歩いていると思うのだが、まだまだ先が見えないほどだ。

「なんかこんな真っすぐな道を見ると思いっきり走りたくなっちゃうなー」

 床はデコボコだとはいえ、陸上部魂が揺さぶられたのか、今にも走り出しかねない様子の由里香。

「…………」

 そんな由里香とは反対に、北条は何か集中して耳を澄ませていた。
 その様子をぼやっと眺めていた咲良だったが、北条が何かに気付いたようでジッ前方の暗闇に眼を向ける。

「由里香、走るぞぉ! 他の四人は無理しない程度に走ってついてきてくれぃ」

「え、ちょ、待って! 突然どうしたの、北条さん」

 北条の唐突の指示に戸惑いを隠せない様子の陽子。
 そんな彼女にも納得のいく説明が北条から告げられる。

「この通路の先にある……恐らく広間のような空間から、戦いのような音が聞こえてきたぁ。恐らくは和泉達だと思う!」

「ようやく追いついたって訳ね。あの六人ならこの階層の魔物程度なら問題はないと思うけど……」

 とはいえ、この先は大きな広間になっているようなので、魔物もたくさん蠢いている可能性はある。
 五層になってからは、冒険者ギルドではFランクとされている、ケイブホブゴブリンなどもも数は少ないが出てくるようになっている。

 更に、北条達が緑スライムと言っていた魔物も、実はグリーンジェリルというれっきとしたFランクの魔物であり、治癒魔法使いの少ない低ランク冒険者の場合、毒消し薬が切れていた場合は脅威になりうる相手だった。

「いざとなれば慶介のアレがあるだろうがぁ、念のため俺と由里香で先行するぞぉ」

 そう言いつつも駆けだし始める北条。
 僅かに遅れて由里香もその後に続く。
 続けて咲良達が駆けだそうとした所で、陽子からの制止の声が割り込んできた。

「あ、ちょっと待って。先に皆に"付与魔法"をかけておくわ」

 そう言うやいなや、残りの四人全員に【敏捷増強】を掛けて回る陽子。

「これでよし、と。じゃあ行こっか」

 すでに後ろ姿も見えなくなった北条と由里香の後を追い、残る四人もダンジョンの長い通路を駆けだしていった。


▽△▽


 荒い息を吐き、息せき切って陽子達が広間へと駆け付けた時には、既に戦いの趨勢は決していた。

 そこはホールのような広い円状の空間だった。
 東西南北の他に斜め方向を合わせた八方向に続く通路がこの広間からは伸びており、北条達が駆け抜けてきたのは――方角を知る由は無かったが――南西の通路からだった。

 対して信也達は北西の通路から出てきたようで、そちらの入り口付近で固まって戦闘をしていたようだ。
 そこに背後から、応援にかけつけた北条と由里香のアタックが見事にぶっささり、相手のゴブリン陣営は一気に崩壊する。

 そして今はゴブリンが後三体……いや、今しがたの北条の薙ぎ払いによって残り二体となっていた。
 その二体も、信也の【光弾】の魔法と慶介の【水弾】の魔法を受けて、あっさりと沈黙した。


「いよぅ、余計な世話だったかもしれんがぁ、手助けさせてもらったぞぉ。ドロップは気にせず全部持っていってくれぃ」

 本来ならダンジョン内で他の冒険者パーティーと出会った場合、お互い不干渉を貫くのが基本とされている。
 ましてや戦闘中に割入って戦闘に加わるなどもっての他だった。

 例え相手に助けを求められていたとしても、もしかしたらそれが相手パーティーの罠かもしれず、代わりに魔物と戦い始めた所を後ろからズバッとやられる事だってありえるのだ。

 しかし、今回に限っては元々同じ集まりの集団であり、そういった心配は無用だった。
 冒険者の中にもクランという冒険者達の集団を結成して、同じクランから複数のパーティーがダンジョンを探索している所もあり、そういったパーティーもダンジョン内で同クランのメンバーと出会えば同じような展開になるだろう。

「いや、助かったよ。無駄にリスクを取る必要はないしな、ありがとう」

 相変わらずの四角四面な態度に、まあ和泉ならそう言うだろうなという思いを抱きつつ信也の礼を受け取る北条。

「見たところそっちは……問題はなさそうだな。こちらも特に大きな問題はなく探索を続けていた所だ」

 北条パーティーの面々を一人一人確認していた信也は、全員が無事だった事に安堵の息を漏らした。
 それは何も信也だけではなく、メアリーや陽子なども同様の有様だ。


「いや、ちょっと待てよ!」

 そこに信也達の会話を聞いていたのか、龍之介が勢いよく割り込んでくる。
 怒り……とも違う、興奮や好奇心、嫉妬のようなものを携えて意気軒昂な龍之介。
 信也と北条も思わず視線をそちらへと向ける。

「さっきオッサンが使ってた、あのかっちょえー武器はなんなんだ!? なんか斬りつけた所からぼわああって炎が出てたんだけど!」

 勢いよく割り込んできたので、何か重要な事があるのかと一瞬身構えた北条も、「そういえば龍之介だった」と態度を改める。
 しかし、これまでの探索について報告するには丁度いいと判断した北条は、魔物罠部屋での事を中心に、これまでの出来事を報告することにした。

「こいつについても話す事はあるがぁ、とりあえず全員一か所に集まってから、お互いのこれまでの探索状況と、地図情報の共有を行おうかぁ」

 魔物を一掃し、ドロップの回収も終えた異邦人達は、一先ずこの広間の探索は後にして、先に報告会を行う事になった。
 その報告の途中、魔物罠部屋にて幾つかの魔法道具や魔法装備を手に入れた事を話していた際に、咲良が言葉には出していないが見せびらかすように龍之介にサークレットを見せていた。

 それを見て一瞬何か言いかけはしたものの、そこまで興味のある品でもないのか咲良が期待したほどの反応を見せる事はなかった。
 しかし北条のハルバードを改めて見せられた龍之介は、頻りに悔しがっていた。

 「俺も魔法剣がほしいい!!」などと叫んでいたが、初回の探索でこれだけの成果が出たのなら、ひと月も潜っていればたぶん出るだろう。と、前向きに考え直して、どうにか気持ちを抑える龍之介。


 そして次に信也達の報告の段になったが、特にこれといった大きな出来事はない。
 ただ珍事は発生していたので、信也は休憩中に出くわした謎の金の箱についての話をする。

 そしてその金の箱からドロップした〈金の鍵〉を信也が取り出すと、今度は龍之介が「どーだ! 羨ましいだろう」とばかりに得意げに語り始める。
 やれ「このサイズでこの重さだと純金製かな?」とか、「それに魔力を通さないってことは、何らかの魔法道具かもなー」などと、誰も反応を返さないので独り言を呟くような状況になっているが、当人は気づいていない。

 北条も関心を示したのか十秒程ジッと鍵を見つめていたが、すぐに関心を失ったようで視線は元の場所に戻される。

「ああ、はいはい。その〈金の鍵〉の事はその辺にして、次はお互いの地図を照らし合わせましょ」

 いい加減うざくなってきた龍之介を払いのけるように、陽子が自ら描いている地図を取り出しながらそう口にする。
 すると、信也のパーティーでの地図担当のメアリーも、自分の手書きの地図を取り出して、互いの地図を見比べはじめた。

「ほおう、そちらは四層の探索に力を入れていたんだな」

 地図を見比べていた信也が感心したようにそう口を漏らす。

「あぁ。時間的な都合もあったがぁ、まったくの未開の場所なんで、近いところから順番に埋めようと思ってなぁ」

 この辺りは人それぞれ性格の出るところだ。
 ただしゲームでは気軽に探索方針も決められようが、現実に自分の命のかかっている状況ではそうもいかない。

 信也達も四層は大分探索してから先へと進んでいたし、そこら辺で調子にのってずんずんと先へ進めば、手酷い目に会う事も出てくるだろう。

 その後、互いの地図の不足部分を補完し合い、話し合いも一通り済んで、いざパーティーごとに分かれての探索再開、という段に移行する。
 しかしその前にやるべきことが彼らにはあった。

 それは、この大広間の中央部に威風堂々とそびえる、謎の構造物の調査であった。



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