どこかで見たような異世界物語

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第七章

閑話 『鍛冶士』ルカナル その1

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◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 僕の名前はルカナル。
 家名などもない、普通の一般的な家庭に生まれ育った。
 生まれは『ロディニア王国』でも辺境に位置している、グリーク領の領都でもある《鉱山都市グリーク》だ。

 ここは鉱山都市ということもあって、多くの人が鉱山やそれに関連する仕事をしている。
 僕の父もそういった仕事についており、鉱山で採掘されて街まで運んでこられた鉱石を製錬したり、地金を精錬したりといったことを生業としていた。



 ――それは何年も前の話になる。


 きっかけは覚えていないけど、幼い頃の僕は父の職場へと連れてこられていた。
 熱気が漂う中、汗をぬぐいながら仕事をしている父の姿は、今でも僕の脳裏にハッキリと思い出せるくらい。
 多分それが僕の原点だったんだと思う。

 それ以来、僕は父の後をついて行っては鉱石がドロドロに溶かされる様子を好んで見ていた。
 そんな僕に父は「よく飽きないものだな」と呆れていたのを今でも覚えている。

 ある程度物心がついてくると、父の仕事について直接父より教わり始めた。
 "製錬"と一口に言っても、一塊の鉱石には幾種類もの鉱石や岩石が含まれているので、そこから必要な金属だけを選り分けるには金属というものに対する深い造詣が必要だ。

 鍛冶士なら大抵の人が持っているであろう"金属知識"のスキルは、こうした幼い頃からの父の教えによって取得できたようなものだ。
 その事には今でも父に感謝をしている。

 この当時の僕は、漠然と自分も将来は父のように製錬の仕事に就くものだと思っていた。
 そんな僕の考え方が変わったのは、十一歳になった時の事だ。
 そう、つまりは『転職の儀』の結果による部分が大きい。


 この世界で暮らしてる多くの人にとって、『職業』を授かる事の出来る『転職の儀』は大きな意味を持つ。
 例えば、代々家具職人の家に生まれた子に『魔術士』の才能があった場合でも、家族総出で『魔術士』になれと応援される程だ。
 それだけ魔法関係の職業は喜ばれる。

 かくいう僕に示された道は『農民』と『製錬士』、それから『鍛冶士』だった。
 『農民』はほぼすべての人がなれるとされる職業で、噂によると貴族のお偉い家系の人でも選択肢として現れるらしい。

 『製錬士』は父の就いている『製錬師』の下位職業で、この職業が選択肢にあったのは納得できた。
 しかし、『鍛冶士』については僕にも心当たりがなかった。
 傍から見ると『鍛冶士』も『製錬士』も大きな違いには見えないかもしれない。

 実際、『鍛冶士』はその仕事柄"製錬"のスキルを覚えやすい職業だ。
 しかし、逆の場合ならともかく、製錬の事を学んでいた僕に『鍛冶士』の道が開かれていたという事は、僕に才能があるのでは? と判断させるには十分なものだった。
 結果として、僕はそれまで漠然と思い描いていた『製錬士』ではなく、『鍛冶士』への道を自然と選んでいた。


 転職を済ませた僕は、早速"鑑定"の魔法装置で職業やスキルを調べられ、結果を伝えられる。
 国の主導で行われる『転職の儀』では、費用を国が負担する代わりに、こうしてどの職業に転職してどんなスキルを持っているかを確認される。

 スキルというのは不思議なもので、種類によっては何かのキッカケがないと、自分がそのスキルを保有している事に気づかない事がある。
 どうやら僕もその類のスキルを持っていたようで、どうして僕が『鍛冶士』になれたのかがその時になって理解できた。

 係の人に告げられたそのスキルの名前は"魔法鍛冶"。
 今まで全くこのスキルについて意識したことがなく、スキル習得のために何かした記憶もなかったので、恐らくはこれが噂に聞いた天恵スキルというものなのだろう。

 余り一般的なスキルではないのか、係の人もよくわかっていなかったようで、詳しい説明などはなかった。
 今になって思うと、この時の係の人がもっと博識だったなら、僕はもっと違った道を歩んでいたかもしれない。



 それからの僕は、早速父の知り合いだという鍛冶師の元に弟子入りをしつつ、自身の"魔法鍛冶"というスキルについて試行錯誤していった。
 数年の月日が経つ頃にはすっかり"鍛冶"や"槌術"などのスキルを習得し、新米鍛冶士として問題ないレベルにはなっていた。

 "魔法鍛冶"に関しては親方も詳しく知らないらしく、完全に独学で学ぶしかなかったけど、名称からして重要なのだろうと、まったくお門違いだった"魔法"に関しても勉強した。
 その結果、"魔法製錬"や"金属魔法"など、今の僕の鍛冶スタイルの基本となるスキルの開発に成功した。


 "魔法製錬"は炉を使うことなく鉱石から地金を取り出したり、製錬された金属の純度を高めて精錬することができる。
 また、他の金属と混ぜて合金を作り出すことも可能という、鍛冶士や製錬士からすると垂涎もののスキルだ。

 そして"金属魔法"というのは、"土魔法"の亜種らしいいうのは判明したのだけど、使用者が多くないので情報がさっぱり集まらなくて、独学で研鑽を重ねた。

 その結果、金属の形状を思うままに変形させたり、一か所に金属を集めて強度を増すように加工したりといった事が出来るようになった。
 この"金属魔法"を用いて鍛冶をするのが"魔法鍛冶"というスキルらしい。
 試しに"金属魔法"で武器の形に整えただけの剣と、"金属魔法"と"魔法鍛冶"を併用して作った剣では、明らかに後者の方が出来が良かった。


 これらのスキルは親方に聞いても他に持っている人の話を聞いたことがないそうで、当時の僕を大層調子づかせた。
 その結果、他の職人や見習いたちと揉めることになってしまい、結局親方から破門されてしまう事になってしまった。

 けど、当時の僕はその事について深刻に捉えておらず、僕の"魔法鍛冶"のスキルがあれば、相手の方から雇ってくるハズだとを高を括っていた。

 だけど実際は酷いもので、どこの鍛冶屋へ行っても僕を雇ってくれる所はなかった。
 基本的に鍛冶屋は必要な数だけ見習いや職人を抱えていて、そこに外部の職人が割り込んでくることはほぼない。
 見習いとして一から始めるにしても、僕は既に年を取りすぎていたし、増長していた当時の僕にはそんな考えは浮かびもしなかった。

 それと雇ってもらえない理由として、魔法で鍛冶をするという事への拒否反応もあった気がする。
 今思うと、この頃の僕が得意気になって見せていた"魔法鍛冶"による作品は、確かに見習いを卒業したばかりの新人にしては出来がよかったかもしれないけど、ある程度の職人ならそれ以上のものを作ることはできた。

 "魔法鍛冶"で作った作品が圧倒的な出来だったらまた少し話も違っていたかもしれない。
 しかし、普通の鍛冶で作れるようなものを得意気に見せられても、わざわざ外部の者を雇う理由にはなり得なかったんだろう。

 この状況になってようやく焦り始めた僕は、心を入れ替えて街中の鍛冶屋を巡った。
 その結果、僕は『ダラス鍛冶店』という店で雇ってもらえることになった。
 一先ず職にありつけたのは良かったが、ここからの数年間は僕にとっては雌伏の時期となった。




 『ダラス鍛冶店』で働き始めてから早数年。

 僕は頭が固く、性格が酷く悪い親方の元で働きつつ、"魔法鍛冶"を行う際に懸念であった魔力の低さの改善に取り組んだ。
 せっかくの"魔法鍛冶"のスキルも短時間しか使えないのでは意味がない。

 魔力の強化について僕が調べて判明したことは、一番手っ取り早いのは魔物を倒してレベルを上げるというものだった。
 しかし生産職である僕には厳しい方法だし、仕事もあるので魔物を倒しにいく暇もない。

 次に有名な方法として、魔法スキルを習得するというものがあるらしい。
 ただ、魔法スキルは修練を積む事で魔力も強化されていくらしいんだけど、少しずつ強化されるのですぐに実感できるものではないみたいだ。
 僕の"金属魔法"もずっと使ってきて魔力量は確かに増えてはいるんだけど、確かに実感としては薄い。

 それに比べて新しい魔法スキルを取得すると、即座に魔力の強化が実感できるという。
 魔術士の中には魔力の強化に執着するあまり、器用貧乏な魔術士になる人もいるみたいだ。

 この話を聞いて僕が試したのは"土魔法"の取得だった。
 "金属魔法"とは近そうな性質を持つこの魔法スキルなら、僕にも取得できるのではと思ったのだ。
 けど、実際はそんな甘いもんじゃなかった。
 そう簡単に魔法スキルを取得できるなら、『転職の儀』で魔法職があれだけ喜ばれる事はない。


 結局今もなお"金属魔法"以外の魔法スキルを使うことはできないんだけど、数年間の苦労は無駄にはならなかった。
 魔法スキルが覚えられなかった代わりに、"魔力消費軽減"というスキルを覚えることが出来たんだ。

 これはスキル使用時の魔力の消費量を軽減することが出来るスキルで、このスキルによって大分"魔法鍛冶"の運用も楽になってきた。
 今では完全に見習いレベルを卒業して、いっぱしの職人と同等くらいのものを作れている自信はある。

 しかし、親方は僕の作品を見もせずに跳ねのけるばかり。
 普通、親方というのは抱えている職人が一定水準に達したら、何か作品をひとつ作らせるのが普通だ。
 その出来栄えによって、新たな親方として独立する許可を与えたり、再度指導をしなおしたりするのが普通だ。
 なのに、作品を見てもくれないというのは明らかに怠慢だ。
 唯でさえ待遇がよくないのに、そこから離脱するための独立すらできないのでは、まるで奴隷のようなものだ。

 過去の失敗を踏まえて、すぐに何か行動を起こす事はしなかったけど、僕の中では親方に対する不満が募っていく。
 そんなある日の事だった。
 女性ばかりを連れていたあの冒険者に出会ったのは。




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