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第七章
第162話 異邦人達の特質?
しおりを挟む「じゃー、あたしからいくっす!」
一番乗りは最初に名乗りを上げた由里香で、それから残りの五人も鑑定の魔法装置を使用して、ギルド証のステータス更新をしていく。
その結果、耐性系のスキル以外で自分自身で認識していなかったスキルとして、太陽の光が届かない場所や時間帯において、若干身体能力が増加するという"よかげ"というスキルを楓が取得していた。
他には咲良が"魔力自然回復強化"という、スキル名そのままの効果を持つスキルを。
芽衣が"雷の友"という、雷属性の攻撃や、感電などの状態異常に対する耐性を得られるスキルと、"精霊の目"という精霊を視認できるようになるスキルを覚えていた。
最後に北条には信也にも生えていた"指揮という"スキルと、恐怖耐性訓練に使用していた"咆哮"などのスキル。ほかにも今まで使ってきていた"料理"や"目利き"スキルなども増えていた。
またレベルについては、二十一か二十二だった信也達よりも、平均して二レベル高い数値にまで上がっていた。
特に北条に関しては"成長"スキルのせいか、一人単独でレベル二十六と一人抜けた数値になっている。
それを聞いて「ぐぬぬ……」と歯ぎしりをする龍之介。
二レベルの差といえど、実際模擬戦の時に感じたように戦闘の際には僅かな差でも結果を左右することがある。
今すぐにでもダンジョンに潜って、魔物を狩りまくりたい心境に駆られる龍之介。
ムルーダとは別に、密かにライバル視している北条とは差が開くばかりで、ますますその思いは強まる。
「ほお。大したものだ」
だが、龍之介を含む、幾人かのギルド証を確認していたナイルズは、北条パーティーだけでなく、信也達のパーティーも中々のものだと言う。
「そう、なんですかね」
「君たちはみんな強化系のパッシブスキルと、一時強化系のスキルを当然のように取得しているが、普通はそうもいかないのだよ」
信也が疑問の声を挟むとナイルズはそのように答えた。
なんでも、強化パッシブスキルはレベル十位から、一時強化スキルはレベル十五位から覚え始めるとのことだが、あくまでそれは目安だ。
レベル二十になっても、まだ一時強化スキルを覚えられないという人だっている。
だというのに、異邦人達は軒並みパッシブ強化スキルを最低でも二つは取得しており、一時強化スキルも二つ覚えてる者すらいる。
これは、彼らの現在のレベルからすると結構稀なことであり、「才能がある」と言われる者たちのソレに近い。
「それに君たちはレベルの上がり具合もとんでもないようだね」
「そうなんですか? 僕が前に聞いた話だと、レベルが低い内は上がりやすいって聞きましたけど」
「それは確かにそうなのだが、それにしても異常な速度だということだね。いくら人の少ないダンジョンに籠ったからといって、レベルというものはそうホイホイと上がるものではないのだよ」
ナイルズの答えに、いまいちピンと来ていない様子の慶介。
それは他の面子も大抵似たようなものだったのだが、龍之介だけは何か思い当たることがあったようだ。
「つまり、アイツとオレとの差って……」
その小さな龍之介の呟きは、近くにいた信也にかろうじて聞こえる程度の音量だったが、それに対して信也は特に反応は見せない。
その後、要件も一通り済み、寮に戻ろうと別れの挨拶をしている最中に、ナイルズが話しかけてきた。
「ああ、そうそう。君たちのそのレベルは、ランクとしては十分Eランクに届くものだ。また近い内に昇格用のテストを用意しておこう」
ナイルズのその言葉を背に、一行は家路へとつくのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
拠点予定地で龍之介との模擬戦を終え、惨憺たる結果となってしまったムルーダは、後ろから黙ってついてくるシィラの事に気づく事も無く、ひとりキャンプ地へと向かっていた。
(何でだ! ダンジョンってのはそんなにレベルが上がりやすいのか?)
先ほどからムルーダの頭の中をグルグルと巡っているのは、あからさまな差がついた原因についてだった。
(リューノスケは、"剛力"を使っている様子はなかった……。つまり、素の力でおれの攻撃を押し切ったという事だ)
パッシブスキルで常に効果が得られる"筋力強化"などのスキルに比べ、一時的に能力を強化するスキルは強化倍率に大きな違いがある。
効果時間や、再利用するまでのクールタイムといったデメリットは存在するが、対応する能力を、最低でも一時的に二倍以上に高める効果を秘めているのだ。
そしてその事が一番ムルーダの心を圧し折っていた。
(それに……普通にやり合ったんじゃ攻撃がマトモに当たらねー)
前やった時もそうだったが、力押しのムルーダに対し、龍之介は技や速さを匠に使う。
特に剣の技のキレに関しては、そこいらのDランク冒険者でも敵わないかもしれないと、ムルーダは見ていた。
「……ダ。……ルーダッ!」
どうすれば龍之介に勝てるのか。
いや、まずは勝つ負ける以前に同じ土台に立つところから始める必要が……。
それにはこのまま力を鍛えていくのか、技をもっと磨いていけばいいのか。
などと、百面相を見せながら、ろくに辺りを気にせず歩いていたムルーダに、ようやくシィラの声が聞こえてきた。
「……? シィラ、か。どうしたんだ?」
「もうっ。どうした? じゃないでしょう? 一人でスタスタと歩いちゃって……」
ふとムルーダが辺りを見回すと、すでに自分たちの設営したキャンプを通り過ぎていた。
「あ、ああ。わりぃ……」
「……ほら、戻って中入りましょう」
何時もと様子の違うムルーダに、優しく答えるシィラ。
二人だけの時には、負担はおとなしいシィラでもムルーダに強くものをいう事はあるのだが、今はとてもそんな雰囲気ではなかった。
長い付き合いのシィラは、今までも何度かこうしたムルーダを見てきたことはあるが、その度にシィラも頭を悩ませてきた。
普段は無鉄砲で、勝気な印象の強いムルーダだが、時折見せるこうした弱さにシィラの母性本能は揺すられる。
だが、あまりこの状態のムルーダに話しかけるのも逆効果なのだと知っているので、今も最低限の会話しかしていない。
(そんなにあせる必要はないのに)
そう思うシィラだが、ムルーダの事をよく知っている彼女は、そうもいかないんだろうなとも気づいている。
「ちょっと、食べ物とか調達できないか見てくるね」
今は一人考える時間が必要だろうと、シィラは聞いているのかわからないムルーダにそう告げて、テントを離れていく。
その途中、シィラは微かにムルーダの返事の声が聞こえたような気がした。
▽△▽△▽
「いやあ、参った。アイツら軒並み強くなってたぜ」
先に帰ったムルーダ達とは別に、しばらく信也達を行動を共にしていたシクルム達がテントまで帰ってきた。
ムルーダは相変わらずテンションは低いものの、受け答えなどは普通にできるくらいにはなっていて、シクルムらの話に時折相槌を打っている。
シィラの方もいくつか食料を購入して戻ってきていた。
その中には、早速ダンジョンに向かった冒険者が低層で入手した、食材となるドロップ品も含まれていた。
そんな食料のうちの一つ、蜘蛛脚の塩揚げに噛り付きながら次から次へと言葉を繰り出すシクルム。
この世界の人は割と普通に食べる人もいるが、それでも蜘蛛脚は好き嫌いが結構別れる部類の食材だ。
現にツヴァイがシクルムに「食うか?」と手渡されそうになった時に、食い気味に拒否していた。
このキャンプ地ではいくつものテントが立ち並んでいて、等間隔に焚火や調理用の簡易竈が設置されている。
ムルーダ達が食事をしているのもその内の一つで、周囲には他の冒険者や小身の商人達の騒がしい声が聞こえてくる。
これからダンジョンに挑むに当たっての勢い付けなのか、はたまたすでにダンジョンから帰還してきた者たちの祝勝会なのか。
あちらこちらで酒を飲んでいる人々の姿も見られ、彼らが暴れだして事件を起こさないように、《鉱山都市グリーク》から特別に派遣されてきた兵士や、治安維持の依頼を受けた冒険者による見回りが行われている。
「あー、ちょっと俺、出店の方をみてくるよ」
そんな喧噪の中、蜘蛛脚の塩揚げに手を出すこともできず、代わりに串焼きの肉を食べていたツヴァイ。
周囲を何となく見渡しながら肉を頬張っていたツヴァイは、それだけでは量が足りなかったのか、そう言って席を立った。
「……でなあ、なんと――って、なんか買いに行くならついでに酒買ってきてくれよ」
「いや、シクルムはそんなにお酒に強くないんだから止めとこうよ。僕たちまだダンジョンに潜ってすらいないんだし」
移動し始めたツヴァイについでの用事を頼むシクルムだが、それはディランによって阻まれてしまう。
ツヴァイはそんな二人のやり取りも耳に入っていないのか、そのままフラリと歩いていく。
(…………?)
その様子が気になり、ツヴァイの方に注目していたシィラは、ツヴァイが途中で誰かと二、三言、言葉を交わし、そのまま一緒に去っていく様子を確認していた。
だがここからは距離が遠すぎて、相手が誰なのかはわからない。
もしかしたら、ただ酔っ払いに絡まれただけだったのかもしれない。
しばらくして、またフラリと戻ってきたツヴァイは、どこかスッキリとした様子だったので、シィラもそれ以上気にすることはなかった。
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