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第八章
第167話 新発見エリア
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《ジャガー村》の近くのダンジョン――サルカディア――が公開されてからひと月以上が経過し、多少は落ち着きを取り戻すかと思いきや、今でも村にやってくる者は後を絶たない。
むしろこれからが本番とでもいうように、連日のように人が訪れていて、大賑わいだった。
最近では『ロディニア』国内からだけでなく、帝国の方や南の諸国から訪れる人も増えてきている。
そんな中、サルカディア内に隠し扉が発見された事で、冒険者達の熱気が更にいや増していた。
話題のその隠し扉は五層の南西部分にて発見された。
かねてより、五層には二つの下り階段がそれぞれ北西と南東に。そして、謎の扉が北東に、中央には竜の石像と魔法陣があるのは知られていた。
それならフロアのつくり的に南西部分にも何かあるのでは? と思い立ったとある冒険者パーティーが徹底的に調査した結果、睨んだ通り隠し扉を見事発見したという流れだ。
発見者たちは、その後一週間ほど中に潜って探索を続けたが、そこで一旦帰還してギルドへと隠し扉の事を報告。そしていくばくかの報酬を受け取っていた。
わざわざ報告をしたのはギルドからの報酬が目当てという事もあるが、低層であり、なおかつ巧妙に隠された訳でもない隠し扉など、彼らが黙っていても近い内に発見される可能性が高いと判断したからだ。
それなら先にちょっとだけ探索して、すぐに報酬をもらった方が確かにお得かもしれない。
この新しく発見された隠し扉の先には階段などは設置されておらず、魔法陣が設置されているだけだ。
これは北東部分にある扉の先、龍之介が《フロンティア》と名付けたエリアに通じる構造とほぼ同じだ。
ちなみに、未だにこの扉については開けられた者が異邦人達しかおらず、次はこの扉の謎を解き明かそうと一部の冒険者は声を上げていた。
話を戻し、新しく発見された扉の先にある魔法陣。その魔法陣によって転移された先は、これまでの階層とは異なり完全に照明が焚かれていない無灯火エリアとなっている。
そのため自前で明かりを用意する必要があり、一~五層と比べると難度は高い。
しかし、これまでの報告ではF~Eランクの魔物しか発見されておらず、そこまで攻略が難しい訳ではない。
構造としては洞窟タイプとなっていて、ある程度起伏もある作りとなっているので、同じ部屋内でも明かりの届かない部分も生まれる。
そうした場所から不意打ちをしかけてくるような、夜行性の魔物がこのエリアでは多い。
「……という話なんだが、どうだぁ?」
北条が最近話題の新エリアについての情報を話すと、他の五人は先ほどの北条の話を吟味し始める。
彼らは今、《ジャガー村》に帰ってきており、『女寮』の中で話し合いをしている所だった。
北条の問いかけに対し、由里香と楓は最初から反対するつもりはなく、話に乗るつもりだった。残る他の三人も否定的な意志は見えず、単に先ほどの話からどんな場所なのかを想像しているような感じだ。
現在、北条達『サムライトラベラーズ』は鉱山エリアを抜けた先、大森林エリアの二十五層まで探索が進んでいた。
二十五層自体は軽く探索した程度だが、二十四層にはビッグボアやツインヘッドスネークなどのDランクの魔物も時折出没する。
それらDランクの魔物は出会う数としては多くはなく、現在の彼らなら問題なく対処できるレベルではあるのだが、探索にあたってひとつ問題が発生していた。
それは、フィールドタイプのエリア一つ一つの階層が広いという事だ。
すでに階段の位置を掴んでいる、二十五層までを最短距離で移動するだけでも丸一日はかかってしまう。
おおよそ一週間を基準にサルカディアに潜っている今の感じだと、帰りの分も含めてフロアを探索できる時間が足りていない。
後々はこの一週間シフトも変えていった方がいいだろうなとは思いつつも、先の情報を聞いていた北条は、それは後回しでいいだろうと判断していた。
現在サルカディアを探索してる冒険者の中で、北条達は先行して潜っていた事もあって探索度合いでいえば先頭集団に入っている。
そしてトップを走るのは調査依頼を受けたあと、そのまま探索を続けている『リノイの果てなき地平』であり、続いて『青き血の集い』となっていた。
その中で北条達とも面識のあるリノイのパーティーも、同じ大森林エリアを探索している所で、今ではその先にある荒野のエリアまで歩を進めているらしい。
その彼らからの情報によると、大森林エリアに中間の迷宮碑はなく、荒野のエリア入り口付近にようやく設置されているだけらしい。
その情報を仕入れてからそう間を開けず、隠し扉の先に続く新エリアが発見されたという事で、北条は探索場所の変更をメンバーに提案していた。
それが先ほどの北条の問いかけだった。
「んー、そうですねえ。明かりがなくても北条さんの"光魔法"があるし、魔物も弱いみたいだからいいんじゃないかな?」
「確かに新しい所は気になるけど、他の場所はどうなの?」
「他の場所というと……《フロンティア》とか?」
咲良と陽子は他の探索場所についても話し始めたが、特にこれといった行きたい場所というのはなさそうだ。
なお、北条達はひと月近く前に"金箱の魔物"と遭遇しており、無事に倒す事に成功して《フロンティア》へ通じる扉をくぐっていた。
しかし、信也達からの話を聞く限り、大森林エリアなんかよりよっぽど広大な領域を持っているようなので、登録だけしておいてまともに探索に出向いてはいない。
「んー、やっぱその新しいエリアが無難かもね」
結局陽子の結論も出たようで、一旦大森林エリアの探索は保留にして、新エリアの探索に切り替える事になった。
そして、その事を女寮に設置している、魔法道具の掲示板に書き記しておく。
これは信也達が現在探索中の地下迷宮エリアで発見してきたもので、機能としては、ホワイトボードとなんら変わりはないものだ。
しかし、ボードとセットで見つかったペンは魔力で動作しており、インク切れなどを心配することがない。魔力を注げば何度でも使用可能なのだ。
ちなみに文字を消すときは、ボードの右下部分に魔力を注げばいい。部分的に消せないのが難点ではあるが。
ただ近頃は村に戻ってくるタイミングもずれる事が多くなっているので、このホワイトボードは地味な活躍を見せている。
「ええっと、『私達は大森林エリアの探索を中断し、新発見されたエリアの探索に変更します』……と」
陽子が綺麗な日本語の文字でボードに書き記していく。
他にも、これまでの探索で明らかになった、フロアの地図なども書き写して金庫の中へと放り込む必要がある。
ルカナルに頼んで作ってもらった小さな金庫は、普段は使用していない竈門の中に隠してあった。
「これ取り出す度に手が汚れるのがねえ……」
現在は使用していないとはいえ、内部にこびりついた煤はそう簡単に落ちることはなく、苦み走った顔で金庫を取り出してきた陽子。
「後で私の"水魔法"で洗いますね」
「あー、お願いね」
咲良も生活する上で大分便利な魔法の使い方を覚えていて、頑固な汚れも水流を強めて洗い流せるようになっている。
「おおう、そいじゃあ後はこいつを仕舞って……メシにでもするかぁ」
そう言って北条は自ら書き写した地図を金庫へと入れ、竈門の隠し場所までもっていくついでに、簡単な料理も作りはじめた。
「わーー! 北条さんの料理、楽しみっす!」
北条の料理姿を涎を垂らしそうな勢いで見ている由里香。
そんな無邪気にはしゃぐ由里香を、複雑そうな表情で見ている陽子。
その表情に気づいた咲良は、陽子に話しかけた。
「ん? 陽子さん、どうしたんですか?」
「いや、ね……。ここに揃いもそろって女が雁首並べてるってのに、料理を作ってるのが北条さんってのがねえ」
そう言って少し渋い顔を浮かべる陽子だが、咲良は全く気にした様子はなく、
「えー、イマドキ女が料理作るって考え方、古くないですか?」
「ぐぐ、まあ、それはそーかもしれないけど……。料理出来ないよりは出来た方がいいでしょ?」
こちらに転移してくる前、自宅で暮らしていた陽子は料理などは母親に任せていたので、簡単なものしか作ったことがなかった。
「ううん、それもそーかも? 特にこの世界だとスキルもあるし」
適性があればあらゆるスキルを身に着けられるこの世界では、自分の可能性を広げるために、とりあえず手を出してみるのはアリかもしれない。
「よおおっし、できたぞぉぉ」
そこへ北条の料理の完成を告げる声が聞こえてきた。
"料理"スキルを持つ北条の作った料理は、簡単な料理であっても美味しさがプラスαされる。
いまいち料理をしたことない女性陣たちは、北条の作った料理に舌鼓を打つのだった。
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