どこかで見たような異世界物語

PIAS

文字の大きさ
201 / 398
第八章

第172話 パーティーDEレイド雑魚バトル その1

しおりを挟む

▽△▽


「今んとこ敵はでてこないっすね」

「え、だってまだ十分も経ってないじゃない」

「でも、敵がわんさか出てくる場所なんっすよね?」

「んー、それは……」

 あれからフォーメーションを組んでレイドエリアの探索を始めたが、今の所魔物の姿が見当たらない。
 咲良と由里香は少し離れた場所にいるので、話し声も少し大きめだ。

「ちょっと、余り大きな声を出すと魔物に気づかれる――」

「すでに手遅れだったようだぞぉ」

 陽子が注意の言葉を発しようとした所に北条が割って入った。

「ええっと、敵は前方から……いや、前方と右斜め前方からも迫ってきてるなぁ」

 人が何人も並んで歩けるほどの、広い通路を歩いていた『サムライトラベラーズ』。
 北条が感知した感覚によると、恐らくこの先はT字路のようになっていて、その分かれ道双方から魔物が押し寄せてきているらしい。

「うえぇ、いきなり挟み撃ち……とはちょっと違うかもしんないけど、なんかやばそうね」

 早速のレイドエリアの洗礼に眉をしかめる咲良。

「いやぁ、そうでもないだろぉ。寧ろチャンスじゃないかぁ?」

 しかし北条には何か考えがあるようで、ニヤリと口角を僅かに上げる。

「何かいい作戦でも浮かんだの?」

「ああ。だがぁ、少し急がんといかんなぁ。走りながら作戦を説明するー」

 そう言って北条はさっさと先へ……魔物が押し寄せてくるという方向へと走り出す。

「え、ちょ……待ってよ!」

 慌てた他のメンバーも、召喚した魔物共々ドタバタと後を追って駆け出す。
 北条の突飛な行動に既に慣れ始めていた他のメンバーは、突然の指示にも関わらず、動揺などは見せていない。

「……で、どんな、作戦、なの?」

 途切れ途切れに訪ねてくる咲良に、北条は全員に聞こえるよう少し大きめな声で作戦を説明する。

「なぁに、簡単なことだぁ。この先のT字路……その合流地点で合流したばかりの魔物たちを、範囲攻撃で一掃するっ!」

 レイドエリアは確かに魔物の数の多さが問題点でもあったが、それは逆に範囲攻撃、範囲魔法が大きく戦況を左右するという事でもある。
 特に魔術士の多い北条達パーティーにとっては、カモがネギ背負ってくるようなものだ。

「なるっ……ほどっ……」

 作戦を聞いた咲良は、ここは自分の出番だと戦意を高まらせる。
 しかし、範囲攻撃の術を持たない由里香などは少し残念そうな顔をしていた。


 やがて、T字路の合流地点少し前の位置にたどり着いた一行は、ダッシュ移動によって乱れたフォーメーションを改めて構築しなおす。
 それも最初に組んでいたものとは違い、敵の来る方面が判明しているので、前面に肉盾となるオーガを多めに配置している。

 視線や魔法の射線が通るように配置されたオーガ達の後ろでは、魔法組が魔法詠唱をスタンバっていた。

「みんな、集まって! …………。【魔力強化】」

 いわれるまでもなく魔法組はすでに陽子の元に集まっており、彼女から"付与魔法"の魔力強化をかけてもらう。
 効果は魔法名そのままで、魔力を強化することによって魔法の威力を上げることができる魔法だ。

「ッッ、くるぞぉ! 初手は火属性に合わせろ! 芽衣とマンジュウは"雷魔法"を頼んだぁ」

 まだ全員分の"魔力強化"を掛け終わっていなかったが、既に足の速い魔物がT字路に差し掛かっているところだった。
 姿を現したのは、主にケイブホブゴブリンとその職業持ち種族のようだが、ダークウルフやダークスライムなどの姿も僅かに混じっているようだ。
 その数は流石レイドエリアというべきか、ざっと数えただけでも三十体位はいるのではないかと思われた。

「よし、撃てぇぇい!! 【ファイアーボール】」

 最後に芽衣に【魔力強化】がかかったのを確認した北条が、号令の声を上げる。

「紅蓮の炎に燃え尽きなさいっ! 【ファイアーボール】」

「……燃えて、ください。 【火遁の術】」

「マンジュウも~、いっくよ~ 【ライトニングボール】」

「ワフワフウゥゥッッ!」

 こうして北条の掛け声に合わせて放たれた魔法の群れは、合流地点で少しまごついた様子を見せている魔物たちへ向かって飛んでいく。
 魔法組が放ったボール系の魔法は、着弾点を中心に広がる範囲攻撃魔法であり、それを各人が複数同時に放っている。
 十を超える炎や雷の球と、扇状に広がっていく楓の【火遁の術】は、その無慈悲な破壊の力をむざむざと見せつける。

「GU)NMKS!!」 「NMKDMNNJ??」 「H(DBBKKX)A!?」

 魔物たちは阿鼻叫喚の声を上げるも、破壊がもたらす爆音に邪魔され、ほとんど聞き取る事も出来ない。
 ダンジョンに現れる魔物は、人間に対しての敵意が非常に高い事で知られているが、それでもある程度知性のある魔物なら戸惑いや迷いを見せることもある。

 初撃の一斉魔法掃射は、ケイブホブゴブリン達に大きな被害と混乱をもたらした。
 しかし、数は少ないものの魔法の直撃を免れたダークウルフや、フライングシザーズなどが、北条達の方へと移動を開始し始める。
 その様子を確認した北条が次の指示を出す。

「里見ぃ、加速頼むっ! 魔法組はあと一回範囲魔法を撃ったら、後は適宜状況に応じて魔法を撃てぇ。由里香、楓は範囲魔法の後は魔物を各個撃破だぁ。行くぞぉ! 【光槍】」

 魔物のバリエーションからして、この階層もひとつ前の無灯火エリアと大差ないと判断した北条は、厄介な特性を持つシャドウを除外しようと、中級"光魔法"の【光槍】を放つ。
 すると、北条の頭上に二メートル程もある、光輝く槍が二本、形作られていったかと思うと、魔物の群れへと飛んでいく。

 そして、その光輝く槍の後に続くように、魔法組の範囲魔法の第二射が放たれる。
 この二回目の範囲攻撃によって、かなりの魔物の息の根を仕留める事は出来たが、撃ち漏らしたいくつかの魔物は大分距離を詰めていた。

「OGRRRRRRッ!」

 だが、そうした数少ない魔物も、配置されていたオーガによって足止めを倒されたり、足止めを食らってしまっていた。

「準備できた、いくわよ! 【加速領域】」

 更に陽子の"結界魔法"が発動した事によって、更に趨勢が北条達の方へと傾いていく。
 【加速領域】は、中級"結界魔法"であり、フィールド系魔法の一種だ。
 指定された領域内にいる仲間に対し、魔法に応じた特殊効果を付与することができる。

 【加速領域】ならば無論敏捷性を、【パワーフィールド】なら筋力を上げてくれる。しかも、この魔法はパーティーメンバー全員に効果が及び、領域内にいる他の相手や魔物には効果が出ない。
 それでいて、芽衣の召喚した魔物にはきちんと効果が現れるし、効果範囲ももう少し広くできるので、長時間の戦闘や大規模な戦闘には打ってつけの魔法と言えた。

 問題点としては、発動までに時間がかかる点と消費魔力の多さが挙げられる。
 そのため、格下相手の戦闘ではいちいち使う事もなかった魔法だったが、レイドエリアなら存分に活躍の機会はあるだろう。

「後は掃討戦だぁ! だが油断はするなよぉ!」

 そう言って前衛もこなせる北条は、陽子を中心に張り巡らせれていた、【物理結界】と【魔法結界】を潜り抜けて外の敵に向かい始める。
 その後を「待ってました!」と言わんばかりに、由里香も後に続く。
 二人は手前まで近づいていた魔物から優先的に倒していくが、そこに風を切るような音が聞こえてきた。

「うぁっっとぉおお」

 それは態勢を立て直した、生き残りのケイブホブゴブリンアーチャーが放った矢による攻撃だった。
 他にも僅かに生き残っていたメイジ種や、ダークウルフらからも魔法が飛んでくる。

「のわっ! おわっ! とわっ!」

 それら遠距離攻撃を、奇声を上げながら躱していく北条。
 【加速領域】で敏捷性が強化された事も理由のひとつだが、余り狙いを絞って放たれていない攻撃は、北条にとってさほど脅威ではない。

「行くっすよおお」

 北条が曲芸じみた動きで的になっている間、【機敏】で素早さを増した由里香が、次々と魔物を血祭に上げていく。
 芽衣の呼び出したオーガ達も、守勢から攻勢へと変わり、その怪力を遺憾なく披露した。

 元々パワータイプで速度はイマイチのオーガだったが、陽子の【加速領域】と、芽衣の"従属強化"によって、ある程度その弱点も抑えられている。
 更には咲良たちが背後から魔法で援護をしてくれた事もあって、魔物の大群との戦闘は僅か二十分ほどで終了した。



「これ位なら、なんとかなりそうですね」

 周囲に散らばっている魔石やドロップを集めている咲良は、そう感想を漏らした。
 確かにこれまでにない規模――魔物罠部屋でも、あれほどの数の魔物を同時に相手にしたことはなかったというのに、割とサクッと初戦を制した感はあった。

「そうねえ……。それに、経験値的にも割と美味しいかも?」

 ホクホク顔で咲良の話に答える陽子。
 だが、そんな陽子に対して北条が魔法の指示を出し始めた。
 どうやら、今倒した集団は第一陣だったらしい。

 三十人の、フルレイドパーティーよりも、下手すれば早く魔物の集団を倒す事が出来たせいか、次の団体さんがお付きになるまで、若干の猶予は稼げた。
 その間にドロップの回収や、バフ系魔法で味方を強化したり、オーガ達を再召喚しなおしたりして、準備を万端に整える。


「さっきのが小手調べってとこかぁ?」

 挑発的な声を上げながら、第二陣の到達を待つ北条。
 その声に答えるように、先ほどよりも数を増した魔物たちが波のように打ち寄せてくるのだった。






しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

男が英雄でなければならない世界 〜男女比1:20の世界に来たけど簡単にはちやほやしてくれません〜

タナん
ファンタジー
 オタク気質な15歳の少年、原田湊は突然異世界に足を踏み入れる。  その世界は魔法があり、強大な獣が跋扈する男女比が1:20の男が少ないファンタジー世界。  モテない自分にもハーレムが作れると喜ぶ湊だが、弱肉強食のこの世界において、力で女に勝る男は大事にされる側などではなく、女を守り闘うものであった。  温室育ちの普通の日本人である湊がいきなり戦えるはずもなく、この世界の女に失望される。 それでも戦わなければならない。  それがこの世界における男だからだ。  湊は自らの考えの甘さに何度も傷つきながらも成長していく。  そしていつか湊は責任とは何かを知り、多くの命を背負う事になっていくのだった。 挿絵:夢路ぽに様 https://www.pixiv.net/users/14840570 ※注 「」「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜

キノア9g
ファンタジー
「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」 20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。 一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。 毎日19時更新予定。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

才能は流星魔法

神無月 紅
ファンタジー
東北の田舎に住んでいる遠藤井尾は、事故によって気が付けばどこまでも広がる空間の中にいた。 そこには巨大な水晶があり、その水晶に触れると井尾の持つ流星魔法の才能が目覚めることになる。 流星魔法の才能が目覚めると、井尾は即座に異世界に転移させられてしまう。 ただし、そこは街中ではなく誰も人のいない山の中。 井尾はそこで生き延びるべく奮闘する。 山から降りるため、まずはゴブリンから逃げ回りながら人の住む街や道を探すべく頂上付近まで到達したとき、そこで見たのは地上を移動するゴブリンの軍勢。 井尾はそんなゴブリンの軍勢に向かって流星魔法を使うのだった。 二日に一度、18時に更新します。 カクヨムにも同時投稿しています。

処理中です...