どこかで見たような異世界物語

PIAS

文字の大きさ
287 / 398
第十一章

第254話 ストーンヘンジ

しおりを挟む

 アーガスらが《ジャガー町》を訪れ、北条との模擬戦をしてから幾日かが経過した。
 目的を果たしたアーガスらはすでに《鉱山都市グリーク》へと帰還し、エスティルーナもダンジョンに本格的に潜る事なく、アーガス同様にゴールドルの元へと戻っている。

 一方信也達『プラネットアース』は、アーガスが拠点を訪れた次の日には全員無事に帰ってきていた。
 そして北条が張り切って魔改造した拠点を前に、一同は仰天する。
 いつの間に周囲の空堀には水が張られ始め、拠点の内部には水を生み出す謎の巨大オブジェと、そこから通じる小川のようなものが拠点内に張り巡らされていたのだ。

 とりわけ、最初の壁を作っていた段階を知らないロベルト兄妹の驚きようは尋常ではなかった。
 拠点を北条らが魔法で築いたというのは聞いていたのだが、こんな短期間に巨大な建造物を作れるとは思っていなかったようだ。
 なので巨大な噴水オブジェを見て、「え、これ何なんッスか?」、「何でこんな高く作ったんッスか?」などと、ロベルトが北条を質問攻めしていた。

 どうやらロベルトは無駄に規模の大きいこの巨大オブジェ――『ウェディングウォーター』と名づけられたオブジェが気に入ったらしい。
 『サムライトラベラーズ』の由里香を除く、他の面々にはイマイチ通じていなかったロマン建築に興奮しているロベルトを見て、北条も満足げな顔をしている。
 
 カタリナの方は規模の大きさに驚いてはいるものの、巨大構造物に対して魅力は感じないらしく、陽子らと同じような冷めた反応をしている。
 このウェディングウォーターを見て興奮しているのは、北条の他には由里香、ロベルト、龍之介くらいだ。



 それから休日を挟み、再びレイドパーティーを組んでレイドエリアに行くことが決定した。
 『プラネットアース』は、北条らがグリーク辺境伯の予定に合わせて拠点に待機している間に、無事に鉱山エリアの二十層まで到達していた。
 そしてその先にある迷宮碑ガルストーンに拠点登録も既にしてある。

 アーガスとの謁見……という感じとはまた少し違っていたが。とにかく、そちらの用件も片付いたので、再び全員でのレベル上げやドロップ収集の為に、一行はサルカディアへと向かう。

 前回の探索中、エリアの切り替わった十八層で登録をしてあるので、今回は一気にそこから探索が可能だ。
 今回は最初の頃に決めていた、「一週間ほど探索したら、切り上げて一度戻る」という方針を崩すことにした。

 フィールドタイプのダンジョンとなると、一層ごとの広さも相当なもので、短期間での探索ではなかなか先へと進めない。
 迷宮タイプのダンジョンの場合でも、この先いつか訪れるであろう難度の高いエリアともなれば、進むのに時間のかかる場所も出てくる事もある。
 そのため休日はしっかりと取るが、ダンジョン探索の日程は今後は不定期にしていく事が話し合いで決定されていた。

 そうしてじっくり腰を据えてのレイドエリア探索は大いに進んだ。
 どうやらこのエリアでは、主にゴブリン系と属性ウルフ系。それからアーミーアント系の三種の魔物がよく出てくるようで、時折巨大イノシシの魔物「ビッグボア」や、馬の魔物である「トライバルホース」などが出てくるようだ。
 魔物のランクとしてはF~Dランクといった所か。

 十八層などの、エリア最初の階層ではDランクの魔物の割合は少な目で、比較的F~Eの魔物が多い。
 そして、階層を下るにつれて魔物のランクの平均は高くなっていく。
 ただそれでもCランクの魔物の姿は見えないので、今の所この草原と森の広がるエリアでは、そこまで苦戦する事なく先へと進むことが出来ていた。


「お! またあったぜ!」


 そう言って龍之介が草原に生えていた樹を指さす。
 そこにはリンゴのような形状の実が幾つもなっている樹が、幾つか伸びていた。
 まだ実は赤くなっておらず緑っぽい色をしているが、この状態が一番美味しく食べられる頃合いらしい。

 味はリンゴがベースではあるが、中は水分が多くてナシのような歯ごたえをしていて、味も少しそれっぽい。
 この世界でリンゴといったらこれが普通なので、ロベルトらは何も疑問に思ってはいない様子だ。

 このリンゴに限らず、フィールドエリアでは様々な自然の恵みを得られる。
 植物だけに限らず、鳥や動物。魚なども存在するので、火山エリアだとか氷山エリアなどでない限り、食べ物などを現地調達する事も可能だ。
 ダンジョンの魔物はフィールドの魔物とは違い、どうやら食事を取る事もないようなので、こうした動植物が捕食される心配もない。

 すでに北条たち『サムライトラベラーズ』は、鉱山エリアの分岐先にある大森林エリアにおいて、コショウの木やコーヒーの木などを発見している。
 これらはまだ少量を試しに加工した段階で、採取したものの大半は陽子の"アイテムボックス"に入ったままだ。
 これに関しては、そのうち拠点内に加工する場所を用意したいと、全員の意見が一致している。

 この採取活動も、今回の目的のひとつだった。
 何せ、陽子だけでなく北条も"アイテムボックス"を使用できるのだ。
 ロベルト兄妹以外の面子だって、中に入れたモノの時間が停止する〈魔法の小袋〉を持っている。

 普通の冒険者であれば、持ち運べる荷物の限界のせいで、そうした自然物はその場で消化する程度しか採取しない。
 しかし彼らは心置きなく採取に励むことが出来る。

 道中では北条が"解析"スキルを常に色々なものに対して使用しており、それによって食べられるものや有用なものなどを判定する事が出来る。
 おかげで北条の"植物知識"のスキルはぐんぐんと成長を見せていった。



▽△▽△



「ん、あれは何ッスかね?」

 先頭を歩いていたロベルトが、視界の奥に捕らえたものを見て言った。
 あれから十日近くかけて探索を続けていた一行は、他の冒険者たちの最深記録とされる二十一層を超え、二十二層に達していた。

 ここも相変わらずこれまでと同じようなフィールドのエリアで、全体的に見ると草原と森が半々くらいの割合で存在している感じだった。
 ……のだが、ここにきてこれまでとは違うナニカをロベルトは発見したらしい。

「どれどれ……」

 龍之介を筆頭に、他のメンバーも先へと進む。
 現在いる所は草原地帯で、所々に木が生えているなだらかな地形の場所だ。
 だが若干は起伏も存在していて、ロベルトの発見したナニカは少し窪んだ盆地状になっている場所にででんと存在を主張していた。

「人工物……のようだけど」

 それを見た陽子がそう発言するが、本人もそれが実際に人の手によって作られたものだとは思ってはいなかった。

「ぐるりと周囲を囲っているようだが、中に特に何かある訳でも……いや、中央に何かあるな」

 そういった信也の視線の先。
 そこにはまるでストーンヘンジのような、石の柱が円状にぐるりと取り囲む構造物があった。
 それぞれの柱の上部は石の梁で繋がれており、柱と柱の間をくぐって中に入れるような作りになっている。
 屋根などはなく、まるで古代の天文的装置のような趣がある。

 そうして柱の間をくぐった先。円状に柱が囲まれたその中心点には、何やら円状の石床で出来た、舞台のようなものが見えた。
 といってもまだ距離が離れているので、微かにそこだけ草が生えていないのが分かる程度だ。
 特に立体的なオブジェもないのだが、何かあるとしたらここが一番怪しいだろう。

「北条さん、どうするんですか?」

「なるほどなぁ、こうなっていた訳かぁ」

 咲良が端的に尋ねる。
 すると北条は納得したといった感じで言った。

「どういう事ッスか?」

「どうも一か所だけ、魔物が寄り付かない場所があるのを、前々から感知していたんだがぁ」

 そう言って北条は周囲を見渡した。

「……今もこの近くには魔物がいないらしい。ダンジョンでは所々に番人キーパーが宝箱や特定の場所を守っている事があるらしいがぁ、あれは恐らく領域守護者エリアボスと戦う場所だろう」

領域守護者エリアボス、ね。確かに番人キーパーの守る場所には他の魔物が寄って来る事もあるけど、領域守護者エリアボスとなると他の魔物が寄り付かない……もしくは、周辺の魔物を弾くような仕掛けがあるものね」

 冒険者として先輩であるカタリナも、北条の説明に納得したようだ。
 二人の話を聞いて、龍之介が水を得た魚のように言う。

「おっしゃ! 初レイドボス戦かっ! やっぱめちゃタフなのか!?」

 元々他のメンバーにはさほど好戦的な性格の人はおらず、新しく加入したロベルト兄妹も戦いたがりという訳ではない。
 という訳でひとりはしゃぐ龍之介であるが、確かにこの先へ進むならここは通らねばならないのだろう。
 だがその前にするべき事があった。盛り上がっている龍之介に、信也がその事を告げる。


領域守護者エリアボスに挑むにしても、まずは昼食を取って、少し休憩を入れてからだな」


 そういう事になった。


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

男が英雄でなければならない世界 〜男女比1:20の世界に来たけど簡単にはちやほやしてくれません〜

タナん
ファンタジー
 オタク気質な15歳の少年、原田湊は突然異世界に足を踏み入れる。  その世界は魔法があり、強大な獣が跋扈する男女比が1:20の男が少ないファンタジー世界。  モテない自分にもハーレムが作れると喜ぶ湊だが、弱肉強食のこの世界において、力で女に勝る男は大事にされる側などではなく、女を守り闘うものであった。  温室育ちの普通の日本人である湊がいきなり戦えるはずもなく、この世界の女に失望される。 それでも戦わなければならない。  それがこの世界における男だからだ。  湊は自らの考えの甘さに何度も傷つきながらも成長していく。  そしていつか湊は責任とは何かを知り、多くの命を背負う事になっていくのだった。 挿絵:夢路ぽに様 https://www.pixiv.net/users/14840570 ※注 「」「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜

キノア9g
ファンタジー
「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」 20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。 一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。 毎日19時更新予定。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

才能は流星魔法

神無月 紅
ファンタジー
東北の田舎に住んでいる遠藤井尾は、事故によって気が付けばどこまでも広がる空間の中にいた。 そこには巨大な水晶があり、その水晶に触れると井尾の持つ流星魔法の才能が目覚めることになる。 流星魔法の才能が目覚めると、井尾は即座に異世界に転移させられてしまう。 ただし、そこは街中ではなく誰も人のいない山の中。 井尾はそこで生き延びるべく奮闘する。 山から降りるため、まずはゴブリンから逃げ回りながら人の住む街や道を探すべく頂上付近まで到達したとき、そこで見たのは地上を移動するゴブリンの軍勢。 井尾はそんなゴブリンの軍勢に向かって流星魔法を使うのだった。 二日に一度、18時に更新します。 カクヨムにも同時投稿しています。

処理中です...