どこかで見たような異世界物語

PIAS

文字の大きさ
300 / 398
第十一章

閑話 『魔法鍛冶師』ルカナル その4

しおりを挟む

 僕がこの《ジャガー村》にやってきてから数か月が経過した。
 その間は親方からの指導や仕事を手伝いつつ、時折ホージョーさんたちが持ち込んでくる鉱石を製錬したり、装備の手入れやちょっとした武器の制作依頼を受けていた。

 ありがたい事に同時期にやってきた他の鍛冶士や、ダンジョン公開以降に集まってきた鍛冶士ではなく、ずっと僕だけに仕事を頼んでくれているらしい。
 残念ながら彼らの使用してるメイン武器はダンジョンで幾つか見つけたようで、僕はそれらの武器の手入れや、カエデさん用の短剣とかヨーコさん用の投擲武器など、ちょっとしたものを作っていた。

 だけど僕としては、もっと彼らの役に立ちたいと思っている。
 そこで目を付けたのは防具だ。
 彼らはダンジョン内では、盾やマジックアイテムのアクセサリー位しか見つけていないらしい。

 今装備しているのは、《鉱山都市グリーク》で作ってもらったものらしいが、今の彼らならもっと上の防具を身に付けていて不思議ではない。
 なんせ、村の付近に現れたという悪魔をも打ち滅ぼしたらしいのだ。

 その辺りの事は僕も彼らから直接教えてもらっていないけど、村の人……じゃなかった。今はもう《ジャガー町》だったね。町の人々も口々にその噂をしていて、今いちばんホットな冒険者パーティーになっていた。

 そんな彼らに対し、僕はひとつ提案を出していた。
 ダンジョン内で仕入れたもので、防具に使えそうなものがあったら持ってきて欲しい、と。
 そうしたら僕がそれを使って彼らに防具を作る。

 ……僕がこんな提案を出したのにも理由があった。
 単純に彼らに感謝しているというのはあるし、腕を磨くためにどんどん装備を作っていきたいというのもある。
 でも一番の理由は、僕が以前と比べて大きく成長していたからだ。



 忘れもしない。あれは僕が親方のダンカンさんの元に師事してひと月がたった頃だった。
 特に何か前触れがあったという訳でもないんだけど、あの日は妙に調子がよかった。
 親方に指示されて作っていたものは、建築に使う釘なんかの簡単なものだったけど、それでも今までと出来栄えが違うのがすぐに分かった。

 それも調子が良かったのはその日だけじゃない。
 次の日も、そのまた次の日も、僕の調子が下がることはなかった。
 この事を親方に話してみたら、

「オメー、それはもしかして職業素質系スキルに目覚めたんじゃねーか?」

 と答えてくれた。
 その言葉に思わず僕も納得する。
 職業素質系スキルというのは、戦闘職、生産職問わず、色々な職業ごとに存在するスキルで、"戦士の心得"のスキルなら戦いに関しての補正が得られるらしい。

 生憎とその頃にはまだ村に鑑定するための方法もなかったので、新たに得たスキルに感謝しつつ、スキルの力に溺れないよう修行の方も前以上に必死に取り組んだ。

 その結果、僕の鍛冶に関する腕前はぐんぐんと伸びていった。
 職業素質系スキルには、関連スキルの成長を促す効果もあると聞いていたけど、これほどのものとは思わなかった。
 親方も、

「こいつぁ、単なる"鍛冶士の心得"スキルじゃなく、その上の"鍛冶士の心"の方かもな」

 と言っていたほどだ。
 ちなみに、~の心系のスキルは~の心得スキルの上位スキルにあたる。

 そういった訳で、僕の鍛冶の腕前はこの村に来た当初に比べると大きな成長を遂げていた。
 今ならば、ホージョーさん達が装備するにふさわしい防具だって作れる筈だ! と思って提案を持ちかけたんだけど、その時妙にホージョーさんが驚いていたような気がする。
 確かに僕は、彼らにこれといった実績を示せていなかったけど、そんなに頼りなく映っていたんだろうか?

 けど、ホージョーさんは僕の提案を二つ返事で受け入れてくれて、その後はダンジョン探索で手に入れた、防具の素材になりそうなものをたくさん持ってきてくれた。
 というか、あれだけの属性ウルフの皮が持ち込まれるとは想定外だった。

 他にも属性防御力はないけど、加工して防具に張り付けると防御力が増す〈オーガの皮膚〉。
 そして同じく防御力に優れたアーミーアント系の甲殻など、多くの素材を持ち込んでくれるようになった。

 それら大量の素材は、冒険者ギルドに卸すときよりも安い値段で譲ってもらうことが出来た。
 買い取った素材はすでに彼らの防具と予備の分を作ったとしても、有り余るほどの量になっている。
 余った分は鍛冶の練習用に使ってくれていい、と有難い言葉をもらっていたので、僕は彼らの防具を作る前に、まず試作品づくりから始めていく。



 そんなある日の事。

 僕は鍛冶に必要な素材を採取しに、森へと出かける事になった。
 アーミーアント系の甲殻を加工する際には、最初に〈ギュルン草〉と一緒に煮出す必要がある。
 この工程によって、一時的に加工しやすい状態に持っていく事が出来るのだ。

「じゃ、行こっか! ルカナルッ」

 そう言って先を進むのは、ダンカン親方の一人娘、エリカだ。
 彼女は僕より年下なんだけど、初めの頃はまるで出来の悪い弟と接するような態度をしていた。けど、ここ最近はそれも大分変化してきた。
 僕の独りよがりでなければ、彼女も僕の事を大分認めてきてくれたんだと思う。

「そんなはしゃいでると、後でバテちゃうよ?」

「だいじょーぶ! 私はまだまだ若いからね!」

 そう言って小走りに駆ける彼女の髪は、陽の光を浴びて強いオレンジ色に光っている。
 初めの頃は、「邪魔だから」という理由でショートにしていた髪も、今では大分伸びてきている。

 この《ジャガー町》では、ダンジョンの情報が公開されてから多くの人が集まっていた。
 それは冒険者や商人だけでなく、この町に移住しようという人までいて、《ジャガー村》時代からの住人も影響を受け始めている。
 彼女が髪を伸ばし始めたのも、そうした外から来た女性を見て思うものがあったんだろう。

 ショートの髪もそれはそれで良かったんだけど、元々長い髪の方が好きな僕としては、今のエリカは陽の光など関係なく眩しく見えた。
 それに彼女の笑顔が合わされば、僕の心はまるで鍛冶用のハンマーで心を撃たれかのごとく、鼓動が高まってしまう。


 そんな思いを表に出さないようにしつつ、しばらく森の中を二人で歩いていると、〈ギュルン草〉の群生地にたどり着いた。
 森の中には元々低ランクの魔物が出没してたようだけど、ここ最近はその数も減ってきているらしい。
 恐らくダンジョンへと向かう冒険者たちのおかげだろう。

 僕が今いるのも、ダンジョンへと向かう道からそう外れていない場所だ。
 それに万が一魔物が出現したとしても、Hランクの魔物くらいなら僕でも十分倒すことは出来る。
 手っ取り早く鍛冶士に必要な筋力などを得るために、一時期は冒険者まがいの事をしていた時期もあった。
 背中に収まっている戦闘用のハンマーを使えば、Gランクの魔物相手でもなんとかなるかもしれない。

「さ、集めようか」

「いいわ。どっちがたくさん集められるか競争ね!」

 そう言うなり、エリカは早速目をつけていた群生地に向かって駆けていく。
 僕はそんな彼女をほほえましく思いながら、自分も〈ギュルン草〉の採集を始めた。
 ついでだから、薬草の原料となる〈ヘルマ草〉なんかも集めていこう。
 エリカは勝気で負けず嫌いな所があるから、〈ギュルン草〉の方は最低限確保したら、後は控えめにして……。
 なんて事を思いながら、しばし二人して採集作業を続けていく。

 途中、お昼休憩として近くに沸いている小さな泉まで移動して、軽い食事をとりつつ休憩も挟んだ。
 午後からは、再び採集作業だ。拭っても拭っても次から滲んでくる汗を拭きながら、一時間ほど採取を続けていると、持ってきた籠も大分一杯になってきた。

 〈ギュルン草〉にこだわらず、薬草や食べられる野草や木の実なども集めていたせいだろう。
 すっかり染みついた貧乏性な自分につい苦笑してしまう。
 さて、エリカの方はどうかな? と彼女の方を振り返った時、思わず僕は目を瞠ってしまった。

 木陰でしゃがみ込んで採取をしている彼女の背後に、魔物の姿があったのだ。


しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

男が英雄でなければならない世界 〜男女比1:20の世界に来たけど簡単にはちやほやしてくれません〜

タナん
ファンタジー
 オタク気質な15歳の少年、原田湊は突然異世界に足を踏み入れる。  その世界は魔法があり、強大な獣が跋扈する男女比が1:20の男が少ないファンタジー世界。  モテない自分にもハーレムが作れると喜ぶ湊だが、弱肉強食のこの世界において、力で女に勝る男は大事にされる側などではなく、女を守り闘うものであった。  温室育ちの普通の日本人である湊がいきなり戦えるはずもなく、この世界の女に失望される。 それでも戦わなければならない。  それがこの世界における男だからだ。  湊は自らの考えの甘さに何度も傷つきながらも成長していく。  そしていつか湊は責任とは何かを知り、多くの命を背負う事になっていくのだった。 挿絵:夢路ぽに様 https://www.pixiv.net/users/14840570 ※注 「」「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

異世界に転移したらぼっちでした〜観察者ぼっちーの日常〜

キノア9g
ファンタジー
「異世界に転移したら、ぼっちでした!?」 20歳の普通の会社員、ぼっちーが目を覚ましたら、そこは見知らぬ異世界の草原。手元には謎のスマホと簡単な日用品だけ。サバイバル知識ゼロでお金もないけど、せっかくの異世界生活、ブログで記録を残していくことに。 一風変わったブログ形式で、異世界の日常や驚き、見知らぬ土地での発見を綴る異世界サバイバル記録です!地道に生き抜くぼっちーの冒険を、どうぞご覧ください。 毎日19時更新予定。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。

才能は流星魔法

神無月 紅
ファンタジー
東北の田舎に住んでいる遠藤井尾は、事故によって気が付けばどこまでも広がる空間の中にいた。 そこには巨大な水晶があり、その水晶に触れると井尾の持つ流星魔法の才能が目覚めることになる。 流星魔法の才能が目覚めると、井尾は即座に異世界に転移させられてしまう。 ただし、そこは街中ではなく誰も人のいない山の中。 井尾はそこで生き延びるべく奮闘する。 山から降りるため、まずはゴブリンから逃げ回りながら人の住む街や道を探すべく頂上付近まで到達したとき、そこで見たのは地上を移動するゴブリンの軍勢。 井尾はそんなゴブリンの軍勢に向かって流星魔法を使うのだった。 二日に一度、18時に更新します。 カクヨムにも同時投稿しています。

アイテムボックスの最も冴えた使い方~チュートリアル1億回で最強になったが、実力隠してアイテムボックス内でスローライフしつつ駄竜とたわむれる~

うみ
ファンタジー
「アイテムボックス発動 収納 自分自身!」  これしかないと思った!   自宅で休んでいたら突然異世界に拉致され、邪蒼竜と名乗る強大なドラゴンを前にして絶対絶命のピンチに陥っていたのだから。  奴に言われるがままステータスと叫んだら、アイテムボックスというスキルを持っていることが分かった。  得た能力を使って何とかピンチを逃れようとし、思いついたアイデアを咄嗟に実行に移したんだ。  直後、俺の体はアイテムボックスの中に入り、難を逃れることができた。  このまま戻っても捻りつぶされるだけだ。  そこで、アイテムボックスの中は時間が流れないことを利用し、チュートリアルバトルを繰り返すこと1億回。ついにレベルがカンストする。  アイテムボックスの外に出た俺はドラゴンの角を折り、危機を脱する。  助けた竜の巫女と共に彼女の村へ向かうことになった俺だったが――。

処理中です...