セイクリッド・レガリア~熱砂の王国~

西崎 仁

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第2章 波乱の幕開け

第1話(2)

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「……それで、このあとはどうする」

 かろうじてトーンを下げたケネスは、なおも激しい怒りを剥き出しにしながら冷ややかに問うた。冴えない見た目の小太りな男が、茫洋としたさまで己の無能をさらけ出している姿を目にするだけで苛立ちが募る。目障りこのうえないことではあったが、だからといって、いまこの状況下で罷免ひめんしてしまうわけにもいかなかった。

「す、すでに追っ手を向かわせております」
「仕留められるのだろうな?」
「王都に着くまえに必ず、と命じておりますので」
「絶好の機会すら、みすみす逃した連中だぞ?」
「数を増やして対応するとの連絡を受けております」

 絨毯に目線を落としていてなお、蛇のような陰湿な眼差しが感じられるものと見える。ハロネンの額から、さらに嫌な汗が大量に吹き出した。

 数を増やしたところで、所詮、無能は無能ではないか。

 ケネスは内心で毒づいた。しかし、それは口には出さず、納得したふりで頷いた。

「いいだろう、もう一度だけチャンスをくれてやる。今度こそ失敗はゆるさん。必ず仕留めるのだ」
「は……はっ! 寛大なお心に感謝いたしますっ」

 五体を投げ出してひれ伏さんばかりの秘書を、ケネスは煩わしげに手を振って追い払った。これ以上、見苦しいマヌケ顔を見ていたくなかった。ハロネンもまた、気難しい上司の気質はよくよく理解している。深々と頭を下げて、早々に立ち去ろうとした。その躰が細く開けたドアの向こうに不器用に消えようとしたところで、ケネスは最後のひと声をかけた。

「言っておくが、王都に着くまえ、などと悠長に考えてもらっては困る。一刻も早く、1分1秒でも時間を無駄にするな」
「心得ております」

 引き攣った顔で言葉少なに応えたハロネンは、今度こそ長官執務室から退室していった。


 独り部屋に残ったケネスは、苦虫を噛み潰したような顔で口許を歪め、嘆息した。胸の裡でさんざん役立たずだ無能だと罵りはしたが、実際、ハロネンは決して無能な男などではなかった。今回の実行者らにしてもおなじである。『ビア・セキュリティ』、といったか。民間の軍事組織ではあったが、彼らは手筈どおり、じつに手際よくテロ行為を成し遂げていた。
 目の上のコブでしかなかった科学開発技術省長官はあっさり始末され、ヒューマノイドロボティクス研究室の職員らもすべて、研究所の建物ごと吹き飛ばされた。建物の外観など、跡形もなかったほどである。これで、成功しないほうがおかしいのだ。

 ただひとつの誤算は、あの現場に、その彼らをも上回る実力の持ち主がいたことである。
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