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第5章 夢を売る街
第4話(3)
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兆候が顕れはじめたのは、第3代君主オスカー・マクシミリアンの治世でのこと。
仁君として名高かったオスカーが、ある時期を境にその性質を豹変させる。
突如奇声を発して近くにいた者に襲いかかり、あるいは自分は生命を狙われていると見えない影に怯えるようになった。王妃が自分を亡き者にしようとしている。王子や王女らが悪魔に取り憑かれ、王国を滅ぼそうとしている。王国の繁栄のためには、神に多くの生命を捧げ、その血をもって大地を浄めねばならない――
支離滅裂なことを言い出し、悪鬼のごとき形相でだれかれかまわず罵倒し、ときに縋りついて慈悲を請い、号泣する。だが次の瞬間には、なにごともなかったようにもとの国王に戻り、己が覗かせた狂気の片鱗さえもが幻であったかのごとく消し去ってしまう。
発作はなんの兆候もなく唐突にやってきて、突然おさまる。そして国王自身、発作の最中の出来事を、なにも憶えていなかった。
脳の疾患か。あるいは精神的なものが原因か。
すぐさま医療チームによって精密検査がおこなわれ、症状の原因となるものをつきとめようとした。しかし、どれほど手を尽くして調べても、これといった病巣はなにひとつ見つけることができなかった。
手を拱いているうちに、最初はごくたまにだった『発作』が次第に頻度を増していくようになった。そしてその回数に比例して、国王の人格は崩壊し、残虐性を増していった。
最初の『発作』と呼べる異常行動を起こしてわずか1カ月後。オスカー・マクシミリアンは帰らぬ人となった。症状が急激に悪化していく中、いつもより落ち着いた様相を見せていたその日、早めに寝所に入った彼は、それっきり目を覚まさなかった。死因は不明。享年89歳。
もろもろの症状も含め、老化による衰えが原因かとも思われたが、脳の萎縮も見られず、体機能の面でも、どこにもそれらしい問題は見つからなかった。
ある意味幸いだったのは、症状があらわれてから亡くなるまでの期間が非常に短かったため、人の口にのぼることが殆どなかったことである。
豹変した場に居合わせた者たちにも、あれはご病気ゆえの症状だったのだからしかたがないと納得させることができた。判然としない症状の原因を、高齢であったことに強引に理由づけてしまうこともできた。その後も引きつづき原因の究明は継続されたが、結局、明確な答えをつきとめることができないまま歳月だけが流れていった。
王家にふたたび激震が走るのは、オスカーの死から11年後のことである。
第4代君主アーサー・コンラッドは70代前半で突如、父とまったくおなじ症状を発現させ、周囲の者たちを恐慌に陥れた。第5代君主オズワルド・スペンサーは60代半ば、第6代君主マクシミリアン・ヘンリーは50代に入ってまもなく、歴代国王に共通の症状をそれぞれ発現させて、事情を知る者らを震撼たらしめた。
仁君として名高かったオスカーが、ある時期を境にその性質を豹変させる。
突如奇声を発して近くにいた者に襲いかかり、あるいは自分は生命を狙われていると見えない影に怯えるようになった。王妃が自分を亡き者にしようとしている。王子や王女らが悪魔に取り憑かれ、王国を滅ぼそうとしている。王国の繁栄のためには、神に多くの生命を捧げ、その血をもって大地を浄めねばならない――
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すぐさま医療チームによって精密検査がおこなわれ、症状の原因となるものをつきとめようとした。しかし、どれほど手を尽くして調べても、これといった病巣はなにひとつ見つけることができなかった。
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最初の『発作』と呼べる異常行動を起こしてわずか1カ月後。オスカー・マクシミリアンは帰らぬ人となった。症状が急激に悪化していく中、いつもより落ち着いた様相を見せていたその日、早めに寝所に入った彼は、それっきり目を覚まさなかった。死因は不明。享年89歳。
もろもろの症状も含め、老化による衰えが原因かとも思われたが、脳の萎縮も見られず、体機能の面でも、どこにもそれらしい問題は見つからなかった。
ある意味幸いだったのは、症状があらわれてから亡くなるまでの期間が非常に短かったため、人の口にのぼることが殆どなかったことである。
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