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第14章 王の『鍵』
第2話(1)
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「天然水は、王家の管理する浄化システムによって造り出されていた人工の産物なのです」
無言で佇むシリルの背後に控えたベルンシュタインが、静かに説明した。
王廟の地下に設けられていた、巨大浄水システム。それは、リュークの生命と引き換えに開かれた、歴代君主のみに管理権限が与えられているシステムに通ずる扉だった。
『王家の血の呪い』は、このシステムを守るために引き継がれていた。
「天然水の利権を王家が独占することで、富と権勢を恣にしている。ケネス長官はそのようにお考えだったようですが、そうではないのです」
むろん、己が利慾のためだけに浄水システムを独占していたわけでもないという。
「王国の建設当初、地球の環境汚染の状態は非常に深刻なものでした。土壌、大気、水質。なかでも水質の汚染は大変なもので、人類のみならず、あらゆる生物の存続に危機的状況をもたらすと懸念されていたほどです」
かろうじて摂取することが可能な汚染度の低い水をめぐり、各地で激しい紛争が繰り広げられるようになっていった。その紛争は次第に国家間での争いにまで発展し、やがて世界規模での大戦がいつ勃発してもおかしくはない一触即発の時代が到来する。その状況を打破し、次々に崩壊していく国家と溢れる難民らを取りまとめてあらたな組織体制のもと、ローレンシア連邦王国を築き上げたのが初代国王、ベンジャミン・ウィリアムであった。
「建国の段階で、すでにこの浄化システムは完成しておりました。ベンジャミン神王陛下がバラバラになっている民心を短期間のうちにまとめ上げられた背景にも、そのような事情がございます」
はじめはベンジャミンも、浄化システムの管理権限を王家の専有にするつもりはなかったという。だが、このシステムをめぐり、新国家を設立してなお、側近らのあいだで激しい対立が起こり、謀略がめぐらされるようになった。
建国の立役者ともいうべき腹心らが、私心に走って利益と権力を我がものとするために互いの足を引っ張り合い、ライバルを蹴落とそうと躍起になっている。
深い失望をおぼえ、他者を信用できなくなったベンジャミンは、天然水の利権を王家で専有することとした。
浄化システムの管理権限を国王ただひとりに帰属させ、他者の介入をいっさい排除する。そのうえで己の身を神格化させ、国家における絶対の立場を確立して国をひとつにまとめ上げることに腐心した。ベンジャミンが肉体の若さと人間としての領分を超えた長命にこだわりつづけたのも、国家が安泰するまでのあいだ、己の立場をもって威信を放つことで、民心にふたたび争いの火種が灯ることのないよう、畏怖の念を抱かせておくことを目的としたためであった。
無言で佇むシリルの背後に控えたベルンシュタインが、静かに説明した。
王廟の地下に設けられていた、巨大浄水システム。それは、リュークの生命と引き換えに開かれた、歴代君主のみに管理権限が与えられているシステムに通ずる扉だった。
『王家の血の呪い』は、このシステムを守るために引き継がれていた。
「天然水の利権を王家が独占することで、富と権勢を恣にしている。ケネス長官はそのようにお考えだったようですが、そうではないのです」
むろん、己が利慾のためだけに浄水システムを独占していたわけでもないという。
「王国の建設当初、地球の環境汚染の状態は非常に深刻なものでした。土壌、大気、水質。なかでも水質の汚染は大変なもので、人類のみならず、あらゆる生物の存続に危機的状況をもたらすと懸念されていたほどです」
かろうじて摂取することが可能な汚染度の低い水をめぐり、各地で激しい紛争が繰り広げられるようになっていった。その紛争は次第に国家間での争いにまで発展し、やがて世界規模での大戦がいつ勃発してもおかしくはない一触即発の時代が到来する。その状況を打破し、次々に崩壊していく国家と溢れる難民らを取りまとめてあらたな組織体制のもと、ローレンシア連邦王国を築き上げたのが初代国王、ベンジャミン・ウィリアムであった。
「建国の段階で、すでにこの浄化システムは完成しておりました。ベンジャミン神王陛下がバラバラになっている民心を短期間のうちにまとめ上げられた背景にも、そのような事情がございます」
はじめはベンジャミンも、浄化システムの管理権限を王家の専有にするつもりはなかったという。だが、このシステムをめぐり、新国家を設立してなお、側近らのあいだで激しい対立が起こり、謀略がめぐらされるようになった。
建国の立役者ともいうべき腹心らが、私心に走って利益と権力を我がものとするために互いの足を引っ張り合い、ライバルを蹴落とそうと躍起になっている。
深い失望をおぼえ、他者を信用できなくなったベンジャミンは、天然水の利権を王家で専有することとした。
浄化システムの管理権限を国王ただひとりに帰属させ、他者の介入をいっさい排除する。そのうえで己の身を神格化させ、国家における絶対の立場を確立して国をひとつにまとめ上げることに腐心した。ベンジャミンが肉体の若さと人間としての領分を超えた長命にこだわりつづけたのも、国家が安泰するまでのあいだ、己の立場をもって威信を放つことで、民心にふたたび争いの火種が灯ることのないよう、畏怖の念を抱かせておくことを目的としたためであった。
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