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第11話 月明かりに踊る(王太子視点)
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◇◇◇ ジョージ・ガーネット王太子視点になります ◇◇◇
ああ、なんて僕は取り返しのつかないことをしてしまったのだろう。
彼女が戸惑っていたのも無理はない。自分の思いばかりを優先して、一方的に言い寄ってしまった。そうだ、僕が彼女を追い詰めてしまったのだ。
彼女が公爵令息として育てられていたという複雑な事情を知った時点で、もう少し彼女の事情も考えてあげるべきだったのだ。
彼女はそんな僕にも関わらず、これまでと変わらずに僕を支えていてくれる。どうして彼女は僕にそうまでしてくれるのだろう。僕はどんなに彼女に感謝してもし足りないくらいだ
それにしても、あのパーシー公爵はなんという卑劣な人間なんだ。少女一人の人生を、自分の虚栄心にためにめちゃくちゃにして。しかもなんだ、妹には普通に女性として人生を歩ませているのに、姉の彼女にはずっと酷いことを押し付け、強要し続けていたのだ。
僕は彼の行いに憤りを感じていた。なんとしてでも彼女には幸せになってもらいたい。だが、まずは自分の間違いを正して、彼女に謝らなくてはいけない。そして、できることなら、彼女の心を癒してあげたい。支えになってあげたい。心からそう思った。
僕はすぐに彼女のところに行った。彼女は出発の準備をしていた。そろそろここから出ないと敵に見つかってしまうからだ。
「ナイアス、ちょっといいかな」
彼女は少し迷ったような仕草をしたが、すぐに真っ直ぐにこちらを向いてきた。
「はい。分かりました」
「この間のことだけど、ごめん」
「いいんです。私もあれから色々と考えてみました。私に殿下を愛する資格があるかどうかは別にして、もう少し殿下の話を聞いてあげればよかったと」
「違うんだ。あの時僕は焦りすぎていたんだ。君には十分資格がある、それだけ素晴らしい女性だと思う。それよりも、君を愛する資格がないのは僕の方なんだ」
「それは違います。殿下」
「いいや、責められるのは僕の方だ。君が大変な境遇で育ったことを知らずに、勝手に思いをぶちまけていた。一方的で身勝手で、今となってはとても恥ずかしい。だから、もう少し、もう少しだけでも、僕に時間を与えてくれないだろうか。僕が君を愛する資格ができるまで。僕にもっと話を聞かせてくれ、もっと悩みを打ち明けてくれ。僕にできることならなんでもする。そして、もし、僕のことを許してくれるのなら、その時は僕の思いを受け止めてくれないか」
「焦らず、少しづつですね」
「そう、ゆっくりね」
彼女は少し涙を流していた。きっとこれでいいんだ。これで。
◇
それから数日間、僕らはゆっくりとまた仲良くなっていった。
もちろん、敵からの襲撃もあったけど、なんとか切り抜けてきた。僕は最近、弓の練習をしている。剣の方とは違って、こちらは才能がありそうだった。
剣の腕が壊滅的で、アーロンにもナイアスにも見放されそうだったので、とても良かった。なんだか、男の僕が後方支援担当というのも格好悪い気がしたが、何もしないで、助けられてばかりよりはずっといい。
いずれ、もっと腕を磨いていけば、敵が彼女に近づく前にやっつけられるようになるかもしれない。そうしたら、彼女が傷つくことはない。
そんなことを言ったら笑われたけど、僕は大真面目に取り組んでいる。
道をゆく時は彼女といつも寄り添って歩きたい。
僕は彼女のキリッとした横顔が好きだ。僕が見ていることに気がついて、少し照れて困った顔をしている彼女が好きだ。
彼女はいつも僕が何かをすると困った顔をする。最初は嫌なのかと思っていたけど、そうでもないらしい。嬉しいけれど、すごく恥ずかしいのだそうだ。
きっと嬉しいことがあっても、素直に喜ぶことに抵抗があるのだろう。それだけ彼女は辛い人生を歩んできたのだ。
僕はもっともっと彼女を喜ばせて、もっと困った顔を見てみたい。
アーロンは僕らのことを呆れてみているような気がする。でも、何も言わない。きっと、僕らのことを心配していたのだろう。でももう大丈夫だ。
いつかいろんな呪縛が解けたなら、彼女はもっと自由に生きられるようになる。そうしたら、きっと嬉しいことがあっても、彼女は戸惑ったり迷ったりしなくなるに違いない。その時、そばに寄り添っているのが僕だったら、なんて幸せなことなんだろう。
◇
夜に彼女が当番で起きている時、僕はそっと起きて、彼女の隣に座るようになった。あれから少しづつ僕らの距離は近づいてきていて、最近は自然に寄り添えるようになっている。
月明かりを浴びながら、ゆっくり話をする。子供の時のこと、これからのこと、なんでもだ。彼女の話をじっくり聞いてあげることもあるし、僕の話を熱心に聞いてもらうこともある。
時には考えが違うこともあるけれど、だからこそ、互いに話が合って共感した時、彼女と一つになれるような気がした。
話の中でパーティの話になった。彼女はそもそも男装していて、パーティでも男役として踊っていたと言う。
「私にはドレスなんて似合わないと思うの」
そう彼女が言ってきた。
「似合わないことなんてないさ。君はスラリとしているし、とても姿勢が綺麗だからどんなドレスも似合うよ」
「でも、一度も着たことがないし、どう着こなしていればいいか分からないし、それに、仕草も男っぽいから、可愛らしくもないし」
「似合うドレスを作るまでさ。王都に戻ったら早速君に合うドレスを作るよ。アクセサリーもそれに合わせて注文する。どんな色がいいかな。燃えるような赤も捨て難いし、清楚な白や、可愛らしいピンクもいい。黒いドレスもシックでいいかも」
「何か夢物語のような気がしますね」
「絶対に大丈夫。二人で王都に行くんだ。そうだ。ちょっと待ってて、それにこっちの方をみないでね」
僕は彼女から離れて、月明かりを頼りに花を摘みにいった。そしてちょっと苦戦しながらそれを輪の形にして、彼女のところに持ってきた。
「今はこれが精一杯だけど」
彼女の頭に花輪をかけてあげた。
「花のティアラだ。すごく似合うよ。本物は王都についてから作るから。ドレスはちょっと今用意するのは難しいかな」
「すごく嬉しいです」
彼女はとても嬉しそうに言った。
そしてぼくは右手を差し出した。彼女は不思議そうに僕の方を見ている。
「僕と踊っていただけませんか。お姫様」
少し戸惑った後、彼女も右手を差し出した。
「はい、喜んで」
僕らは月明かりの中、ダンスを踊った。月に照らされた彼女はとても美しくて、僕は再び恋に落ちることになった。
ああ、なんて僕は取り返しのつかないことをしてしまったのだろう。
彼女が戸惑っていたのも無理はない。自分の思いばかりを優先して、一方的に言い寄ってしまった。そうだ、僕が彼女を追い詰めてしまったのだ。
彼女が公爵令息として育てられていたという複雑な事情を知った時点で、もう少し彼女の事情も考えてあげるべきだったのだ。
彼女はそんな僕にも関わらず、これまでと変わらずに僕を支えていてくれる。どうして彼女は僕にそうまでしてくれるのだろう。僕はどんなに彼女に感謝してもし足りないくらいだ
それにしても、あのパーシー公爵はなんという卑劣な人間なんだ。少女一人の人生を、自分の虚栄心にためにめちゃくちゃにして。しかもなんだ、妹には普通に女性として人生を歩ませているのに、姉の彼女にはずっと酷いことを押し付け、強要し続けていたのだ。
僕は彼の行いに憤りを感じていた。なんとしてでも彼女には幸せになってもらいたい。だが、まずは自分の間違いを正して、彼女に謝らなくてはいけない。そして、できることなら、彼女の心を癒してあげたい。支えになってあげたい。心からそう思った。
僕はすぐに彼女のところに行った。彼女は出発の準備をしていた。そろそろここから出ないと敵に見つかってしまうからだ。
「ナイアス、ちょっといいかな」
彼女は少し迷ったような仕草をしたが、すぐに真っ直ぐにこちらを向いてきた。
「はい。分かりました」
「この間のことだけど、ごめん」
「いいんです。私もあれから色々と考えてみました。私に殿下を愛する資格があるかどうかは別にして、もう少し殿下の話を聞いてあげればよかったと」
「違うんだ。あの時僕は焦りすぎていたんだ。君には十分資格がある、それだけ素晴らしい女性だと思う。それよりも、君を愛する資格がないのは僕の方なんだ」
「それは違います。殿下」
「いいや、責められるのは僕の方だ。君が大変な境遇で育ったことを知らずに、勝手に思いをぶちまけていた。一方的で身勝手で、今となってはとても恥ずかしい。だから、もう少し、もう少しだけでも、僕に時間を与えてくれないだろうか。僕が君を愛する資格ができるまで。僕にもっと話を聞かせてくれ、もっと悩みを打ち明けてくれ。僕にできることならなんでもする。そして、もし、僕のことを許してくれるのなら、その時は僕の思いを受け止めてくれないか」
「焦らず、少しづつですね」
「そう、ゆっくりね」
彼女は少し涙を流していた。きっとこれでいいんだ。これで。
◇
それから数日間、僕らはゆっくりとまた仲良くなっていった。
もちろん、敵からの襲撃もあったけど、なんとか切り抜けてきた。僕は最近、弓の練習をしている。剣の方とは違って、こちらは才能がありそうだった。
剣の腕が壊滅的で、アーロンにもナイアスにも見放されそうだったので、とても良かった。なんだか、男の僕が後方支援担当というのも格好悪い気がしたが、何もしないで、助けられてばかりよりはずっといい。
いずれ、もっと腕を磨いていけば、敵が彼女に近づく前にやっつけられるようになるかもしれない。そうしたら、彼女が傷つくことはない。
そんなことを言ったら笑われたけど、僕は大真面目に取り組んでいる。
道をゆく時は彼女といつも寄り添って歩きたい。
僕は彼女のキリッとした横顔が好きだ。僕が見ていることに気がついて、少し照れて困った顔をしている彼女が好きだ。
彼女はいつも僕が何かをすると困った顔をする。最初は嫌なのかと思っていたけど、そうでもないらしい。嬉しいけれど、すごく恥ずかしいのだそうだ。
きっと嬉しいことがあっても、素直に喜ぶことに抵抗があるのだろう。それだけ彼女は辛い人生を歩んできたのだ。
僕はもっともっと彼女を喜ばせて、もっと困った顔を見てみたい。
アーロンは僕らのことを呆れてみているような気がする。でも、何も言わない。きっと、僕らのことを心配していたのだろう。でももう大丈夫だ。
いつかいろんな呪縛が解けたなら、彼女はもっと自由に生きられるようになる。そうしたら、きっと嬉しいことがあっても、彼女は戸惑ったり迷ったりしなくなるに違いない。その時、そばに寄り添っているのが僕だったら、なんて幸せなことなんだろう。
◇
夜に彼女が当番で起きている時、僕はそっと起きて、彼女の隣に座るようになった。あれから少しづつ僕らの距離は近づいてきていて、最近は自然に寄り添えるようになっている。
月明かりを浴びながら、ゆっくり話をする。子供の時のこと、これからのこと、なんでもだ。彼女の話をじっくり聞いてあげることもあるし、僕の話を熱心に聞いてもらうこともある。
時には考えが違うこともあるけれど、だからこそ、互いに話が合って共感した時、彼女と一つになれるような気がした。
話の中でパーティの話になった。彼女はそもそも男装していて、パーティでも男役として踊っていたと言う。
「私にはドレスなんて似合わないと思うの」
そう彼女が言ってきた。
「似合わないことなんてないさ。君はスラリとしているし、とても姿勢が綺麗だからどんなドレスも似合うよ」
「でも、一度も着たことがないし、どう着こなしていればいいか分からないし、それに、仕草も男っぽいから、可愛らしくもないし」
「似合うドレスを作るまでさ。王都に戻ったら早速君に合うドレスを作るよ。アクセサリーもそれに合わせて注文する。どんな色がいいかな。燃えるような赤も捨て難いし、清楚な白や、可愛らしいピンクもいい。黒いドレスもシックでいいかも」
「何か夢物語のような気がしますね」
「絶対に大丈夫。二人で王都に行くんだ。そうだ。ちょっと待ってて、それにこっちの方をみないでね」
僕は彼女から離れて、月明かりを頼りに花を摘みにいった。そしてちょっと苦戦しながらそれを輪の形にして、彼女のところに持ってきた。
「今はこれが精一杯だけど」
彼女の頭に花輪をかけてあげた。
「花のティアラだ。すごく似合うよ。本物は王都についてから作るから。ドレスはちょっと今用意するのは難しいかな」
「すごく嬉しいです」
彼女はとても嬉しそうに言った。
そしてぼくは右手を差し出した。彼女は不思議そうに僕の方を見ている。
「僕と踊っていただけませんか。お姫様」
少し戸惑った後、彼女も右手を差し出した。
「はい、喜んで」
僕らは月明かりの中、ダンスを踊った。月に照らされた彼女はとても美しくて、僕は再び恋に落ちることになった。
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