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「もう、早くってば!」
「……!」
自分のペースについてこないオレをもどかしく感じているのか、先に進んでたはずのミチルはオレのところまで戻ってきて、オレの手を握って廊下を走り出した。
「お、まえ、ちょ……!」
「早くしないとタイミング逃しちゃうの!」
「な、なんの……?」
さっきの今で、照れが残ってるのはオレだけなのか? ミチルは恥ずかしい様子もなく、しっかりとオレの手を握っている。意識しないようにと思っても無理なわけで、ミチルに握られたオレの手は汗ばんでいた。
日が傾き始めた時間、校舎の中は殆どが暗がりになっていて、ダンジョンのような廊下をバタバタと走るオレたちは、背後に迫るモンスターや強制スクロールから逃げている様子と似てるな、と思った。いや、こうしてゲームみたいなこと考えてないと、オレはどうにかなっちゃいそうなのよ。
バタバタと走り回ってようやく足を止めたのは、あの渡り廊下だった。ミチルはスルリとオレの手を離し、両手を膝について全身で呼吸していた。
「大丈夫かよミチル、いきなり走り出して……どうしたんだよ」
「ごめ、大丈夫、どうしても、間に合わせたくて……」
「だから、何に? 何がどうなってんの、か……」
息も切れ切れに話すミチルに、オレは一体何がしたかったのか問いかけると、ミチルは身体を屈めたまま校庭の方を指差した。
「……ビルの影が、三本、放射状に伸びてる」
西日を背にした、街のランドマークになってる三つのビルの影が、大きな影になって伸びていた。真ん中のビルの影はまっすぐ一番長く伸びていて、左右に建つビルの影は少し短いけど対称に伸びている。その三つの影を通るように、ちょうど電車が真横に走っていく様子が見えた。
「へぇ、こういう景色は知らなかったなぁ……普段のオレ、この時間はもう家に帰ってるから、夏休みじゃなくても知らなかった」
あぁ、ミチルが言ってた秘密ってこれのことだったのか……。オレに見せようとして、あの時間に待ち合わせて、この時間になるまで何とか時間を潰そうって考えてたのかな。
「私も夏休み前に、委員会の仕事で残ってて見つけたの。卒業したらもう見られないし、その前に、季節が変わったら見られるタイミングが変わっちゃうと思って」
息が整ったミチルは、いつもの調子で話した。その様子にオレはホッとした。
話しながら少しずつ移動して、一番長いビル影の延長線がオレたちの間にあるような位置でミチルは止まった。
「……!」
自分のペースについてこないオレをもどかしく感じているのか、先に進んでたはずのミチルはオレのところまで戻ってきて、オレの手を握って廊下を走り出した。
「お、まえ、ちょ……!」
「早くしないとタイミング逃しちゃうの!」
「な、なんの……?」
さっきの今で、照れが残ってるのはオレだけなのか? ミチルは恥ずかしい様子もなく、しっかりとオレの手を握っている。意識しないようにと思っても無理なわけで、ミチルに握られたオレの手は汗ばんでいた。
日が傾き始めた時間、校舎の中は殆どが暗がりになっていて、ダンジョンのような廊下をバタバタと走るオレたちは、背後に迫るモンスターや強制スクロールから逃げている様子と似てるな、と思った。いや、こうしてゲームみたいなこと考えてないと、オレはどうにかなっちゃいそうなのよ。
バタバタと走り回ってようやく足を止めたのは、あの渡り廊下だった。ミチルはスルリとオレの手を離し、両手を膝について全身で呼吸していた。
「大丈夫かよミチル、いきなり走り出して……どうしたんだよ」
「ごめ、大丈夫、どうしても、間に合わせたくて……」
「だから、何に? 何がどうなってんの、か……」
息も切れ切れに話すミチルに、オレは一体何がしたかったのか問いかけると、ミチルは身体を屈めたまま校庭の方を指差した。
「……ビルの影が、三本、放射状に伸びてる」
西日を背にした、街のランドマークになってる三つのビルの影が、大きな影になって伸びていた。真ん中のビルの影はまっすぐ一番長く伸びていて、左右に建つビルの影は少し短いけど対称に伸びている。その三つの影を通るように、ちょうど電車が真横に走っていく様子が見えた。
「へぇ、こういう景色は知らなかったなぁ……普段のオレ、この時間はもう家に帰ってるから、夏休みじゃなくても知らなかった」
あぁ、ミチルが言ってた秘密ってこれのことだったのか……。オレに見せようとして、あの時間に待ち合わせて、この時間になるまで何とか時間を潰そうって考えてたのかな。
「私も夏休み前に、委員会の仕事で残ってて見つけたの。卒業したらもう見られないし、その前に、季節が変わったら見られるタイミングが変わっちゃうと思って」
息が整ったミチルは、いつもの調子で話した。その様子にオレはホッとした。
話しながら少しずつ移動して、一番長いビル影の延長線がオレたちの間にあるような位置でミチルは止まった。
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