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二人が荷支度をしている間レインもイベントリ内の整理とショートカットポーチの登録を変更する。
初めは5種類だが拡張を重ねて現在最大30種のショートカット登録ができるのこのポーチだが、武器や防具を設定する場合は3枠使うため魔法職の人間以外で30種入れてるものはそういないだろう。
登録内容を確認すると魔石爆弾・秘薬・エリクサー・蘇生の短杖などで今ショートカットに登録してていいものはない。闇職のスキルには手荷物内のアイテムを盗むものがあるためにうっかり盗まれると大惨事だろう。
下級ポーションに解毒薬、魔力回復用の魔封石、投げナイフと登録してるとダミーのクズアイテムを登録している気分になるが今の基準に即したものを登録していく。
念のために二つほど保険になるものは登録しておくがそれも過剰になりすぎない程度のものを慎重に選ぶ。
武器はBランク冒険者が使うようなものをいくつか選びイベントリの取り出しやすい場所に移動させておく。できれば今は初心者装備の方がいいのだろうがレインが使えそうなものは武器屋に売ってなかった。空中庭園の初心者装備が恋しいほどだ。いくつかコレクション用に買ってみたものもあるのだがレインの膂力には耐えれないだろう。だって軽く素振りしただけで軋むんだもの…
手早く装備を整えると今度は下着を汚すことを気にしていたプルシアーナのために生理用品を作る。
魔法衣類であるために汚れる心配はほとんどないと思うのだが布地が薄い下着類では確実とは言い難い。
いくつか街で買い足したものを取り出し地球にあったものを参考に作る。自分が常用していたものは魔法によって比較的簡単に作れたがそれ以外のものは中々難しい。
学校で急に始まった時に何度か運動部の同級生にもらったことのあるちょっと特殊なものも作ってみる。
自身で試すことはもうできないのでなんともいえないがプルシアーナに試してもらう他ないだろう。
他にもレインは布製の冷えを解消してくれると噂があったものも何種類か作ってみるがやはり今の身体ではわからないためにプルシアーナに試してもらうことになる。
いくつか試しに作った後今度は石鹸とシャンプーなど風呂用品を作成。せっかくの温泉なのだから最後ぐらいは存分に楽しみたい。魔法や錬金術、薬師のスキルを贅沢に使って液体シャンプーを作り上げる。もちろんノンシリコンだ!といってもシリコンの作り方なんてよく知らないレインなので逆にシリコンシャンプーを作れないおかしな状態となっている。魔法と錬金術は偉大である。
二人の荷支度も終わったところでお風呂に入る。
掛け湯をしていつも通り頭を洗おうとする二人を止めてシャンプーを使うようにいうとレインの言うがままシャンプーを手のひらに垂らして頭を洗い始める。モコモコと泡が立ち始めると二人とも何が楽しいのかキャッキャはしゃぎながら髪を洗い流す。
「おもしろ~い!!」
「なんですかこの泡!それにすっごく髪の毛がツルツルです!?」
レインは二人の反応に満足げに頷く。
「ウンウンすごいでしょ!さっき作った髪の毛を綺麗にする液体の石鹸だよ。シャンプーって言うんだ。」
「すごいです!」
「モッコモコだね!」
「今度はこっちのリンスだね。」
シャンプーで喜んでる二人に今度はリンスを取り出し使い方を説明する。少し時間がかかるためロアナはちょっとソワソワとして「まだぁ?」なんて聞いてきたがリンスを流した後はサラサラになった髪の毛に興奮気味だった。
「サラサラだ~!ねぇ綺麗?お兄ちゃん髪綺麗?」
「うん。綺麗だよ。もちろんシーアもね。」
リア充爆発しろと言われるほど甘々なお風呂タイムはそれから半時間ほど続く。
『月下風雲』最後のお風呂を堪能すると明日も早いので布団に入り就寝することにした。
翌朝目がさめるとレインの腕時計は5時を示している。
早く寝た甲斐があったものだと思いつつ起きると二人もすでに起きていた。ロアナはまだ目をこすっているので完全には起きていないが旅支度を済ませたカバンをもう一度確認しているようだ。ミヤビ洋服店で購入した服の中から比較的動きやすい服装を選んで二人に渡すとレインは自分の着替えをすませる。
レインは多くの職業を取得しているがメインで使用しているのは陰陽師だ。種族レベル(アバターのレベル)が10になったとき仙人に昇華したのは陰陽師メインで使っていたためであろう。他に人族の中で昇華したものでは聖騎士が天使、戦士職で鬼になったものもいるのだが何が基準で変化するのかがよくわかっていない。人族以外ならほぼ確定しているのだが人族のみ何になるのかメインで使っている職と他の要因が関わってくるため分岐が多いようだ。
ちなみに仙人は1人しか確認されておらず、天使は4人、他に吸血鬼や雪女になったものかなりの変わり種は龍と契約していた竜騎士がドラゴニュートになったり虫使いが蟲人になった例もある。
人族の種族昇華時にどういった変化が起こるのかよくわかっていない。
話が逸れたがレインは元は陰陽術を多用した戦闘スタイルであるため旅の服装は冒険者と思えないほどラフな格好だ。戦闘に入る場合はローブを着たり和装したりすることもあるが旅となると隠遁効果のある服装をするのがレイン流である。これは闇職プレイヤーはPK目的のため鎧やローブ姿の旅人を襲う傾向にあったために始めた習慣なのだが今その格好だと襲われるリスクが……
2人に着せた服はサロペットだ。つなぎといってもいいのだがサロペットだ!
ロアナが青、プルシアーナが黒のつな、サロペットを着ている。なぜか?レインの気分に決まっている。
5時半、早めの朝食をとると荷物をまとめてギルドへと赴く。
ギルドは早朝にもかかわらずそこそこ人が賑わっている。せっせと今日の依頼書を掲示板や冊子にまとめて受付の準備に走り回る受付嬢の皆さんをよそに冒険者登録用の窓口に行くとプルシアーナの試験を頼む。
予約済みということもありすぐに試験を開始してくれるようで訓練場へと足を向ける。
訓練場にはゲーム時代には見慣れない水晶と隻腕の男性がいた。
「どうも初めまして。俺は今回の試験管ナードです。冒険者登録ということで特に戦闘をすることはないですから緊張せず気楽にどうぞ。」
「は、はい!」
隻腕の男性は元冒険者で名前はナード。このアトーリアでは上から数えて10番ぐらいの実力者らしい。この数年森から群れをなしてアトーリアに襲いかかってくるモンスターの迎撃時に薬草採取に出ていた新人冒険者をかばって片腕を失ってからはギルド職員として働いている。
緊張気味のプルシアーナは返事をするだけで精一杯のようだ。
試験は体力測定みたいなものでいくつかある検査から筋力値を計算し50m走で速さ、シャトルランで体力、水晶に魔力を通して魔力量と質を検査、手先の器用さと知能を測るちょっとしたゲームの得点により合否が決まる。
各々簡単に自己紹介を終えるとレインとロアナは訓練場の端に移動してプルシアーナの試験を見守ることにする。
「では始めましょうか。まずは…」
全部で約30分ほどで試験が終わるのだがシャトルランだけでもう20分ほど続いている。さっきやっていた筋力測定もかなりの成績でステータスに換算すると20ぐらいはありそうだ。
すでに足の速さと体力も合わせると50を超えるステータス相当に当たるほどの成績を残している。
「すげぇなあの嬢ちゃん。」
ナードが呟く。
明らかに異常な体力と筋力を持つことがわかるのだがそれもこれも神狼の首飾りの力だ。力が完全に馴染んでいるわけではないが神狼からの加護によって引き上げられた身体能力があるためこの程度は余裕だろう。レインは自分がしたことに罪悪感を持ちつつもこれなら多少は自衛行動が取れるかもしれないと思う。
今の世界ではあって困るようなものではない。
それから全ての試験を終えるのに10分ほど合計で50分はかかった。もちろん合格で冒険者となることができたのだがなんだかイカサマしたような気分になり苦笑するレイン。予定より少し押したが問題なく手続きをすませると城へと向かう。城の門に到着するとエルル改が止まっておりナターシャが待っていた。
「「「おはようございます。」」」
エルル改の前で待つナターシャに声をかける。
「おはようございます。」
「ごめん。遅れた??」
「いえ、つい先ほどミッド様の仕事の引き継ぎが終わったようでまだミッド様を待たなければいけません。」
「そっか。あれ?でもここまでエルル改を誰が?」
「……それが」
レインの質問に少し暗い顔をするナターシャ。
「どうしたんです?」
「それが始めは城の中で待っている予定だったのですがパトラ様がエルルの中で待つとおっしゃいまして……で、乗ったら乗ったで運転し始めアレヨアレヨとここまで……」
「あー…」
「あの自転車というのがたいそう気に入ったようでして実際1台持って帰るとおっしゃられましてね。あぁ、そうそう男爵様より昨日の仕事の報酬を預かっていますエルルの中に置いてますので後ほど。」
「え?あぁはい。」
もう報酬をもらえるとは思わなかったが勝手に依頼料が決まっているようだ。
レインとしては特に材料を消費せずに色々試作できたので特に問題はないが勝手に決まるのもちょっとどうかと思う。
多すぎても少なすぎても面倒そうだ。
「ここにおったか!駐車場に行ったらエルルがないから置いてかれたと思ったわ。」
「ミッド様申し訳ございません。」
「お!ミッドおはよう。」
「レインか。皆集まったようだな。では出発だな。」
これで全員揃ったようで出発となる。
ミッドとレインがいるだけで過剰戦力であるため少数で行動だ。
本来大公家の人間の移動なら馬車が少なくとも二台で行動し護衛も最低でも10名はつくのだがミッドとレインの2人がいるだけで過剰戦力。まして車はエルル改なのでこの車の速度についてこれる馬はほとんどいないためむしろ足手まといだろうということからこの人数での行動となる。
ミッドが一緒というだけで誰も同行したがらないというのもある。
全員がエルルに乗り込むと運転席にはパトラが座っていた。
どうもアトーリアを出るまでは運転したいらしい。本当は王都まで運転したいようだがそれはナターシャによって却下されアトーリアを出るまでの道のみ運転許可を得たそうだ。
幸か不幸かエルルは金属で覆っており窓も結界によって覆われているために外から中の様子が見えないようにすることができる。結界をダウングレードした際にスモークガラスよろしく結界に色をつけて外から中を見れないように加工したことが裏目に出た。
人目があるからダメなどということは通用せず、怪我の心配もない。体力的に無理だろうということも言えないよう体力回復に重量軽減アシスト機能もしっかり完備。運転に特殊な技術?三輪で安定してるために多少曲がりにくいが試作品のベロタクシーを動かせれば一回り大きいだけで結構簡単に運転できる。
そういうわけでどの理由を上げようとも何も問題なく運転できてしまう。
強いて言えば身分について話すしかないのだ身分がと言ってしまえば冒険者に孤児が一緒にいることが不敬ではないかというものも貴族の中にいる。それを持ち出すと今はそんなやつこの中にいないので問題ないと言えばこの中にパトラが運転することを身分がどうこういうのはナターシャしかいないため結局運転してはいけない理由がなくなる。
と言ったやりとりを数分続けた結果アトーリアから出るまで運転することになたわけだ。
自転車はまだ自由に運転できないためエルルを運転するのが楽しくてしょうがない様子のパトラ。スカートでは運転しにくいということで昨日レインが渡した芋ジャージを着て運転してる。それも現代日本のことを知ってるものに見られればかなりヤバめの代物に違いない。
プレイヤーたちが作ったネタデザインの衣類もこの世界の住人には人気が出たりするわけだがジャージも着心地だけ言えばドレスなんかより何倍も動きやすく肌触りも良いものなのでこれからどうなることか……
色々と心配しつつエルルのペダルを漕ぐパトラを眺める。
初めは5種類だが拡張を重ねて現在最大30種のショートカット登録ができるのこのポーチだが、武器や防具を設定する場合は3枠使うため魔法職の人間以外で30種入れてるものはそういないだろう。
登録内容を確認すると魔石爆弾・秘薬・エリクサー・蘇生の短杖などで今ショートカットに登録してていいものはない。闇職のスキルには手荷物内のアイテムを盗むものがあるためにうっかり盗まれると大惨事だろう。
下級ポーションに解毒薬、魔力回復用の魔封石、投げナイフと登録してるとダミーのクズアイテムを登録している気分になるが今の基準に即したものを登録していく。
念のために二つほど保険になるものは登録しておくがそれも過剰になりすぎない程度のものを慎重に選ぶ。
武器はBランク冒険者が使うようなものをいくつか選びイベントリの取り出しやすい場所に移動させておく。できれば今は初心者装備の方がいいのだろうがレインが使えそうなものは武器屋に売ってなかった。空中庭園の初心者装備が恋しいほどだ。いくつかコレクション用に買ってみたものもあるのだがレインの膂力には耐えれないだろう。だって軽く素振りしただけで軋むんだもの…
手早く装備を整えると今度は下着を汚すことを気にしていたプルシアーナのために生理用品を作る。
魔法衣類であるために汚れる心配はほとんどないと思うのだが布地が薄い下着類では確実とは言い難い。
いくつか街で買い足したものを取り出し地球にあったものを参考に作る。自分が常用していたものは魔法によって比較的簡単に作れたがそれ以外のものは中々難しい。
学校で急に始まった時に何度か運動部の同級生にもらったことのあるちょっと特殊なものも作ってみる。
自身で試すことはもうできないのでなんともいえないがプルシアーナに試してもらう他ないだろう。
他にもレインは布製の冷えを解消してくれると噂があったものも何種類か作ってみるがやはり今の身体ではわからないためにプルシアーナに試してもらうことになる。
いくつか試しに作った後今度は石鹸とシャンプーなど風呂用品を作成。せっかくの温泉なのだから最後ぐらいは存分に楽しみたい。魔法や錬金術、薬師のスキルを贅沢に使って液体シャンプーを作り上げる。もちろんノンシリコンだ!といってもシリコンの作り方なんてよく知らないレインなので逆にシリコンシャンプーを作れないおかしな状態となっている。魔法と錬金術は偉大である。
二人の荷支度も終わったところでお風呂に入る。
掛け湯をしていつも通り頭を洗おうとする二人を止めてシャンプーを使うようにいうとレインの言うがままシャンプーを手のひらに垂らして頭を洗い始める。モコモコと泡が立ち始めると二人とも何が楽しいのかキャッキャはしゃぎながら髪を洗い流す。
「おもしろ~い!!」
「なんですかこの泡!それにすっごく髪の毛がツルツルです!?」
レインは二人の反応に満足げに頷く。
「ウンウンすごいでしょ!さっき作った髪の毛を綺麗にする液体の石鹸だよ。シャンプーって言うんだ。」
「すごいです!」
「モッコモコだね!」
「今度はこっちのリンスだね。」
シャンプーで喜んでる二人に今度はリンスを取り出し使い方を説明する。少し時間がかかるためロアナはちょっとソワソワとして「まだぁ?」なんて聞いてきたがリンスを流した後はサラサラになった髪の毛に興奮気味だった。
「サラサラだ~!ねぇ綺麗?お兄ちゃん髪綺麗?」
「うん。綺麗だよ。もちろんシーアもね。」
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『月下風雲』最後のお風呂を堪能すると明日も早いので布団に入り就寝することにした。
翌朝目がさめるとレインの腕時計は5時を示している。
早く寝た甲斐があったものだと思いつつ起きると二人もすでに起きていた。ロアナはまだ目をこすっているので完全には起きていないが旅支度を済ませたカバンをもう一度確認しているようだ。ミヤビ洋服店で購入した服の中から比較的動きやすい服装を選んで二人に渡すとレインは自分の着替えをすませる。
レインは多くの職業を取得しているがメインで使用しているのは陰陽師だ。種族レベル(アバターのレベル)が10になったとき仙人に昇華したのは陰陽師メインで使っていたためであろう。他に人族の中で昇華したものでは聖騎士が天使、戦士職で鬼になったものもいるのだが何が基準で変化するのかがよくわかっていない。人族以外ならほぼ確定しているのだが人族のみ何になるのかメインで使っている職と他の要因が関わってくるため分岐が多いようだ。
ちなみに仙人は1人しか確認されておらず、天使は4人、他に吸血鬼や雪女になったものかなりの変わり種は龍と契約していた竜騎士がドラゴニュートになったり虫使いが蟲人になった例もある。
人族の種族昇華時にどういった変化が起こるのかよくわかっていない。
話が逸れたがレインは元は陰陽術を多用した戦闘スタイルであるため旅の服装は冒険者と思えないほどラフな格好だ。戦闘に入る場合はローブを着たり和装したりすることもあるが旅となると隠遁効果のある服装をするのがレイン流である。これは闇職プレイヤーはPK目的のため鎧やローブ姿の旅人を襲う傾向にあったために始めた習慣なのだが今その格好だと襲われるリスクが……
2人に着せた服はサロペットだ。つなぎといってもいいのだがサロペットだ!
ロアナが青、プルシアーナが黒のつな、サロペットを着ている。なぜか?レインの気分に決まっている。
5時半、早めの朝食をとると荷物をまとめてギルドへと赴く。
ギルドは早朝にもかかわらずそこそこ人が賑わっている。せっせと今日の依頼書を掲示板や冊子にまとめて受付の準備に走り回る受付嬢の皆さんをよそに冒険者登録用の窓口に行くとプルシアーナの試験を頼む。
予約済みということもありすぐに試験を開始してくれるようで訓練場へと足を向ける。
訓練場にはゲーム時代には見慣れない水晶と隻腕の男性がいた。
「どうも初めまして。俺は今回の試験管ナードです。冒険者登録ということで特に戦闘をすることはないですから緊張せず気楽にどうぞ。」
「は、はい!」
隻腕の男性は元冒険者で名前はナード。このアトーリアでは上から数えて10番ぐらいの実力者らしい。この数年森から群れをなしてアトーリアに襲いかかってくるモンスターの迎撃時に薬草採取に出ていた新人冒険者をかばって片腕を失ってからはギルド職員として働いている。
緊張気味のプルシアーナは返事をするだけで精一杯のようだ。
試験は体力測定みたいなものでいくつかある検査から筋力値を計算し50m走で速さ、シャトルランで体力、水晶に魔力を通して魔力量と質を検査、手先の器用さと知能を測るちょっとしたゲームの得点により合否が決まる。
各々簡単に自己紹介を終えるとレインとロアナは訓練場の端に移動してプルシアーナの試験を見守ることにする。
「では始めましょうか。まずは…」
全部で約30分ほどで試験が終わるのだがシャトルランだけでもう20分ほど続いている。さっきやっていた筋力測定もかなりの成績でステータスに換算すると20ぐらいはありそうだ。
すでに足の速さと体力も合わせると50を超えるステータス相当に当たるほどの成績を残している。
「すげぇなあの嬢ちゃん。」
ナードが呟く。
明らかに異常な体力と筋力を持つことがわかるのだがそれもこれも神狼の首飾りの力だ。力が完全に馴染んでいるわけではないが神狼からの加護によって引き上げられた身体能力があるためこの程度は余裕だろう。レインは自分がしたことに罪悪感を持ちつつもこれなら多少は自衛行動が取れるかもしれないと思う。
今の世界ではあって困るようなものではない。
それから全ての試験を終えるのに10分ほど合計で50分はかかった。もちろん合格で冒険者となることができたのだがなんだかイカサマしたような気分になり苦笑するレイン。予定より少し押したが問題なく手続きをすませると城へと向かう。城の門に到着するとエルル改が止まっておりナターシャが待っていた。
「「「おはようございます。」」」
エルル改の前で待つナターシャに声をかける。
「おはようございます。」
「ごめん。遅れた??」
「いえ、つい先ほどミッド様の仕事の引き継ぎが終わったようでまだミッド様を待たなければいけません。」
「そっか。あれ?でもここまでエルル改を誰が?」
「……それが」
レインの質問に少し暗い顔をするナターシャ。
「どうしたんです?」
「それが始めは城の中で待っている予定だったのですがパトラ様がエルルの中で待つとおっしゃいまして……で、乗ったら乗ったで運転し始めアレヨアレヨとここまで……」
「あー…」
「あの自転車というのがたいそう気に入ったようでして実際1台持って帰るとおっしゃられましてね。あぁ、そうそう男爵様より昨日の仕事の報酬を預かっていますエルルの中に置いてますので後ほど。」
「え?あぁはい。」
もう報酬をもらえるとは思わなかったが勝手に依頼料が決まっているようだ。
レインとしては特に材料を消費せずに色々試作できたので特に問題はないが勝手に決まるのもちょっとどうかと思う。
多すぎても少なすぎても面倒そうだ。
「ここにおったか!駐車場に行ったらエルルがないから置いてかれたと思ったわ。」
「ミッド様申し訳ございません。」
「お!ミッドおはよう。」
「レインか。皆集まったようだな。では出発だな。」
これで全員揃ったようで出発となる。
ミッドとレインがいるだけで過剰戦力であるため少数で行動だ。
本来大公家の人間の移動なら馬車が少なくとも二台で行動し護衛も最低でも10名はつくのだがミッドとレインの2人がいるだけで過剰戦力。まして車はエルル改なのでこの車の速度についてこれる馬はほとんどいないためむしろ足手まといだろうということからこの人数での行動となる。
ミッドが一緒というだけで誰も同行したがらないというのもある。
全員がエルルに乗り込むと運転席にはパトラが座っていた。
どうもアトーリアを出るまでは運転したいらしい。本当は王都まで運転したいようだがそれはナターシャによって却下されアトーリアを出るまでの道のみ運転許可を得たそうだ。
幸か不幸かエルルは金属で覆っており窓も結界によって覆われているために外から中の様子が見えないようにすることができる。結界をダウングレードした際にスモークガラスよろしく結界に色をつけて外から中を見れないように加工したことが裏目に出た。
人目があるからダメなどということは通用せず、怪我の心配もない。体力的に無理だろうということも言えないよう体力回復に重量軽減アシスト機能もしっかり完備。運転に特殊な技術?三輪で安定してるために多少曲がりにくいが試作品のベロタクシーを動かせれば一回り大きいだけで結構簡単に運転できる。
そういうわけでどの理由を上げようとも何も問題なく運転できてしまう。
強いて言えば身分について話すしかないのだ身分がと言ってしまえば冒険者に孤児が一緒にいることが不敬ではないかというものも貴族の中にいる。それを持ち出すと今はそんなやつこの中にいないので問題ないと言えばこの中にパトラが運転することを身分がどうこういうのはナターシャしかいないため結局運転してはいけない理由がなくなる。
と言ったやりとりを数分続けた結果アトーリアから出るまで運転することになたわけだ。
自転車はまだ自由に運転できないためエルルを運転するのが楽しくてしょうがない様子のパトラ。スカートでは運転しにくいということで昨日レインが渡した芋ジャージを着て運転してる。それも現代日本のことを知ってるものに見られればかなりヤバめの代物に違いない。
プレイヤーたちが作ったネタデザインの衣類もこの世界の住人には人気が出たりするわけだがジャージも着心地だけ言えばドレスなんかより何倍も動きやすく肌触りも良いものなのでこれからどうなることか……
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