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隣国でのオタノシミ
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御前会議から数日後。
「んじゃー、いい子にしてるんだぞ?」
「……」
おいおい、そんな顔をしてくれるなよ。
ジョシュアはまるで親に捨てられた子供のように絶望に涙を……って泣くな! お前に泣かれると、私だって行きたくないっ!
ひしっと抱き合う私達を周囲は同情半分呆れ半分で見守ってくれている。
「ほら、サーヤ。そろそろ出発の時間だろう?」
「あぁ。悪いね、頼んだよ」
「任せときなって!」
「あたしらがちゃあんと面倒みとくからさ」
近所の頼もしいおばちゃん達の頼もしい言葉。それを聞くやいなや後ろから両肩を叩かれる。振り向きたくないと本能が言ってるよ、これ。しかし、振り向かない私にイラッとしているのだろう、段々と強められる手の圧力。
「このまま首、絞められたい?」
冗談じゃねぇ!とでも言えば、もちろん冗談なんかじゃないよ、と返されるのがオチ。
自分の首は自分で守ろう。私はすぐさま立ち上がり、後ろを向いた。するとそこには想像していた通り、いつもの服装とは違い旅装束に身を包んだユアンとシーヴァが。
私が愛想笑いでニコッと笑うとユアンもニコッと笑う。その笑顔に騙される女の子多数。騙されちゃいかんよ、そこの彼女達。この人、顔は特上、性格も大変トクジョウ。あえてのカタコトに察してくれ。
「さぁ、行きますよ。時間が惜しい」
「了解です。じゃあジョシュア、そいつとお利口にな」
頭をガシガシと撫でくりまわし、用意されていた馬車に乗り込んだ。シーヴァが出発の合図を出すと緩やかに馬車は走り出した。
後ろの小窓を覗くと、ジョシュアがドラゴンを抱え、しょんぼりとしている。それをおばちゃん達が懸命に慰め、角を曲がった所で見えなくなってしまった。視線を前に向けると何やら含みがある笑みを浮かべる魔王サマその一、ユアンがこちらを見ていた。
「……なんですか?」
「いや? 君達二人は相変わらず仲が良いようでなによりだよ」
「いいじゃないですか。誰に迷惑をかけているわけでもなし。……まぁ、近所の方達にはお世話になっている分思う所はありますが」
「そうだよねぇ。仲がいいのは結構。でもそれが他人の迷惑になるようなら考えものだよねぇ」
ニコニコと愛想のいい笑顔を続けるユアン。私は外で馬上の人となっている常識人に救いの手を求めた。
「リヒャルト! あんたの上司怖い!」
「……」
すっと視線をそらすことでリヒャルトは一人難を逃れた。
う、裏切りだ。酷い裏切りにあったぞ。
「そういえばサーヤ。死の番人の件、まだ弁解を聞いてなかったよね? 丁度時間が十分あるんだし、話してごらんよ」
ちなみに笑顔の裏に隠された言葉を付け加えると、言い訳できるもんならなぁ、がもれなく追加されるのは間違いない。
あぁ、世の無常。なんで私がこんな目に。
誰が悪いのか。もちろん犯人は別にいる。逆恨み? 断じて違う! こんな絶対的時間の猶予を作った奴らのせいじゃあなかろうか? その通りだ!
私はその犯人達に華麗なる復讐を誓った。
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