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第三章―愛するが故に―
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しおりを挟む『小羽。おいで』
……誰かの声が聞こえる。
とっても懐かしい。
私はゆっくりと目を開けた。
辺りは暗くて、次第に暗闇に目が慣れてくると、ここが自分の部屋だってことが分かった。
緩慢に頭を動かすと、窓辺に誰かが立っている。
月が雲の合間から出てきて、横顔が照らしだされた。
「……月代、先生?」
「目、覚めた?」
私……どうして………あ。
菅井さんのことを思い出したら、体が震えだした。
両腕を掻き抱き、必死にとめようとするけどとまらない。
「小羽。大丈夫だよ。もう、あの男はいないから」
「い、ない?」
「うん。もういないから、安心して。ほら、まだ夜だから。もう少し寝なよ」
先生がまた私の両目を手で覆った。
今度はだんだんと眠気が襲ってきた。
「先生……今みたいに……優しい、だけ……なら……いい、のに……」
私は途切れ途切れに今の気持ちを正直に言った。
薄れゆく意識に、先生の声が微かに耳に入ってきた。
「僕が―――は、――――――だけ―――――よ」
先生が切なそうに笑ったのには、気づけなかった。
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