13 / 14
第8話 獣化薬
しおりを挟む
あの日、オーギュの気持ちを受け止めて、私の考えが杞憂である事が分かった。
真摯に向けてくれている愛を疑ってしまったことには申し訳なく思いつつも、私は心から満たされていた。
この愛に応えるために、もっとオーギュの役に立ちたい。
公私ともにオーギュに応えること。きっとそれが私が出来る最大の貢献だろう。
「これが今回依頼された獣化薬だ。取り急ぎ3種類用意した。これを飲むと人の形を残しながら特定の動物の身体的特徴と能力を得ることが出来る。持続時間は今回のもので1時間。成分を調整すれば更に延長することも可能だ。体の形状が変わるから、それに合わせて服も一緒に変化するような魔術をかけてある」
この薬もオーギュのアイデアから作ったものだ。
獣の能力を持つ人間、いわゆる獣人になれる薬。
これを使えば、人間には難しい――例えば高所での作業などを行うことが出来るようになるだろう。
獣人はおとぎ話にしか出てこない、空想の生き物だ。過去にも現在にも、実在しない。
まさかそこから着想を得るなんて、考えたことも無かった。
オーギュの柔軟な思考には毎度驚かされる。
そんな事を考えつつ、机の上の色の違う3本の瓶を示しながら薬の説明を続けた。
「緑の瓶は嗅覚に優れた犬の能力を、青の瓶は空を飛ぶ鳥の能力を得ることが出来る。そしてこの赤の瓶が猫の能力を得る薬なのだが……」
それまでスラスラと出てきた言葉が詰まってしまった。
この猫の能力を得る薬は、オーギュに頼まれて作った。
まずは身近な動物から、ということで、最初に作る薬は鳥と犬に決まったのだが、せっかくならもう1種類と猫をリクエストされたのだ。
レシピの基礎は同じだから、1種類増えたところで大した負担にはならないと作ったまでは良かった。
他の薬同様、これを飲めばちゃんと猫の能力が手に入る。
しかしこの薬だけ、他の二つには無いおかしな副作用が存在するのだ。
「俺が頼んだ奴だね。早速使って見せて欲しいな」
オーギュが期待の篭る目を向けてくる。
そんな風に見つめられると、拒否することは出来なかった。
「……絶対笑うなよ」
「? 笑わないよ?」
私が恥ずかしいだけで、命にかかわるような副作用ではない。
私は覚悟を決めると薬瓶の中身を一気に飲み下した。
とろりとした液体が喉元を過ぎると、カッと身体が熱くなる。
同時に、体の中心から手の先、足の先まで魔力が走った。
魔力は全身の細胞に作用し、変化を促していく。
男性妊娠薬とはまた異なる感覚に身じろいだ。
「シャル、耳が……」
言われて頭に手をやると、毛皮に覆われた二つの突起が付いていた。おそらく獣の耳だろう。
続けて、魔力で再編成されたトラウザーズの後ろから、私の髪色と同じ赤い毛に覆われたしっぽが伸びてくる。
オーギュは私の様子を興味深く見つめていた。
暫くすると魔力の渦が治まった。変化は完了したらしい。
「終わった……かな?」
オーギュの問いかけに頷きで答えると、オーギュはガバッと私に抱きついた。
「可愛い!!!」
「にゃっ!」
突然の抱擁にたまらず声が出てしまった。
「『にゃ』?」
オーギュが身体を離して小首をかしげる。
このまま黙っているわけにはいかない。
私は一つ大きく息を吐くと、口を開いた。
「この薬には、副作用がある…………にゃ」
覚悟はしていたつもりだが、あまりの恥ずかしさに顔は俯き、声はだんだん小さくなってしまった。
しかし、オーギュは私の言葉を聞き逃さなかったらしい。
「副作用って、まさか……」
「ああ……なぜか分からないが、この薬だけ語尾がおかしなことになる……にゃ」
止めようとしてもなぜか語尾が出てしまう。これは私だけでなく、実験の際服用したどの研究員も同じだった。
私の羞恥心ばかり気になっていたが、こんな変な語尾、オーギュに嫌われてしまわないだろうか。
恐る恐る顔を上げると、私の心配をよそにオーギュはキラキラと美しい瞳を輝かせた。
「言葉まで可愛いなんて……最高だよ!シャル!」
オーギュの大きな手が私の頬を撫でる。
その手に擦り寄って喉を鳴らしそうになり、慌てて咳払いをしつつ取り繕った。
感情まで猫に寄っているようだ。気を付けなくては。
「……で、猫の能力で何をすればいいにゃ?」
こんなにオーギュが喜んでくれるなら、恥ずかしい思いをする価値はあった。
もう語尾のことは気にしないでおこう。
そう自分に言い聞かせてオーギュに向き合うと、オーギュはきょとんと私を見つめた。
「別に……俺が見たかっただけなんだけど」
そう言ってオーギュはうっとりと私を見つめると、指先で頭の上の耳をそっと撫でた。
「猫耳としっぽ、とっても可愛いよ」
その様子に私は愕然とした。
そんな動機で――
私はぐっとこぶしを握ると、鋭い視線でオーギュを睨みつけた。
「そんな……私だって見たいにゃ!」
耳としっぽのついたオーギュの姿なんて、絶対可愛いに決まっている。私だって見てみたい。
そんな衝動に駆られるままに、二つ残った薬瓶のうち緑の方を差し出した。
「オーギュはこれを飲むにゃ!」
「良いよ。シャルの望みなら」
オーギュはあっさりと私の要求を承諾して薬瓶を受け取ると、躊躇することなく中身を口にした。
ゴクリと喉が上下に動く。
オーギュは目を閉じて、自身の変化に耐えているようだった。
どんな耳やしっぽが生えてくるのだろうか。
期待でしっぽが揺れるのを抑えきれなかった。
体の変化が終わったらしいオーギュがゆっくりと目を開いた。
その立ち姿を、私はぽかんと口を開けたまま見ていた。
「……どうかな?」
掛けられた声にハッとして、思わずしっぽをピンと立てた。
頭頂の垂れ耳はオーギュの優しげな雰囲気に良く似合っている。
豊かな毛の生えたしっぽは黄金に輝き、まさに王者の風格を感じた。
「か……可愛いにゃぁ……」
私の見立て通り、犬の耳としっぽのついたオーギュはまるで大型犬のようでとても愛らしかった。
しばらく自身の耳やしっぽを確認していたオーギュは、ふと何かに気が付いたように顔を上げ鼻を動かした。
「あれ? この匂い……」
オーギュはふらりと私に近付くと、私の首筋に顔を寄せて息を吸い込んだ。
「やっぱり! シャルの匂いだ……」
鼻を髪に埋め、スンスンと匂いを嗅がれる。
毛並みの良いしっぽはブンブンとちぎれそうなくらいの勢いで左右に揺れていた。
「あんまり嗅ぐにゃ……」
「良い匂いだよ。ずっと嗅いでいたいくらいだ……」
風呂には毎日入っているから臭くは無いとは思うが、こんなに嗅がれるのは恥ずかしい。
それにこんなに近くにいると、オーギュの匂いを感じて何だか変な気分になってくる。
どうにか鎮めようとするも、気持ちと裏腹に身体は火照ってじわりと汗ばんだ。
オーギュは私の髪をかき上げ、うなじの匂いを嗅ぐと、べろりと舐めた。
「にゃぅ!」
「美味しそう……シャル……」
腰のあたりに硬いものが押し付けられて胸が跳ねる。
オーギュも、反応してる。
その事実に後ろがきゅんと疼いた。
「オーギュっ……まだ明るいにゃ……」
「薬の効果は1時間しかないんだよ。折角だし、ね」
腕を抱くようにしてオーギュに背を向ける。
しかし私の抵抗もむなしく、いとも簡単にベルトが取り払われてしまった。
言葉と裏腹に私だってそれを望んでいたのだから強くは拒否出来なかった。
「ふにゃっ♡」
オーギュの手がしっぽの付け根辺りに触れると、未知の快感が走った。
「ここ、気持ち良いの?」
「あっ♡ そんなとこ、しらにゃ……っ♡♡」
親指の腹できゅっと押されて腰砕けになってしまった。
尻を突き出すような情けない格好だが、机に捕まりながら何とか姿勢を保った。
「ふふっ……可愛い……直接触ってあげるね」
トラウザーズと下履きを脱がされ、尻が空気に触れる。
寒さか、それともこの後への期待なのか。私は無意識にぶるりと身震いした。
「はっ……♡ ぁ、……っ、にゃぁ……♡」
オーギュの指先がしっぽの付け根から後孔にかけて何度も往復する。
その度に快楽の波が押し寄せて、机からずり落ちないよう必死にテーブルクロスに爪を立てた。
「にゃっ、ぁ♡ オーギュぅ……♡ もっと、してぇ♡」
もっと刺激が欲しくてオーギュの前の膨らみに後孔を擦り付けて強請った。
熱い塊がゴリゴリ当たって気持ちが良い。
「ふっ、みゅぅぅ……きもちい……♡」
夢中で腰を振っていると、背後で息を呑む気配がした。
「っ、エロすぎ……!」
カチャカチャとベルトを外す音に期待が高まる。
後ろ手に洗浄魔法をかけ、オーギュを受け入れようと肩越しに振り返って見えたそれに大きく胸が跳ねた。
そこにあったものは見慣れたオーギュのものとはまるで異なっていた。
深い紅色のそれは普段より細長く、先端の張り出しは無い。真っ直ぐな竿の根元は薄い毛皮で覆われている。
その形状は人よりも獣のそれのようだった。
「シャル、もう……」
白い肌を上気させ荒い息を吐きながら額に貼りついた前髪をかき上げるオーギュの姿に、全身の血液が沸騰したような錯覚に陥った。
視線が絡むと、匂い立つ甘い香りがぶわりと濃くなる。
クラクラするほどの濃密な匂いに、もう下半身の疼きが抑えきれなかった。
早く欲しい。この雄の、熱い飛沫をたっぷり注ぎ込まれたい。
私は自ら尻たぶを割り開いて後孔を晒すと、誘うようにしっぽを揺らした。
「にゃん……オーギュ♡ 早く♡ はやくぅ♡」
いつもはしないようなはしたない真似も今は構わない。
そんなことより早く中を、奥を突いて欲しかった。
「っ! シャル!!」
「ふみゃぁっっ♡♡♡」
性急に腰を掴まれると、荒っぽい動きで後孔をこじ開けられて、私はそれだけで軽く達してしまった。
いつもより細い陰茎はすんなりと私の中へ入ってくる。
同時に先端から分泌された液体が肉壁にかかった。
その液体で滑りが良くなった中へ、熱い肉塊が押し入る。
「フッ、シャルの中、気持ちいい……」
「にゃっ♡ あっ♡ きもちい♡♡ きもちいにゃあああ♡♡♡♡」
素速い抜き差しを繰り返しながら、奥へ奥へとオーギュが挿入ってくる。
その度に前立腺を突かれ、爪でクロスを破り裂きながら快楽に耐えた。
パンパンと肉を打ち付けながらの力強い抽送に翻弄され、私は机に突っ伏した。
オーギュの様子を見たいが、顔を向ける余裕なんて無い。
代わりに耳を後ろに向けて背後の音を探った。
「ン、クッ……」
普段はあまり聞こえないオーギュの喘ぎだ。
オーギュが、私の身体で気持ち良くなっている――
その事実に背筋がゾクゾク粟立った。
「ハッ、ァ、シャル……」
「ふにゃ♡ おーぎゅぅ♡」
吐息混じりの声で名を呟かれ、思わずきゅうと後ろを締めつけた。
「シャル……! っ! 射精すよ! 俺の子種で孕んでっ!」
「みゅぅう♡ 孕むぅ♡ おーぎゅのこどもっ♡ 孕ませてぇ♡♡♡」
オーギュが私の腰を両腕で抱き込むと、ずぶりと最奥まで熱塊が届く。
絶頂の直前、その根元がぼこりと膨らんだ。
「ふにゃ!? あぁっ♡♡ なに!?」
みちみちと後孔を広げられて縁が引っ張られる感覚がする。
内側からの圧迫感や痛みすら快感だった。
ハフハフと浅い呼吸を繰り返しながらぎゅっとクロスを掴む。
その膨らみでガチリと固定されると、勢いよく熱い飛沫が迸った。
「にゃんっ♡ にゃぁっ♡ イっちゃぅぅぅぅう♡♡」
腸壁にびゅくびゅく当たる度に快楽が身体を突き抜け、私はしっぽを跳ね上げながら達した。
「ふっ、クッ……」
「あっ♡ みゃっ♡♡ イくの♡ とまんにゃ♡♡♡」
ドクドク注がれる熱が気持ち良い。
目の前にチカチカと白い星が飛んだ。
高みから降りられないまま、ガリガリと机に爪を立てる。
出口に蓋をされ逃げることの出来ない濁流は私の胎の中を満たしていった。
「ふっ、ん……シャル、愛してる……」
オーギュの弾力のある舌がベロリと背をなぞる。
「はっ♡ ふにゃ……♡」
漏れ出た声にオーギュが小さく笑う気配がすると、慈しむようにペロペロと舐められる。
私はだらしなく口を半開きしながら甘い痺れに全身を震わせた。
何度絶頂したのだろうか。
長い射精が終わる頃には、私は朦朧としながら机に乗り上げていた。
いつの間にか膨らみは元に戻ったようだ。
オーギュの陰茎がずるりと抜けると、飲みきれなかった精液がつうっと脚を伝った。
「っ、ふぅ……シャル……」
オーギュは私を優しく抱き上げると、部屋のソファへ寝かせた。
沢山注がれた腹がやや苦しいが、それ以上に歓喜で胸が震えた。
ぽっこりと膨れた腹をそっと撫でる。
「みゅ……♡ おーぎゅの……いっぱいにゃ♡」
愛しい番の子種にうっとりしながら、私は意識を飛ばした。
「ごめん、シャル! つい魔が差して……」
地面に頭を擦り付ける勢いのオーギュを、私は眉を寄せて眺めていた。
ため息を一つ吐いて部屋を見渡す。
破れたテーブルクロスに傷だらけのテーブル。
机の上にあったものは床に散乱し、絨毯には二人がこぼした色々な液体で大きなシミが出来ていた。
「オーギュ」
腕を取ってオーギュを立ち上がらせる。
すまなさそうに眉を下げるオーギュにちゅっと口付けた。
「っ、シャル……」
「オーギュだけのせいじゃない。その……私も、したかったから。だから……」
言いながらあの時の事を思い出してしまい、赤面する。
いつもと違う感覚の行為は、新たな快感を齎した。
端的に言えば、すこぶる気持ち良かったのだ。
「じゃあまた見せてくれる? シャルの猫耳しっぽ」
「……たまになら、な」
オーギュの指先がしっぽの付け根があった辺りをつんと突く。
あの熱を思い起こし、無いしっぽがピンと伸びた気がした。
真摯に向けてくれている愛を疑ってしまったことには申し訳なく思いつつも、私は心から満たされていた。
この愛に応えるために、もっとオーギュの役に立ちたい。
公私ともにオーギュに応えること。きっとそれが私が出来る最大の貢献だろう。
「これが今回依頼された獣化薬だ。取り急ぎ3種類用意した。これを飲むと人の形を残しながら特定の動物の身体的特徴と能力を得ることが出来る。持続時間は今回のもので1時間。成分を調整すれば更に延長することも可能だ。体の形状が変わるから、それに合わせて服も一緒に変化するような魔術をかけてある」
この薬もオーギュのアイデアから作ったものだ。
獣の能力を持つ人間、いわゆる獣人になれる薬。
これを使えば、人間には難しい――例えば高所での作業などを行うことが出来るようになるだろう。
獣人はおとぎ話にしか出てこない、空想の生き物だ。過去にも現在にも、実在しない。
まさかそこから着想を得るなんて、考えたことも無かった。
オーギュの柔軟な思考には毎度驚かされる。
そんな事を考えつつ、机の上の色の違う3本の瓶を示しながら薬の説明を続けた。
「緑の瓶は嗅覚に優れた犬の能力を、青の瓶は空を飛ぶ鳥の能力を得ることが出来る。そしてこの赤の瓶が猫の能力を得る薬なのだが……」
それまでスラスラと出てきた言葉が詰まってしまった。
この猫の能力を得る薬は、オーギュに頼まれて作った。
まずは身近な動物から、ということで、最初に作る薬は鳥と犬に決まったのだが、せっかくならもう1種類と猫をリクエストされたのだ。
レシピの基礎は同じだから、1種類増えたところで大した負担にはならないと作ったまでは良かった。
他の薬同様、これを飲めばちゃんと猫の能力が手に入る。
しかしこの薬だけ、他の二つには無いおかしな副作用が存在するのだ。
「俺が頼んだ奴だね。早速使って見せて欲しいな」
オーギュが期待の篭る目を向けてくる。
そんな風に見つめられると、拒否することは出来なかった。
「……絶対笑うなよ」
「? 笑わないよ?」
私が恥ずかしいだけで、命にかかわるような副作用ではない。
私は覚悟を決めると薬瓶の中身を一気に飲み下した。
とろりとした液体が喉元を過ぎると、カッと身体が熱くなる。
同時に、体の中心から手の先、足の先まで魔力が走った。
魔力は全身の細胞に作用し、変化を促していく。
男性妊娠薬とはまた異なる感覚に身じろいだ。
「シャル、耳が……」
言われて頭に手をやると、毛皮に覆われた二つの突起が付いていた。おそらく獣の耳だろう。
続けて、魔力で再編成されたトラウザーズの後ろから、私の髪色と同じ赤い毛に覆われたしっぽが伸びてくる。
オーギュは私の様子を興味深く見つめていた。
暫くすると魔力の渦が治まった。変化は完了したらしい。
「終わった……かな?」
オーギュの問いかけに頷きで答えると、オーギュはガバッと私に抱きついた。
「可愛い!!!」
「にゃっ!」
突然の抱擁にたまらず声が出てしまった。
「『にゃ』?」
オーギュが身体を離して小首をかしげる。
このまま黙っているわけにはいかない。
私は一つ大きく息を吐くと、口を開いた。
「この薬には、副作用がある…………にゃ」
覚悟はしていたつもりだが、あまりの恥ずかしさに顔は俯き、声はだんだん小さくなってしまった。
しかし、オーギュは私の言葉を聞き逃さなかったらしい。
「副作用って、まさか……」
「ああ……なぜか分からないが、この薬だけ語尾がおかしなことになる……にゃ」
止めようとしてもなぜか語尾が出てしまう。これは私だけでなく、実験の際服用したどの研究員も同じだった。
私の羞恥心ばかり気になっていたが、こんな変な語尾、オーギュに嫌われてしまわないだろうか。
恐る恐る顔を上げると、私の心配をよそにオーギュはキラキラと美しい瞳を輝かせた。
「言葉まで可愛いなんて……最高だよ!シャル!」
オーギュの大きな手が私の頬を撫でる。
その手に擦り寄って喉を鳴らしそうになり、慌てて咳払いをしつつ取り繕った。
感情まで猫に寄っているようだ。気を付けなくては。
「……で、猫の能力で何をすればいいにゃ?」
こんなにオーギュが喜んでくれるなら、恥ずかしい思いをする価値はあった。
もう語尾のことは気にしないでおこう。
そう自分に言い聞かせてオーギュに向き合うと、オーギュはきょとんと私を見つめた。
「別に……俺が見たかっただけなんだけど」
そう言ってオーギュはうっとりと私を見つめると、指先で頭の上の耳をそっと撫でた。
「猫耳としっぽ、とっても可愛いよ」
その様子に私は愕然とした。
そんな動機で――
私はぐっとこぶしを握ると、鋭い視線でオーギュを睨みつけた。
「そんな……私だって見たいにゃ!」
耳としっぽのついたオーギュの姿なんて、絶対可愛いに決まっている。私だって見てみたい。
そんな衝動に駆られるままに、二つ残った薬瓶のうち緑の方を差し出した。
「オーギュはこれを飲むにゃ!」
「良いよ。シャルの望みなら」
オーギュはあっさりと私の要求を承諾して薬瓶を受け取ると、躊躇することなく中身を口にした。
ゴクリと喉が上下に動く。
オーギュは目を閉じて、自身の変化に耐えているようだった。
どんな耳やしっぽが生えてくるのだろうか。
期待でしっぽが揺れるのを抑えきれなかった。
体の変化が終わったらしいオーギュがゆっくりと目を開いた。
その立ち姿を、私はぽかんと口を開けたまま見ていた。
「……どうかな?」
掛けられた声にハッとして、思わずしっぽをピンと立てた。
頭頂の垂れ耳はオーギュの優しげな雰囲気に良く似合っている。
豊かな毛の生えたしっぽは黄金に輝き、まさに王者の風格を感じた。
「か……可愛いにゃぁ……」
私の見立て通り、犬の耳としっぽのついたオーギュはまるで大型犬のようでとても愛らしかった。
しばらく自身の耳やしっぽを確認していたオーギュは、ふと何かに気が付いたように顔を上げ鼻を動かした。
「あれ? この匂い……」
オーギュはふらりと私に近付くと、私の首筋に顔を寄せて息を吸い込んだ。
「やっぱり! シャルの匂いだ……」
鼻を髪に埋め、スンスンと匂いを嗅がれる。
毛並みの良いしっぽはブンブンとちぎれそうなくらいの勢いで左右に揺れていた。
「あんまり嗅ぐにゃ……」
「良い匂いだよ。ずっと嗅いでいたいくらいだ……」
風呂には毎日入っているから臭くは無いとは思うが、こんなに嗅がれるのは恥ずかしい。
それにこんなに近くにいると、オーギュの匂いを感じて何だか変な気分になってくる。
どうにか鎮めようとするも、気持ちと裏腹に身体は火照ってじわりと汗ばんだ。
オーギュは私の髪をかき上げ、うなじの匂いを嗅ぐと、べろりと舐めた。
「にゃぅ!」
「美味しそう……シャル……」
腰のあたりに硬いものが押し付けられて胸が跳ねる。
オーギュも、反応してる。
その事実に後ろがきゅんと疼いた。
「オーギュっ……まだ明るいにゃ……」
「薬の効果は1時間しかないんだよ。折角だし、ね」
腕を抱くようにしてオーギュに背を向ける。
しかし私の抵抗もむなしく、いとも簡単にベルトが取り払われてしまった。
言葉と裏腹に私だってそれを望んでいたのだから強くは拒否出来なかった。
「ふにゃっ♡」
オーギュの手がしっぽの付け根辺りに触れると、未知の快感が走った。
「ここ、気持ち良いの?」
「あっ♡ そんなとこ、しらにゃ……っ♡♡」
親指の腹できゅっと押されて腰砕けになってしまった。
尻を突き出すような情けない格好だが、机に捕まりながら何とか姿勢を保った。
「ふふっ……可愛い……直接触ってあげるね」
トラウザーズと下履きを脱がされ、尻が空気に触れる。
寒さか、それともこの後への期待なのか。私は無意識にぶるりと身震いした。
「はっ……♡ ぁ、……っ、にゃぁ……♡」
オーギュの指先がしっぽの付け根から後孔にかけて何度も往復する。
その度に快楽の波が押し寄せて、机からずり落ちないよう必死にテーブルクロスに爪を立てた。
「にゃっ、ぁ♡ オーギュぅ……♡ もっと、してぇ♡」
もっと刺激が欲しくてオーギュの前の膨らみに後孔を擦り付けて強請った。
熱い塊がゴリゴリ当たって気持ちが良い。
「ふっ、みゅぅぅ……きもちい……♡」
夢中で腰を振っていると、背後で息を呑む気配がした。
「っ、エロすぎ……!」
カチャカチャとベルトを外す音に期待が高まる。
後ろ手に洗浄魔法をかけ、オーギュを受け入れようと肩越しに振り返って見えたそれに大きく胸が跳ねた。
そこにあったものは見慣れたオーギュのものとはまるで異なっていた。
深い紅色のそれは普段より細長く、先端の張り出しは無い。真っ直ぐな竿の根元は薄い毛皮で覆われている。
その形状は人よりも獣のそれのようだった。
「シャル、もう……」
白い肌を上気させ荒い息を吐きながら額に貼りついた前髪をかき上げるオーギュの姿に、全身の血液が沸騰したような錯覚に陥った。
視線が絡むと、匂い立つ甘い香りがぶわりと濃くなる。
クラクラするほどの濃密な匂いに、もう下半身の疼きが抑えきれなかった。
早く欲しい。この雄の、熱い飛沫をたっぷり注ぎ込まれたい。
私は自ら尻たぶを割り開いて後孔を晒すと、誘うようにしっぽを揺らした。
「にゃん……オーギュ♡ 早く♡ はやくぅ♡」
いつもはしないようなはしたない真似も今は構わない。
そんなことより早く中を、奥を突いて欲しかった。
「っ! シャル!!」
「ふみゃぁっっ♡♡♡」
性急に腰を掴まれると、荒っぽい動きで後孔をこじ開けられて、私はそれだけで軽く達してしまった。
いつもより細い陰茎はすんなりと私の中へ入ってくる。
同時に先端から分泌された液体が肉壁にかかった。
その液体で滑りが良くなった中へ、熱い肉塊が押し入る。
「フッ、シャルの中、気持ちいい……」
「にゃっ♡ あっ♡ きもちい♡♡ きもちいにゃあああ♡♡♡♡」
素速い抜き差しを繰り返しながら、奥へ奥へとオーギュが挿入ってくる。
その度に前立腺を突かれ、爪でクロスを破り裂きながら快楽に耐えた。
パンパンと肉を打ち付けながらの力強い抽送に翻弄され、私は机に突っ伏した。
オーギュの様子を見たいが、顔を向ける余裕なんて無い。
代わりに耳を後ろに向けて背後の音を探った。
「ン、クッ……」
普段はあまり聞こえないオーギュの喘ぎだ。
オーギュが、私の身体で気持ち良くなっている――
その事実に背筋がゾクゾク粟立った。
「ハッ、ァ、シャル……」
「ふにゃ♡ おーぎゅぅ♡」
吐息混じりの声で名を呟かれ、思わずきゅうと後ろを締めつけた。
「シャル……! っ! 射精すよ! 俺の子種で孕んでっ!」
「みゅぅう♡ 孕むぅ♡ おーぎゅのこどもっ♡ 孕ませてぇ♡♡♡」
オーギュが私の腰を両腕で抱き込むと、ずぶりと最奥まで熱塊が届く。
絶頂の直前、その根元がぼこりと膨らんだ。
「ふにゃ!? あぁっ♡♡ なに!?」
みちみちと後孔を広げられて縁が引っ張られる感覚がする。
内側からの圧迫感や痛みすら快感だった。
ハフハフと浅い呼吸を繰り返しながらぎゅっとクロスを掴む。
その膨らみでガチリと固定されると、勢いよく熱い飛沫が迸った。
「にゃんっ♡ にゃぁっ♡ イっちゃぅぅぅぅう♡♡」
腸壁にびゅくびゅく当たる度に快楽が身体を突き抜け、私はしっぽを跳ね上げながら達した。
「ふっ、クッ……」
「あっ♡ みゃっ♡♡ イくの♡ とまんにゃ♡♡♡」
ドクドク注がれる熱が気持ち良い。
目の前にチカチカと白い星が飛んだ。
高みから降りられないまま、ガリガリと机に爪を立てる。
出口に蓋をされ逃げることの出来ない濁流は私の胎の中を満たしていった。
「ふっ、ん……シャル、愛してる……」
オーギュの弾力のある舌がベロリと背をなぞる。
「はっ♡ ふにゃ……♡」
漏れ出た声にオーギュが小さく笑う気配がすると、慈しむようにペロペロと舐められる。
私はだらしなく口を半開きしながら甘い痺れに全身を震わせた。
何度絶頂したのだろうか。
長い射精が終わる頃には、私は朦朧としながら机に乗り上げていた。
いつの間にか膨らみは元に戻ったようだ。
オーギュの陰茎がずるりと抜けると、飲みきれなかった精液がつうっと脚を伝った。
「っ、ふぅ……シャル……」
オーギュは私を優しく抱き上げると、部屋のソファへ寝かせた。
沢山注がれた腹がやや苦しいが、それ以上に歓喜で胸が震えた。
ぽっこりと膨れた腹をそっと撫でる。
「みゅ……♡ おーぎゅの……いっぱいにゃ♡」
愛しい番の子種にうっとりしながら、私は意識を飛ばした。
「ごめん、シャル! つい魔が差して……」
地面に頭を擦り付ける勢いのオーギュを、私は眉を寄せて眺めていた。
ため息を一つ吐いて部屋を見渡す。
破れたテーブルクロスに傷だらけのテーブル。
机の上にあったものは床に散乱し、絨毯には二人がこぼした色々な液体で大きなシミが出来ていた。
「オーギュ」
腕を取ってオーギュを立ち上がらせる。
すまなさそうに眉を下げるオーギュにちゅっと口付けた。
「っ、シャル……」
「オーギュだけのせいじゃない。その……私も、したかったから。だから……」
言いながらあの時の事を思い出してしまい、赤面する。
いつもと違う感覚の行為は、新たな快感を齎した。
端的に言えば、すこぶる気持ち良かったのだ。
「じゃあまた見せてくれる? シャルの猫耳しっぽ」
「……たまになら、な」
オーギュの指先がしっぽの付け根があった辺りをつんと突く。
あの熱を思い起こし、無いしっぽがピンと伸びた気がした。
20
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
飼われる側って案外良いらしい。
なつ
BL
20XX年。人間と人外は共存することとなった。そう、僕は朝のニュースで見て知った。
向こうが地球の平和と引き換えに、僕達の中から選んで1匹につき1人、人間を飼うとかいう巫山戯た法を提案したようだけれど。
「まあ何も変わらない、はず…」
ちょっと視界に映る生き物の種類が増えるだけ。そう思ってた。
ほんとに。ほんとうに。
紫ヶ崎 那津(しがさき なつ)(22)
ブラック企業で働く最下層の男。顔立ちは悪くないが、不摂生で見る影もない。
変化を嫌い、現状維持を好む。
タルア=ミース(347)
職業不詳の人外、Swis(スウィズ)。お金持ち。
最初は可愛いペットとしか見ていなかったものの…?
2025/09/12 ★1000 Thank_You!!
臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式の話
八億児
BL
架空の国と儀式の、真面目騎士×どスケベビッチ王。
古代アイルランドには臣下が王の乳首を吸って服従の意を示す儀式があったそうで、それはよいものだと思いましたので古代アイルランドとは特に関係なく王の乳首を吸ってもらいました。
「今夜は、ずっと繋がっていたい」というから頷いた結果。
猫宮乾
BL
異世界転移(転生)したワタルが現地の魔術師ユーグと恋人になって、致しているお話です。9割性描写です。※自サイトからの転載です。サイトにこの二人が付き合うまでが置いてありますが、こちら単独でご覧頂けます。
獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加
「これからも応援してます」と言おう思ったら誘拐された
あまさき
BL
国民的アイドル×リアコファン社会人
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
学生時代からずっと大好きな国民的アイドルのシャロンくん。デビューから一度たりともファンと直接交流してこなかった彼が、初めて握手会を開くことになったらしい。一名様限定の激レアチケットを手に入れてしまった僕は、感動の対面に胸を躍らせていると…
「あぁ、ずっと会いたかった俺の天使」
気付けば、僕の世界は180°変わってしまっていた。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
初めましてです。お手柔らかにお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる