トラブルメーカー系モブに転生したけど主人公が優秀すぎて何も起こらない

香山

文字の大きさ
2 / 22
第1部

01 思い出した!

しおりを挟む
「えっ、ギルがメイソン騎士団に……?」
「そう。入団式では新入団員代表を務めるから、レイも来てくれると嬉しいな」

メイソン騎士団――その言葉を口にした瞬間、雷に打たれたような衝撃と共に様々な記憶が頭に流れ込んできた。
ギル、メイソン騎士団、レイ……
カチリ、と音が鳴ったかのように脳内で記憶の辻褄が合わさり、俺は完全に理解した。この世界は、前世で俺が書いた小説ラノベの世界だ!

「レイ、体調が優れないのかい?」

目の前の男、ギルが形の良い眉を寄せて俺の顔を覗き込んでくる。
俺がぼーっとしていたのはほんの僅かな時間ではあったが、心配性のこの男はそれに目ざとく気付いたらしい。

「いや! 大丈夫、元気元気! それより入団おめでとう! ギルなら合格するって信じてたよ」

俺がぎゅっと抱きつくと、ギルは表情を緩めていつものように俺の頭を撫でた。爽やかなギルの匂いを胸いっぱいに吸い込むと、ようやく落ち着いてきた。

「凄いよ。本当に……」

この国、ベルドゥジュール王国の辺境警備にあたるメイソン騎士団は、こと魔物退治についてこの国で――いや、世界でもトップクラスの実力を持った騎士団だ。団員数は決して多くは無いが団員の練度は高く、入団試験は厳しい。しかしこの騎士団で5年働けば身分の関係なく王都の王立騎士団で小隊長以上の扱いが約束されるということから国内でも腕に自信のある猛者たちが集まる騎士団でもあった。
ギルはメイソン辺境伯家の養子ではあるが、実子ですら実力が無ければ入団は許可されない。試験が受けられるのは18歳からだ。ギルは最年少で、しかも最優秀の成績で試験に合格したことになる。まさに偉業だ。

「レイのサポートのおかげだよ。ありがとう」

ギルはそう言ってくれるが、俺がやったことはポーションを作るくらいだ。俺じゃなくてもギルにポーションを渡したい人間なんてごまんといる。それより俺の頬を撫でる大きな手についた剣だことか、体を支えてくれる全身のしなやかな筋肉が、ギルがどれほど努力したのかを雄弁に物語っている。合格はその賜物だと、そう伝えるとギルは照れたように笑った。




話を終えて自室に戻ると、俺はベッドに突っ伏した。はしたない真似だという気持ちはあるが、前世の記憶を思い出した今となってはそれほど忌避感はない。
そう、前世。
あの時流れ込んできた記憶は、俺の前世のものだ。



前世の俺は日本人だった。SEとして働く傍ら、小説を書くのが趣味で何作かネットに公開していた。ただ、前世の人生について詳しいことは思い出せない。何歳まで生きたのかとか、何故死んだのかとかも。

ちなみに今世の俺、レイライト・ベルドゥジュールは、この国ベルドゥジュール王国の第二王子だ。肩書こそ立派だが、王の愛妾の子であるから王位継承権は無いに等しい。そのうえ幼少期に虚弱体質だったせいもあり運動はからっきし、魔力も王族としては絶望的に少ないし、特殊な能力も特にない。スキルの『創薬』は珍しくはあるが、よくある『製薬』スキルと出来ることはたいして変わりない。名ばかりのレアスキルだ。
顔立ちだって前世の基準からすれば間違いなくイケメンだけど、美男美女の多い今世ではそれほどでもないように思う。
王太子である年の離れた兄は別格として、年の近い妹と比べても俺がパッとしないのは片親が違うせいではなく、モブキャラだからだと思うと妙に納得できた。

「おかしいと思ってたんだよな。母様はあんなに美人だったんだから」

俺の母親は男爵家の出身で側妃にすらなれない立場だったけど、その美貌が王の目に留まり、愛妾として離宮へ迎えられたと聞いている。
俺が2歳の時に流行り病にかかり死んでしまったから覚えてないけど、離宮に飾られた絵姿を見る限り、確かに儚げで可憐な美人だった。でも、俺が受け継いだのは色味くらいで、顔立ちはあまり似ていない。だから、あの絵姿は相当盛っているのだろうと思っていたが、違うのかもしれない。

「まあ、そんなことよりも小説だよな……主人公ギルじゃないのは仕方ないとしても、なんでよりによってレイなんだよ……」

この世界に似た俺の書いた小説。内容はよくある追放からの成り上がりハーレムものだ。主人公のギルが辺境に追放されるところから物語が始まり――

「ん? おかしいな……」

小説と違い、ギルは自発的にこの辺境領に来ている。しかも来たのは6年も前だ。

「ひょっとしてあの小説じゃない……? いやでもそれにしては一致しすぎてるしなぁ」

小説の内容も細部まで完璧に覚えているわけではない。けれども、始まりのシーンはさすがに忘れてはいない。しかし、キャラ名、地名など、物語の根幹となる設定は小説と同じだ。

「他にも違いがあるのかな……俺の今後にもかかわることだし。とりあえず、覚えている所だけでもまとめておこう」

俺は紙とペンを取り出し、机に向き合った。






しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

弟がガチ勢すぎて愛が重い~魔王の座をささげられたんだけど、どうしたらいい?~

マツヲ。
BL
久しぶりに会った弟は、現魔王の長兄への謀反を企てた張本人だった。 王家を恨む弟の気持ちを知る主人公は死を覚悟するものの、なぜかその弟は王の座を捧げてきて……。 というヤンデレ弟×良識派の兄の話が読みたくて書いたものです。 この先はきっと弟にめっちゃ執着されて、おいしく食われるにちがいない。

お宝は二人の食卓に。~万能鑑定士と風来坊の騎士が綴る世界一周のんびり冒険譚~』

たら昆布
BL
無口な最強騎士×のんびり鑑定士

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました

ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載

シナリオ回避失敗して投獄された悪役令息は隊長様に抱かれました

無味無臭(不定期更新)
BL
悪役令嬢の道連れで従兄弟だった僕まで投獄されることになった。 前世持ちだが結局役に立たなかった。 そもそもシナリオに抗うなど無理なことだったのだ。 そんなことを思いながら収監された牢屋で眠りについた。 目を覚ますと僕は見知らぬ人に抱かれていた。 …あれ? 僕に風俗墜ちシナリオありましたっけ?

貧乏Ωが御曹司αの将来のために逃げた話。

ミカン
BL
オメガバース

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

転生したらスパダリに囲われていました……え、違う?

米山のら
BL
王子悠里。苗字のせいで“王子さま”と呼ばれ、距離を置かれてきた、ぼっち新社会人。 ストーカーに追われ、車に轢かれ――気づけば豪奢なベッドで目を覚ましていた。 隣にいたのは、氷の騎士団長であり第二王子でもある、美しきスパダリ。 「愛してるよ、私のユリタン」 そう言って差し出されたのは、彼色の婚約指輪。 “最難関ルート”と恐れられる、甘さと狂気の狭間に立つ騎士団長。 成功すれば溺愛一直線、けれど一歩誤れば廃人コース。 怖いほどの執着と、甘すぎる愛の狭間で――悠里の新しい人生は、いったいどこへ向かうのか? ……え、違う?

性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000の勇者が攻めてきた!

モト
BL
異世界転生したら弱い悪魔になっていました。でも、異世界転生あるあるのスキル表を見る事が出来た俺は、自分にはとんでもない天性資質が備わっている事を知る。 その天性資質を使って、エルフちゃんと結婚したい。その為に旅に出て、強い魔物を退治していくうちに何故か魔王になってしまった。 魔王城で仕方なく引きこもり生活を送っていると、ある日勇者が攻めてきた。 その勇者のスキルは……え!? 性技Lv.99、努力Lv.10000、執着Lv.10000、愛情Max~~!?!?!?!?!?! ムーンライトノベルズにも投稿しておりすがアルファ版のほうが長編になります。

処理中です...