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第1部
01 思い出した!
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「えっ、ギルがメイソン騎士団に……?」
「そう。入団式では新入団員代表を務めるから、レイも来てくれると嬉しいな」
メイソン騎士団――その言葉を口にした瞬間、雷に打たれたような衝撃と共に様々な記憶が頭に流れ込んできた。
ギル、メイソン騎士団、レイ……
カチリ、と音が鳴ったかのように脳内で記憶の辻褄が合わさり、俺は完全に理解した。この世界は、前世で俺が書いた小説の世界だ!
「レイ、体調が優れないのかい?」
目の前の男、ギルが形の良い眉を寄せて俺の顔を覗き込んでくる。
俺がぼーっとしていたのはほんの僅かな時間ではあったが、心配性のこの男はそれに目ざとく気付いたらしい。
「いや! 大丈夫、元気元気! それより入団おめでとう! ギルなら合格するって信じてたよ」
俺がぎゅっと抱きつくと、ギルは表情を緩めていつものように俺の頭を撫でた。爽やかなギルの匂いを胸いっぱいに吸い込むと、ようやく落ち着いてきた。
「凄いよ。本当に……」
この国、ベルドゥジュール王国の辺境警備にあたるメイソン騎士団は、こと魔物退治についてこの国で――いや、世界でもトップクラスの実力を持った騎士団だ。団員数は決して多くは無いが団員の練度は高く、入団試験は厳しい。しかしこの騎士団で5年働けば身分の関係なく王都の王立騎士団で小隊長以上の扱いが約束されるということから国内でも腕に自信のある猛者たちが集まる騎士団でもあった。
ギルはメイソン辺境伯家の養子ではあるが、実子ですら実力が無ければ入団は許可されない。試験が受けられるのは18歳からだ。ギルは最年少で、しかも最優秀の成績で試験に合格したことになる。まさに偉業だ。
「レイのサポートのおかげだよ。ありがとう」
ギルはそう言ってくれるが、俺がやったことはポーションを作るくらいだ。俺じゃなくてもギルにポーションを渡したい人間なんてごまんといる。それより俺の頬を撫でる大きな手についた剣だことか、体を支えてくれる全身のしなやかな筋肉が、ギルがどれほど努力したのかを雄弁に物語っている。合格はその賜物だと、そう伝えるとギルは照れたように笑った。
話を終えて自室に戻ると、俺はベッドに突っ伏した。はしたない真似だという気持ちはあるが、前世の記憶を思い出した今となってはそれほど忌避感はない。
そう、前世。
あの時流れ込んできた記憶は、俺の前世のものだ。
前世の俺は日本人だった。SEとして働く傍ら、小説を書くのが趣味で何作かネットに公開していた。ただ、前世の人生について詳しいことは思い出せない。何歳まで生きたのかとか、何故死んだのかとかも。
ちなみに今世の俺、レイライト・ベルドゥジュールは、この国ベルドゥジュール王国の第二王子だ。肩書こそ立派だが、王の愛妾の子であるから王位継承権は無いに等しい。そのうえ幼少期に虚弱体質だったせいもあり運動はからっきし、魔力も王族としては絶望的に少ないし、特殊な能力も特にない。スキルの『創薬』は珍しくはあるが、よくある『製薬』スキルと出来ることはたいして変わりない。名ばかりのレアスキルだ。
顔立ちだって前世の基準からすれば間違いなくイケメンだけど、美男美女の多い今世ではそれほどでもないように思う。
王太子である年の離れた兄は別格として、年の近い妹と比べても俺がパッとしないのは片親が違うせいではなく、モブキャラだからだと思うと妙に納得できた。
「おかしいと思ってたんだよな。母様はあんなに美人だったんだから」
俺の母親は男爵家の出身で側妃にすらなれない立場だったけど、その美貌が王の目に留まり、愛妾として離宮へ迎えられたと聞いている。
俺が2歳の時に流行り病にかかり死んでしまったから覚えてないけど、離宮に飾られた絵姿を見る限り、確かに儚げで可憐な美人だった。でも、俺が受け継いだのは色味くらいで、顔立ちはあまり似ていない。だから、あの絵姿は相当盛っているのだろうと思っていたが、違うのかもしれない。
「まあ、そんなことよりも小説だよな……主人公じゃないのは仕方ないとしても、なんでよりによってレイなんだよ……」
この世界に似た俺の書いた小説。内容はよくある追放からの成り上がりハーレムものだ。主人公のギルが辺境に追放されるところから物語が始まり――
「ん? おかしいな……」
小説と違い、ギルは自発的にこの辺境領に来ている。しかも来たのは6年も前だ。
「ひょっとしてあの小説じゃない……? いやでもそれにしては一致しすぎてるしなぁ」
小説の内容も細部まで完璧に覚えているわけではない。けれども、始まりのシーンはさすがに忘れてはいない。しかし、キャラ名、地名など、物語の根幹となる設定は小説と同じだ。
「他にも違いがあるのかな……俺の今後にもかかわることだし。とりあえず、覚えている所だけでもまとめておこう」
俺は紙とペンを取り出し、机に向き合った。
「そう。入団式では新入団員代表を務めるから、レイも来てくれると嬉しいな」
メイソン騎士団――その言葉を口にした瞬間、雷に打たれたような衝撃と共に様々な記憶が頭に流れ込んできた。
ギル、メイソン騎士団、レイ……
カチリ、と音が鳴ったかのように脳内で記憶の辻褄が合わさり、俺は完全に理解した。この世界は、前世で俺が書いた小説の世界だ!
「レイ、体調が優れないのかい?」
目の前の男、ギルが形の良い眉を寄せて俺の顔を覗き込んでくる。
俺がぼーっとしていたのはほんの僅かな時間ではあったが、心配性のこの男はそれに目ざとく気付いたらしい。
「いや! 大丈夫、元気元気! それより入団おめでとう! ギルなら合格するって信じてたよ」
俺がぎゅっと抱きつくと、ギルは表情を緩めていつものように俺の頭を撫でた。爽やかなギルの匂いを胸いっぱいに吸い込むと、ようやく落ち着いてきた。
「凄いよ。本当に……」
この国、ベルドゥジュール王国の辺境警備にあたるメイソン騎士団は、こと魔物退治についてこの国で――いや、世界でもトップクラスの実力を持った騎士団だ。団員数は決して多くは無いが団員の練度は高く、入団試験は厳しい。しかしこの騎士団で5年働けば身分の関係なく王都の王立騎士団で小隊長以上の扱いが約束されるということから国内でも腕に自信のある猛者たちが集まる騎士団でもあった。
ギルはメイソン辺境伯家の養子ではあるが、実子ですら実力が無ければ入団は許可されない。試験が受けられるのは18歳からだ。ギルは最年少で、しかも最優秀の成績で試験に合格したことになる。まさに偉業だ。
「レイのサポートのおかげだよ。ありがとう」
ギルはそう言ってくれるが、俺がやったことはポーションを作るくらいだ。俺じゃなくてもギルにポーションを渡したい人間なんてごまんといる。それより俺の頬を撫でる大きな手についた剣だことか、体を支えてくれる全身のしなやかな筋肉が、ギルがどれほど努力したのかを雄弁に物語っている。合格はその賜物だと、そう伝えるとギルは照れたように笑った。
話を終えて自室に戻ると、俺はベッドに突っ伏した。はしたない真似だという気持ちはあるが、前世の記憶を思い出した今となってはそれほど忌避感はない。
そう、前世。
あの時流れ込んできた記憶は、俺の前世のものだ。
前世の俺は日本人だった。SEとして働く傍ら、小説を書くのが趣味で何作かネットに公開していた。ただ、前世の人生について詳しいことは思い出せない。何歳まで生きたのかとか、何故死んだのかとかも。
ちなみに今世の俺、レイライト・ベルドゥジュールは、この国ベルドゥジュール王国の第二王子だ。肩書こそ立派だが、王の愛妾の子であるから王位継承権は無いに等しい。そのうえ幼少期に虚弱体質だったせいもあり運動はからっきし、魔力も王族としては絶望的に少ないし、特殊な能力も特にない。スキルの『創薬』は珍しくはあるが、よくある『製薬』スキルと出来ることはたいして変わりない。名ばかりのレアスキルだ。
顔立ちだって前世の基準からすれば間違いなくイケメンだけど、美男美女の多い今世ではそれほどでもないように思う。
王太子である年の離れた兄は別格として、年の近い妹と比べても俺がパッとしないのは片親が違うせいではなく、モブキャラだからだと思うと妙に納得できた。
「おかしいと思ってたんだよな。母様はあんなに美人だったんだから」
俺の母親は男爵家の出身で側妃にすらなれない立場だったけど、その美貌が王の目に留まり、愛妾として離宮へ迎えられたと聞いている。
俺が2歳の時に流行り病にかかり死んでしまったから覚えてないけど、離宮に飾られた絵姿を見る限り、確かに儚げで可憐な美人だった。でも、俺が受け継いだのは色味くらいで、顔立ちはあまり似ていない。だから、あの絵姿は相当盛っているのだろうと思っていたが、違うのかもしれない。
「まあ、そんなことよりも小説だよな……主人公じゃないのは仕方ないとしても、なんでよりによってレイなんだよ……」
この世界に似た俺の書いた小説。内容はよくある追放からの成り上がりハーレムものだ。主人公のギルが辺境に追放されるところから物語が始まり――
「ん? おかしいな……」
小説と違い、ギルは自発的にこの辺境領に来ている。しかも来たのは6年も前だ。
「ひょっとしてあの小説じゃない……? いやでもそれにしては一致しすぎてるしなぁ」
小説の内容も細部まで完璧に覚えているわけではない。けれども、始まりのシーンはさすがに忘れてはいない。しかし、キャラ名、地名など、物語の根幹となる設定は小説と同じだ。
「他にも違いがあるのかな……俺の今後にもかかわることだし。とりあえず、覚えている所だけでもまとめておこう」
俺は紙とペンを取り出し、机に向き合った。
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