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第1部
02 小説の内容は?
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ラノベのストーリーはよくある成り上がりハーレムものだ。
侯爵家の長男である主人公は、18歳の時に父親の愛人とその息子に追い出される。辺境へ追放されたのをきっかけに辺境騎士団に入団して騎士として働きつつ、レアスキル『土いじり』を駆使して辺境の厳しい環境を整えてスローライフをおくる。その間にヒロインたちと交流を深め、最後はメインヒロインと結婚するところで幕を閉じる。
「うーん、今までの出来事は結構違うな」
俺はいったんペンを置いて、書きだした内容をじっと見つめた。
ギルがこの辺境領に来たのは6年前。その頃、ギルの父親のフェーブル侯爵は愛人と結託して領地の収入を不正に横領していた。当時12歳だったギルはその証拠を掴み、フェーブル侯爵家を告発したのだ。
歴史ある侯爵家のスキャンダルは王都に大きな波紋を呼んだ。
一時的に侯爵家を継いだギルだったが、まだ子供であることと、親戚に爵位を継ぐことが出来る適切な人材がいないことを理由に王家に爵位と領地を返上し、遠縁であるメイソン辺境伯家へ養子に入ることを選んだ。
そして俺と一緒に辺境領へ来たのだ。
「あの時は何も考えずに喜んでたけど――」
身体が弱かった俺は療養のため12歳になる年に辺境領へ行くことが前々から決まっていた。
俺の唯一の幼馴染だったギルと離れ離れになるのが寂しくて、あの頃は毎日ギルに泣きついていたっけ。
それが一連の騒動の結果、一緒に辺境に来てくれることになって、俺は能天気にも喜んでいた。ギルも笑ってくれてはいたけど……
「ギルの事を思えば止めた方が良かったよな……」
今思えばギルの能力なら立派に領地経営出来ていたんじゃないかと思う。今のギルは辺境伯の養子とはいえ爵位を継げる立場ではない。あのまま侯爵として王都にいれば、今みたいに危険な騎士団などに入らずとも良かったのだ。第二王子とはいえ王族の俺が命ずれば、ギルも周囲も文句は言えなかっただろう。
小説を思えばギルが辺境領に来るのは設定通りだが、ギルの幸せを潰してしまったのではという思いが胸に重くのしかかった。
「でも、これから小説通りに進めば、ギルは幸せになれるもんな。頑張ろう」
過去は変えられないが、これからの出来事については協力できる。
大好きなギルには絶対に幸せになって欲しい。その為にも、俺に出来るだけの事をしよう。
そう改めて決意し、再びペンをとった。
「主要な登場人物についても纏めておこう」
まずは主人公のギルバート・フェーブル。小説ではフェーブル侯爵家に籍を置いたまま話が進むが、養子入りした今ではファミリーネームはメイソンだ。
俺と同じ18歳。王都の学院を卒業後に辺境領へ来る設定だったが、現実では俺と一緒に辺境領の学園へ通い、今年の春に騎士科を首席で卒業した。
スキルの『土いじり』は名前はダサいが豊穣の能力があり、使うことでその地を富ませることが出来る、神に祝福されたレアスキルである。
辺境領に来てからの6年間で、ギルはこのスキルを存分に発揮している。
俺たちが来た頃の辺境領は魔物が跋扈し瘴気に覆われた不毛の地だった。
ギルはスキルの能力を使うとともに自身のカリスマ性で周囲を動かし、魔物をダンジョンに押し込め、瘴気を払い、街を整備した。
今では高レベルなダンジョンと高品質な薬草の育つ肥沃な土地があると、冒険者や薬師の集まる都市として知られている。
これらは小説では本編が始まってから行う改革だったが、もうすでにそのほとんどが実施されているあたり、ギルの能力の高さが分かる。
「事実は小説より奇なり、って本当だな」
俺が考えた主人公より、現実のギルの方が何倍も凄い。それに誰に対しても優しいし、細かいところまで気が付いてくれるし、頭も良いし……
「っと、ギルに関してはこんなもんにしとこう」
思い入れが強い分、つい色々と考えてしまったが、次へ進もう。
ヒロインは3人。
メインヒロインは俺の異母妹、第一王女のリリー・ベルドゥジュールだ。主人公とは幼馴染。現実でも王都にいた時は俺とギルとリリーの3人でよく遊んでいた。年は俺たちより2つ下の16歳。
兄の欲目もあるが、リリーは王国屈指、いや、王国一の美少女だ。国王陛下譲りの王家翡翠の瞳と王妃陛下譲りの緩く波打つ金の髪の組み合わせはまさにベルドゥジュール王国の至宝と呼ぶにふさわしい。
性格はツンデレだが心優しい女の子。しかも魔法の腕も一流で、『空間転移』という特別なスキルも持っている。
2人目のヒロインはミア・メイソン。辺境伯の娘であり、主人公より1年先に騎士になった21歳。
作中で主人公は最終的にメイソン辺境伯家に養子入りするから、義姉でもある。活発ではきはきした性格のスレンダー美人だ。
3人目のヒロインは冒険者の女の子、ナタリー。辺境では珍しい同い年の冒険者だ。朗らかな性格で、小動物のような愛らしい見た目ながらすでにBランクの冒険者であり、大きな斧を振り回す姿はとても格好良い。
「この3人は、現実でも同じ感じだな」
3人とも魅力的な女の子だ。当然、周囲からの人気も高い。3人がギルをどう思っているかなんて考えたことも無かったが、あのギルを嫌いだなんて思うやつはいないだろう。
ちなみに小説の中の俺は、ギルの幼馴染だが現実とは違い6年間離れていたため、凄く仲がいいって訳でもない。現実のように一緒に住むなんてことはしていない。現実の方がギルと俺は仲がいいのだ。
「でもこれは良いことだよな」
小説では女の子が危ない目に遭うことは一切なく、代わりに主人公の男友達――俺が様々なトラブルに巻き込まれ、それを助けながらヒロインたちと絆を深めていくストーリーだった。
心優しいギルだからただの幼馴染でも助けてくれるだろうが、現実のように『親友』の俺のことなら絶対見捨てたりしない。
「ヒロインとの絆は深まるだろうし」
何故俺がトラブルに巻き込まれるのか。その理由は単純だ。ヒロインと距離を詰めるのにはトラブルがあった方が良い。でも女の子が危ない目に遭うのはかわいそう。そう考えた前世の俺は危ない目に遭わせても心が痛まない男のモブキャラを考案した。それが現世の俺、主人公の友人ポジのキャラクターだ。
確かにそれはそうだが、危ない目に遭う立場になってみてくれよ、前世の自分。死にはしないとはいえ、怖い思いをするんだぞ。
「いや、可愛いリリーが怖い思いをするよりは良いか……」
兄として、溺愛する妹を怖い目に合わせるなど言語道断である。と考えれば、他の女の子だから良い、とも言えない訳で。
「それに俺がちゃんとトラブルを起こせば、ギルの幸せに繋がるんだからな!」
逆に考えれば、これは俺にしか出来ない事だ。そう思うと俄然、やる気が出てきた。
侯爵家の長男である主人公は、18歳の時に父親の愛人とその息子に追い出される。辺境へ追放されたのをきっかけに辺境騎士団に入団して騎士として働きつつ、レアスキル『土いじり』を駆使して辺境の厳しい環境を整えてスローライフをおくる。その間にヒロインたちと交流を深め、最後はメインヒロインと結婚するところで幕を閉じる。
「うーん、今までの出来事は結構違うな」
俺はいったんペンを置いて、書きだした内容をじっと見つめた。
ギルがこの辺境領に来たのは6年前。その頃、ギルの父親のフェーブル侯爵は愛人と結託して領地の収入を不正に横領していた。当時12歳だったギルはその証拠を掴み、フェーブル侯爵家を告発したのだ。
歴史ある侯爵家のスキャンダルは王都に大きな波紋を呼んだ。
一時的に侯爵家を継いだギルだったが、まだ子供であることと、親戚に爵位を継ぐことが出来る適切な人材がいないことを理由に王家に爵位と領地を返上し、遠縁であるメイソン辺境伯家へ養子に入ることを選んだ。
そして俺と一緒に辺境領へ来たのだ。
「あの時は何も考えずに喜んでたけど――」
身体が弱かった俺は療養のため12歳になる年に辺境領へ行くことが前々から決まっていた。
俺の唯一の幼馴染だったギルと離れ離れになるのが寂しくて、あの頃は毎日ギルに泣きついていたっけ。
それが一連の騒動の結果、一緒に辺境に来てくれることになって、俺は能天気にも喜んでいた。ギルも笑ってくれてはいたけど……
「ギルの事を思えば止めた方が良かったよな……」
今思えばギルの能力なら立派に領地経営出来ていたんじゃないかと思う。今のギルは辺境伯の養子とはいえ爵位を継げる立場ではない。あのまま侯爵として王都にいれば、今みたいに危険な騎士団などに入らずとも良かったのだ。第二王子とはいえ王族の俺が命ずれば、ギルも周囲も文句は言えなかっただろう。
小説を思えばギルが辺境領に来るのは設定通りだが、ギルの幸せを潰してしまったのではという思いが胸に重くのしかかった。
「でも、これから小説通りに進めば、ギルは幸せになれるもんな。頑張ろう」
過去は変えられないが、これからの出来事については協力できる。
大好きなギルには絶対に幸せになって欲しい。その為にも、俺に出来るだけの事をしよう。
そう改めて決意し、再びペンをとった。
「主要な登場人物についても纏めておこう」
まずは主人公のギルバート・フェーブル。小説ではフェーブル侯爵家に籍を置いたまま話が進むが、養子入りした今ではファミリーネームはメイソンだ。
俺と同じ18歳。王都の学院を卒業後に辺境領へ来る設定だったが、現実では俺と一緒に辺境領の学園へ通い、今年の春に騎士科を首席で卒業した。
スキルの『土いじり』は名前はダサいが豊穣の能力があり、使うことでその地を富ませることが出来る、神に祝福されたレアスキルである。
辺境領に来てからの6年間で、ギルはこのスキルを存分に発揮している。
俺たちが来た頃の辺境領は魔物が跋扈し瘴気に覆われた不毛の地だった。
ギルはスキルの能力を使うとともに自身のカリスマ性で周囲を動かし、魔物をダンジョンに押し込め、瘴気を払い、街を整備した。
今では高レベルなダンジョンと高品質な薬草の育つ肥沃な土地があると、冒険者や薬師の集まる都市として知られている。
これらは小説では本編が始まってから行う改革だったが、もうすでにそのほとんどが実施されているあたり、ギルの能力の高さが分かる。
「事実は小説より奇なり、って本当だな」
俺が考えた主人公より、現実のギルの方が何倍も凄い。それに誰に対しても優しいし、細かいところまで気が付いてくれるし、頭も良いし……
「っと、ギルに関してはこんなもんにしとこう」
思い入れが強い分、つい色々と考えてしまったが、次へ進もう。
ヒロインは3人。
メインヒロインは俺の異母妹、第一王女のリリー・ベルドゥジュールだ。主人公とは幼馴染。現実でも王都にいた時は俺とギルとリリーの3人でよく遊んでいた。年は俺たちより2つ下の16歳。
兄の欲目もあるが、リリーは王国屈指、いや、王国一の美少女だ。国王陛下譲りの王家翡翠の瞳と王妃陛下譲りの緩く波打つ金の髪の組み合わせはまさにベルドゥジュール王国の至宝と呼ぶにふさわしい。
性格はツンデレだが心優しい女の子。しかも魔法の腕も一流で、『空間転移』という特別なスキルも持っている。
2人目のヒロインはミア・メイソン。辺境伯の娘であり、主人公より1年先に騎士になった21歳。
作中で主人公は最終的にメイソン辺境伯家に養子入りするから、義姉でもある。活発ではきはきした性格のスレンダー美人だ。
3人目のヒロインは冒険者の女の子、ナタリー。辺境では珍しい同い年の冒険者だ。朗らかな性格で、小動物のような愛らしい見た目ながらすでにBランクの冒険者であり、大きな斧を振り回す姿はとても格好良い。
「この3人は、現実でも同じ感じだな」
3人とも魅力的な女の子だ。当然、周囲からの人気も高い。3人がギルをどう思っているかなんて考えたことも無かったが、あのギルを嫌いだなんて思うやつはいないだろう。
ちなみに小説の中の俺は、ギルの幼馴染だが現実とは違い6年間離れていたため、凄く仲がいいって訳でもない。現実のように一緒に住むなんてことはしていない。現実の方がギルと俺は仲がいいのだ。
「でもこれは良いことだよな」
小説では女の子が危ない目に遭うことは一切なく、代わりに主人公の男友達――俺が様々なトラブルに巻き込まれ、それを助けながらヒロインたちと絆を深めていくストーリーだった。
心優しいギルだからただの幼馴染でも助けてくれるだろうが、現実のように『親友』の俺のことなら絶対見捨てたりしない。
「ヒロインとの絆は深まるだろうし」
何故俺がトラブルに巻き込まれるのか。その理由は単純だ。ヒロインと距離を詰めるのにはトラブルがあった方が良い。でも女の子が危ない目に遭うのはかわいそう。そう考えた前世の俺は危ない目に遭わせても心が痛まない男のモブキャラを考案した。それが現世の俺、主人公の友人ポジのキャラクターだ。
確かにそれはそうだが、危ない目に遭う立場になってみてくれよ、前世の自分。死にはしないとはいえ、怖い思いをするんだぞ。
「いや、可愛いリリーが怖い思いをするよりは良いか……」
兄として、溺愛する妹を怖い目に合わせるなど言語道断である。と考えれば、他の女の子だから良い、とも言えない訳で。
「それに俺がちゃんとトラブルを起こせば、ギルの幸せに繋がるんだからな!」
逆に考えれば、これは俺にしか出来ない事だ。そう思うと俄然、やる気が出てきた。
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