トラブルメーカー系モブに転生したけど主人公が優秀すぎて何も起こらない

香山

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第1部

03 予習はしっかりと!

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「とりあえず、大きなトラブルは失敗しないように予習しておこう」

細かいトラブルはいろいろあるが、特に大きなものは3回あった。

まず1回目は、身代金目的の誘拐だ。街へ買い物に出た際、人気のない路地に迷い込んだレイは盗賊団に攫われる。主人公はミアと協力して盗賊団のアジトを突き止め、攫われたレイを助けるのだ。

「これは主人公が騎士団に入ってすぐの出来事だからもうすぐだな……」

攫われた先で何をされたのかの描写は無かったが、俺の設定上では助けた時大怪我はしていなかったはずだ。
殴られるくらいはするかもしれないが、命に関わる事は無いだろう。……殴られるのも嫌だけど。

2回目は荒くれ者の冒険者による陵辱未遂……あくまでも未遂だ。
主人公は魔物の討伐をきっかけにナタリーと出会う。
冒険者ギルド内でのトラブルで荒くれ者の冒険者に目をつけられたレイが攫われた時に、ナタリーは主人公に協力を求め、力を合わせてレイの居場所を突き止める。事に及ぶ直前に助けてくれるはずだ。
何をされたかやはり詳しい描写は無かったが、これも俺の設定上では、本番はされないはずだ。少なくとも尻穴の純潔は守られる。……キスとかはされるのかもしれないと思うと鳥肌が立った。

「これは……出来れば回避したい……けど……」

現段階で清い身体の俺は当然ファーストキスもまだだ。推定ファーストキスが暴漢とだなんてギルの幸せの為とはいえ泣けてくる。
前世でも恋人がいた記憶は無かった。おそらく前世から純然たる童貞の俺としてはファーストキスにただならぬ憧れがあるのだ。

3回目はフェーブル侯爵家のお家騒動になぜかレイが巻き込まれて、またまた攫われたレイをリリーの手と権力を借りながら助け、ついでにフェーブル侯爵家の暗部を暴いて没落させる。

「でもフェーブル侯爵家はもうすでに取り潰しになっているからこれは起こらないよな……」

書き出したエピソードに×を付ける。
しかしトラブルはその後だ。主人公の勇姿に惚れてしまったレイが主人公に結婚を迫るのだ。

事件の後、兄である王太子が王位を引き継ぐ事が本決まりになる。それにあたってメイソン辺境伯と王家を繋ぐ婚姻は国家を盤石にする為に有意義だ。それにかこつけてレイは主人公に結婚の打診をする。その席で断られてしまったレイは媚薬をけしかけ、主人公に襲いかかる。しかし力の差が歴然のため、レイを押し除けた主人公は自室へ閉じこもり、ひとり熱を慰めるのだ。その時に浮かぶ笑顔がリリーだった事からリリーへの恋心を自覚する。そして媚薬の効き目が切れた後、リリーへ告白する。もちろん、両思いでハッピーエンド。物語の最後を飾る大事なエピソードだ。

レイの処遇は詳しく書かなかったけど、遠く離れた国へ男嫁に出されたという裏設定があった。
そうなればもう2度と、この国には戻れないだろう。

前世の性嗜好は覚えていないが、今世は同性婚は珍しくない。歳の離れた兄はすでに立太子しているし、子供もいる。俺に子が生まれない方が国にとっても良いだろう。だから俺は男と結婚するのだとずっと思ってきたし、それに対する忌避感もない。

身体が弱く、立場も弱い俺は王都にいたころは離宮からほとんど出ることが出来なかった。父親はほとんど会いに来ることはなく、周囲の使用人からは腫れ物を触るかのように扱われ、いつも疎外感を感じていた。
そんな俺に優しく、それでいて対等に接してくれる、かっこいい人がずっと近くにいてくれるんだ。

「好きになっちゃうに決まってるよ……」

3つ目のエピソードの前半なんて無くても、俺はもうとっくにギルの事が大好きだった。

「失恋確定か~……」

ハーレムラノベの主人公のギルは、当然異性愛者なのだろう。小説ではレイから迫られるシーンはギャグっぽい感じのノリだった。

「そりゃ気持ち悪い、よな……」

俺がもっと母や妹に似ていれば、そこまで拒絶されなかったかもしれない。しかし俺の体格はどう見ても男だし、顔立ちも女に見えるほどではない。頼りがいがある性格なわけでも、特別な能力を持っている訳でもない。魅力的なヒロインたちを差し置いて、ギルが俺を好きになる理由なんてないんだ。

「あー、でも、ギルは気付いてそうだな、俺の気持ち」

前世を思い出す前は、ひょっとしてギルも俺のことを好きなんじゃないかって思っていた。だから言葉でこそ伝えてはいないか、ギルを好きだという態度を隠さず接していた。
来年、兄の長男が10歳になりお披露目されるから、それをきっかけに王位継承権を正式に放棄してギルにプロポーズしようとすら考えていた。
ギルは受けてくれるだろうと、根拠の無い自信があったから。
今はそれがただの勘違いだったって分かる。
俺にだけ特別優しい訳じゃない。ギル主人公は誰にでも優しいんだから。

俺の気持ちに気付きながらも俺を拒絶しなかったのは、ギルの優しさ故の事だ。今まで甘えさせてもらっていた恩を返すためにも、俺は必ずストーリーを完遂してみせる。

だから最後の役目を終えるその時まで、ギルを想ったままでいても良いよな。
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