インターネットの道化師は現実世界で泣く

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オフィスと父

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僕は荷物が届いたばかりの自分の会社のオフィスにいた。

僕の会社の事業は、SEO施策といって楽天などの大手通販サイトに店舗を持つ事業主に対し、検索に引っ掛かりやすいサイトの構成をアドバイスするというものだった。

当時大学生の僕が大人の経営者相手にビジネスをするなど無謀なことのように思えるかもしれないが、コンサルタントを名乗り専門用語を並べるだけで、大抵の顧客は僕のことを信頼してくれた。


「本格的な施策をすれば、検索順位は変動します。」


そう言って50万円という費用を提示すると、多くの人はそれが「価値のあるもの」であると錯覚した。
でも、僕はまだ大学生だ。
僕が提供するサービスにそこまでの価値はない。

多くの人は【金額】や【検索順位】などの「目に見えるもの」で判断して、それが良いものか悪いものか決めているように思えた。

それらの【表層(目に見えるもの)】は移り変わる。
でも、僕が提供するサービスの本質は変わらない。

それは僕が計上する【売上げ】や【外見】で移り変わる僕の評価と似通っていて嫌いだった。

顧客は大金を払うのに、誰一人としてサービスの本質を見ない。

僕にはそれが、とても滑稽なことのように思えた。

いつだったか父は、不相応なお金を手にし有頂天でいる僕に対し「まっとうな仕事をしろ。例え貧しくても、人の役に立つことをしろ。」と言った。

僕は激高した。

「テメェはどれだけ俺に尻拭いさせるんだ!!?大学へ行く金も出せないで、母さんを泣かせて、それで家族を守ったって言えるか!?俺はお前を父親とは認めねえ!!」

というようなことを言い放った。



父さんは悲しそうな、怒ったともとれるような顔をしていた。
それから、父さんは僕に何か言ったらしいが、なんと言ったのかは覚えていない。

僕は父親のような男にはなりたくなかった。

そんなことを思い返していると、僕の携帯に彼女から着信が入った。

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