悪役公爵令嬢に転生した話

ルイ

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2章 悪役令嬢の逆襲

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「お嬢様、今朝届いたお手紙です」

 クラリッサが手渡してきた封筒を受け取りながら、私は微かに笑った。
 これで、今日だけで三通目。

 それらはすべて、貴族たちからの招待状だった。

(ふふ……ようやく、動き始めたわね)

 婚約破棄が公になり、数日が経過した。
 当初、私を距離を置こうとしていた貴族たちは、今になって急に「会いたい」と言い出してきたのだ。

 その理由は明白。
 彼らは、私がどのように動くのかを知りたがっている。

(私が王宮から去るのか、それとも新たな後ろ盾を得るのか……)

 彼らはどちらにも転べるように、慎重に立ち回っているのだろう。
 特に、まだ王太子派に完全にはついていない者たちは、「レティシア・ヴェルネ」という駒を見捨てるべきかどうか、慎重に見極めようとしていた。

(なら、利用させてもらうわ)

 私は手紙の束を確認しながら、今後の計画を練る。
 すべての招待に応じるつもりはない。
 重要なのは、どの貴族と繋がるべきか。

「クラリッサ、カイル・フェルナー侯爵の招待は?」

「はい、侯爵様からは明後日の昼食会へのお誘いがございます」

「それに出席するわ。他の招待は、少し時間をおいてから返事をするように」

「かしこまりました」

 カイルは、すでに私にとって重要な情報源になりつつある。
 彼と直接話すことで、今後の立ち回りをより確実なものにする必要がある。

***

 その日の夕方、私は久しぶりに外へ出ることにした。
 目的地は――王宮の庭園。

(さて、そろそろ彼らも動いている頃ね)

 私はゆっくりと歩きながら、周囲の視線を感じ取る。
 王宮の侍女や騎士たちは、明らかに私を見る目が変わっていた。
 それもそのはず。

 私は、すでに「王太子妃候補ではなくなった女」なのだから。

 だが、それでも私は堂々とした態度を崩さなかった。

(ここで弱みを見せれば、それこそ彼らの思う壺よ)

 私が歩いていると、ちょうど庭園の噴水の近くで、数名の貴族令嬢たちが話しているのが見えた。

「まあ……あの方がまだ王宮に?」

「もう用済みのはずなのに、しがみついているのかしら?」

 小声ではあるが、わざと聞こえるように話しているのが分かる。

(分かりやすい嫌がらせね)

 私は足を止めることなく、優雅に微笑んだまま通り過ぎる。
 無視するのが最も効果的な対処法だ。

 しかし、そのまま庭園を進んだところで――

「レティシア!」

 私の名を呼ぶ声が響いた。

(……来たわね)

 振り返ると、そこにいたのはエミリアと、アレクシス。

 二人は並んで立っていたが、明らかに「私に会うためにここに来た」ようだった。

(さて、何の用かしら?)

 私は静かに微笑みを浮かべたまま、二人を見つめた。

***

「レティシア、話がある」

 アレクシスは少し強張った表情でそう言った。

 私は内心で笑いながら、ゆっくりと答える。

「まあ、殿下。すでに私たちの関係は終わったはずですが?」

 その一言に、彼の顔が僅かに歪んだ。

(何を言いに来たのかしら? まさか、今さら謝罪でもするつもり?)

 私の考えを見透かしたかのように、アレクシスは一歩前に出て言った。

「お前は……もう王宮には関わらない方がいい」

 その言葉に、私は一瞬だけ目を細める。

(……へえ)

「どういう意味でしょう?」

 私はあくまで穏やかに問い返す。

 すると、今度はエミリアが申し訳なさそうに口を開いた。

「レティシア様……王宮にいると、きっとつらい思いをされると思うのです」

(……あら、随分と優しいことをおっしゃるのね)

 彼女の目は、本当に私を心配しているような純粋な輝きを宿していた。
 だが、私は知っている。

 これは彼女の演技。

 彼女はいつだって、こうやって「純真な少女」を演じ、人の同情を集めてきた。

(つまり、彼女は私を「王宮から追い出したい」ということね)

 私は心の中で溜息をつきながら、ゆっくりと笑った。

「ご心配いただき、ありがとうございますわ。ですが、私はどこにいようと関係ありません」

 アレクシスとエミリアの表情が、わずかに強張る。

「……レティシア、お前は……」

 アレクシスが何か言いかけたが、私はそれを遮るように微笑んだ。

「殿下こそ、王太子としての責務をお忘れなきように」

 私の言葉に、アレクシスの表情が変わった。

 彼は、何かを言い返そうとしたが――言葉に詰まった。

(さて、そろそろ潮時かしら)

 私は優雅に一礼し、二人に背を向ける。

「では、私はこれで。よい一日を」

 そして、堂々と歩き去った。

 私の背後で、アレクシスの沈黙が続いているのを感じながら――

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