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77話 歓喜の渦
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「はぁはぁ……」
急に息が上がってきた、冷めきっていた身体に突然火が入ったようだ。
湧き上がる熱。
振り返ればそこにクイーンスノーアントの亡骸がある。
ソーカはゆっくりと自分がしたことを認識していく。
ぶるりっと体が震える。
「やった……やったんだ!」
声を出すと同時にペタリとその場に座り込んでしまう。
刀を持つ手が小刻みに震えている。
いつの間にか刀は鳴くのを止めている。
納刀しようとするがうまくいかない。
カチャカチャと鞘と剣先が当たる。
「もう触れて平気?」
背後からソーカの敬愛する人物の声がする。
「はい、もう鳴き終わっています」
その男はソーカの指を一つ一つやさしく刀から外し、静かに納刀してくれる。
その所作に瞳を奪われる。
ああ、私はこの人が大好きなんだな。改めてソーカは強く心に刻みこむ。
「よくやったな」
脳天までしびれてしまうほどの甘美な快感。
ああ、頑張ってよかった……心からそう思える瞬間であった。
「さて、あいつはソーカの獲物だ。頑張って解体しようか」
ムードもへったくれもない。そう言えばこういう人だった。
その後ユキムラはまぁ機械的に効率のいい解体方法を指導した。
ソーカもそれによく答えかなり上出来な剥ぎ取りを成功させる。
「なんだか腰のあたりが暖かいです……気持ちいい」
「ああ、たぶん鎧による自己治癒だね。ってことはさっきの技はかなり腰に負担をかけるってことだね。
まぁこの鎧があればなんとかなるけど、無い時に使うのは止めておいたほうがいいよ。
そうだちょうどいいからレンとソーカに回復魔法教えとくか、知ってるのと知らないのでは大違いだから、あとは魔法防御だね」
なぜか洞窟の奥で勝利の余韻に浸る暇もなく修行が始まるのがユキムラクオリティだ。
「と、言うわけで。あとは練習あるのみだね。それじゃあ街に戻って、予定を変更して王都へ向かおう」
「はい師匠!」「はーい……」「わおん!」
「そう言えばタロも大活躍だったね! タロとソーカはいいペアになるよ!」
その言葉はレンの心に小さな針をチクリと刺した。
ユキムラはソーカを一人の冒険者として扱っている発言だと思ったからだ。
「師匠、僕は……?」
言葉を発してから言わなければよかったとレンは後悔した。
師匠はきっとまだ冒険者じゃないんだから駄目だよと、ある意味突き放される言葉を言うに決まっている。
「レンは……」
ぐっと身構える、次の言葉で傷つかないように……
「俺の背中を守ってもらうんだからもっともっと頑張らないとな!」
「え……?」
ユキムラの言葉はレンの想像とは違ったものだった。
天啓を得た。
レンの背中に稲妻でも落ちたような衝撃を襲った。
レンが考えているよりも遥かにユキムラはレンのことを評価していたのだ。
「が、が、頑張ります!!」
「お、おい何で泣いてるんだよ~」
ユキムラがあたふたと慌てる、こんな師匠が大好きだ。
「何でもないです! さ、王都へ向かいましょう!」
大好きな師匠を守るために、僕は僕の戦い方を手に入れる。
ソーカが自分の戦い方を見つけたように……
レンもまた、はっきりとした目標を見つけ、さらに加速度的に成長していくことになる。
案の定、奥には凄まじい数のアントの卵が植え付けられていた。
かわいそうだが全てを焼き払ってタロの探知でも完全にアントを掃討したことを確認して帰路につく。
トンネルから街へ戻ると多くの衛兵がトンネル前で慌ただしく動いていた。
「ゆ、ユキムラ殿!?」
指示を飛ばしていたサルソーがトンネルから出てきたユキムラを見つける。
「サルソーさん。どうしたんですかこの騒ぎは?」
「どうしたんですかじゃないですよ! みなさんがトンネルに入った後に凄まじい衝撃が街全体を襲って、話を聞けばトンネルを抜ける予定と聞いたので何かあったのかと思って……」
「ああ、すみません。クイーンスノーアントが巣食っていて大繁殖が起きていたもので……」
「クイーンスノーアント……」
サルソーを含め今の会話を聞いていた将校の顔色が真っ青になっていく。
なかにはガクガクと震え座り込んでしまう物までいる。
「閣下、50年前の蟲波の悲劇が……」
「わかっている!! ユキムラ殿、今の相手の数は遠目に見てどれくらいだったかわかりますか?」
「え、数ですか? うーんちょっとわかんないですね、壁も天井も床も一面蟻だったから……。
あ、そっかちょっと待って下さいね。うわ、すごい量だな」
ユキムラはアイテムバックのスノーアントの魔石の数を数え始める。
壁、天井、床一面の蟻と聞いてアイスフロントの将校たちはその顔を絶望色に染めていた。
「もう、お終いだ……復興に尽力してくれた先代様に申し訳が立たない……」
「師匠、数を数えるより結論を先に言ったほうがいいですよ。
皆さん無駄に絶望して自殺でも始めちゃいますよ?」
「え? だいたい2万くらいっぽいけど、ああ、まだバトルアントもこれまた多いな……結論?」
「はぁ……、サルソー殿!」
レンは事の顛末を教えてあげるためにサルソーに呼びかける。
もうおしまいだと天を仰いでたサルソーが弱々しく振り返る。
「確かにクイーンスノーアントも一面を覆うスノーアントもいましたが、その巣も含めて全て殲滅してまいりました。
何も心配はございません」
「……………………全て……殲滅……?」
レンの言ったことを理解するのにかなりの時間を要したが、その後歓喜の渦が広がることになった。
急に息が上がってきた、冷めきっていた身体に突然火が入ったようだ。
湧き上がる熱。
振り返ればそこにクイーンスノーアントの亡骸がある。
ソーカはゆっくりと自分がしたことを認識していく。
ぶるりっと体が震える。
「やった……やったんだ!」
声を出すと同時にペタリとその場に座り込んでしまう。
刀を持つ手が小刻みに震えている。
いつの間にか刀は鳴くのを止めている。
納刀しようとするがうまくいかない。
カチャカチャと鞘と剣先が当たる。
「もう触れて平気?」
背後からソーカの敬愛する人物の声がする。
「はい、もう鳴き終わっています」
その男はソーカの指を一つ一つやさしく刀から外し、静かに納刀してくれる。
その所作に瞳を奪われる。
ああ、私はこの人が大好きなんだな。改めてソーカは強く心に刻みこむ。
「よくやったな」
脳天までしびれてしまうほどの甘美な快感。
ああ、頑張ってよかった……心からそう思える瞬間であった。
「さて、あいつはソーカの獲物だ。頑張って解体しようか」
ムードもへったくれもない。そう言えばこういう人だった。
その後ユキムラはまぁ機械的に効率のいい解体方法を指導した。
ソーカもそれによく答えかなり上出来な剥ぎ取りを成功させる。
「なんだか腰のあたりが暖かいです……気持ちいい」
「ああ、たぶん鎧による自己治癒だね。ってことはさっきの技はかなり腰に負担をかけるってことだね。
まぁこの鎧があればなんとかなるけど、無い時に使うのは止めておいたほうがいいよ。
そうだちょうどいいからレンとソーカに回復魔法教えとくか、知ってるのと知らないのでは大違いだから、あとは魔法防御だね」
なぜか洞窟の奥で勝利の余韻に浸る暇もなく修行が始まるのがユキムラクオリティだ。
「と、言うわけで。あとは練習あるのみだね。それじゃあ街に戻って、予定を変更して王都へ向かおう」
「はい師匠!」「はーい……」「わおん!」
「そう言えばタロも大活躍だったね! タロとソーカはいいペアになるよ!」
その言葉はレンの心に小さな針をチクリと刺した。
ユキムラはソーカを一人の冒険者として扱っている発言だと思ったからだ。
「師匠、僕は……?」
言葉を発してから言わなければよかったとレンは後悔した。
師匠はきっとまだ冒険者じゃないんだから駄目だよと、ある意味突き放される言葉を言うに決まっている。
「レンは……」
ぐっと身構える、次の言葉で傷つかないように……
「俺の背中を守ってもらうんだからもっともっと頑張らないとな!」
「え……?」
ユキムラの言葉はレンの想像とは違ったものだった。
天啓を得た。
レンの背中に稲妻でも落ちたような衝撃を襲った。
レンが考えているよりも遥かにユキムラはレンのことを評価していたのだ。
「が、が、頑張ります!!」
「お、おい何で泣いてるんだよ~」
ユキムラがあたふたと慌てる、こんな師匠が大好きだ。
「何でもないです! さ、王都へ向かいましょう!」
大好きな師匠を守るために、僕は僕の戦い方を手に入れる。
ソーカが自分の戦い方を見つけたように……
レンもまた、はっきりとした目標を見つけ、さらに加速度的に成長していくことになる。
案の定、奥には凄まじい数のアントの卵が植え付けられていた。
かわいそうだが全てを焼き払ってタロの探知でも完全にアントを掃討したことを確認して帰路につく。
トンネルから街へ戻ると多くの衛兵がトンネル前で慌ただしく動いていた。
「ゆ、ユキムラ殿!?」
指示を飛ばしていたサルソーがトンネルから出てきたユキムラを見つける。
「サルソーさん。どうしたんですかこの騒ぎは?」
「どうしたんですかじゃないですよ! みなさんがトンネルに入った後に凄まじい衝撃が街全体を襲って、話を聞けばトンネルを抜ける予定と聞いたので何かあったのかと思って……」
「ああ、すみません。クイーンスノーアントが巣食っていて大繁殖が起きていたもので……」
「クイーンスノーアント……」
サルソーを含め今の会話を聞いていた将校の顔色が真っ青になっていく。
なかにはガクガクと震え座り込んでしまう物までいる。
「閣下、50年前の蟲波の悲劇が……」
「わかっている!! ユキムラ殿、今の相手の数は遠目に見てどれくらいだったかわかりますか?」
「え、数ですか? うーんちょっとわかんないですね、壁も天井も床も一面蟻だったから……。
あ、そっかちょっと待って下さいね。うわ、すごい量だな」
ユキムラはアイテムバックのスノーアントの魔石の数を数え始める。
壁、天井、床一面の蟻と聞いてアイスフロントの将校たちはその顔を絶望色に染めていた。
「もう、お終いだ……復興に尽力してくれた先代様に申し訳が立たない……」
「師匠、数を数えるより結論を先に言ったほうがいいですよ。
皆さん無駄に絶望して自殺でも始めちゃいますよ?」
「え? だいたい2万くらいっぽいけど、ああ、まだバトルアントもこれまた多いな……結論?」
「はぁ……、サルソー殿!」
レンは事の顛末を教えてあげるためにサルソーに呼びかける。
もうおしまいだと天を仰いでたサルソーが弱々しく振り返る。
「確かにクイーンスノーアントも一面を覆うスノーアントもいましたが、その巣も含めて全て殲滅してまいりました。
何も心配はございません」
「……………………全て……殲滅……?」
レンの言ったことを理解するのにかなりの時間を要したが、その後歓喜の渦が広がることになった。
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