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80話 王都プラネテルへ
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宿に戻ってベッドに入ってユキムラは悶ていた。
甘酢っぺぇ。
何さっきの甘酸っぱいよぉ。
と。
結局眠りにつけずに馬車で朝までゴソゴソと作業をして朝方に戻ってくることになる。
レンはユキムラの気配に気がついていたが何やら悶ているからそっとしておいた。
時間的にもまた子供みたいなことしてるんだろう、ただ、確実に二人の距離は縮まったんだろうな。
嬉しいような少し寂しいようなそんな気持ちになってしばらく眠りにつくのが遅くなってしまった。
その結果二人共宿の人間に朝食に起こされるまで起床することはなかった。
顔を洗い少し頭をさっぱりさせた二人は食堂へと向かう。
「お、おはようソーカ」
「おはようございますユキムラさん」
ぎこちないユキムラとは対象的に非常に自然に振る舞うソーカ。
レンはその微妙な変化を敏感に感じ取れてしまう。
さらば僕の初恋。人知れず一人の男が大人への登竜門をくぐっていた。
朝食は朝から豪勢だった。
街の英雄につまらないものは出せない! てのは建前で、実は昨日の料理をちゃんと利用してるのよってこっそり女将さんが教えてくれた。
「それではユキムラ殿は王都へと向かうのだな」
「はい、サルソーさんにもお世話になりました」
熱い握手を交わす二人、町民たちはソーカに熱い声援を送っている。
タロは子どもたちに囲まれて楽しそうに相手をしてあげている。
レンも同じ年ぐらいの女の子と奥様方に声援を受けて戸惑っている。
やはり男はビシっとした格好をしたほうが良いということかね。
町の人達の暖かい声援を受けながら馬車はアイスフロントの街を出立する。
すでに街道は除雪魔道具が置かれておりきちんと路面が顕になっている。
ジュナーの街まで戻るとかなり遠回りになるため、積雪地帯を抜けたら王都への直線コースを取る予定だ。
あまり整備された道ではないが特製馬車なら何の問題もない。
進行方向を道路とまでは行かないがそれなりに整備する魔道具を先行させれば馬への負担も少ない。
具体的に言うと枝払いと路面の凸凹を馴らす魔道具だ。
それを馬の前方に設置すると馬車の通ったとこが簡易的な道になる。
将来的には自動で道路が引けるようになることを目指している。
「ユキムラさんレン、紅茶でも入れましょうか?」
「砂糖2個とミルクー」
「ストレートでお願い」
いつも通りレンが操手をやっている。
車内はまるで室内かのように静かだ。
ユキムラは作業台に向かって新たな魔道具やらいろんな構想を試している。
ソーカは紅茶を入れながらユキムラと同じ空間にいる、それだけで胸は幸せで一杯になっていた。
「そういえばソーカ、鈴蟲は問題ない?
実用一発目にボス級に使ったから一応チェックしとこうか」
「あ、はい」
ソーカは振鳴剣 鈴蟲を取り出す。
作成はサリナだがメンテナンスはユキムラが十二分に果たす。
「やっぱり柄の辺りに負担が集中しちゃうね。
ここぞっていう決め時以外連用は難しいかなぁ今の素材だと」
振鳴剣 鈴蟲。
特殊な構造の鞘と刀身を用いて抜刀時に刀身を超高速で震わせ、その振動を増幅・維持させることで超音波ブレードのようにあらゆる物を切断する。というコンセプトで作られた刀だ。
もともとはただ刀身を震わせてその効能を得ようと思ったのだが、いかんせん振動速度が圧倒的に不足してしまった。
そこでサリナが柄と刀身に微細な波状構造を作り、
抜刀時に強力な振動の加速を得られないかと試作した。
ユキムラは様々な抜刀方法で試したが、全くうまく行かなかった。
最初からソーカのほうが刀身の震えを引き出し、あの形、全身を捻りにひねる独特の構えまで完成させることに成功する。
やや無理矢理な方法になるのでやはり刀への負担が大きくなってしまっている。
また、使用者への身体的負担も大きくなってしまっているのが現状だ。
そのリスクを背負う分そこから引き出される威力は凄まじい。
「ソーカは通常も刀で戦うかい?」
「……どう思われますかユキムラさんは?」
「そうだね、一つの武器を使い込むってのは大事なことだね。
特にソーカは刀を使うのに向いていると思う。体が柔らかいし手足も長い。
何より一番大切な一瞬の集中力がある。
きっと強い刀使いになるよ。
正直、クイーンに放った一撃は俺が本気でも対応できないと思う……」
これは事実だった。
以前にも言ったがユキムラは4Fr以上の攻撃ならカウンターを合わせられる。
だがソーカの放った攻撃は納刀時から斬り終わるまで、3から4Frという驚異的なスピードだ。
ユキムラでもガードは出来るかもしれないが、ソーカの武器の特性上それも難しい。
PvPでも勝てないかもしれない。そう思うとユキムラはブルリと武者震いが起きる。
挑戦者というのは楽しいものだ。
「私も、もっと立ち回りを学ばないといけません。
決めました、刀を使います」
「わかった。なら。普段戦うときはこれを使うと良い」
ユキムラがアイテムから一本の刀を取り出す。
「頑丈さに重点を置いているから通常の戦闘の連戦にも十分耐えると思う、耐えるようには作った。
魔力を通すと属性も変えられるから、大抵の敵にも柔軟に対応できる」
真っ黒な鞘。鍔や柄は白銀。
スラリと抜かれた刀は一切の曇りもなく火焰と呼ばれる紋が美しく現れている。
刀身全体が金剛鉄とミスリルの合金で作られているために淡く蒼く輝いて幻想的に美しい。
「自己研磨、自己修復が鞘に施されている。刀自体は硬性と粘りを大事にしている。
うまく使ってやってくれ。名は、その、蒼い華でソウカだ……」
恥ずかしそうにポリポリと顔をかいているユキムラ。
耳まで真っ赤になっている。
「ありがとうございます。大事にします」
刀を大事そうに抱いて応えるソーカ。
ソーカのことを想ってユキムラが打った世界にただ一つの刀だ。
ソーカにとって自分の命を、そしてユキムラを守る大切な相棒との出会いだった。
「なんか熱いねタロ」「わふん」
甘酢っぺぇ。
何さっきの甘酸っぱいよぉ。
と。
結局眠りにつけずに馬車で朝までゴソゴソと作業をして朝方に戻ってくることになる。
レンはユキムラの気配に気がついていたが何やら悶ているからそっとしておいた。
時間的にもまた子供みたいなことしてるんだろう、ただ、確実に二人の距離は縮まったんだろうな。
嬉しいような少し寂しいようなそんな気持ちになってしばらく眠りにつくのが遅くなってしまった。
その結果二人共宿の人間に朝食に起こされるまで起床することはなかった。
顔を洗い少し頭をさっぱりさせた二人は食堂へと向かう。
「お、おはようソーカ」
「おはようございますユキムラさん」
ぎこちないユキムラとは対象的に非常に自然に振る舞うソーカ。
レンはその微妙な変化を敏感に感じ取れてしまう。
さらば僕の初恋。人知れず一人の男が大人への登竜門をくぐっていた。
朝食は朝から豪勢だった。
街の英雄につまらないものは出せない! てのは建前で、実は昨日の料理をちゃんと利用してるのよってこっそり女将さんが教えてくれた。
「それではユキムラ殿は王都へと向かうのだな」
「はい、サルソーさんにもお世話になりました」
熱い握手を交わす二人、町民たちはソーカに熱い声援を送っている。
タロは子どもたちに囲まれて楽しそうに相手をしてあげている。
レンも同じ年ぐらいの女の子と奥様方に声援を受けて戸惑っている。
やはり男はビシっとした格好をしたほうが良いということかね。
町の人達の暖かい声援を受けながら馬車はアイスフロントの街を出立する。
すでに街道は除雪魔道具が置かれておりきちんと路面が顕になっている。
ジュナーの街まで戻るとかなり遠回りになるため、積雪地帯を抜けたら王都への直線コースを取る予定だ。
あまり整備された道ではないが特製馬車なら何の問題もない。
進行方向を道路とまでは行かないがそれなりに整備する魔道具を先行させれば馬への負担も少ない。
具体的に言うと枝払いと路面の凸凹を馴らす魔道具だ。
それを馬の前方に設置すると馬車の通ったとこが簡易的な道になる。
将来的には自動で道路が引けるようになることを目指している。
「ユキムラさんレン、紅茶でも入れましょうか?」
「砂糖2個とミルクー」
「ストレートでお願い」
いつも通りレンが操手をやっている。
車内はまるで室内かのように静かだ。
ユキムラは作業台に向かって新たな魔道具やらいろんな構想を試している。
ソーカは紅茶を入れながらユキムラと同じ空間にいる、それだけで胸は幸せで一杯になっていた。
「そういえばソーカ、鈴蟲は問題ない?
実用一発目にボス級に使ったから一応チェックしとこうか」
「あ、はい」
ソーカは振鳴剣 鈴蟲を取り出す。
作成はサリナだがメンテナンスはユキムラが十二分に果たす。
「やっぱり柄の辺りに負担が集中しちゃうね。
ここぞっていう決め時以外連用は難しいかなぁ今の素材だと」
振鳴剣 鈴蟲。
特殊な構造の鞘と刀身を用いて抜刀時に刀身を超高速で震わせ、その振動を増幅・維持させることで超音波ブレードのようにあらゆる物を切断する。というコンセプトで作られた刀だ。
もともとはただ刀身を震わせてその効能を得ようと思ったのだが、いかんせん振動速度が圧倒的に不足してしまった。
そこでサリナが柄と刀身に微細な波状構造を作り、
抜刀時に強力な振動の加速を得られないかと試作した。
ユキムラは様々な抜刀方法で試したが、全くうまく行かなかった。
最初からソーカのほうが刀身の震えを引き出し、あの形、全身を捻りにひねる独特の構えまで完成させることに成功する。
やや無理矢理な方法になるのでやはり刀への負担が大きくなってしまっている。
また、使用者への身体的負担も大きくなってしまっているのが現状だ。
そのリスクを背負う分そこから引き出される威力は凄まじい。
「ソーカは通常も刀で戦うかい?」
「……どう思われますかユキムラさんは?」
「そうだね、一つの武器を使い込むってのは大事なことだね。
特にソーカは刀を使うのに向いていると思う。体が柔らかいし手足も長い。
何より一番大切な一瞬の集中力がある。
きっと強い刀使いになるよ。
正直、クイーンに放った一撃は俺が本気でも対応できないと思う……」
これは事実だった。
以前にも言ったがユキムラは4Fr以上の攻撃ならカウンターを合わせられる。
だがソーカの放った攻撃は納刀時から斬り終わるまで、3から4Frという驚異的なスピードだ。
ユキムラでもガードは出来るかもしれないが、ソーカの武器の特性上それも難しい。
PvPでも勝てないかもしれない。そう思うとユキムラはブルリと武者震いが起きる。
挑戦者というのは楽しいものだ。
「私も、もっと立ち回りを学ばないといけません。
決めました、刀を使います」
「わかった。なら。普段戦うときはこれを使うと良い」
ユキムラがアイテムから一本の刀を取り出す。
「頑丈さに重点を置いているから通常の戦闘の連戦にも十分耐えると思う、耐えるようには作った。
魔力を通すと属性も変えられるから、大抵の敵にも柔軟に対応できる」
真っ黒な鞘。鍔や柄は白銀。
スラリと抜かれた刀は一切の曇りもなく火焰と呼ばれる紋が美しく現れている。
刀身全体が金剛鉄とミスリルの合金で作られているために淡く蒼く輝いて幻想的に美しい。
「自己研磨、自己修復が鞘に施されている。刀自体は硬性と粘りを大事にしている。
うまく使ってやってくれ。名は、その、蒼い華でソウカだ……」
恥ずかしそうにポリポリと顔をかいているユキムラ。
耳まで真っ赤になっている。
「ありがとうございます。大事にします」
刀を大事そうに抱いて応えるソーカ。
ソーカのことを想ってユキムラが打った世界にただ一つの刀だ。
ソーカにとって自分の命を、そしてユキムラを守る大切な相棒との出会いだった。
「なんか熱いねタロ」「わふん」
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