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87話 雨降って地固まる
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ギルドマスターとの話を終えてユキムラはすぐに診療所へと向かう。
いてもたってもいられなくなり、落ち着きがなくなってしまったユキムラ。
その様子を見たガレオンは見るに見かねて、細かな話は今度ということで送りだしてくれた。
使い物にならないから追い出したというのが正しいかもしれない。
診療所までの道も、落ち着かない様子で道行く人に何度かぶつかってしまうほどだった。
「ユキムラ様、一度宿に戻ってタロと一緒に向かいます。
先に診療所へと行ってあげてください」
あまりのユキムラの狼狽ぶりに、ソーカは気を使って一人ユキムラを先に行かせることにした。
「あ、ああ、すまないソーカ」
やっぱりユキムラにとってレンはそれほど大事な子なんだと、ほんの少しだがソーカは嫉妬心を持ってしまっていた。
それでもユキムラにとってのレンの存在を認めないことはユキムラという存在を認めないことと同じだな、そうソーカは自分の中で落とし込むことにした。
ユキムラが診療所へ飛び込むとちょうど先生が奥から出てきたときだった。
「先生! レンは!?」
「ああ、もう大丈夫だ。多分一番辛かったのは昨日の夜だったろうに、我慢してたんだな。
奥にいるよ」
奥の処置室を指差す。ユキムラは看護師達に頭を下げながら処置室へと入っていく。
「師匠!」
部屋に入ってきたユキムラをすぐに見つけベッドから跳ね起きてユキムラに抱きついてくる。
「もう、動いて平気なのかレン? って……ん? ……なんか大きくないか?」
今までレンが飛びついてくるとみぞおちから胸下ぐらいに頭が来ていた気がするが、今は胸から肩下ぐらいに顔が来ている気がする。
「わかんないですぅ、師匠! すみません、僕が弱いばっかりに……」
「いや、謝るのはこっちの方だ。レンの身体への影響も考えずに色んな所を連れ回して、
本当に申し訳なかった。でも、これからは……」
「嫌です! 置いてくなんて言わないでください!
僕は師匠のそばに居たいんです!」
「ああ、これからは……」
「お願いします! ちゃんとお役に立ちますから!
もっと努力しますから、お願いだから捨てないでください師匠!」
ユキムラを見つめるレン、今までよりもかなり顔と顔の距離が近いような気がして、ユキムラも少したじろいでしまう。しかしレンの両腕がしっかりとユキムラの身体にしがみつき距離は変えられない。
「いや、捨てるとかそんなことするわけ無いだろ、そもそもこれからは……」
「待ってるなんて嫌なんです! いつも側にいて師匠を支えるのが僕の仕事なんです!
ソーカねーちゃんが側にいるから僕なんていらないかもしれないですけど、
それでも僕は師匠の側に居たいんです!!」
レンの熱い吐息が直近でユキムラに、その熱意と一緒に浴びせられる。
カーテンの隙間から看護師さんたちがハァハァと熱い視線を注ぎ込んでいる。
「まず、落ち着こうレン。どうやら君は勘違いをしている。
レンはこれからも俺の大事な弟子だ、ソーカは関係なくこれからも一番近くで支えてほしい」
完全にプロポーズみたいなことをユキムラが言っているが、やっとレンは話を聞けるほど落ち着ける。
「本当ですか!? 先生の話からもう一緒に旅は出来ないのかと……」
「さっきギルドマスターとも話はついた。これからは俺と一緒のパーティであれば普通の冒険者と同等に扱ってもらえる。これからはビシバシ頼っていくから、よろしくな!」
「……はい! はい師匠!! 頑張ります!
よかったぁ、もう僕いらないのかと思って……」
「何言ってるんだ、いるとかいらないとか、有能だとか無能だとかそういうことは関係なく、レンは俺の弟子なんだろ? それともこれからの修行が怖くて逃げたいのかな?」
「へへっ! どんな修行でも乗り越えますよ! 僕は師匠の弟子ですから!」
「よし、それでこそレンだ! ……ところで、そろそろ離れないかい?」
ずーっと抱きついていたレンは慌てて離れる。
そこの看護師さんたち舌打ちしないの!
あっ、って感じでレンが顔を真赤にしてモジモジしてしまう。
子供っぽい行動に恥ずかしくなったんだろうが、その様子に看護師さんたちは勘違いしてジタバタと興奮している。違うぞ、違うんだぞ。ユキムラの心の声は届かない……
その後に遅れて来たソーカとタロが合流した。
妙に勝ち誇ったレンにソーカがいらつくのは、また別の話。
落ち着いたレンにユキムラは聞かなければいけなかったことを思い出す。
「予想はついているんだけど、レンレベルいくつ?」
「えっと。多分これですよね167だと思います」
「え? レン、なんで分かるの?」
ソーカは少し驚く。
「あの上からの視点のとき数字が並んでいるやつの一番上がレベルなんですよね?」
レンに言われてソーカがステータスに書かれたレベルを確認するかのように目を細める。
「でもなんかぼやけて読みにくいって……」
「体調おかしくなって、目がさめたらはっきり見えるようになりました!」
「もっと細かく見れたりする?」
ユキムラはレンたちも細かなステータスなどを振り分けられたり、現状のデータを詳しく知ることができないのか尋ねる。
「ステータスってとこですよね……残念ながらそこは開かないんです、他のスキルとかも……」
「その下のHPとMPは?」
「HPってとこが21435って書いてあってMPってとかは62198ですね」
どうやらレンは魔法系を伸ばしたほうが良さそうだ。
「ところでソーカは何してるんだ?」
目をカッと見開いて血走らせながら空を睨みつけている。
ブツブツとユキムラに対する信仰を熱く語っていて、はっきり言って不気味だ。
周りを歩いてる人が何事かとヒソヒソと話し始めているからやめてほしい。
「こう……すると……少し……見えて……ハァハァ……」
辛そうに目を閉じてハァハァ言っている。
「HP52312でMP10234です。ユキムラ様」
ソーカはやはり戦士向きか、しかし、毎回こんなことに体力は使ってられないのでソーカにはステータス確認は禁止と言っておこうとユキムラは心に誓った。
改めてギルドへ戻りレンのレベルは167、自己申告どおりであったことが確認できた。
特例の冒険者の証をもらい嬉しそうに抱きしめているレンを見てユキムラはとても嬉しそうだった。
そんなユキムラを見てソーカは少し悔しそうだった。
そんなソーカを見てレンはひっそりとニヤァと笑っていた。
タロは上機嫌でブルンブルンと尻尾を振っているのでありました。
いてもたってもいられなくなり、落ち着きがなくなってしまったユキムラ。
その様子を見たガレオンは見るに見かねて、細かな話は今度ということで送りだしてくれた。
使い物にならないから追い出したというのが正しいかもしれない。
診療所までの道も、落ち着かない様子で道行く人に何度かぶつかってしまうほどだった。
「ユキムラ様、一度宿に戻ってタロと一緒に向かいます。
先に診療所へと行ってあげてください」
あまりのユキムラの狼狽ぶりに、ソーカは気を使って一人ユキムラを先に行かせることにした。
「あ、ああ、すまないソーカ」
やっぱりユキムラにとってレンはそれほど大事な子なんだと、ほんの少しだがソーカは嫉妬心を持ってしまっていた。
それでもユキムラにとってのレンの存在を認めないことはユキムラという存在を認めないことと同じだな、そうソーカは自分の中で落とし込むことにした。
ユキムラが診療所へ飛び込むとちょうど先生が奥から出てきたときだった。
「先生! レンは!?」
「ああ、もう大丈夫だ。多分一番辛かったのは昨日の夜だったろうに、我慢してたんだな。
奥にいるよ」
奥の処置室を指差す。ユキムラは看護師達に頭を下げながら処置室へと入っていく。
「師匠!」
部屋に入ってきたユキムラをすぐに見つけベッドから跳ね起きてユキムラに抱きついてくる。
「もう、動いて平気なのかレン? って……ん? ……なんか大きくないか?」
今までレンが飛びついてくるとみぞおちから胸下ぐらいに頭が来ていた気がするが、今は胸から肩下ぐらいに顔が来ている気がする。
「わかんないですぅ、師匠! すみません、僕が弱いばっかりに……」
「いや、謝るのはこっちの方だ。レンの身体への影響も考えずに色んな所を連れ回して、
本当に申し訳なかった。でも、これからは……」
「嫌です! 置いてくなんて言わないでください!
僕は師匠のそばに居たいんです!」
「ああ、これからは……」
「お願いします! ちゃんとお役に立ちますから!
もっと努力しますから、お願いだから捨てないでください師匠!」
ユキムラを見つめるレン、今までよりもかなり顔と顔の距離が近いような気がして、ユキムラも少したじろいでしまう。しかしレンの両腕がしっかりとユキムラの身体にしがみつき距離は変えられない。
「いや、捨てるとかそんなことするわけ無いだろ、そもそもこれからは……」
「待ってるなんて嫌なんです! いつも側にいて師匠を支えるのが僕の仕事なんです!
ソーカねーちゃんが側にいるから僕なんていらないかもしれないですけど、
それでも僕は師匠の側に居たいんです!!」
レンの熱い吐息が直近でユキムラに、その熱意と一緒に浴びせられる。
カーテンの隙間から看護師さんたちがハァハァと熱い視線を注ぎ込んでいる。
「まず、落ち着こうレン。どうやら君は勘違いをしている。
レンはこれからも俺の大事な弟子だ、ソーカは関係なくこれからも一番近くで支えてほしい」
完全にプロポーズみたいなことをユキムラが言っているが、やっとレンは話を聞けるほど落ち着ける。
「本当ですか!? 先生の話からもう一緒に旅は出来ないのかと……」
「さっきギルドマスターとも話はついた。これからは俺と一緒のパーティであれば普通の冒険者と同等に扱ってもらえる。これからはビシバシ頼っていくから、よろしくな!」
「……はい! はい師匠!! 頑張ります!
よかったぁ、もう僕いらないのかと思って……」
「何言ってるんだ、いるとかいらないとか、有能だとか無能だとかそういうことは関係なく、レンは俺の弟子なんだろ? それともこれからの修行が怖くて逃げたいのかな?」
「へへっ! どんな修行でも乗り越えますよ! 僕は師匠の弟子ですから!」
「よし、それでこそレンだ! ……ところで、そろそろ離れないかい?」
ずーっと抱きついていたレンは慌てて離れる。
そこの看護師さんたち舌打ちしないの!
あっ、って感じでレンが顔を真赤にしてモジモジしてしまう。
子供っぽい行動に恥ずかしくなったんだろうが、その様子に看護師さんたちは勘違いしてジタバタと興奮している。違うぞ、違うんだぞ。ユキムラの心の声は届かない……
その後に遅れて来たソーカとタロが合流した。
妙に勝ち誇ったレンにソーカがいらつくのは、また別の話。
落ち着いたレンにユキムラは聞かなければいけなかったことを思い出す。
「予想はついているんだけど、レンレベルいくつ?」
「えっと。多分これですよね167だと思います」
「え? レン、なんで分かるの?」
ソーカは少し驚く。
「あの上からの視点のとき数字が並んでいるやつの一番上がレベルなんですよね?」
レンに言われてソーカがステータスに書かれたレベルを確認するかのように目を細める。
「でもなんかぼやけて読みにくいって……」
「体調おかしくなって、目がさめたらはっきり見えるようになりました!」
「もっと細かく見れたりする?」
ユキムラはレンたちも細かなステータスなどを振り分けられたり、現状のデータを詳しく知ることができないのか尋ねる。
「ステータスってとこですよね……残念ながらそこは開かないんです、他のスキルとかも……」
「その下のHPとMPは?」
「HPってとこが21435って書いてあってMPってとかは62198ですね」
どうやらレンは魔法系を伸ばしたほうが良さそうだ。
「ところでソーカは何してるんだ?」
目をカッと見開いて血走らせながら空を睨みつけている。
ブツブツとユキムラに対する信仰を熱く語っていて、はっきり言って不気味だ。
周りを歩いてる人が何事かとヒソヒソと話し始めているからやめてほしい。
「こう……すると……少し……見えて……ハァハァ……」
辛そうに目を閉じてハァハァ言っている。
「HP52312でMP10234です。ユキムラ様」
ソーカはやはり戦士向きか、しかし、毎回こんなことに体力は使ってられないのでソーカにはステータス確認は禁止と言っておこうとユキムラは心に誓った。
改めてギルドへ戻りレンのレベルは167、自己申告どおりであったことが確認できた。
特例の冒険者の証をもらい嬉しそうに抱きしめているレンを見てユキムラはとても嬉しそうだった。
そんなユキムラを見てソーカは少し悔しそうだった。
そんなソーカを見てレンはひっそりとニヤァと笑っていた。
タロは上機嫌でブルンブルンと尻尾を振っているのでありました。
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