老舗MMO(人生)が終わって俺の人生がはじまった件

穴の空いた靴下

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86話 絆

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「何者だおまえ……」



 ガレオンは小型の円形盾ラウンドシールドとハンドソードを構える。

 先程よりも様になっており隙がない。



「サナダ ユキムラ。来訪者だ」



「なるほどな、伝説の来訪者とやれるとは。

 非礼は詫びよう。本気で行かせてもらう」



 もしもオーラというものが肉眼で見えるとしたら先程までは大げさにオーラを纏い垂れ流していた。

 今はそのオーラを体の中にぎゅっと溜め込み爆発させる準備をしている。そんな感じだ。

 ユキムラもその雰囲気の変化を敏感に感じる。

 さっきのような一発芸をやっている余裕はない。



「シッ!」



 ユキムラは5mほどあった間合いを一足で詰める。

 しかし、ガレオンは微動だにしない。

 ユキムラはどちらかと言えば相手に先を取らせてカウンターという後の先を得意とする。

 これだけ雄大に構えられるとそれは望めない。

 その場合は相手の先を誘い出すしか無い。

 完全に片手剣の間合いに入っても全く動く気配はない。

 

(これは厄介だね)



 仕方なくユキムラは腕をムチのようにしならせることで最速で打つ基本スキルのひとつ鞭打を放つ。

 その瞬間背筋に冷たいものが走る。ほぼ本能で腕を急速にひねりこむ。

 回転掌、敵の攻撃を弾きそのまま相手に打ち込む技だ。

 強い衝撃を籠手が弾く、本来はそのまま相手に打ち込むはずの拳は意思と関係なくだらりと垂れる。

 籠手に当たってくれたのは完全に偶然だ。運が良かっただけ。

 そのままユキムラの本能は逆の利き手で強烈な一打を放つ。



 ズン 



 踏み込みにより激しく地面に衝撃が走り、掌打による一撃は盾に阻まれる。

 獅子砲、強力なオーラを纏った掌打によって前方のヒットした敵だけでなく周囲も含めて後退させる。

 たとえガードに成功しても、その強力な攻撃を受け後方へとガレオンは飛ばされ距離が開く。

 左手を見れば籠手は粉々に砕け、腕もギリギリ折れてはいないがもうまともには使えない状態だ。

 ポタポタと腕から流れる流血が地面へと広がる。すぐに回復魔法を巡らせる。



「ゴボァ!」



 掌打を盾で受けたもののそのすさまじい衝撃は盾を抜けガレオンの身体を撃ち抜いている。

 ボタボタと吐血する。



「ちっ、そのレベルの回復魔法まで使うのか……死ぬ気になればもう少し相手も出来るが、

 負けだ。負け。俺の負けだよ」



 ガレオンが剣と盾を地面に捨ててその場に座り込み天を仰ぐ。



「こっちも殺られるかと思いましたよ」



 手を差し伸べるユキムラ。その手をがっしりと握り立ち上がる。



「よく言うぜ、もう治ってんじゃねーか」



 すっかり治った左手を苦々しく睨みつける。

 その手を高々と上に持ち上げるガレオン。

 瞬間、闘技場は歓声に包まれる。

 観客は足を踏み鳴らしガレオンとユキムラの名を称えていた。

 この一戦はしばらく幻の一戦として語り継がれることになる。



 

「ユキムラ! お前さっきの盾で受けなかったら俺死んでたろ!」



 上機嫌のガレオンがバンバンと背中を叩きながら応接間への道を歩く。



「ガレオンさんこそ俺の腕落とす気だったでしょうに」



「ガレオンでいい。手加減なんてする余裕あるはずねーだろ!

 まったく、あれで全力じゃねーとか恐ろしいやつだなお前は」



「ガレオン様、全力じゃないというのは?」



 ガレオンの発言にソーカが思わず口を挟んでしまう。



「んー? 気が付かないならまだまだだな。

 あのレベルの回復魔法使えるなら当然身体強化魔法なり色々使えるんだろこいつは?」



 そう言われてソーカは驚愕した。

 そうだ、今回の一戦一切の自己強化魔法を使っていない。



「ってことで、俺がユキムラと戦場で会ったら手も足も出ずに殺されるだけだ。

 まったく来訪者ってやつはでたらめだな……」



「それはガレオンも一緒だろ、まだまだ2段階くらいは色々と隠してるように見えるぞ」



「ぷっ、あーーーはっっはっっはっっはっっは!!!

 こりゃ絶対に来訪者とは喧嘩しねぇ!! 怖えぇ怖えぇぇ!!」



 何が楽しいのか大爆笑のガレオン。

 連れられた応接間では既にお茶が用意されている。



「まぁ、かけてくれ。

 さてと。真面目な話を先にしておこう。

 王都プラネテル冒険者ギルドギルドマスターとしてサナダ ユキムラ殿をS級冒険者と認定する」



 急に真面目な顔をしてガレオンは預かっていたギルド証を返してくる。

 そこにはSの文字が輝いていた。



「ならびにソーカ殿、貴殿をA級冒険者と認定する」



 最年少A級冒険者の記録が破られた瞬間であった。



「噂によると診療所にいるレンとかいう坊主も只者じゃないんだろ?

 診療所のアイツは昔からの舎弟でな、さっき報告があった。

 ついでに百数十年前に現れた来訪者とその記録だそうだ。

 来訪者はともに歩むものにその経験を分け与えるって記載があって、

 たぶんユキムラ殿が言っていたことなんだろうってさ。

 そのせいでレン君は急速なそれこそとんでもないレベルアップをしてしまって、

 今回の発症になってしまったそうだ」



 ユキムラは自分の浅慮を恥じていた。

 これで重大な後遺症でも残ったらどうするのか、目の前が暗くなっていくような気持ちになる。



「で、だ。大事なのはこれから。

 レン君はすでに快方に向かっており、今回のことで特に健康上の影響は出ないそうだ」



「……!」



「なんだよ、泣きそうな顔して。

 ついでにな、そのレン君にギルドマスターとして特例のギルド証をだそう。

 アイツの話だと、もうここまでレベルが上がれば今後は同じような症状は起きないらしい。

 それに、肉体の成長も予約済み? って言ってたかな。

 あとは身長が伸びたり体ができあがっていくが、すでに冒険者としての任を、

 十分すぎるほどこなすだろうってさ。

 と、いうわけでユキムラ。

 お前とパーティを組んでいる時、限定で冒険者と同等の扱いとする。よかったな」

 

 何よりもレンの無事が嬉しかったが、これからは肩を並べて共に旅ができることが嬉しかった。

 やはりユキムラにとってレンは何者にも代えられない大切な弟子なのだ。

 

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